交通労働災害ゼロへの道

自動車運送事業では、輸送の安全の確保が事業経営の根幹です。そのさい重要なキーワードは、経営トップの安全確保の意志と行動です。労働災害は「人」と「物」とのかかわりから発生します。「人」の不安全行動と「物」の不安全状態を無くすることが”交通労働災害ゼロへの道”です。
ここでは、安全対策に取り組む上で参考になる資料を紹介します。
トラックの過労運転による事故を防止するための安全対策の提言 国土交通省
交通労働災害防止のためのガイドライン 厚生労働省
人はどんなミスをして交通事故を起こすのか ITARDA
トラックドライバーのための安全運転の基礎知識 全日本トラック協会
SASを正しく理解し、早期治療で安全運転を 全日本トラック協会
事業用自動車総合安全プラン2009 国土交通省
事故事例集(トラックの事故) 国土交通省
社会的影響の大きい重大事故の要因分析 国土交通省
交通事故加害者の手記「贖いの日々」 東京安全協会発行誌より
事業用自動車の運転者の健康管理に係るマニュアル 国土交通省
陸上貨物運送事業労働災害防止規程 陸上貨物運送事業労働災害防止協会
トラック輸送の過労運転防止対策マニュアル 国土交通省

【トラック輸送の過労運転防止対策マニュアル】 平成20年7月:国土交通省
 目 次 
過労運転による事故の危険性について
@ 事業者が一丸となって、トップから過労運転を防ぎましょう
A 過労のメカニズムを理解し、睡眠を改善しましょう
B 点呼を活かして過労運転を防止しましょう
C 余裕のある運行計画を作成し、その後も運行支援をすすめましょう
D 健康管理を日常化しましょう
E 運転者が相談しやすい職場環境をつくりましょう
F 荷主・元請事業者に理解してもらいましょう
G 最新技術を駆使して、安全対策に取組みましょう
H 積極的に休憩施設を利用しましょう
参考:グッドプラクティスの事例(事故防止対策の好事例)

過労運転による事故の危険性について
車の運転は、連続して一瞬たりとも手休めあるいは息抜きをすることが許されないものであり、精神的な負担が大きいことから、疲労を生みやすく、また蓄積されやすいものです。
トラック運送事業においては、運転者の深夜・早朝を含む長時間の労働の結果、慢性的な休養不足により疲労が蓄積しやすく、運転者に過労状態が生じやすい傾向があります。また、長距離運行の際の車中泊等、睡眠環境の悪さなどが疲労回復を妨げ、過労運転の要因となっています。さらに、積荷の積み降ろしや運行中の積荷への配慮、荷主への対応なども運転者に対する負担となっています。
こうしたことから生じる過労状態による一瞬の気の緩みが、トラック運行では大事故を引き起こします。
◇睡眠5時間未満の運転者は、「ヒヤリハット体験」が2.3倍!
厚生労働省で行った調査によると(トラック運転者3,010人に調査、813人が回答)、睡眠時間5時間未満の運転者を1とすると、5時間以上の運転者は、居眠り運転をした人が0.3、ヒヤリハット体験をした人が0.43にとどまっています。長時間労働が原因で事故を引き起こす例が後を絶たない現状を裏付けています。
居眠り運転の要因は「睡眠不足」 「不規則な生活」
ドライバーの65%が運転中に眠気により危険を感じたことがあり、この65%のドライバーのうち68%は、実際に居眠り運転の経験があると回答しています。その原因として、「睡眠不足」、「不規則な生活」を挙げています。
■トラックドライバーの運転実態調査結果
大型トラックの事故の半分が追突事故
大型トラックの事故の約55%は追突事故であり、これによる死亡事故率は、乗用車に比べて 約12倍高いという事故分析結果があります。
過労運転による事故を防止するための措置をおろそかにしたまま事故を起こすと、賠償金の支払いや翌年度の損害保険料の上昇などの民事責任、業務上過失致死傷罪などの刑事責任、事業停止等の行政処分による行政責任、さらに会社のイメージダウンによる取引先との関係悪化、売上減少など、事業を運営する上で様々な悪影響が出るばかりでなく、社会的責任の観点からも大きなダメージを受けます。
本マニュアルでは、こうしたトラックの過労運転による事故を減らすための実効性のある対策を具体的に取り上げています。

