「食」は香港にあり

「食」は香港にあり



漢字のメニュー

香港に着いた日の夜、ホテル周辺を歩いて最後に街角の大衆飲食店のような所に入った。メニューは全て漢字表記。これが分かりそうでなかなか難解な代物である。当たり前のこととは言え香港は暑くて、冷たい飲み物がほしい。「氷凍珈琲」$12(これはアイスコーヒーである。ホテルメニューには、ised coffee と書かれている)。これを注文したが、日本のコーヒー牛乳のように甘くてうすかった。「麦片」「三文治」…一体何のこっちゃ!? 三文治の中に「蛋三文治」というのがあった。「香港は、シラミ食べるのか(これは蚤(ノミ)を虱(シラミ)と間違えている)」と誰かが言い出す。この謎は翌日分かるのだが、「卵サンドウィッチ」のことであった。ちなみに「麦片」は「オートミール」だったらしい。大陸文化である漢字を共有している私達だが、漢字を見ると妙に変な感じがする(オマケ:「柴可夫斯基」は一体何と読むのでしょう? 答えは「チャイコフスキー」でした)。

百萬弗の夜景を食す

滞在二日目の夜は、百萬弗の夜景をいただくことになった。一日香港の町中にいて、ホテルに4時頃戻って少し休憩を取るのが、夜の行動に向けての最高の準備であることが分かった。こんな時にも一口冷たい飲み物がほしい。ホテルの冷蔵庫は高いので(香港製缶ビール1個 $30)、セブンイレブン(言わずと知れたコンビニです)で色々調達して部屋の冷蔵庫に入れておくのが一番いい。ちなみに香港ビールが$6、日本ビールが$8〜$9といったところだ。この時間は夜の作戦タイムにもなった。「夕食に何を食べるか」で悩むのである。「ロブスターのチーズ焼き」「かにのピリ辛」…、 それぞれに勝手な注文を出している。
昼間見た超高層ビルの上から香港の夜景を見ながら食事しようという結論になった。こんな時こそガイドブックが役立つ。香港島の湾仔(ワンチャイ)にある「旋轉66(Revolving 66)」というレストランが見つかった。湾仔の高台にある66階のビルの最上階にある回転展望レストランで、66分かけて一周するそうだ。ホテルから電話を掛けて、何とか窓側のテーブルを予約することが出来た(電話での予約初体験!)。
ディナーのコースは、前菜(サーモン)、スープ(亀のスープかシーフードスープ)、シャーベット、ロブスターのチーズ焼き(あった!)とステーキ、マンゴプリン、コーヒー。以上で一人$450であった。ロブスターとパンがおいしかったが、後はまずまずであった。それよりも「野菜」が出てこない。季節柄なのかも知れないが、この店に限らず、香港ではサラダ感覚で食べるような野菜がまず出ない。
しかし、何よりおいしかったのは、夜景である。海と山と、垂直に拡がる光の柱と…。飛行機から見たパノラマが、適切な距離でそこに拡がっている。九龍半島、ビクトリア湾、中環(セントラル)や銅鑼湾(コースウェイベイ)などの香港島の町並み、そしてビクトリアピーク…。360度の一大パノラマはここでしか見られないのだろう。二回転ほどして店を出た。

街頭の色々な店

初日の夜の下町の珈琲屋で売っていた焼き菓子($4)はうまかった。街のあちこちにソフトクリーム屋がライトバンの車で出ている。「美しき青きドナウ」のオルゴール音楽を鳴らしているのだが、ソフトクリーム($5)と何の関係があるのだろう? 生クリームぽい味なのだがあまりおいしくなかった。天下のマクドナルドは世界中どの街角にもあるのだろうか。ハンバーガー・ポテト・コーラのセットで$16.9。どのハンバーガーをたのんでも同じ値段だ。ボリュームたっぷりだったが、あまりおいしいとは思わなかった。天星碼頭(スターフェリー)の乗り場のジュース屋のマンゴジュース。水っぽいネクターのような味で、爽やかではなかった。五香粉のにおいの漂う街のそこかしこの屋台にはついに手を出さなかったが、とにかく香港の街は、食べ物でもあふれ返っている。さすがは外食産業の街だ。

これぞ、四川料理の神髄!!

