健全なトラック運送事業へ

◆ 軽油価格高騰に対処するためのトラック運送業に対する緊急措置
◆ トラック運送業における燃料サーチャージ緊急ガイドライン
◆ トラック運送業における下請・荷主適正取引推進 ガイドライン
◆ 燃料サーチャージの導入実態に関するアンケート調査分析結果
◆ 原油価格高騰の背景、見通し
◆ 自動車運転者の労働時間等の改善のための基準
安全運行パートナーシップ・ガイドライン

自動車貨物運送事業において安全の確保は最優先の課題です。しかしトラック事業を取り巻く構造は、荷主、元請事業者、下請事業者(実運送事業者)といった重層構造となっており、実運送事業者に安全確保の第一義的責任があるものの、安全確保には、荷主・元請事業者の理解と協力が不可欠です。
このような観点から国土交通省は、荷主・元請事業者と実運送事業者との協働による安全運行の向上に向けて、トラック事業における「安全運行パートナーシップ検討委員会」を数次開催し、荷主・元請事業者と実運送事業者との望ましい協働関係を構築するためのガイドラインを、「安全運行パートナーシップ・ガイドライン」としてまとめ公表したものです。

安全運行パートナーシップ・ガイドライン (平成19年5月) 自動車交通局技術安全部貨物課
 ─ トラック事業における荷主・元請事業者と実運送事業者との協働 による安全運行の向上に向けて ─
目次
序論
安全運行パートナーシップの必要性
安全運行パートナーシップを確立する各主体を取り巻く課題
2−1 急な貨物量の増加に対する課題
2−2 到着時間の遅延に対する課題
2−3 安全運行が確保できない運行依頼に対する課題
2−4 積込み・荷卸し時の諸問題に対する課題
本論
目的等
1−1 ガイドラインの目的
1−2 ガイドラインの適用範囲
荷主・元請事業者と実運送事業者において問題となる具体的な課題への方策
2−1 急な貨物量の増加に対する措置
2−2 到着時間の遅延に対する措置
2−3 安全運行が確保できない運行依頼に対する措置
2−4 積込み、荷卸し時の諸問題に対する措置
2−5 上記のことを効果的に行うための協働的取組とルールの作成
荷主・元請事業者と実運送事業者において課題への対処を効果的に行うための体制整備への方策
3−1 基本方針と目標の共有化
3−2 人材の育成・確保と実施体制の整備
その他留意事項
4−1 実運送事業者の選考にあたっての取組
4−2 安全運行パートナーシップを形骸化させないための取組
4−3 消費者が安全な物流に配慮するための取組
4−4 貨物運送に関係する法令遵守に向けた取組

安全運行パートナーシップ・ガイドライン
序論
1.安全運行パートナーシップの必要性

貨物運送事業の安全対策として、貨物運送事業者は法令に基づき、輸送の安全確保のために必要な運行管理や運輸安全マネジメントを行っている。また、行政においては、スピードリミッター装置等の義務付けや、監査・行政処分等の事後チェック機能の強化等により、自動車運転者の労働時間等の改善のための基準(改善基準告示)をはじめとする安全諸規制の遵守を徹底している。しかしながら、貨物運送事業者の輸送サービスを安価で提供しようとする努力が、ともすると行き過ぎになりがちで、結果的に安全対策が不十分になりやすいという側面がある。
一方、荷主側は、コストダウン、差別化など企業間の競争が激しくなっており、デリバリーのきめ細かさや、在庫をできるだけ持たない傾向にあるため、ジャストインタイムや多頻度少量輸送等の輸送需要と結び付いている。仮に、荷主側の需要予測や在庫管理計画が現実と乖離することとなる場合に、輸送の安全性にしわ寄せがなされないよう事後的に補正される仕組みを取り入れている荷主もあるが、逸失利益等を発生させないようにするため、到着時間に遅れた場合等に貨物運送事業者に対して厳しいペナルティを課している荷主もあり、行き過ぎた事例では、安全性を阻害する要因にもなっている。
このような事態が、第三者を巻き込んだ深刻な事故に結び付いていることを考えると、我々は「安全」という原点に立ち返り、安全を再確認し、安全運行を阻害する様々な「歪み」を見つめ、その対策を真剣に考える必要がある。貨物運送事業者は、安全運行を行う主体的な役割を担うが、荷主は貨物運送事業者に無理な運行を強要しない、さらには安全運行が可能となるよう積極的に協力する社会的責任(CSR)を有するというべきである。したがって、荷主と貨物運送事業者は、安全運行確保という共通認識を持ち、信頼関係を基軸にして互いの実態を理解し、円滑なコミュニケーションを基盤にした協働、すなわち「安全運行パートナーシップ」が必要である。
このような協働が円滑に機能すれば、貨物運送事業者は、適正な労働条件の下で貨物を安全に汚破損なく運送できるという質の高い輸送サービスを荷主に提供でき、企業価値を高めることができるのみならず、事故を起こしてしまうことによる社会的・経済的損失を避けることができる。
また、荷主側も顧客に高品質のサービスを提供するために不可欠となっている「安全かつ確実な輸送形態」を確保することができる。また、コンプライアンスに対する国民の目が大変厳しくなっている中、様々な安全に配慮する荷主として、自らの企業イメージを向上させることも可能となる。
さらに、消費者は事故という形での社会的な「歪み」を減少させながら、「欲しいものを欲しい時に、欲しいだけ」手に入れるというサービスを享受することができる。このような「良い連鎖」を関係者の協力によって、何としても実現させなければならない。 このため、荷主・元請事業者と実運送事業者が協働して取組む具体的な安全対策とその協働体制の確立に関するガイドラインを作成し、その普及を通じて、貨物運送における安全性の一層の向上とより円滑な物流の確保を目指すこととしたい。

2.安全運行パートナーシップを確立する各主体を取り巻く課題
これまで実施した「安全運行パートナーシップ確立に向けた荷主・元請事業者と実運送事業者との協働的取組に関する実態調査」(アンケート調査・インタビュー調査)の結果から、荷主・元請事業者と実運送事業者との安全運行パートナーシップ確立に向けた主な課題は、下記の通りである。
2-1 急な貨物量の増加に対する課題
(1) 荷主側で急に貨物量が増加することにより適正な運行計画が確保できない場合の課題
貨物数量の増加により、出発時間の遅延等により適正な運行計画が確保できないケースでは、実運送事業者は法令に定められた規制速度の遵守、休憩時間の確保等ができず、無理な運行がなされるという問題がある。
克服すべき課題は、出発時間の遅延等が見込まれる場合には、適正な運行計画が確保されるよう到着時間の見直しを行うことである。
(2) 荷主側で急に貨物量が増加することにより過積載運行になる場合の課題
貨物数量の増加がある場合、コスト効率化のため、実運送事業者が貨物車両の積載量を超えて過積載運行を行うケースがあり、具体的な改善を実施する必要がある。克服すべき課題は、急な数量の増加により積載量を超えることが見込まれる場合には、積載量の大きい車両に替える、別車両を準備する等の対処方策を講じることである。
(3) 上記における各主体別の課題
「荷主」においては、急遽貨物量の増加がある場合の具体的な対処について、実運送事業者の裁量により判断・実行しているケースがある。また、荷主・元請事業者は実運送事業者の安全運行の確保に留意せず、結果的に無理な運行を強いているケースがあるため、急な追加発注があった場合には、適正な運行の確保、過積載でないことの確認をするなど、荷主・元請事業者と実運送事業者との信頼を基本にした協力関係を築くことができるかが課題である。
「元請事業者」においては、急遽貨物量の増加がある場合の具体的な対処について、実運送事業者任せになるケースがあり、また無理な運行について、黙認するケースも存在する。そのため、適正な運行の確保、過積載でないことの確認をするなど、元請事業者と実運送事業者との信頼を基本とした協力関係を築くことができるかが課題である。
「実運送事業者」においては、出発時間遅延による適切な到着時間、過積載運行になっているか否かをチェックする手段が充分でないため、チェック手段を充実するとともに、無理な運行がなされる可能性がある場合には、予め決められた相手方に対して、報告・連絡・相談を行うことが課題である。
荷主の行動がトラック事業者の安全を阻害する主なケース