@ 事業者が一丸となって、トップから過労運転を防ぎましょう
危険予知訓練やグループ討議など、教育内容を工夫して、運転者に安全に対する認識を徹底させることが大切です。
●「運輸安全マネジメント」の推進
事業者は、経営トップから現場の運転者に至るまで、輸送の「安全」が最も重要であることを自覚し、「運輸安全マネジメント」により絶えず輸送の安全性の向上に努めなければなりません。このため、過労運転防止を安全方針等に掲げて具体的な数値目標を設定し、PDCAサイクルに基づき取り組んでいくことが望まれます。
「運輸安全マネジメント」について
平成18年10月から、運輸安全マネジメントの導入に伴う貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律が施行されました。
「輸送の安全性を確保すること」は、もとより運送事業者の当然の責務ですが、今回の改正法の施行により、事業経営者の安全確保義務が明確にされました。
すべての運送事業者は、経営トップから現場の運転者に至るまで輸送の安全が最も重要であることを自覚し、運輸安全マネジメントにより絶えず輸送の安全性の向上に努めなければなりません。
なお、「運輸安全マネジメント」については、国土交通省のホームページに掲載されています。

(http://www.mlit.go.jp/jidosha/anzen/03management/index.html)

A 過労のメカニズムを理解し、睡眠を改善しましょう
過労のもととなる要因、過労のあらわれ方など、過労のメカニズムを正しく理解し、過労とならないための運行方法、睡眠のとり方などを実践していくことが必要です。
●過労のもととなる要因
過労のもととなる要因は、運転者の日常生活から運転環境に至るまで広い範囲に及んでおり、運転者は、自らの健康状態を正しく認識し、疲労を蓄積しないよう心がけるとともに、運行管理者は、過労の本質をよく理解し、安全な運行を行えるよう配慮することが必要です。
●過労のつくられるメカニズム
トラック運転においては、疲労の蓄積される勤務状況、睡眠の不足などに加えて、心理的なストレス、生活習慣の悪さなどがともなうことによって、過労状態がつくられます。
勤務状況 恒常的な残業、長時間(長距離)の乗務、頻繁な深夜勤務、昼夜逆転型の生活、休息期間・休憩時間不足等により疲労が蓄積されます。
睡眠(休息)の状況 睡眠不足や、座席での仮眠等による睡眠の質の低下(眠りが浅い等)が常態化した状況での勤務は、ねむけ、だるさを感じやすくなり運転に集中できません。勤務状況や心理的なストレスなどに要因がある人ほど睡眠不足になりやすい傾向にあります。
心理的ストレス 道路混雑等からくる不快感によるストレスや着時間を守るために無理な運行をする等緊張状態が続くようなストレスがあると、疲労は蓄積されます。私生活において問題を抱えている人は、さらにストレスが蓄積される悪循環が生じます。
生活習慣の悪化 偏食や不規則な食事、過度な飲酒等の生活習慣の偏りや運動不足などは、疲労の溜まりやすい健康状態となります。
●過労のあらわれ方
過労の兆候は、@注意力の低下 A疲労感の増大 B眠気 が3大症状と言われており、安全運転を損なうので運行管理上、最も注意しなければならない要素です。過労の兆候を敏感に捉え、危険を感じる場合には無理せず運転を一時中断するなど、疲労を回復することに努めましょう。