三日目の夜は、本場の中華&「かにのピリ辛」ということになった。ピリ辛料理といえば四川料理ということになる。ここでもガイドブックのお世話になる。ホテルから余り遠くない所で…。京華國際酒店(Metoropole Hotel)2樓、「唐宮」(House of Tang)。ガイドブックによれば、「四川の特級厨師3名による香港で唯一の本格的四川料理が味わえる店。これが本当の四川の味と香り!と、目からウロコがおちるはず…」とあった。ここに決めた。
「唐宮」への道は少し遠い。旺角(モンコク)から東の方向へ、九廣鉄路のガードを越えて15分ほど歩かなければならない。こんな所へは日本人はほとんど来ていない。ホテルもレストランも豪華だがこざっぱりしていた。テーブルの置いてあるメニューは漢字だけのもので、注文をどうしようと戦々恐々としていたら、運ばれてきたメニューには日本語の表記もあった。ラッキーと思った。しかし問題はその後である。中華料理の注文は一皿いくらで注文して、ほしいだけそれぞれが取って食べるという先入観があったが、メニューには「麻婆豆腐 $** (for each person)」と書いてある。一体(for each person)とは何だろう。ウェィターと片言の英語で話してその意味を尋ねるが、結局その意味は解決されないままであった。仕方がないから、「***、four(我々は4人である)」等と注文すると、また怪訝そうな顔をされたので、でたらめに「***、one」と注文していくと何とかオーダーが通った。
我々の注文は次の通りであった。前菜盛り合わせ(中国語の品名など覚えていない)、かにフカヒレスープ、かにのピリ辛、麻婆豆腐(二辛マーク)、海老チリ、肉とピーマンの炒め、それに鰻と野菜の炒め(三辛マーク)、ご飯、杏仁豆腐、以上である。鰻料理は、「せっかく四川料理に来たのだから、一つぐらいは三辛マークもたのんでみよう」というKの発案であった。
前菜は鶏、豚肉、北京ダックのローストにピーナッツ添え。大きな切り身だったが、以外にあっさりしていておいしい。次にかにフカヒレスープ。まろやかで風味があった。本物のフカヒレの味である。それに酸味スープを混ぜると、また違っておいしい。ここまででも私達は中華三昧を感じ始めていて満足していた。その後に鰻が出てきた。
何種類かのスパイスの乗った鰻をそれぞれ皿に取って、口に運んだ瞬間に大事件が発生した。未だかつて経験していない、何という辛さ!! 例えようもないが、一瞬にしてバズーカ砲で全身を打ちのめされたような辛さであった。一同思わずしばし絶句であった。その後にかにのピリ辛が出てきたのだが、しばらくは何の味も感じない。その後、味覚が復帰するのに10分近くかかった。しかし、これがおいしいのである。この辛さが、その後の食欲をそそったことは紛れもない事実である。この時、確かに目からウロコがおちた。日本へ帰って職場近くの中華屋のオヤジにこの話をすると、「それは、きっとうわつき唐芥子だ」と言っていた。
かにはうまみがあって、ほのかにピリッとする。海老チリは大海老の一匹付けでボリュームがあった。麻婆豆腐にはいろんなスパイスが入っていて、日本のそれとはかなり違う。辛いがうまい。しかし鰻を経験した後なので、こんな辛さは目じゃないのだ。どれもが非常においしかった。最後に出てきたご飯は、インディカ米をさらっと炊飯したものだったが、非常にあっさりしていて後口にとてもうまい。これぞ四川、食在香港の実感しきりであった。訳の分からないオーダーをしたので気になる会計は、飲み物込みで4人でしめて$1,900ほどであった。


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