2-2 到着時間の遅延に対する課題
(1) 貨物車両が到着時間に遅延することが見込まれる場合の課題
貨物車両が到着時間に遅延することが見込まれる場合、運転者はスピード違反、休憩を取得しない等の無理な運行がなされることが問題である。こうした場合、運転者は精神的にも余裕がなく、冷静な判断ができず、交通事故惹起につながる場合もある。
克服すべき課題は、貨物車両が到着時間に遅延することが見込まれる場合には、運転者は予め定められた相手方に対して、到着時間への遅延理由、遅延の見込み時間、道路状況等ルール化された事項について報告・連絡・相談をするなど、突発事態への対処にもパートナーシップ・ルール(荷主・元請事業者と実運送事業者が安全運行に向けて協働して取組むための行動ルール)で対応することである。
(2) 貨物車両が到着時間に遅延した場合の荷主・元請事業者の課題
貨物車両が到着時間に遅延した場合、一部の荷主・元請事業者においては、実運送事業者に対してペナルティを与えるケースが存在する。到着時間に遅延した理由を問わずペナルティを与えるケースでは、交通事故発生率が高いことが調査結果から明らかになっている。特に、到着時間を遅延すればその理由・原因を問わず、ペナルティが与えられるケースでは、運転者はスピード違反、休憩時間を取らずに無理な運行を行い、到着時間に間に合わせるという行動を取らざるを得ず、安全運行が阻害される原因となっている。
克服すべき課題は、実運送事業者が到着時間を遅延した場合における荷主・元請事業者の対処として、一律に厳しいペナルティを課すべきではなく、到着時間の遅延原因を分析し、対処については共有化されたルールを策定するとともに、柔軟な体制を整備することである。
(3) 上記における各主体別の課題
「荷主・元請事業者」の共通課題としては、到着時間の遅延に関して、到着時間遅延の原因を外的要因(道路事情、天候等)、内的要因(運転者の健康、車両故障等)から実運送事業者と協働して分析を行うなど、到着時間の遅延に対する対応について、実運送事業者との信頼を基本にした協力関係を築くことである。
また、到着時間の遅延に対しては一律に厳しいペナルティを与えるケースが一部の企業に存在するため、具体的な対応については、実運送事業者等との信頼を基本にした協力関係を確立し、柔軟な対処ができる体制を整備することが課題である。
「実運送事業者」においては、到着時間の遅延に関する原因を報告し、原因分析を行った上で、具体的な改善策を提案することが課題である。安全運行が確保できない諸条件について は、荷主・元請事業者に率直に相談し、改善を促す姿勢が求められる。
2-3 安全運行が確保できない運行依頼に対する課題
荷主・元請事業者から、安全運行が充分に確保できない見込みのある運送依頼があった場合について、実運送事業者等は業務の継続的確保、信頼関係の維持、営業上の理由等から無理に引受けるという問題がある。受注競争が激しい貨物運送業界では、安全運行が確保できない無理な運行が予想されても、受注をする実運送事業者等が存在する。
このケースでは、一部の荷主・元請事業者においては、安全運行が確保されない可能性が高いことを認識しながら、依頼を行うケースもある。克服すべき課題は、荷主・元請事業者は、実運送事業者の安全運行が確保できない可能性が高い場合には、そうした実態を黙認せず、適切な対処を行い、運送依頼を行うことである。
実運送事業者の課題は、適正な運行時間が確保できない場合等、問題状況を率直に荷主・元請事業者に伝達し、対処方策を協働して検討することである。
○上記における各主体別の課題
「荷主」においては
標準運行時間管理表で到着時間を確認するなど、適正な運行計画が確保できるか確認、依頼内容の記録など、荷主と元請事業者・実運送事業者との信頼を基本にした協力関係を築くことができるかが課題である。
「元請事業者」においては
無理な運行依頼を実運送事業者(下請事業者)に依頼するケースが多く、実運送事業者による無理な運行が黙認されるケースも存在する。適正な運行が確保できるかどうか、実運送事業者から確認、依頼内容の記録など、元請事業者と実運送事業者との信頼を基本とした協力関係を築くことができるか課題である。
「実運送事業者」においては
業務の継続的確保、信頼関係の維持、営業上の理由等により引受けるケースがあるが、無理な運行が見込まれる場合には、元請事業者に率直に報告し、善処策について協働して検討することが課題である。
2-4 積込み・荷卸し時の諸問題に対する課題
(1) 積込み、荷卸し時間に対する課題
貨物の積込み作業が予定時間内に完了すれば、予定時間に出発することができ、適正な運行計画が確保されるため問題はないが、実際には貨物の積込みのための待機時間があり、ブースの状況等により待機時間にもばらつきがある。こうした待機時間は、ケースによっては事業者の出発時間を遅延させる原因となっている。
克服すべき課題は、積込み、荷卸し時間が予定以上に時間を要する原因には各社様々な要素があるが、これらの要素により出発時間が遅延し、決められた時間に到着できない場合には、到着時間の再設定、ルート変更等について協働的に対応することがあげられる。また、順番待ちとして手待ち時間が長時間化するケースがあるが、恒常的に発生するケース、突発的に発生するケースに分けて協働的に対応する必要がある。
(2) 敷地外待機に対する課題
実運送事業者が貨物の積込み、荷卸しの際に、指定時間に積込場所・荷卸場所等に到着しても、順番待ちが必要な場合が多く、積込場所・荷卸場所等の敷地外で待機せざるを得ないことがある。貨物の積込み、荷卸にあたっての敷地外待機は、運転者の無駄な手待ち時間の発生、超過勤務等につながるだけでなく、騒音・振動・道路の占有等により近隣住民に対して悪影響を及ぼすことがある。また、運転者の休憩時間の短縮、実運送事業者のコスト増加等の問題があげられる。
克服すべき課題は、貨物の積込み、荷卸しに関わる荷主は、待機時間が短縮される取組を行い、貨物車両が敷地内待機できる措置を講じることである。
(3) 上記における各主体別の課題
「荷主・元請事業者」の共通課題としては、積込み、荷卸しの業務プロセス、敷地外待機の実態の把握、分析を行い、作業時間遅延、手待ち時間の長時間化等について、改善するための対処を行うなど、荷主・元請事業者と実運送事業者との信頼を基本にした協力関係を築くことができるかが課題である。また、積込み作業時間の長時間化により適正な運行が確保できない場合には、到着時間、運行ルートの見直しなど、実運送事業者との信頼を基本とした協力関係を築くことができるかについても課題である。
「実運送事業者」においては、積込み、荷卸し作業の遅延により出発時間が遅れる場合には、予め決められた相手方に報告し、適正な運行計画が確保できるよう指示を受けることが課題である。


本論
1.目的等
1-1 ガイドラインの目的
安全運行パートナーシップ・ガイドラインは、荷主・元請事業者と実運送事業者が協働して取組む具体的な安全確保策と、その協働体制の確立方策を示すことにより、貨物運送における安全性の向上と円滑な物流の確保を図ることを目的とする。
なお、本ガイドラインは、安全運行パートナーシップ確立の優良事例などから、有効な対処策を整理したものであるが、3PL事業者など昨今多様な取引形態などがあることなどから、各社の取引実態に合わせて、適切なルールを策定することが望まれる。
1-2 ガイドラインの適用範囲
本ガイドラインは、荷主(発荷主・着荷主)・元請事業者と実運送事業者の関係や荷主と実運送事業者の関係を対象とする。「元請事業者」とは、物流センター管理・情報処理等を担う事業者、3PLを手がける事業者等も元請事業者として捉えることとする。
なお、本ガイドラインは、継続的取引を対象とするが、スポット的な取引についても、本ガイドラインに準拠した取組がなされることが望まれる。
2.荷主・元請事業者と実運送事業者において問題となる具体的な課題への方策
これまで実施した「安全運行パートナーシップ確立に向けた荷主・元請事業者と実運送事業者との協働的取組に関する実態調査」(アンケート調査・インタビュー調査)の結果から、荷主・元請事業者と実運送事業者の安全運行パートナーシップ確立に向けた取組事項を、下記通り整理した。
表:安全運行パートナーシップ・ガイドラインの項目・内容
項 目 内 容