具体的な兆候
○運転時に現れる過労の具体的兆候 ○身体的に現れる過労の具体的兆候
・あくびがでる
・1回あたりのまばたきが長くなる
・目をしょぼしょぼさせ、こする
・車のスピードが遅くなったり早くなったりする
・車が蛇行するようになる   など
・目が疲れる、痛くなる
・まぶたがピクピクする
・体や足がだるくなる
・腰が痛くなる
・肩や首筋がこる
・腕や手首が痛くなる      など
■参考図書:(独)自動車事故対策機構「運行管理者特別講習用テキスト」
●疲労を蓄積しない睡眠のとり方
6〜7時間の連続した睡眠、とりわけ夜間の睡眠が疲労を回復させ、過労防止に有効です。
20分程度の仮眠は眠気をとるのに効果的ですが、主睡眠が一定の時間確保されていることが望まれます。
運転席に座っている状態での仮眠では、疲労回復の効果はあまり期待できません。このような仮眠はできるだけ控えましょう。
熟睡の手引き 〜ぐっすり眠って疲労回復!
@ 空腹の状態では、神経が高ぶってよく眠れないため、夜食は軽く、睡眠の2時間くらい前までにとり、排尿後に就寝します。朝食は心と体のめざめに重要です。
A 定期的に体を動かすなど、昼間のほどよい疲れが入眠の誘いとなります。ぬるめの入浴もまた入眠へ導きます。
B 不快な音や光を防ぐ環境作りに配慮しましょう。また、自分に合った寝具を工夫しましょう。やや固めの敷布団を使い、枕の高さや硬さに注意します。
C 1日の生活リズムと入眠時刻を規則的に設定しましょう。
D 睡眠薬代わりの寝酒や深酒は、睡眠の質を低下させますので注意しましょう。

B 点呼を活かして過労運転を防止しましょう
●点呼のポイント
点呼では、顔つきなどの変化をよく観察することにより、運転者の前日の状況や疲労・健康状態などについて細かくチェックすることが大切です。
基本的に対面点呼により、運転者の顔つき、態度、言葉遣いの変化などを観察し、変化が見られた場合、背景にどのような要因があるのかをつきとめ、対応策を講じていくことが必要です。
点呼時の質問は、毎回異なる質問をする、質問を長くするなどの工夫が必要です。運転 者の反応がいつもより遅くないかなど、詳細な観察を行います。
直前の睡眠時間、疾病の有無(持病のある場合においては現在の状態と通院の確認等)など、 運転者の身体的な健康状態を把握するととも に、精神的な面においても悩みがないかなど も把握することが必要です。
長期の運行計画など、対面点呼ができない場合においても、テレビ電話など画像データを活用するなどして疲労状態を確認するよう工夫することが望まれます。
【点呼の確認ポイント】



点呼
運転者の健康状態、疲労の度合、飲酒の有無、薬の服用状況、異常な感情の高ぶり、睡眠不足などについて確認します。
運転者の歩き方、服装、顔色、口臭、目の動きなどをよく観察し、異常が感じられれば質問する。前日の状態と比較し、また質問に対する反応時間などを見る。




その日の運行で、疲れが溜まっていないかを確認します。
翌日の運行に役立てるため、業務に応じた確認事項に加えて、休日・休暇等のアドバイスを行います。
ヒヤリハット経験がなかったかを確認します。
乗務後点呼では、「お疲れ様」という心からのねぎらいが、運転者の励みや疲労解消になる。
●運転者と運行管理者の日ごろからのコミュニケーションの充実
運転者の変化に気付くためにも、日ごろから運転者と運行管理者の間のコミュニケーションをよくしておくことが必要です。
運転者が疲労(眠気)や健康に関連した危険を感じたときに、「安全を優先」した発言のできる職場環境を構築しておくことが必要です。
運転者が過労、身体の異常などを電話などで運行管理者に伝えやすい環境をつくることが必要です。
比較的時間の余裕のある乗務後の点呼は個室で着席により行い、運転者と運行管理者のコミュニケーションを図るなどの工夫も必要です。

