ザルツブルグの第9を改竄した

ザルツブルグの第9を改竄した…

〜 禁断の私的ハイテク(?)実験結果 〜

2000.10.15.


まだ出る新譜… でも音質が…

 もうこれ以上、新出のCDは出ないと思いきや、またまた新譜の登場。「もうやめよ…」と思いつつ、やはり手を出してしまうところが、「ファンの業」なのか!? いい加減に「足るを知ろう!!」と思っても、こればかりは死ぬまでやめられないかも知れませんね。

 そんなこんなで、私もザルツブルグフェスティバルのうちから、今般、50年の「エロイカ」と、51年の「第9」にまたまた手を出してしまいました。

 録音の悪さを別にすると、「エロイカ」の演奏はよく、各フレーズの奏で方が丁寧で意味深く、しかもそれらのフレーズの運び方に活気があると感じました。私の好みでは、4楽章が特に良かったと思いました。1楽章は、52年12月8日の曲運びが気に入っていますが、そうでなければ50年6月20日盤よりも、今回のザルツブルグ盤の方がいいかも知れません。50年のザルツブルグでは、フィデリオのLP(ブルーノ・ワルター・ソサエティー盤)が手元にあり、とりわけ序曲第3番はすごい演奏なので、密かに同じ時期のザルツブルグのエロイカはどんなのだろうかと想像していましたから…。

「第9」ともなればファイトがわく…

 さて、もう1枚の第9の方なのですが、グラモフォン・ジャパン・9月号の広告に、「音質良好・完全初出…バイロイトでの録音は録音の制約と寄せ集めのオーケストラが少なからずマイナスでしたから、ウィーンPOとこの”ザルツブルグの第9”は大いに喜ばれることでしょう!…」とのキャッチコピーがありました。ORFEO C 533 001 B これを逃しては…とばかり早速購入したのです。なによりも私の大好きな「第9交響曲」なのですから…。

 しかし、音質はかなり悪く、低音部にピークがあり、かつエコーのかかりすぎたような音でした。木管や高弦の音は、ぐっと後ろに引かれ、靄の中にあるといった音でした。また、特に4楽章では、各楽器やコーラスなどのバランスがかなり悪い録音でした。

 しかし、演奏は「ため」があって、テンポもよく揺れ動き、勢いのあるダイナミックな演奏だと思われました。なによりテンポの遅い1楽章の描き方は、私の気に入るものでした。そしてその演奏は、高名なバイロイト盤よりも、53年ウィーン・54年ルツェルンとのつながりを感じますし、今回のザルツブルグ盤は、それらよりも勢いがある演奏だと思えたのです。ティンパニと低弦が特に生々しく入っているのが今回の録音の特徴でしたし、靄の後ろにあるその他の楽器群も、録音さえよければもっとバランスよく聞こえるはずだろうと想像したのです(オケがウィーンフィルだという思いこみもあって)。これらを何とかできないものかとの思いが次第に高まっていきました。

そして、<禁断の実験>に取り組んだ…

 最近は個人のパソコンの性能も良くなり、私の所にもCD−Rがありますから、<邪道>を承知で、この「ザルツブルグの第9」を使って次のような実験をしてみたのです。

 @ まず全曲をパソコンに取り込む(wave file にする)。
  私の場合は、<ミュージックCDデザイナー2>というソフトを使いました。
 A WINAMPというソフトを使い、トーンコントロールを施して再生する。
  WINAMPは、MP3再生のためのソフトとして有名ですね。これにイコライザーがついているので、これを用いて音質を調整しました。
  「第9」の場合は低音を下げ、中音をかなりあげました。高音はそれなりに落とします。

 具体的には、WINAMP の周波数ごとの特性を次の通りとしました。
  60Hz=-11.1db 170Hz=-7.9db 310Hz=-0.0db 600Hz=+11.1db 1kHz=+18.7db 3kHz=+17.5db
  6kHz=+12.4db 12kHz=+7.9db 14kHz=+7.9db 16kHz=+7.3db
  アンプ全体の音圧= -8.8db