T.荷主・元請事業者と実運送事業者において問題となる具体的な課題への方策 1.急な貨物量の増加に対する措置
2.到着時間の遅延に対する措置
3.安全運行が確保できない運行依頼に対する措置
4.積込み、荷卸し時の諸問題に対する措置
5.協働的取組とルールの作成等
U.荷主・元請事業者と実運送事業者において課題への対処を効果的に行うための体制整備への方策 1.基本方針と目標の共有化
2.人材の育成・確保と実施体制の整備
V.その他留意事項 1.事業者の選考にあたっての取組
2.安全運行パートナーシップを形骸化させないための取組
3.貨物運送に関係する法令遵守に向けた取組
2-1 急な貨物量の増加に対する措置
(1) 課題
@ 荷主側で急に貨物量が増加することにより適正な運行計画が確保できない場合の課題
荷主側で急遽貨物数量が増加したことによる積込み作業時間の遅れや、積荷が準備されていない等の原因により出発時間が遅延し、適正な運行計画が確保できないケースがある。
上記のケースでは、出発時間の遅延により適正な運行計画が確保できないため、実運送事業者は法定速度の超過、休憩時間の確保等ができず、無理な運行がなされるという問題が起こっている。
そこで、急遽運送すべき貨物量の増加が原因で出発時間が遅延し、適正な運行計画が確保できないと見込まれる場合には、荷主・元請事業者と実運送事業者は到着時間の見直し、運行ルートの見直しを協力して行うことが必要である。
A 荷主側で急に貨物量が増加することにより過積載運行になる場合の課題
荷主側で貨物量の増加がある場合、貨物車両に適した積載量を超えるケースがある。このケースでは、コスト効率化の要請から別車両の準備ができないことが多く、過積載運行になるという問題がある。また、現場では積荷の積載量の正確な測定が容易にできないという問題もある。
そこで、運送すべき貨物量の急な増加が原因で、過積載運行になる見込みの場合には、積載量の大きい車両に替える、別車両を準備する等の対処方策を講じるとともに、現場において重量計測が容易にできるような設備を設けることが必要である。
(2) パートナーシップ確立の狙い
【適正な運行計画の確保】
荷主・元請事業者と実運送事業者は、荷主側で急遽貨物量が増加し、出発時間の遅延等が見込まれる場合には、あらかじめ関係者で取り決められた方法により、到着時間の変更、運行ルートの変更等の措置を講じ、適正な運行計画を確保すること。
【適正な積載量による運行の確保】
荷主・元請事業者と実運送事業者は、荷主側で急遽貨物量が増加し、過積載運行が見込まれる場合には、あらかじめ関係者で取り決められた方法により、積載量の大きい別車両に変更すること、必要台数を準備すること等の措置を講じ、適正な積載量による運行を確保すること。
(3) 各主体による具体的な取組
下記では、発荷主と元請事業者・実運送事業者に運送契約があり、運行の指図に実質的な権限を有するのは発荷主であることを前提にしているが、この点各社の実態及び商慣行において、実質的に運行を左右する決定権のある荷主が発荷主か、着荷主かを区別し、対処ルールを策定する必要がある。
ア 荷主と実運送事業者の場合
@) 発注時の対処方策
数量の増加があり、着荷主が発荷主に対して数量増加の連絡をする場合には、当初予定されていた到着時間に遅延する可能性が高いことを念頭におくこと。
発荷主は、実運送事業者に対して、増加後の貨物量、積込み開始の予定時間、出発地、出発時間、到着地、到着予定時間等について連絡すること。
実運送事業者は、発荷主から提示された条件を踏まえ、適正な運行計画が確保できるか、増加後の貨物量を積載できる車両を準備できるかどうかについて、発荷主に報告すること。なお、実運送事業者は、連絡を受けた出発地、出発時間、到着地、到着時間等を踏まえ、安全運行が確保できる運行経路の検討を行うこと。
実運送事業者は、適正な運行計画が確保できない場合、発荷主に対して到着時間の見直しについて連絡・相談し、増加後の貨物量を積載可能な別車両の準備ができない場合についても連絡・相談すること。
発荷主は、実運送事業者から安全運行確保の有無、車両の準備等が可能かどうか、連絡を受け、安全運行が確保できるかどうかについて確認すること。なお、発荷主は、到着時間の再設定について着荷主と相談すること。
着荷主は、実運送事業者が適正な運行計画を確保できるかどうか、増加した貨物量に即した車両が準備できたかどうか、発荷主から報告を受け、安全運行が確保できるかどうかについて確認すること。なお、着荷主は、発荷主から実運送事業者が適正な運行計画を確保できない旨の連絡を受けた場合には、到着時間の再設定について発荷主と相談し、安全運行が確保できる到着時間に変更すること。
発荷主は、到着時間の変更について着荷主から承諾を得た場合、実運送事業者に対して変更後の到着時間を連絡すること。また、増加した貨物量を積載できる別車両の準備ができない場合には、他の実運送事業者に委託するなど善処策を講じること。
実運送事業者は、発荷主から到着時間の変更について連絡を受けた場合には、当該到着時間を踏まえた運行計画に修正し、運転者に指示すること。
A) 出発時の対処方策
数量増加による積込み時間が予定よりも超過し、出発時において出発予定時間を超過する見込みがある場合、実運送事業者の運転者から運行管理者へ連絡し、到着時間の変更が必要な旨の連絡をすること。実運送事業者は、安全運行が確保できる運行経路の検討を行い、適正な運行計画が確保できない場合には、発荷主に対して出発予定時間、その遅延理由等を報告すること。
実運送事業者は、出発時積載した重量を確認し、過積載になっていないかどうか確認する。過積載になっている場合には、運転者は運行管理者に報告し、発荷主と相談すること。
発荷主は、実運送事業者から出発時間遅延の報告を受けた場合、着荷主に対して出発予定時間とその遅延理由等を連絡し、到着時間の変更、運行経路の変更等について承諾を得ること。
発荷主は、到着時間の変更について、実運送事業者に連絡すること。
実運送事業者の運行管理者は、到着時間の変更、運行経路の変更等を反映した運行計画に修正し、運転者に対して指示すること。
イ 荷主・元請事業者と実運送事業者の場合
@) 発注時の対処方策
数量の増加があり、着荷主が発荷主に対して数量増加の連絡をする場合には、当初予定されていた到着時間に遅延する可能性が高いことを念頭におくこと。
発荷主は、元請事業者に対して、増加後の貨物量、積込み開始の予定時間、出発地、出発時間、到着地、到着予定時間等について連絡すること。
元請事業者は、発荷主から提示された条件を踏まえ、適正な運行計画が確保できるか、増加後の貨物量を積載できる車両を準備できるかどうかについて、確認すること。
実運送事業者は、元請事業者から連絡を受けた出発地、出発時間、到着地、到着時間等を踏まえ、安全運行が確保できる運行経路の検討を行うこと。なお、実運送事業者は、適正な運行計画が確保できない場合、元請事業者に対して到着時間の見直しについて連絡・相談し、増加後の貨物量を積載可能な別車両の準備ができない場合についても連絡・相談すること。
元請事業者は、実運送事業者から上記の確認を取り、発荷主に報告すること。なお、実運送事業者が適正な運行計画が確保できない場合等については発荷主に連絡・相談すること。また、増加した貨物量を積載できる別車両の準備ができない場合には、元請事業者は他の実運送事業者に委託するなど善処策を講じること。
発荷主は、元請事業者から安全運行確保の有無、車両の準備等が可能かどうか、連絡を受け、安全運行が確保できるかどうかについて確認すること。なお、発荷主は、到着時間の再設定について着荷主と相談すること。
着荷主は、実運送事業者が適正な運行計画を確保できるかどうか、増加した貨物量に即した車両が準備できたかどうか、発荷主から報告を受け、安全運行が確保できるかどうかについて確認すること。なお、着荷主は、発荷主から実運送事業者が適正な運行計画を確保できない旨の連絡を受けた場合には、到着時間の再設定について発荷主と相談し、安全運行が確保できる到着時間に変更すること。
発荷主は、到着時間の変更について着荷主から承諾を得た場合、元請事業者に対して変更後の到着時間を連絡すること。
元請事業者は、実運送事業者に対して到着時間の変更について連絡すること。
実運送事業者は、元請事業者から到着時間の変更について連絡を受けた場合には、当該到着時間を踏まえた運行計画に修正し、運転者に指示すること。