C 余裕のある運行計画を作成し、その後も運行支援をすすめましょう
●運行計画の作成及び実施のポイント
改善基準告示を遵守するとともに、運転者が疲れを感じたときには、臨時に休憩がとれる余裕を見込んだ運行計画を作成しましょう。
運行計画を作成し、実施する際は、改善基準告示を遵守することが必要です。これに違反した場合は行政処分の対象となります。
道路事情による速度低下、交通規制による運転時間の延長、予定外の手待ち時間の発生などを見込んだ余裕ある運行計画を作成することが必要です。余裕のない無理な運行計画は、運転者の休憩・睡眠時間にしわ寄せが生じ、睡眠の分割、まとまった休憩時間がなく次の輸送に移るなどの事態を招きます。
労働時間、休息期間、休憩時間等に配慮し、運転者の増員、交替要員の確保などにも併せて努めていくことが必要です。
運転者から申し出があった場合、眠気、だるさなどで安全な運転をすることができないおそれがあれば無理せず運行を一旦中止させましょう。また、このような申し出ができる連絡体制を構築することが必要です。
「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(平成元年2月9日労働省告示第7号)の概要
項 目 改善基準 特例等
拘束時間
1箇月 293時間以内
1箇月 320時間まで延長可
(労使協定があるときは、1年のうち6箇月までは、1年間について3,516時間(293時間×12箇月)を超えない範囲において延長可)
1日 原則 13時間以内
最大 16時間以内
(15時間超は1週2回まで)
2人乗務 1日最大20時間まで延長可
隔日勤務 2暦日において21時間以内
フェリーに乗船する場合 乗船時間のうち2時間までを拘束時間とする
休息期間
1日 継続8時間以上
運転者の住所地での休息期間が、それ以外の場所より長くなるよう努めること
一定期間における全勤務回数の2分の1を限度として、休息期間を分割できる
・1日1回当たり継続4時間以上
・合計10時間以上
2人乗務 4時間まで短縮可
隔日勤務 継続20時間以上
フェリーに乗船する場合 乗船時間から2時間を減じた時間を休息期間とする
運転時間
2日平均で1日当たり9時間以内
2週平均で1週間当たり44時間以内
  
連続運転
時間
4時間以内
※運転の中断には1回連続10分以上、かつ、合計30分以上の運転離脱が必要
休日
休息期間+24時間
(30時間を下回らないこと)
  
時間外
労働
休日労働
上記、拘束時間の範囲内
休日労働は2週間に1回
(時間外労働及び休日労働に関する協定届が労働基準監督署に届出されていること)
  
●デジタルタコグラフ等の活用による運行支援
事業者及び運行管理者は、労働時間の適正な管理、リアルタイムでの運行状況の把握を通じた運転者に対する運行支援を行っていくことが必要です。このため、GPSと連動したデジタルタコグラフ、ドライブレコーダー等の積極的な導入・活用に努めていくことが望まれます。
デジタルタコグラフ等の活用事例
デジタルタコグラフやGPSをインターネットと組み合わせ、デジタルタコグラフでは確認できない運転者のアクセル・ブレーキをはじめとする運転操作状況などが営業所に居ながら確認ができます。さらに、事故の可能性が高い急減速を検知したら、自動的に運行管理者等に位置情報等をメールにて知らせます。また、あらかじめ登録されている事故多発地点のゾーンに接近すると、車載器のランプが点滅し乗務員に注意を促すなどを提供するサービスがあります。
●運転者に対する指導・教育
グループ討議などの教育体制を導入し、運転者が討議を通じて自分の運転の安全性について認識を深め、また過労運転の予防策等についての指導を行っていくことが必要です。
国土交通省のホームページに掲載されている「ヒヤリハット活用マニュアル」などを活用して危険予知教育を充実させ、安全に対する認識を深めていくことが必要です。
(http://www.mlit.go.jp/jidosha/anzen/03analysis/resourse/data/manual.pdf)
●グッドプラクティスの活用
巻末に掲載しているグッドプラクティスや国土交通省のホームページに掲載されている「安全対策グッドプラクティス」の事例を運行管理に活用しましょう。
(http://www.mlit.go.jp/jidosha/anzen/commercialvehicles.html)

