Today's Memo about <児童福祉>

1999.4. 1. 発

平成9年度の厚生省虐待調査結果の新聞報道から


私の雑記帳です。思いついたときにだけ書き込みます。

*   *   *

 また、新聞に虐待に関する記事が報道された。平成9年度の全国の児相の虐待相談について、厚生省が実施した調査結果についてである(毎日新聞 3月31日夕刊、朝日新聞 3月31日朝刊)
 この記事の内容は、恐らく調査結果通りであろうと思われたし、引用された二つの事例も恐らく事実には違いあるまい。そしてターゲットは児相である。曰く「…取り組みの鈍さが浮き彫りになった。」(毎日新聞)と。

 ある知能検査に次のような問題がある。「次の話を聞いて、おかしいところはどこですか」という問題である。話の要旨は以下のような内容である。
 「あるところで列車事故があったが大したことではなかった。ただ、48人の人が死んだだけだった」
 答えは自明なので省略する。この報道記事を読んで私が最初に連想したのは、今回はこの知能検査の問題の話であった。記事を対比させると以下のようになる。
 「全国の児童相談所に虐待相談がよせられ、児童相談所が相談を開始したが大したことではなかった。ただ、15人の子どもが死んだだけだった」

 こんな問題が知能検査に登場しても決しておかしくはない。

 これが実態なのだから、事実は事実として、何をさておいてもまず真摯に受け止めなければならない。しかし問題は、15人が死んだことが大したことなのか、あるいはそうでないのかという点である。計算すると相談後死亡率(こんな言い方が妥当ではないのかも知れないが)は、約0.3%である。逆に言えば、相談された子どもの内の5,310人は、調査段階では少なくとも死にいたってはいないのである。

 児相は頑張っていますとは言いにくい実態も確かにあろうが、相談後生存率(不遜を承知で、あえてこんな言葉を使うなら)は、99.2%である。私の記憶では、ある年の大都市圏の虐待事例の死亡率は2%であり、以前に比べてとても減ったというプラス評価がなされていた。記事の内容とこの統計とを並べてみたときに、いったいどう考えるのが正しいのか!?

 新聞というメディアの、社会における<重み>を勘案したときに、もし時代の流行故に事実を過剰に伝えたのなら、その弊害は大きい。私の偏見かもしれないが、<虐待という事象>が、現代社会の中でそのような傾向を益々強めているように思えてならない。否、マスメディアがことさら煽っているようにすら思われてれてならない。

 そう思うのは、私自身も職業人として、これまでに数ヶ所の新聞社から、虐待に関する取材を受けたからである。ある場合には記者と直接で会ってのインタビューであったし、電話による取材もあった。当然異なる印象が、今でも私の記憶の中に鮮明にある。

 取材後非常に不愉快に思ったことがあった。電話での取材であったが、ある事実の有無を尋ねられた。相談開始後、あまり時間を経ていない事例についてであったので、守秘義務を盾に、ほとんど回答しなかった。問題は取材の仕方であった。「その子は乳児ですか、小学生ですか」(答えないと、間髪を入れずに)「乳児なのですね。どうですか」…。例えばこんな質問が、無機的な声で、矢継ぎ早に尋ねられるのである。二者択一、あるいは「はい、いいえ」でしか答えられないような質問法である。1分も続けられるとこちらの神経が麻痺してくる。曖昧にごまかすと、「つまり、***なのですね」と詰め寄られる。こちらが怒り始めると、引き際が実に素早く、しかも時を置かずに、別の角度からの二者択一、あるいは「はい、いいえ」を迫ってくるのである。
 時間は5分弱のやりとりだったが、こちらは確かほとんど何も言っていないのに、先方は「つまり、***ですね」と言い寄り、それがあたかも先方の結論であった。そのことをその後にどう扱われたのか知る由もなかったが、実に不愉快であった。後で無性に腹立たしかった。まるで、ナチスの誘導尋問を受けた感じがした。児相職員への、正義の使者からの拷問だとすら思った。

 あるケースワーカーは、自宅にまで電話をかけられたといった話を聞いたことがある(事実がどうかは知らない)。社会的正義を貫くための手段だとはとても思えない。マスコミの実態はこんなものなのだと考えてしまう。本来は、真っ先に子どものために怒りを、行動に変えなければならないのが児相職員であるのだろう。そのことの是非はさておくにせよ、なぜマスコミに、児相職員が怒りを感じなければならないのか、理不尽でならない(今回の記事は、少なくとも私には怒りを生じさせなかった。念のため申し添える)。

 ただ一つ思ったのは、この記事がなぜ3月31日の記事なのかという点であった。明日は4月1日。新年度の初日である。まさか大統領の年頭教書でもあるまい。うがっているかも知れないが、この記事を載せたかったのは、新聞社以外の何者かではないか。いったい、意図した黒幕は誰なのかを想像してみるが良い。そしてその者がいるのなら、もっとオープンに、フェアーに事を進めるすべきだ!!

 児相は、子もども権利擁護のためにこそ、まず第一に力を尽すべき機関なのだ。

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