A) 出発時の対処方策
数量増加による積込み時間が予定よりも超過し、出発時において出発予定時間を超過する見込みがある場合、実運送事業者の運転者から運行管理者へ連絡し、到着時間の変更が必要な旨の連絡をすること。実運送事業者は、安全運行が確保できる運行経路の検討を行い、適正な運行計画が確保できない場合には、元請事業者に対して出発予定時間、その遅延理由等を報告すること。
実運送事業者は、出発時積載した重量を確認し、過積載になっていないかどうか確認する。過積載が判明した場合には、運転者は運行管理者に報告し、元請事業者と相談すること。
元請事業者は、実運送事業者から出発時間遅延の報告を受けた場合、着荷主に対して出発予定時間とその遅延理由等を連絡し、到着時間の変更、運行経路の変更等について承諾を得ること。
元請事業者は、到着時間の変更について実運送事業者に連絡する。
実運送事業者の運行管理者は、到着時間の変更、運行経路の変更等を反映した運行計画に修正し、運転者に対して指示すること。
(4) 取組にあたっての留意事項
【積込み時間の設定について】
実運送事業者が、貨物を積込みに行っても、積荷が準備されていない場合があり、手待ち時間の発生と出発時間の遅延につながるケースがある。これに対しては、貨物数量の増加があった場合には、積荷を準備する時間を考慮に入れた積込時間を実運送事業者に指示すること。
【使用する貨物車両の変更・手配に要する時間について】
荷主・元請事業者は、別途準備する貨物車両の変更・手配に要する時間について、実運送事業者等から報告を受け、当該変更・手配に要する時間を考慮して、実運送事業者の積込み時間、到着時間の設定を行い、作業の安全性、適正な運行計画の確保に留意すること。
【荷主による対応姿勢について】
荷主(着荷主・発荷主)は、急遽貨物量の増加の依頼を行った場合、積込み作業時間、別車両準備等の時間を考慮し、指定する時間に到着できない可能性があることを理解し、着荷主と発荷主における協力関係を確立しておくこと。また荷主(着荷主・発荷主)は到着時間の見直しに関する相談を積極的に受け入れ、柔軟に対応する姿勢を示すこと。
【荷主から実運送事業者への連絡ルートについて】
荷主から実運送事業者の運転者に対して貨物量の増加について直接連絡された場合には、(実運送事業者の)運転者から運行管理者に対して必ず報告を行い、運行管理者が運転者に対して運行指示、作業指示を改めて行うこと。この点について、実運送事業者においては、運転者の単独の判断で運行してはいけないことについて、運転者に対して指導を行うこと。
【別車両を用意する場合等の運賃負担について】
貨物数量が増加し、別車両の用意、積載量の大きい車両への変更等が必要な場合に、それに伴う運賃の追加負担がなされないことがあり、実運送事業者は別車両を用意すると実質的に赤字運行となることを避けるため、過積載運行を行うケースにつながる。それに対しては、運賃負担する荷主・元請事業者は実運送事業者の実態を理解し、過積載にならないよう運賃の追加負担等について理解を示し、実運送事業者と相談してルール化を行うこと。
【改善基準告示等の遵守】
法定労働時間、拘束時間を考慮し、手待ち時間については、荷主も実態を把握し、実態を改善するとともに、手待ち時間も含め拘束時間の限度内に運行及び付帯作業等が完了するよう配慮すること。この点、改善基準告示等に対する理解を深め、遵守すること。
【無理な運行が見込まれる場合の対応】
安全運行が確保できない運行が見込まれる場合でも、受注競争の激化の中で収益を確保しなければならないことや、安定継続的受注を確保して営業上有利に展開していくために無理な運行と認識した上で受注する実運送事業者が存在する。しかし、実運送事業者が安全運行の確保ができない受注を引受けることは業界の安全秩序を揺るがす行為であり、結果的に法令違反行為につながる問題行動である。安全運行を確保できない運送依頼を引受けて事故惹起した場合には、実運送事業者の社会的信用は崩れ落ちてしまう。それに対して、実運送事業者は安全運行が確保できない運送依頼については「引受けない」という社内ルールを明確化し、対応すること。
(5) 予防的な対処方策
【対処方策のマニュアル化】
荷主・元請事業者と実運送事業者は、荷主・元請事業者と実運送事業者における連絡手順、連絡ルート等についてフローチャート化し、連絡内容、連絡先、具体的な対応策、また追加車両を準備する場合の追加的な運賃負担等についてマニュアルを協力して作成すること。マニュアル作成にあたっては、実運送事業者(特に運転者、運行管理者)の意見を聴取し、協力して取組むこと。なお、通常期と繁忙期に急遽貨物量が増加する件数が変化し、対応策が異なる場合には、通常期と繁忙期に分けてマニュアルを作成すること。
【業務改善の実施】
急遽の貨物量の増加が発生した場合に円滑に対処するために、着荷主と発荷主間、発荷主と元請事業者間、元請事業者と実運送事業者間のそれぞれの受発注プロセス、積荷の準備作業、積込み作業等について、関係者が協力して業務改善を行うこと。
急遽貨物量が増加しても、適正な運行時間が確保されるよう、貨物量増加の受付時間の見直し等の業務改善を行うこと。
【在庫管理に関する検討】
複数の納入先に少量の製品等を納入するケース等、実運送事業者に過剰な負担がかかる無理なジャストインタイムによる受発注形態は、安全運行が充分確保できず、交通事故等を引き起こす遠因となるケースがある。それに対して、荷主における在庫管理についても、実施可能な範囲での在庫保有を検討し、急遽の貨物量の増加等が発生しない仕組みの検討を行うこと。
【標準運行時間表の活用による運行計画の妥当性のチェック】
実運送事業者は、目的地間の運転時間、連続運転時間、拘束時間等について標準運行時間表を活用して、適正な運行計画の妥当性をチェックすること。
2-2 到着時間の遅延に対する措置
1) 貨物車両が到着時間に遅延することが見込まれる場合の措置
(1) 課題
貨物車両が到着時間に遅延することが見込まれる場合、運転者は無理に到着時間を守ろうとするため、スピード違反、休憩を取得しない等の無理な運行がなされ、運転者は精神的にも余裕がなく、冷静な判断ができず、交通事故惹起につながるケースがある。
それに対しては、貨物車両が到着時間に遅延することが見込まれる場合には、荷主・元請事業者は到着時間の再設定、ルート変更等を行う必要がある。
(2) パートナーシップ確立の狙い
【到着時間変更による適正な運行計画への変更】
実運送事業者が到着時間に遅延することが見込まれる場合には、実運送事業者は荷主・元請事業者に対して、到着時間への遅延理由、遅延の見込み時間、道路状況等、ルール化された事項について報告・連絡し、荷主・元請事業者は標準運行管理時間表に基づいた到着時間の再設定、ルート変更等を行い、実運送事業者において安全運行の確保ができるよう荷主・元請事業者と実運送事業者が協力して対処できる体制を整備すること。
(3) 各主体による具体的な取組
荷主と実運送事業者及び荷主・元請事業者と実運送事業者の場合
実運送事業者は、到着時間に遅延することが見込まれる場合に、予め定められた相手方に対して、マニュアル化された手順に従い、連絡・相談すること。
報告を受けた者(予め定められた相手方)は、到着時間、遅延理由、道路交通情報の把握等を確認し、安全運行が確保できる運行経路を踏まえ、到着時間を標準運行時間管理表等により、ドライバーと相談の上、再設定すること。
(4) 予防的な対処方策
【対処方策のマニュアル化】
荷主・元請事業者と実運送事業者は、実運送事業者が到着時間に遅延することが見込まれる場合におけるマニュアルを協力して作成すること。
実運送事業者が連絡する相手方は、着荷主、元請事業者、自社等が想定されるが、各社の実態に即して、マニュアル化すること。ドライバーには、連絡先(電話番号、部署、担当者名)、連絡すべき内容(到着時間、遅延理由、道路状況、事故の有無等)がわかるようカード化するなどして、車両に備え付けること。
深夜の時間帯に運行する場合、突発事態等の発生により、到着時間の遅延が見込まれる場合には、予め定められた相手方に連絡が取れないケースが想定されるため、24時間連絡が取れる体制を整備すること。
【標準運行時間表の活用による運行計画の妥当性のチェック】
