
1 子どもの虐待とは…
2 子どもの虐待の起こる背景・要因など
3 被虐待児の発見のために
4 虐待かな?と思ったら…
5 虐待ケースへ対応するときの手順
6 援助の方法
7 虐待の発見から援助までの流れ
一般的には、次の4つに分類されます。
@ 身体的虐待
子どもに傷あとが残ったり、生命が危うくなるようなケガをさせたり、からだに苦痛を与えることです。
例えば、殴る・蹴る、つねる、縛る、タバコの火やアイロンを押しつける、冬の戸外に締め出す、首を絞める、逆さ吊りにする、激しく揺さぶったり振り回したりするなど。
これらの行為は、心身に後遺症を残したり、最悪の場合には死に至らしめることがあります。
A 養育の拒否・放置(ネグレクト)
子どもに適切な衣食住の世話をしないなど、子どもを放ったらかしにすることです。
例えば、食べ物やミルクを与えない、衣服を与えない、家に閉じこめる、家に入れない、学校に行かせない、危険な場所に放っておく、医者にみせないなど。
極端な場合には、栄養障害による発育や発達の遅れをきたしたり、時には飢餓や脱水症状により、死に至らしめることがあります。
B 心理的虐待
心理的いじめのことで、子どもを情緒不安定にさせたり、心に傷を負わせることです。
例えば、子どもの存在を無視する、おびえさせる、罵声をあびせる、ひどい言葉でなじったりするなど。
心に傷を受けた子どもは、過度な不安、おびえ、うつ状態、無感動、無反応、強い攻撃性、習癖異常などの精神症状をしばしば現します。
C 性的虐待
子どもに性的ないたずらをしたり、性関係を強要したりすることです。妊娠、中絶、出産などの結果を招いたり、異性への極端な嫌悪感や、自分自身への罪悪感に取り付かれたりするなど、心身に深い傷を残します。
しばしばもつれた人間関係を背景に持ち、事実が明確になりにくいのも特徴です。性的虐待の多くは女児に対してですが、男児も例外ではありません。
親自身の過去・現在の様々な人間関係が、様々な形で影響してきます。虐待する親は、自らがかつて虐待を受けていたことも少なくありません。複雑な家族関係からのストレスも見逃せません。そして多くの親は、複雑な問題をかかえながら、<孤立状態>に陥っています。
親が有するストレスや葛藤の内容
・育児に対する不安
・経済的な苦しさ
・夫婦関係や嫁姑関係の不和・こじれ
・地域や家族・親族からの孤立
・身体や精神の病気
・アルコール、薬物等の依存・乱用
・望んでいない結婚・出産 など
1)子どもの虐待は「いつでも、どこでも、どんな人でも」
いつでも、どこでも、子どもの虐待と遭遇する可能性があります。その時に適切な対応がとれるかどうかが大切です。
2)「変だな?」と思ったら虐待を疑え
子どもの虐待にはどんな場合にでも「不自然な」ことがつきものです。「何となく変だな?」と感じたら、虐待の存在を疑ってみるべきです。次のようなことが見られたら、誰かに相談しながら、その後の様子を注意深く見守りましょう。
早期発見の目安
・傷あとやあざが目に付いたり、タバコの火や火傷の跡が見られる(陰部
など、目に付かないところに集中することもある)。
・よくケガをしている。ケガの原因に関する説明が不自然であったり、説
明しなかったりする。
・親といるとおどおどし、落ちつきなく表情がさえず、感情表出が乏しい
・無気力あるいはうつ状態にあり、友だちから孤立している。
・落ちつきがなく、過度に乱暴だったり、弱い者に対する暴力がひどい。
・食べ物への執着が強く、与えられるとむさぼるように食べる。あるいは
食欲がなさすぎる。
・体格が小柄で貧弱、身体発達が極端に遅れている。
・衣服が汚れていたり、破れたままであったり、季節にあわない服装であ
ったりする。
・家に帰りたがらない、あるいは家出浮浪を繰り返す。
・自暴自棄な言動が目立つ。
・理由なく学校を休む。
早期発見の目安
・子どものケガや傷あとについての説明が不自然である。
・子育てに疲れ、いつもイライラして子どもに当たり散らし、子育てに関
して拒否的な発言をしたりする。
・発達にそぐわない厳しいしつけや叱責をし、子どもを威嚇している。
・食事・衣類・寝具などへの準備や配慮がなされていない。
・必要な健診や医療、あるいは教育などを受けさせていない。
・気になることがあるのに心配している様子が見えず、その事に関する言
動が不自然である。
・子どもに関して言っていることがコロコロ変わる。
例えば重症なけがなのに受診するのが遅い、子どものケガなのに親が同伴しない、入院しても面会に来ない、子どもが親を避けている、親から引き離されるのを嫌がらないなど、不自然な状況が見られるときです。
3)虐待は「シロかクロか」ではない
「果たして虐待か?」という疑問は常についてまわります。事実認定がなかなかできない場合もしばしばあります。「シロかクロか」をはっきりさせるのではなく、虐待を疑ったときには、たとえ事態が曖昧なものであっても、どのような援助ができるのかをまず考えましょう。
4)追いつめない・孤立させない
すでに地域や親族の中で追いつめられていたり、そのことで随分傷つきやすくなっている親にであうことがあります。援助の際に大切なのは、「決して追いつめない」ということです。虐待を加えた親に対しても、「ていねいに接する」ことが大切です。そして「最初に出会ったときにこそ、ていねいに接することが、後で大きな意味を持つ」ということを忘れないでください。