 B パソコンのPCMレコーダーで録音し直す。ソースはWINAMPの再生音そのものです。

 C それを<ミュージックCDデザイナー2で編集し、CD−Rで焼く。

 こんな事をしたのです。当然著作権違反ですから、個人で楽しむ以外に広めることはできません。でも、できあがりは予想以上に良好でした。

できあがったCDの音は、予想以上に良好だった…

 できあがったものは、低弦やティンパニの雰囲気を持ったまま、高弦や木管その他が聞きやすくなったと思います。何よりも曲にメリハリと、すごみのような勢いが出ましたから(ノイズもひずみも強調されますが)、思った以上の結果が出たと思っています。<邪道>と知りつつも、このような楽しみもあるものです。
 娘に聞かせると、「音が明確になった」といってくれました。予想以上の出来に喜び、フルトヴェングラー資料室の shin-p さんにも直接聞いていただきましたら、「音質は確かに かなり良くなっています。少し透明感も感じられるほどです。…個々の音が明瞭に聞けるようになって…」と言っていただきました。
 オリジナルをいじるのは、まさに<邪道>と知りつつも、良い結果の出るものは、やはり良いことなのだというのが結論です。ソースが抜本的に貧弱であるのなら、いくら加工してもダメなのでしょうが、録音特性の問題はあっても、それなりに全領域の音をきちっとひろっているような場合は、上記のような方法でも、何とかなるのではないでしょうか。ファミリーコンピュータでも、本当にいろんな事ができる時代になったのだと思ったりします。

肝心の演奏は…

 バイロイト盤・ザルツブルグ盤・ウィーン盤・ルツェルン盤の各楽章のラップタイムをまず記しておこう。

               バイロイト    ザルツブルグ   ウィーン      ルツェルン
             バイロイト祝祭O   ウィーンPO   ウィーンPO   フィルハーモニアO
              (1951.7.29.)   (1951.8.31.) (1953.5.31.)  (1954.8.22.)
         第1楽章   17'47"       18'29"     18'05"      17'51"
         第2楽章   11'57"       12'29"     12'05"      11'53"
         第3楽章   19'35"       19'07"     19'21"      19'32"
         第4楽章   25'09"       25'48"     25'07"      25'00"
         演奏時間   74'28"       75'53"     74'37"      74'16"

 1楽章は遅いテンポでじっくりと積み上げていくようなやり方です。私の好みでもあり、バイロイト盤よりも、53年ウィーン・54年ルツェルンとのつながりを感じますし、ザルツブルグ盤は、えぐりの強い、勢いがある演奏だと思いました。低音域の生々しい録音だから、オケ全体の響きは、ある意味ではすごみがあるように思いました。この傾向は、1楽章に特に顕著に見られます。バイロイト盤は、低音域がかなり弱く、演奏の揺れは1楽章では予想よりおとなしいと思っていましたから、この1楽章は今までとは違った印象を受けると思います。
 2楽章も全体のつながりは悪くありません。トリオはかなりじっくりと盛り上げられます。
 3楽章は、3度目のアダージョから12/8の、Lo Stesso tempo 以後、ファンファーレまでのテンポ感がバイロイト盤よりも速く、バイロイト盤の持つ<神業的な感じ>は薄いかも知れません。しかし、それはそれでいい解釈だと思います。私自身の好みでは、Lo Stesso の部分は、バイロイト盤よりはこころもち速めが好みですので…。
 4楽章も、レチタティーヴォからバリトンの入りまでは、ティンパニーと低弦の録音が生々しいので、バイロイト盤よりも勢いのある演奏だと思いました。独唱・合唱は、断然バイロイト盤の方がいいですね(録音のせいなのか。コーラスはそうかも知れないが、ソリストはやはりバイロイト盤がよい)。録音のバランスを除くと、オケはこの楽章でも好演していると思われた。

戦後の、ベルリンフィルの第9が聞きたい!!

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