到着時間に遅延することが見込まれる場合には、荷主・元請事業者は目的地間の運転時間、連続運転時間、拘束時間等を踏まえ、標準運行時間表を活用して、到着時間を再設定すること。
2) 貨物車両が到着時間に遅延した場合の措置
(1) 課題
貨物車両が到着時間に遅延した場合、一部のペナルティを与える権限を有する者(荷主・元請事業者)は、ペナルティを受ける者(元請事業者・実運送事業者)に対して運賃の減額等のペナルティを与えるケースがある。ペナルティを与える権限を有する者においては、到着時間に遅延することは、製造工程への影響、販売機会の損失等があり、事業展開上のデメリットが大きく、ペナルティを与える合理的な根拠は理解されるべきものである。
しかし、到着時間に遅延した理由を問わずペナルティを与えるケースでは、交通事故発生率が高いことが調査結果から明らかになっている。特に、到着時間の遅延をした場合、その理由・原因を問わず、ペナルティが与えられるケースでは、実運送事業者(ペナルティを受ける者)の運転者は、スピード違反や休憩時間を取らないといった無理な運行を行い、到着時間に間に合わせるという行動を取るケースがある。その場合には、運転者は精神的にも余裕がなくなり、安全に必要な冷静な判断が不十分な状況になり、交通事故惹起につながるケースが多く、安全運行が阻害される原因となっている状況にある。
したがって、実運送事業者(ペナルティを受ける者)が到着時間に遅延した場合におけるペナルティを与える権限を有する者(荷主・元請事業者)の対処方策として、遅延理由を問わず、厳しいペナルティを課すべきではなく、到着時間の遅延原因を分析し、ペナルティの付与についてはルール化をするとともに、柔軟な対応を行うことが必要である。
(2) パートナーシップ確立の狙い
【遅延原因の分析により実運送事業者に責があるか否かの評価】
実運送事業者が到着時間に遅延した場合においては、ペナルティを与える権限を有する者(荷主・元請事業者)は、ペナルティを受ける者(元請事業者・実運送事業者)に対して一律にペナルティを付与せず、遅延理由等を分析し、関係者の信頼関係を確保していくために柔軟な対応を行うこと。
【ペナルティを付与する場合の基準の明確化】
荷主・元請事業者(ペナルティを与える権限を有する者)は、実運送事業者(運転者) の遅延理由の分析結果を踏まえ、どのような場合にペナルティを付与するか、事前に基準を明確化し、実運送事業者の納得感が得られるようなペナルティ付与を行うこと。
(3) 各主体による具体的な取組
荷主と実運送事業者及び荷主・元請事業者と実運送事業者の場合
荷主と実運送事業者、荷主と元請事業者、元請事業者と実運送事業者の間におけるペナルティがあるが、ガイドラインとしての対処方策は同じ内容であるため、ここではペナルティを与える権限を有する者(荷主・元請事業者)とペナルティを受ける者(元請事業者・実運送事業者)に分けて取組事項を示す。
実運送事業者は、到着時間への遅延の実態、遅延理由を、予め定めた相手方に対して報告すること。
ペナルティを与える権限を有する者(荷主・元請事業者)は、実運送事業者が到着時間に遅延した場合においては、ペナルティを与える権限を有する者(荷主・元請事業者)は、ペナルティを受ける者(元請事業者・実運送事業者)に対して一律にペナルティを付与せず、遅延理由を外的要因、内的要因から分析して、実運送事業者の責に帰すべき事由があるか否か評価すること。
ペナルティを与える権限を有する者(荷主・元請事業者)は、遅延理由等の評価の結果、実運送事業者の責に帰すべき事由がない場合には、実運送事業者に対してペナルティを課さないこと。一方、実運送事業者の責に帰すべき事由がある場合には、合理的なペナルティのあり方を実運送事業者の意見を聞いて策定すること。
(4) 予防的な対処方策
【対処方策のマニュアル化】
ペナルティを与える権限を有する者(荷主・元請事業者)は、ペナルティを受ける者(元請事業者・実運送事業者)に対して、どのような基準に合致すれば、ペナルティが付与されることになるか、マニュアル化する。マニュアル化にあたっては、遅延理由の分析方法、ペナルティ付与の具体的な基準、ペナルティの内容について明記すること。
2-3 安全運行が確保できない運行依頼に対する措置
(1) 課題
荷主・元請事業者からの安全運行が充分に確保できない見込みの運送依頼について、業務の継続的確保、信頼関係の維持、営業上の理由等から、実運送事業者が無理に引受けるという問題がある。
受注競争が激しい貨物運送業界では、安全運行が確保できない無理な運行が予想されても、受注する元請事業者・実運送事業者が存在する。一方で、一部の荷主・元請事業者においては、安全運行が確保されない可能性が高いことを予見しながら、依頼を行うケースも存在する。また、発注時には予見していないが、結果的に法令違反となる運行依頼も存在する。
したがって、荷主・元請事業者と実運送事業者は、実運送事業者の安全運行が確保できない可能性が高い場合には、適切な対処を協力して行う必要がある。
(2) パートナーシップ確立の狙い
荷主・元請事業者は、実運送事業者に対して安全運行が確保できない可能性が高い運行依頼は行わない。無理な運行になることが予見される場合には、実運送事業者の意見を受け、到着時間の見直し等を行うなど、荷主・元請事業者は協力して安全運行を確保すること。
(3) 各主体による具体的な取組
下記では発荷主と元請事業者・実運送事業者に運送契約があり、運行の指図に実質的な権限を有するのは発荷主であることを前提にしているが、この点各社の実態及び商慣行において、実質的に運行を左右する決定権のある荷主が発荷主か、着荷主かを区別し、対処ルールを策定する必要がある。
ア 荷主と実運送事業者の場合
実運送事業者は、発荷主から安全運行が確保できない無理な運送依頼を受けた場合、その場で受注の意思表示をせず、実運送事業者は安全運行が確保できるかどうか検討して、早急に返答すること。
実運送事業者は、発荷主に対して、安全運行が確保できないことを連絡すること。
発荷主は、実運送事業者から連絡を受けた場合、着荷主と協力して、到着時間の再設定、経路選択の適正化・効率化を行い、運送指示受けの適正化(配車・車種変更・運行計画作成等)について検討し、実運送事業者に運行依頼をすること。
実運送事業者は、変更された到着時間等を踏まえた運行計画を作成し、運行管理者は運転者に指示すること。
イ 荷主・元請事業者と実運送事業者の場合
実運送事業者は、元請事業者から安全運行が確保できない無理な運送依頼を受けた場合、その場で受注の意思表示をせず、実運送事業者は安全運行が確保できるかどうか検討して、早急に返答すること。
実運送事業者は、元請事業者に対して、安全運行が確保できないことを連絡すること。
元請事業者は、実運送事業者から連絡を受けた場合、到着時間の再設定、経路選択の適正化・効率化を行い、運送指示受けの適正化(配車・車種変更・運行計画作成等)について発荷主と協力して善処策を検討すること。
元請事業者は、安全運行が確保できる条件に調整後、実運送事業者に対して運行依頼をすること。
上記において、発荷主は着荷主に到着時間の変更について相談し、承諾を得ること。
実運送事業者は、元請事業者から連絡を受けた変更後の到着時間等を踏まえた運行計画を作成し、運行管理者は運転者に指示すること。
(4) 予防的な対処方策
【無理な運行が見込まれる場合の対応】
安全運行が確保できない運行が見込まれる場合でも、受注競争の激化の中で収益を確保しなければならないことや安定継続的な受注を確保して営業上有利に展開していくために無理な運行と認識した上で受注する実運送事業者が存在する。しかし、実運送事業者が安全運行の確保ができない受注を引受けることは業界の安全秩序を揺るがす行為であり、結果的に法令違反行為につながる問題行動である。安全運行を確保できない運送依頼を引受けて、事故惹起した場合には実運送事業者の社会的信用は崩れ落ちてしまう。したがって、実運送事業者は安全運行が確保できない運送依頼については「引受けない」という社内ルールを明確化し、対応すること。
【対処方策のマニュアル化】
実運送事業者は、無理な運行依頼があった場合には、荷主・元請事業者から受注しないという対処ルールを規定するなど、対応すること。
2-4 積込み、荷卸し時の諸問題に対する措置
1) 積込み、荷卸し時間に関連する問題に対する措置
(1) 課題