5)発見の瞬間から援助は始まる
発見の瞬間から関わりは始まっています。あなたがどのように関わるか、援助の方向をどのようにしていくのか、それによって子ども、家族が救われる場合が多いのです。
虐待している親、虐待しそうな親にマイナスイメージを持たない
虐待に気づくと、多くの人は虐待を加えた親に対して「なんとひどいことを…」といった否定的イメージを持ち、時にはその親を非難したり、拒否したり、力づくで指導したりしたくなります。しかし、虐待にまで至る親の場合、親自身にも深い背景がある場合が多く、親もまた傷ついていることをまず念頭に置いてください。そして、そのことをまず理解しましょう。
また、最初にマイナスイメージを持つと、その後の親との関係がうまくいかないことも多く、それ以後の問題解決を困難なものにしてしまいます。
「援助する」という視点を大切に 生命の危険があるような場合は、何をさておいても子どもを守らなければなりません。しかし、多くの虐待事例をみると、虐待をめぐる当事者たちの背景には過去の経過を含めて様々な要因が存在します。
「加害者は被害者である」とも言われるように、不幸にして虐待を加えた側の大人を含めて、<援助する>という視点が大切です。親も辛いのです。
* 「子育て不安」の相談に対応する時には、更に援助の視点が大切です。この段階でしっかりと援助できることが、未来の虐待を予防することにもつながります。市町村で行われる乳幼児健診はとても重要な援助の場になります。
* 保育所や幼稚園、あるいは母子通園療育施設なども重要な援助の場になることがあります。子どもとともに毎日通ってくる母親にも目を向け、いつもとは違うことに気づいた場合は、子どもだけでなくお母さんもサポートしてください。地域によっては、子育て相談を受けている保育所もあります。 自分のところだけで解決しようとしない 虐待に気づいても、表沙汰になることを恐れて内部で抱えてしまうと、結局はよりよい問題解決にはなりません。最初の発見者は、親子の身近にいる人が多く、様々なことに巻き込まれてしまって抜き差しならないことになってしまうこともよくあることです。
* 当事者の人権を十分配慮しながら、関係機関に正しくつないでいくことが、それぞれの関係者や関係機関、ひいては当事者の親子を守ることになるのだということをまず念頭に置いてください。
* 虐待の背景には、通常デリケートで様々な問題が含まれていますから、問題が深刻にならないうちに解決するには、早い時期に、より専門的な機能を持った機関と協力していくことが不可欠です。また、最初に関わった機関が、虐待について専門的な機能を持っていたとしても、その子やその家族に対する援助の手段は、他の機関でもいろいろと持ち合わせているものです。
* 時には「通報」といった方法も大切なのですが、それよりも情報交換や協力依頼をするのだというつもりで、まず外につなぐことを考えましょう。
* 虐待に対処するということは、相当にエネルギーのいることです。時には援助者の側も疲れたり、傷ついたりします。そのことを癒すためにも、ネットワークが重要なのです。
@ 子どもの安全確保
虐待に気づいたときには、当面は安全な状態にあるのか、あるいは一刻を争う緊急事態なのかについてまず判断しなければなりません。緊急度が高いと判断された場合は、夜間であっても、すみやかに警察または児童相談所に連絡し、子どもの身体の安全を確保してください。
また、一刻を争うような事態の場合は、110番通報により、警察を通じて医療機関での入院治療につないでください。
A 児童相談所や福祉事務所へまず第一報を!!
子どもや親の様子から虐待を疑われたり、地域などからの連絡を受けたときは、子どもを発見したときの状況や、子どもや家庭との日常の関わりの中で気づいたことなど、できる範囲で状況を把握した上で、まず児童相談所や福祉事務所に連絡してください。決して単独で何とかしようとしないでください。ネットワークで対応することが重要です。(児童福祉法第25条により、全ての国民には虐待の通告義務がありますが、特に児童福祉に関係の深い職にある者などについては、その履行が強く要請されています。)
B ネットワークを組み、チームで動く
連絡を受けた児童相談所や福祉事務所も、単独で対応することは出来ません。連絡してくれたより身近な関連機関や福祉・保健・医療に関する保健所などの関係機関とネットワークを組み、チームでの対応が始まります。
チームで対応する時に大切なのは、たえず連絡を取りながら情報や方針を共有し、役割分担をはっきりさせるということです。当事者の人権に十分配慮しながら、それぞれの機関の対応が開かれたものになっていることが重要です。
そしてまずは、非常事態を見逃さないために、子どもの様子を定期的に見守る人を決めておくことが、子どもを守ることに大いに役立ちます(モニター)。
C 自分の機関の役割を考えましょう
虐待はチームで取り組むことが鉄則です。そして各機関の特性によって、担っていくべき役割が異なります。関係機関協議の中で、それぞれの役割を十分理解・納得し、役割分担しましょう。得心のいかない時は、関係者協議の中でその事を明確に伝えることが大切です。くれぐれも単独で対応しないことが大切です。
D その都度の情報提供を!!
