コミュニケーションパターンの把握
コミュニケーションパターンの把握と仮説・検証
柴 田 長 生
家族には特有のコミュニケーションパターンがあるようです。その特徴をよくつかみ、そこの所に介入していくことによって治療が進む場合もよくあります。コミュニケーションパターンの把握の仕方の例を1つ紹介しましょう。
* * *
以下の家族の会話を読んで(情報はこれっきりなんですが)、この家族についての仮説をたててみます。仮説といっても、別に家族それぞれの心理診断所見のようなものをまとめるわけではありません。だから<内容>的なことにはあまりこだわらず、できるだけ形態的・形式的に把握してみましょう。
例えば
* この家族の会話にはどんなパターン(繰り返し生じていること)があるか。
* 家族の間の力関係はどんなになっているだろうか。
* 家族の間には、どのような距離があるだろうか。
* 誰と誰とが近いか、「連合関係」にあるか。
* 世代の間には、どのような<境界線>があるか。
* 入り乱れた家族か、それともバラバラか。
* 家族それぞれの気持ちはどのようであるのか。
* 一言で言えば、どんな家族か(キャッチフレーズ)。
* この家族のことを図で描いてみるとどのように描き表すことがができるか。
* この時、この場では、どんなことが起こっているのか。
家族の会話
【家族構成】 父・母・娘(家出外泊)
* * *
母 いったい、どこへ行ってたの!昨日も帰ってこなかったじゃないの。
娘 どこへ行こうと私の勝手でしょ。いちいちお母さんに言う必要ないよ。
母 あなたは女の子でしょ。お母さんはいつも心配ばかりしてるのよ。昨日 もずっと寝てないのよ。
娘 私のことなんかほっといて、勝手に寝たらよかったのよ!
母 何ですか。その口のききかたは。
父 まあまあ、お母さんも少し落ちつきなさい。それじゃU子の気持ちも分らないじゃないか。
母 あなた、今、そんなこと言っている場合ですか。U子の外泊はこれでもう7回目よ。
あなたがいつもびしっと叱らないから、大体ダメなんです。
父 私だって心配してるんだ。だから、U子の本当の気持ちをゆっくり聞いてやらないとダメだって
いつもお前に言っているだろ。それをお前がいつもヒステリーを起こすから…。
母 私のどこがヒステリーなんですか!
娘 お父さんもほっといてよ。だいたいお父さんは、いつも聖人面してるだけで、
本当は私の気持ちなんかちっとも分かってくれないんだから。
父 お父さんのどこが聖人面なんだ。お父さんはいつもお前のことを心配してるんだ。
お父さんに分かるように、今ここでお前の気持ちを話してみなさい。
娘 そんなお父さんの態度がイヤなのよ。カッコつけてるだけなんだから!
うわべだけなんだから! お父さんなんかに話すことなんかないわ。
母 お父さんに対してなんてこと言うんですか! あやまりなさい。
娘 なんであんな奴にあやまらなきゃダメなんだよ。だいたい、お母さんも
でしゃばりでヒステリーのくせに、ギャーギャー言うな!
母 なんてこと言うの。ギャーギャー言わせるのは誰のせいよ!
父 落ちつきなさいって言ってるじゃないか。U子の気持ちは私が聞くから、お母さんは台所へ行ってなさい。
母 お父さんもなんなの。私がこれだけ心配しているのに、私の気持ちなんか
ちっとも分かってくれないじゃないの(泣きだす)。
娘 もういい。出て行く。今晩も帰ってこないけど、心配しなくていいから。
父 待ちなさい。まだ話が終わってないじゃないか。そこへ座ってお父さんの話を聞きなさい!
娘 また説教なの。結局お父さんは、いつもそうやって、最後は怒鳴るだけ。
もういい加減にしてほしいわ。出て行くからね。
父 もういい。出て行け。
母 U子、待ちなさい。そこに座って話を聞きなさい!
<解 題>
少し注意深く読むと、次のようなパターンが循環していることが分かる
母対娘 → 父が割り込む(母VS娘↓) → 父対母
↑ ↓
母が割り込む(娘VS父↓) ← 娘対父 ← 娘が割り込む(父VS母↓)
すごくエキサイトしていくように見えながら、実はこのようなパターンを繰り返しながら堂々巡りしているに過ぎない。しかも特定の2人だけの対立関係が過熱しないように、誰かがうまくは行ってきて全体の調和を保っているのがわかる。
治療的には、この連鎖をどう断ち切るかという事になる。
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