貨物の積込みを予定時間通りに実施し、予定通りに出発することができれば、適正な運行計画が確保されるため問題はないが、実際には貨物の積込みのための待機時間(手待ち時間)があることも多く、またブースの状況等により待機時間にばらつきがある場合も多い。こうした待機時間は、ケースによっては事業者の出発時間を遅延させる原因となる。しかし、出発時間が遅延しても、決められた到着時間が変更されない場合、スピード違反、休憩を取得しない等の無理な運行を行わなければ決められた時間に到着できないという問題が発生する。
このように、積込み、荷卸しに予定以上に時間を要することには各社様々な要因があるが、出発時間が遅延し、決められた時間に到着できない場合には、荷主・元請事業者は到着時間の再設定、ルート変更等による対処が必要になる。
(2) パートナーシップ確立の狙い
【手待ち時間等による出発時間の遅延に対する措置】
荷主・元請事業者の責に帰すべき要因により、貨物の積込みが時間通りに実施されず、予定通りに出発できない場合には、荷主・元請事業者は実運送事業者からの申出に応じ、到着時間の再設定を行い、適正な運行計画を確保すること。
(3) 各主体による具体的な取組
ア 荷主と実運送事業者の場合
手待ち時間の延長等により積込み時間が予定よりも超過し、出発時において出発予定時間を超過する見込みがある場合、実運送事業者の運転者から運行管理者へ連絡し、到着時間の変更が必要な旨の連絡をすること。実運送事業者は、安全運行が確保できる運行経路の検討を行い、適正な運行計画が確保できない場合には、発荷主に対して出発予定時間、その遅延理由等を報告すること。
発荷主は、実運送事業者から出発予定時間、その遅延理由の報告を受けた場合、着荷主に対して出発予定時間とその遅延理由等を連絡し、到着時間の変更、運行経路の変更等について承諾を得ること。
発荷主は、到着時間の変更について、実運送事業者に連絡すること。
実運送事業者の運行管理者は、到着時間の変更、運行経路の変更等を反映した運行計画に修正し、運転者に対して指示すること。
イ 荷主・元請事業者と実運送事業者の場合
手待ち時間の延長等により積込み時間が予定よりも超過し、出発時において出発予定時間を超過する見込みがある場合、実運送事業者の運転者から運行管理者へ連絡し、到着時間の変更が必要な旨の連絡をすること。実運送事業者は、安全運行が確保できる運行経路の検討を行い、適正な運行計画が確保できない場合には、元請事業者に対して出発予定時間、その遅延理由等を報告すること。
元請事業者は、実運送事業者から出発予定時間、その遅延理由の報告を受けた場合、着荷主に対して出発予定時間、その遅延理由等を連絡し、到着時間の変更、運行経路の変更等について承諾を得ること。
元請事業者は、到着時間の変更について実運送事業者に連絡する。
実運送事業者の運行管理者は、到着時間の変更、運行経路の変更等を反映した運行計画に修正し、運転者に対して指示すること。
(4) 予防的な対処方策
【現場の業務改善の実施】
手待ち時間の長時間化が恒常的に発生しているケースでは、荷主・元請事業者は、積載方法の見直し(パレット導入等による定型化)、ブースの見直し、作業マニュアル等現場改善活動を実運送事業者と協力して実施すること。なお、実運送事業者は、積込み・荷卸し時の問題点、改善すべき事項があれば、荷主・元請事業者に対して情報提供を行い、現状の問題・課題について共有化すること。
【繁忙期の対策マニュアルを作成すること】
荷主・元請事業者は、繁忙期等において突発的に手待ち時間が長時間化する場合には、到着時間の再設定、ルート変更等について事業者の意見を聞き、マニュアル化すること。
【運行計画の作成】
実運送事業者は運行計画の作成にあたり手待ち時間、積込み、荷卸し時間等の作業に要する時間も含めて適正に作成すること。
【改善基準告示等の遵守】
法定労働時間、拘束時間を考慮し、手待ち時間については、荷主も実態を把握し、実態を改善するとともに、手待ち時間も含め拘束時間の限度内に運行及び付帯作業等が完了するよう配慮すること。この点、改善基準告示等に対する理解を深め、遵守すること。
【無理な運行が見込まれる場合の対応】
安全運行が確保できない運行が見込まれる場合でも、受注競争の激化の中で収益を確保しなければならないことや安定継続的受注を確保して営業上有利に展開していくために無理な運行と認識した上で受注する実運送事業者が存在する。しかし、実運送事業者が安全運行の確保ができない受注を引受けることは業界の安全秩序を揺るがす行為であり、結果的に法令違反行為につながる問題行動である。安全運行を確保できない運送依頼を引受けて、事故惹起した場合には実運送事業者の社会的信用は崩れ落ちてしまう。したがって、実運送事業者は安全運行が確保できない運送依頼については「引受けない」という社内ルールを明確化し、対応すること。
【運行ルートの変更がなされない実運送事業者の場合の対処】
運行ルートの変更がなされない特積事業者等の場合には、出発時間が遅延した場合には、主に出発時間の変更、ツーマン運行等、事業者が事前にルール化した方法により対処すること。
2) 積込み、荷卸しに関連した敷地外待機に対する措置
(1) 課題
事業者が貨物の積込み、荷卸しの際に、指定時間に積込場所・荷卸場所等に到着しても、順番待ちが必要な場合が多く、積込場所・荷卸場所等の敷地外で待機せざるを得ないことがある。
貨物の積込み、荷卸にあたっての敷地外待機は、運転者の無駄な手待ち時間の発生、超過勤務等につながるだけでなく、騒音・振動・道路の占有等により近隣住民に対して悪影響を及ぼすことがある。
したがって、貨物の積込み、荷卸しに関わる荷主は、待機時間が短縮される取組を行い、貨物車両が敷地内待機できる措置を講じることが必要である。
(2) パートナーシップ確立の狙い
荷主・元請事業者は、待機時間を短縮する等の取組を行い、貨物車両が敷地内待機できる措置を講ずる。実運送事業者の手待ち時間等の実態を把握し、業務分析を実施して、手待ち時間削減に向けた取組みを行うこと。
(3) 各主体による具体的な取組
荷主・元請事業者は、敷地外待機時間を極力短縮するため、実運送事業者から意見を聴取し、手待ち時間、積込み・荷卸し作業等の実態を把握し、実運送事業者からの意見を取入れ、協働的な業務改善を行うこと。
荷主・元請事業者は、到着したトラックの集中を防ぐため、到着時間帯当たりの台数を少なくするよう調整するなど、実態に即してきめ細かなタイムマネジメントを行うこと。
荷主・元請事業者は、積込み作業の円滑化を促進するため、積込み作業の機械化を検討すること。
荷主・元請事業者は、積込作業のブースを増設、敷地の拡張等を行うこと。
2-5 上記のことを効果的に行うための協働的取組とルールの作成
安全運行パートナーシップを確立し、2-1から2-4までに記載された事項を効果的に行うためには、荷主・元請事業者と実運送事業者による下記事項の取組が求められる。なお、下記の取組にあたっては、全部の荷主・元請事業者の各主体が取組むべき内容ではなく、一定規模以上の荷主・元請事業者が中心になり取組むことが望まれる。
 (1) 協働的な安全推進活動の取組
@ 実運送事業者の運行管理状況把握の取組
A ヒューマンエラーによる事故対策に向けた取組
B 事故再発防止に向けた取組
 (2) 安全運行パートナーシップ・ルールの策定の取組
(1) 協働的な安全推進活動
荷主・元請事業者と実運送事業者は、安全運行の確保に向け、協働して安全推進活動に取組むこと。
@ 実運送事業者の運行管理状況の把握への取組
荷主・元請事業者は、実運送事業者の運行管理の状況について、実運送事業者の運行管理者、運転者から聞き取り等により運行実態を把握すること。また、1次下請事業者だけでなく、1次下請事業者の2次以降の下請事業者の安全運行の実施状況についても、できるだけ運行実態を把握し、必要に応じて1次下請事業者を通じて改善指導を行うこと。なお、運行実態の把握は必ずしもリアルタイムで行う必要はない。
実運行事業者は、チャート紙・日報等の運行管理に関する資料、1次下請事業者の場合には2次以降の下請事業者の運行実態について、荷主・元請事業者の求めに応じて情報提供に協力すること。
A ヒューマンエラーによる事故対策に向けた取組
荷主・元請事業者と実運送事業者は、ヒューマンエラーに起因した交通事故、交通違反等の低減対策を講じるなど、協働的な取組体制を整備すること。