チームで対応するためには、その都度に提供される関係機関からの情報が、その後の対応のために不可欠のものになります。プライバシーの保護に留意しつつ、その後の様子を継続的に見守り、関係機関で構成されるチームに積極的に提供します。それと同時に、今後の連絡がスムーズに行なわれるために、どの機関がチームの中心になるのかについても承知しておきましょう。これらの情報提供は、守秘義務違反にはなりません。
また、今後も継続的に協力して対応できるかどうかについても、あわせて伝えておきます。
人権に配慮しつつ写真撮影を行っておいた方がよい場合もあります。
E 親と接触をするときには
まず親の悩みや訴えをそのまま受けとめ、十分に時間をかけて、親の話すことをよく聴きましょう。批判や説教をすることなく、話を聞いてくれる相手がいることが分かれば、親は安心して、今まで抑えていた感情を表すことができます。
次に、親が表現した悩みや感情に対して、十分共感を示すことが大切です。親の多くはこれまでに悩みを打ち明けた相手から批判を受け、傷ついていることがよくあります。
F 援助を行っている間に、もしも緊急なことが起こったら
チームの中心となっている機関に至急に連絡を取りながら、まず子どもの保護に努めます。子どもの保護は、通常児童相談所や医療機関が受け持つことになります。最悪の場合は親(親権者)とぶつかることがありますが、子どもを守ることを優先して考えます。必要な場合は、弁護士や家庭裁判所の力を借りることもできます(児童福祉法第28条、同法第33条の6など)。
福祉事務所、保健所、市町村などに地域からの虐待の通報や相談があった場合、児童相談所が中心となって関係機関が協力して状況把握をし、虐待の種類や程度に応じて、次のような援助を行います。
@ チームで対応する
虐待は単一機関だけではなかなか対応が出来ません。必要に応じて関係機関の協力を得て作られる、チーム(ネットワーク)で対応することが重要です。その中で役割分担しつつ、その都度の方針や現状などを確認しあいます。地域・保育所・幼稚園・学校などには、子どもの様子を絶えず見守るような役割を担ってもらいます(モニタリング)。
A 在宅指導
児童相談所の児童福祉司や心理判定員、保健所や市町村の保健婦が、関係機関の方とともに相談・指導にあたります。必要に応じて家庭訪問したり、面接を行います。虐待の起こる背景や要因を除去するため、カウンセリングなどにより、心理的な安定と家族関係の調整・修復などを行い、あわせて福祉的な援助を提供して生活の安定を図るなどの援助を行います。
児童の保護と並行して、これらの援助が始められることもあります。
B 一時保護
当面の危険を避け、子どもの安全を図る必要のある場合には、児童相談所の一時保護所や病院などで子どもを一時的に預かります。児童福祉施設に一時保護を委託する場合もあります。暴力を振るう父(夫)から逃れることが必要な場合は、婦人相談所が母子を保護し、その後の相談に応じます。
C 施設入所
親に対する指導の効果が期待できず、祖父母等の近親者の援助も得られない場合には、乳児院や児童養護施設などに入所させて保護します。施設入所によって親子が分離された後も、望ましい親子関係の修復のための援助が継続されます。
母子が、父(夫)と離れて生活する必要がある場合には、母子生活支援施設へ入所させる場合があります。
D 法律的な手だて
施設入所にあたっては親の同意が必要なのですが、同意が得られない等の場合には、弁護士に相談したり、家庭裁判所への申し立てを行ったりします。
現行の児童福祉法には、次のような規定があります。
・家庭裁判所の承認を得て、親の同意なしに施設に入所させる(第28条)
・第28条を行使するための立ち入り調査(第29条)
・親権喪失の申し立て(第33条の6)
・親権の一時停止(第33条の6に係る保全処分)

関係機関の連携・協力
子どもの虐待への対応は、一つの機関だけで済むことはまれです。関係機関と、どのようにうまく連携をとり、協力していくかが解決の鍵になります。
本冊子作成にあたり、次の資料を参考にしています。
東京都 「子どもの虐待防止マニュアル」
大阪府 「虐待防止ハンドブック 子どもからのSOS」
三菱財団 「虐待からの子どもと家族の救出ケア」
* インターネット上のこどもの虐待関連ホームページ
子どもの虐待防止センター http://www.path.or.jp/~ccap/
京都府子どもの虐待防止研究会 http://village.infoweb.ne.jp/~chosei/fugyaku1.htm