70をすぎた私のオヤジが、ある時「インターネットがしたい。全国の仲間といぃめえるをやりとりするから、何とかしてくれ…」といってきた。私が察するに、この方面にはおよそ不向きな男である。
「ほんまに、本気か…!? それ、正気の沙汰か…!?」と何度も尋ねてみたが、どうも<マジ>なようであった。それならば、そこは何とかせねばなるまい…。しかしマシーン壊さないか、本当に何とかし続けるのか、どうみても、極めて怪しげなのである。それを本人に言うとむくれてしまうから、スローダウンで少しずつ準備をすることにした。成果のほどはともかく、いまだにアクセスしているので、70の手習いにしては上々の結果と呼べるのだろう。オヤジにしては大健闘である。
しかし、なにかというと、「どうしたらいいのだ…」と息子の私に依存する様は、ここまで一筋縄ではなかった。以下のレポートは、私の「オヤジいんたらねっと道」につきあった悪戦苦闘の道程である。
私のオヤジは、私に顔が似ているという。私より面長で、<八文字眉毛>が特徴だと思っている(これは私の父方祖母からの遺伝だ!!)。ならばどんな顔か…。
→ 私の似顔絵をモンタージュ写真風に上記の特徴に従って書き換えたが、全く似ていない。
私は今でも、MS-DOS上でプログラムされたソフトを必要としている。最近はNECも DOS/V 機となり、私は極めて不満なのだが、それも時の趨勢なんだろう。職場の同僚がマシーンをアップグレードした時、旧式のPC9821(アップグレードして、ペンティアムがかろうじて走るマシーンである。ちなみに我が家のはまだ DX2 なのだ!!)をもらった。それを親父に譲ることにした。万一壊れても、まあいいかという思いがあった。それに我が家のバブルジェットプリンターをセットした。
それでも、進呈するからには、パソコンラック、56Kの外付けモデムを組み合わせ、何とかインターネット対応が可能なようにした。ブラウザは、私が愛用している Netscape を使っていただくことにした。大阪のオヤジのアパートに機材を運び、オヤジの部屋に電話線を引く簡易工事も行い、何とかインターネットにつながる環境を設定した。プロバイダーのことは後述するが、憧れのインターネットに接続することができた。
最低限のことを、マニュアルにして渡した。電源の入れ方、インターネットへの接続の仕方、ホームページの見方、メールの送受信の方法、インターネットの切断の仕方、パソコンの電源の切り方…。これだけの内容なのだが、結構懇切丁寧なマニュアルだと自負していた。
ところが、我がオヤジは遙かにその上をいっていたのだ!! 目の前では「***OK…」とわかったようなことを言っており、その場では何とか操作できていたのに、私が帰宅してしばらくすると、「パソコンこわれた…」と電話がかかってくる。「なんか変な英語が出て、見たことのない画面になった…」と言う。「それで、どうしたのだ?」と問うと、「訳わからんから、電源抜いた。すると今度は画面が真っ暗になった…」と言う。
あんぐりである。でも気を取り直して、「元々、インターネットにつないだ時どうしたのだ?」と問うと、「切り方わからんかったから、電源スイッチ押した…」と言う。こちらも少々いらだって、「マニュアル渡してあるやろ!!」というと、当の御仁は、「読んだよ。そのとおりしたけれど、ダメだったんだ」と言っていた。
しかし、後でだんだんわかってきた。この御仁は、マニュアルなど、訳が分からなかったからどうも読んだ気配がない。せっかく頑張って作ったマニュアルなのだが、マニュアル通り行かないのが(マニュアル通りしようとしないのが)世の常なのだ。そしてオヤジも例外ではなかったと考え直すと、私の怒りも少々落ち着いてくる。こと、パソコンに関する限り、とんでもない初心者にも寛容な私なのだが、オヤジに関してだけはどうも情緒的になってしまう。元々、かの御仁は、初めからマニュアルなど読む気がないのだ。でも、オヤジと地頭には勝てない。
トラブルの結論は、次の通りだった。英語のメッセージはエラーメッセージ、変な画面は Windows の safe モード、そして真っ暗になった画面は、まさにクラッシュ寸前だった…。おお、ヤバヤバ…。こんな私の気持ちも知らないのか、我がオヤジは、「まもなく、大切なメールが届くから、どうしたらいいのか…」と私に詰め寄る。「わがままもいい加減にしろ!!」といいたくなるが、これも私の情緒反応なのだ。
修復に困って Windows を再インストールしようかとも考えたが、レジストリーのバックアップをしていることを思い出し、MS-DOS で立ち上げ、レジストリーファイルをコピーすると何とか復帰した。こんな私の苦労を、オヤジに説明しても何も理解できない。これは当然だから、「なおって良かったね」というと、本当に喜んでくれた。これは報われた感じだ。オヤジにしてみれば、原因不明の訳の分からない病気が急に生じ、それが何とか治ったといった感じだったのだろう。
それにしても、パソコンというマシーンはやっかいなものだが、でも、本当に少々のことでは壊れないのだと言うことを改めて知った次第である。ヤレヤレ…(続く)。