荷主・元請事業者は、実運送事業者が下記事項についての実施状況を確認し、必要な改善指導を行うこと。
運転状況、作業状況について、日々確認、指導がなされているか
健康面も含めた就労前確認が実施されているか
始業前・終業時における法定点検事項が実施されているか
作業経験によるヒヤリ・ハット等の事例が各運転者に水平展開されているか
違反者、事故惹起者に対して個別の充実した指導が実施されているか
B 事故再発防止に向けた取組
荷主・元請事業者と実運送事業者は、交通事故等の原因分析と対応策・ヒヤリハット等の共有化を行い、事故の再発防止に向けた取組、及び他責事故(もらい事故)を未然に防止するための取組について協力して行うこと。
荷主・元請事業者は、もらい事故を未然に防ぐために、実運送事業者が具体的に取組んでいる事項について確認し、適切な指導を行うこと。
(2) 安全運行パートナーシップ・ルールの策定
荷主・元請事業者と実運送事業者は、安全運行パートナーシップ・ルールの策定にあたり、現場の意見を充分に聴取して、協力して作成すること。特に、現場業務に合わせたルール策定を基本とし、各種改善課題についても具体的な改善方策を取入れてルール化を行うこと。
荷主に対して、貨物運送事業者から物流業務の効率化、質の向上に向けた改善提案を行うこと。
元請事業者は、実運送事業者に委託する場合、荷主と元請事業者で策定した安全運行パートナーシップ・ルールに即して、元請事業者と実運送事業者との間で安全運行パートナーシップ・ルールを策定すること。なお、元請事業者は、実運送事業者との安全運行パートナーシップ・ルールを荷主に提出し、荷主はその内容の妥当性を確認し、必要に応じて改善指導を行うこと。
安全運行パートナーシップ・ルールの記載事項は下記の事項を参考に作成すること。
安全運行パートナーシップ確立に向けた方針と目標
実施体制(組織、人材、安全教育、連絡体制等)
個別課題に対する業務マニュアル(主体別に取組む事項を具体的に記載すること)
なお、安全運行パートナーシップ・ルールは、現場の業務プロセスの変化、改善状況等、必要に応じて改訂すること。
3.荷主・元請事業者と実運送事業者において課題への対処を効果的に行うための体制整備への方策
荷主・元請事業者と実運送事業者において安全運行パートナーシップを確立し、2-2で整理した「荷主・元請事業者と実運送事業者において問題となる具体的な課題への方策」を継続的に行うためには、関係者の協働的な行為が円滑に実施できる仕組みが必要である。
実際に、荷主・元請事業者と実運送事業者における立場の違い、事業リスク特性の相違があるため、個別課題への対処では根本的な解決にならない。したがって、関係者の継続した協働的な取組には、「人と組織」というアプローチからの仕組み作りが必要となる。特に、これまで長い時間をかけて形成されてきた商慣行、各種取引ルールを見直し、安全運行確保という共通の目標、目的を達成するには、荷主・元請事業者と実運送事業者における人と組織の視点から実施体制を整備(組織基盤を整備)する必要がある。荷主・元請事業者と実運送事業者が円滑にコミュニケーションし、共通の目標に取組む基盤づくりが望まれる。
3-1 基本方針と目標の共有化
(1) 安全運行パートナーシップ方針と目標の立案
@ 方針と目標の立案
安全運行パートナーシップの確立に向けて、荷主・元請事業者と実運送事業者は、安全運行を実現するための基本方針、目標について、関係者が協議して立案すること。策定にあたっては、実運送事業者の意見を充分に聴取し、運行実態、ニーズ等を反映した実効性の高い方針と目標とすること。
A 方針と目標の立案にあたっての留意点
安全運行パートナーシップの具体的な方針と目標の立案にあたっては、経営トップが関与すべき事項であるため、荷主・元請事業者と実運送事業者の経営トップ同士が検討の上、共有化する必要がある。経営トップ不在で策定された方針、目標は形骸化するケースが多いため、経営トップが関与すること。
支店、支社等がある場合には、会社全体の方針、目標を踏まえ、支店、支社の実態に即した方針と目標を立案すること。
(2) 基本方針及び目標の共有化
@ 共有化の方策
安全運行パートナーシップの確立に向けて、荷主・元請事業者と実運送事業者は、基本方針及び目標を明文化し共有化すること。
荷主では物流部門、営業部門のスタッフ、実運送事業者では、管理者、運行管理者、運転者等のスタッフが理解し、共有化すること。
A 共有化の留意点
基本方針及び目標を共有化するための具体的な手段として、荷主・元請事業者と実運送事業者が定期的に研修会、勉強会、コンクール、各種会議、朝礼等を開催し、経営トップから運転者まで安全運行パートナーシップの意義と取組を浸透させること。
3-2 人材の育成・確保と実施体制の整備
(1) 経営トップ、事業所長等のリーダーシップ
@ リーダーシップについて
安全運行パートナーシップの確立にあたって、荷主・元請事業者と実運送事業者の経営トップ及び事業所長はリーダーシップを発揮し、体制整備、具体的な施策の展開を行うこと。
A 経営トップによる安全運行パートナーシップへの理解と取組
パートナーシップの確立にあたっては、荷主・元請事業者と実運送事業者の経営トップがパートナーシップ確立の意義に関する深い理解を踏まえ、継続的な取組を行うこと。
(2) 安全運行パートナーシップを推進するための人材の配置と人材育成
@ 安全運行パートナーシップ確立のための人材配置
荷主・元請事業者と実運送事業者は、パートナーシップを確立するための体制整備に向け、各社にパートナーシップ確立とその運用を担う責任者、担当者等の配置を行うこと。
A 安全運行パートナーシップ確立を担う人材育成
荷主・元請事業者と実運送事業者は、安全運行パートナーシップを確立するための体制整備に向け、各社の担当責任者及び担当者等の人材育成を行うこと。
荷主・元請事業者は、実運送事業者の安全運行確保に向けた取組を確実にするために、担当者に対して貨物運送に関連する法令、改善基準告示、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下、「独占禁止法」という」)、下請代金支払遅延等防止法(以下「下請法」という)等の理解を深め、積込み・荷卸し作業の現場の業務改善ができるスキルの育成のための研修等を行うこと。
元請事業者は、2次、3次以降の下請事業者(実運送事業者)についても、安全運行の方針が徹底されるよう、実運送事業者の人材育成を行うこと。
(3) 取組内容の社内浸透と社員の意識改革
荷主・元請事業者と実運送事業者は、安全運行パートナーシップの基本方針、目標、取組内容等について、関連部署を中心に社内へ浸透させること。
荷主・元請事業者と実運送事業者は、安全運行パートナーシップの実効性のある取組に向けて、物流業務に関与する社員を対象に、方針、目標を伝達し、継続的な意識改革を促すこと。
(4) 情報伝達、コミュニケーション、相談等のための組織基盤の整備
荷主・元請事業者と実運送事業者は、運行情報の伝達、コミュニケーション、相談等が円滑にできる組織基盤の整備、担当部署・連絡・報告プロセス、チェックシステム等の体制整備を行うこと。
荷主・元請事業者と実運送事業者は、安全運行に向けた情報共有化等を目的に、連絡会議、研修会、勉強会等の開催を協力して行うこと。
荷主・元請事業者は、実運送事業者が安全運行に関して相談、コミュニケーションが気軽にできるようなオープンな態度で接し、実運送事業者からの率直な意見を集約し、安全運行に向けた対処策を策定すること。
(5) PDCAサイクルによる進捗管理
荷主・元請事業者と実運送事業者は、協働して立案した目標等について、1年に1回以上、客観的な評価基準に基づき評価を行い、次年度に向けた課題の検討と具体的な対処方策について検討すること。その際、計画(Plan)→実行(Do)→ 評価(Check)→ 改善策(Action)のPDCAサイクルを活用すること。
荷主・元請事業者は、PDCAサイクルによる進捗管理を主体的に実施し、実運送事業者から事故件数、汚損・破損件数、違反件数等の設定された目標値について、情報提供を受け、目標の評価を行うこと。
実運送事業者は、目標値として設定されている事項、荷主・元請事業者が評価項目として設定している事項に関して情報提供を行うこと。評価結果について疑義がある場合には、荷主・元請事業者と相談すること。