D 健康管理を日常化しましょう
●健康への留意
健康状態は、過労に及ぼす影響が大きいことから、運転者自らが日常的に健康管理を適切に行っていくことが求められています。
脳卒中や心臓病など、運転中の突然死を招く生活習慣病を予防していくためには、食生活、運動習慣、休養、飲酒、喫煙の5つの習慣を改善していくことが必要です。
自身の健康状態を把握するためにも、定期的な健康診断は必ず受けることが必要です。
運転は長時間座り続ける仕事のために、心身のリフレッシュには適度な運動が効果的です。休憩等の機会を有効に活用しましょう。
私生活の悩みごとなどのストレスも、過労に大きな影響を及ぼします。日常においても健康に過ごせるよう留意することが必要です。
●「疲労蓄積度自己診断チェックリスト」の活用
運転者が客観的に自身の疲労の状態を自 覚するためにも、『トラックドライバーの ための「疲労蓄積度自己診断チェックリスト」』などを活用することが望まれま す。
((社)全日本トラック協会のホームページの会員専用ページに掲載されています。http://www.jta.or.jp/
●日常的な健康管理の指導徹底
運行管理者は、運転者が日常的に健康管理を行うよう、適切な指導を行っていくことが必要です。
運行管理者は、点呼や健康診断、日頃の相談の機会まで幅広く活用し、運転者の健康状態の把握に努めていくことが必要です。また、運転者の日常的な健康管理について家族のサポートのあり方なども含めて、細かく指導を行っていくことが必要です。
運転者の喫煙率は、一般成人に比較して非常に高いことが報告されています。喫煙は、脳卒中や心臓病などの動脈硬化を進展させる原因となり、ひいては運転中の突然死などの重大事故につながる危険性を高めます。運転者の喫煙率を低下させるよう、事業所全体で取組んでいくよう努めましょう。
産業保健推進センターや地域産業保健センターなど、外部の機関の活用を視野に入れて、健康管理を推進していくことが望まれます。
(東京都産業保健推進センター・ホームページのeメール相談
https://www.sanpo-tokyo.jp/mail/index.php
産業保健推進センター
独立行政法人労働者健康福祉機構では、産業医、産業看護職、衛生管理者等の産業保健関係者を支援するとともに、事業主等に対し職場の健康管理への啓発を行うことを目的として、全国47の都道府県に産業保健推進センターを設置しています。
産業保健に関する様々な問題について、専門スタッフがセンターの窓口又は電話、電子メール等で相談に応じ、解決方法を助言しています。
地域産業保健センター
地域産業保健センターは、労働者数50人未満の小規模事業場の事業者とそこで働く労働者に対し、産業保健サービスを提供することを目的に、厚生労働省から郡市区医師会への委託事業として、全国347カ所に設置されています。
健康診断結果に基づいた健康管理、作業関連疾患の予防方法、メンタルヘルスに関することなど、医師等が健康相談に応じています。
●健康診断の受診の徹底
定期的な健康診断の受診の徹底を図るとともに、50人以上の事業所においては、産業医を選任して健康管理の徹底を図っていくことが必要です。また、健康診断で要注意事項が指摘された場合において、ケアを怠っている運転者も見られます。その後のケアに至るまでの管理が必要です。なお、健康状態が悪化したからといって、解雇することは厳に慎むべきです。
産業医とは、
事業所において労働者の健康の保持・増進に努め、衛生管理者とともに職場環境管理を行い、労働と健康の両立を図る職務を有する医師のことです。
常時50名以上の労働者が働く事業所では、産業医を選任することが義務付けられています。
●SAS(睡眠時無呼吸症候群)対応マニュアルの活用
十分に睡眠を取っていても眠気がとれない場合、SAS(睡眠時無呼吸症候群)になっていることも考えられます。国土交通省でとりまとめているSAS対応マニュアル等を活用してSASの早期発見・早期治療に向けて取組んでいくことも必要です。
(国土交通省のホームページに掲載されています。
http://www.mlit.go.jp/jidosha/anzen/03safety/health.html)。