4.その他留意事項
荷主・元請事業者と実運送事業者が安全運行パートナーシップを確立するために、その他留意事項は下記の通りである。
4-1 実運送事業者の選考にあたっての取組
実運送事業者は、荷主・元請事業者との取引関係を維持するために、安全運行が確保できない運送を引受けるケースがある。
荷主・元請事業者にとっては、指示通りに運行する実運送事業者が望ましいため、無理な運送依頼にも柔軟に対処可能な実運送事業者を選定するケースも存在する。しかし、荷主がこのような基準で実運送事業者の選定を行えば、実運送事業者の交通事故は減少しないため、荷主・元請事業者は、実運送事業者の選定に際して客観的な評価基準を採用し、安全運行を確保する実運送事業者を選定することが望まれる。
(1) 実運送事業者の選考基準
荷主・元請事業者は、新規に実運送事業者を選定する場合、下記(例示)のような選考基準を用いること。特に、実運送事業者が安全性優良事業所(Gマーク)等の認証を有していることを重視し、実運送事業者の選考基準については、ルール化して明文化すること。
■実運送事業者の選考基準(例示)
@
A

B
C
安全性優良事業所(Gマーク)等の認証を取得していること
自社(荷主・元請事業者)の経営方針と実運送事業者の方針が合致することを原則とし、継続的に安定的な取引が可能なこと
自社の要求に適合する乗務員及び車両が確保できること
自社の要求する輸送品質を確保できること

安全性優良事業所(Gマーク)等の認証を取得していない実運送事業者は、安全性優良事業所の認証を取得するよう努力すること。
(2) 既存取引先である実運送事業者の評価
荷主・元請事業者は、既存取引先である実運送事業者を再評価し、発注シェア等を調整する場合には、実運送事業者の法令遵守状況、安全性優良事業所(Gマーク)等の認証取得の有無、事故発生件数、汚損・破損等の発生件数、輸送品質の評価結果等について評価基準を設定し、再評価すること。再評価基準、再評価方法、再評価結果の発注シェア調整等への反映については、事前にルール化し、実運送事業者と共有化すること。
■ 実運送事業者の評価基準(例示)
○輸送品質等に関する評価
@ 実運送事業者の輸送品質(総合評価)
自社が期待する品質基準と比較して評価すること
A 人材・車両等の機動力
自社の要求に適合する乗務員及び車両の確保の有無により評価すること
B 必要な資格者の設置
円滑な業務遂行に必要な資格保有者の有無により評価すること
C クレーム等への処置評価
クレーム報告、必要な再発防止対策、必要な予防措置等が確実に実施されたかにより評価すること
D 実運送事業者の信用度
実運送事業者の経営・財務内容等を踏まえた信用度により評価すること
○安全運行への取組状況の評価
@ 実運送事業者の安全認証の有無
安全性優良事業所(Gマーク)等の認証取得の有無により評価すること
A 交通事故等の件数
交通事故件数、汚損・破損等の件数により評価すること
B 法令遵守状況の評価(交通違反等の件数)
交通違反等件数について報告をさせ、法令遵守状況により評価すること
C 安全管理への取組
実運送事業者における運行管理者、運転者等に対する安全教育及び安全管理の徹底がなされているかにより評価すること
D 2次下請(孫請)事業者における安全管理の取組
荷主・元請事業者は、1次下請事業者について2次以降の下請事業者の安全運行管理まで踏み込んで取組をしているかどうか評価すること
(3) 安全性優良事業所(Gマーク)認証取得の促進
荷主・元請事業者は、1次取引の既存取引先の実運送事業者だけでなく、2次以降の下請事業者(いずれも実運送事業者)に対しても、安全性優良事業所(Gマーク)の認証取得を促進すること。
4-2 安全運行パートナーシップを形骸化させないための取組
荷主・元請事業者と実運送事業者において安全運行パートナーシップが確立されても、一定期間を経ると形骸化する懸念がある。安全運行パートナーシップへの取組が形骸化し、実体を伴わないものになれば、安全運行確保について充分な成果が期待できない。そこで、安全運行パートナーシップを形骸化させないための下記のような取組を継続的に行う必要がある。
そのため、安全運行パートナーシップを形骸化させない取組については、荷主・元請事業者と実運送事業者が協働して行うが、荷主・元請事業者の規模が大きい場合には、荷主・元請事業者が中心となり、安全運行確保に向けた取組を行うことが望まれる。

■安全運行パートナーシップを形骸化させないための取組例
安全運行に向けた荷主・元請事業者と実運送事業者の協働による開催イベント(安全大会等)を実施すること(1年間に1回〜4回程度)
荷主・元請事業者と実運送事業者の「経営トップ」が社内、または関係部署に浸透するまで継続的に働きかけをすること
優良な実運送事業者に対する表彰を行うこと
交通事故等の分析について、荷主・元請事業者と実運送事業者が協働的に取組み、原因と対処策について共有化すること
荷主・元請事業者と実運送事業者が協働して開催する研修、勉強会等において、安全運行、輸送品質向上に向けた現状の問題点を共有化し、現場の運転者まで徹底すること
一時的な取組に終わらせないために、荷主・元請事業者と実運送事業者が共有化した達成目標と達成状況を整理した用紙を社内に貼り出し、意識付けを行うこと
荷主・元請事業者と実運送事業者が協働して行う安全運行パートナーシップについて、特に重要な取組事項をカード化するなどして、関係者は日常的に携帯すること
安全運行パートナーシップの取組状況、課題等について共有化するために、荷主・元請事業者と実運送事業者による定期的な連絡会議を開催すること
4-3 消費者が安全な物流に配慮するための取組
安全運行パートナーシップがより実効性を発揮するためには、最終的に消費者がより身近な交通の安全に関心を持ち、製品を提供している企業がより安全な物流を遂行しているかという視点で企業や製品を選択するようになることが重要である。このような消費者の行動の変化により、企業は現在の環境問題への対応と同じく、企業の社会的責任の重要な構成要素であることを認識して、安全運行パートナーシップの取組を積極的に消費者や社会に向けて知らしめて、社会的評価を高めるようになると考えられる。
このため、消費者が安全の輸送に支えられた製品、安全な物流を支えようとする企業を選択するようになるための取組が必要である。なお、上記の取組を効果的に行うためには、消費者が安全運行パートナーシップを確立している荷主の製品であることを容易に判別できる仕組(何らかのシールの貼付等)を構築することが考えられる。
4-4 貨物運送に関係する法令遵守に向けた取組
安全運行パートナーシップを確立するにあたり、荷主・元請事業者と実運送事業者は貨物運送に関係する法令を深く理解し、遵守できているか確認し、問題があれば善処策を講じること。
貨物運送事業法に基づくに安全規制、独占禁止法、下請法等について、理解を深め遵守すること。
(1) 貨物運送事業法に基づく安全規制に向けた取組
運輸安全マネジメントの導入にあたり、安全規制の見直し、監査の強化等がなされているおり、貨物運送事業者は法令への理解を深め、法令遵守の徹底を図ること。
(2) 荷主による優越的地位の濫用防止に向けた取組(独禁法特殊指定)
独占禁止法第二条第九項の規定に基づき、「特定荷主が物品の運送又は保管を委託する場合の特定の不公正な取引方法」が指定され、特定荷主が取引上優越的な地位を利用して特定物流事業者に対して不当な不利益を押し付けるような行為を「不公正な取引方法」として禁止している。
したがって、荷主としての法令遵守(コンプライアンス)を徹底するために、「不公正な取引方法」がないかどうか、現場の運用状況を詳細に確認し、法令遵守体制を強化すること。
(3) 元請事業者による優越的地位の濫用防止に向けた取組(下請法)
下請法において、貨物運送事業における親事業者は下請事業者に対して運送・保管業務を委託するにあたっては、親事業者(元請事業者)と下請事業者(貨物運送事業者)の取引関係における義務と禁止事項が定められている。したがって、法定抵触する事項がないかどうか、現場における運用状況を詳細に確認し、法令遵守体制を強化すること。

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