E 運転者が相談しやすい職場環境をつくりましょう
事業者・運行管理者は、運転者からの相談が受けやすい雰囲気づくりに努め、事業所内に相談しやすい場所を設けるなどの工夫が必要です。
産業医や衛生管理者などの専門スタッフによるサポートや外部機関との連携によって、精神的ストレス・悩みなどについての相談できる公的機関などを活用していくことが望まれます。
相談内容については、真摯かつ誠実な対応を心がけるとともに、内容はプライバシーに関わることであるので口外しないことが必要です。
相談窓口
日本産業カウンセラーでは、「働く人の悩みホットライン」を開設し、職場、暮らし、家族、将来設計など、働くうえでのさまざまな悩みに対応しています。相談時間は一人1回30分以内で、相談は無料(通話料金は相談者負担)です。(電話:03-5369-2275)
(独)労働者健康福祉機構では、「勤労者心の電話相談」を開設し、専門カウンセラーを配置して、労働者の悩みに対応しています。相談は無料(通話料金は相談者負担)です。(連絡先掲載HP:http://www.rofuku.go.jp/rosaibyoin/kokoro_soudan.html)
運輸労連(全日本運輸産業労働組合連合会)では、労働組合員が気軽に相談できる窓口を開設し、家庭問題や職場問題、金銭トラブル、病気などあらゆる相談に専門のカウンセラーが対応しています。電話相談は無料です。(電話:0120-506-783)

F 荷主・元請事業者に理解してもらいましょう
●「安全運行パートナーシップ・ガイドライン」の着実な実施
「安全運行パートナーシップ・ガイドライン」を着実に実施し、荷主・元請事業者と実運送事業者が協働して取組む、連携・協力の図れる体制をつくっていくことが必要です。
ガイドラインの概要
1 荷主側で、運送する貨物の量を増やすよう急な依頼があった場合、適正な運行計画が確保され、過積載運行にならないよう、関係者が協力して取組む。
2 到着時間の遅延が見込まれる場合、荷主・元請事業者は安全運行が確保されるよう到着時間の再設定、ルート変更等を行う。到着時間の遅延に対するペナルティ付与にあたっては、一律にペナルティを付与せず、遅延理由等を分析し、柔軟に対応する。
3 荷主・元請事業者は、実運送事業者に対して安全運行が確保できない可能性が高い運行依頼は行わない。なお、無理な運行が予見される場合、到着時間の見直し等を行うなど協力して安全運行を確保する。
4 荷主・元請事業者は、積込・荷卸し作業の遅延により予定時間に出発できない場合、到着時間の再設定を行い、適正な運行計画を確保するための措置を講ずるとともに、貨物車両が敷地内待機できる措置を講ずる。
5 安全運行の確保に向け、協力して安全推進活動に取組むとともに、安全運行パートナーシップ・ルールとして各種課題について具体的な改善方策を取入れてルール化する。
6 安全運行パートナーシップを確立するため、基本方針・目標の共有化、人材の育成・確保と実施体制の整備等を行う。
●「Gマーク」の積極的な取得
安全・安心・信頼の輸送事業を行っていくためにも、安全性を評価するGマークを積極的に取得し、荷主へアピールしていきましょう。
GマークGマーク(安全性評価事業)とは、トラック事業者を利用する荷主等がより安全性の高い事業者を選択することができるようにするとともに、トラック事業者全体の安全性向上に資するため、各運送事業者の安全性についての取り組み等を正当に評価・認定し、公表する制度です。
認定にあたっては国の指定を受けた実施機関が、各運送事業者の安全性に対する法令の遵守状況や交通事故、違反の状況及び安全性向上に対する取り組みの状況について、点数評価を行い、基準点数以上を獲得した事業所を『安全性優良事業所』として認定するものです。安全性優良事業所認定のシンボルマーク「Gマーク」は、安全性について高い評価を得たトラック事業者にのみ与えられる“安全・安心・信頼”の証です。
なお、Gマークを取得した事業所は、(社)全日本トラック協会のホームページで紹介されています。

(http://www.jta.or.jp/tekiseika/teki_list/index.html)

G 最新技術を駆使して、安全対策に取組みましょう
これからの運送事業には、ASV(先進安全自動車)の導入により、車両面の安全対策を行っていくことも必要です。
●衝突被害軽減ブレーキ

国土交通省では、大型自動車に対する衝突被害軽減ブレーキの普及促進策として補助制度を導入しています(衝突被害軽減ブレーキを搭載した大型トラックを購入する場合、装置取得費用の2分の1(上限27.5万円)を補助しています。
また、全日本トラック協会及び地方トラック協会も補助金を交付しており、あわせて利用することが可能です。)。
●ASV技術の例
ACCとは、ドライバーが設定した車速で一定走行する機能に加え、設定車速よりも遅い先行車がいた場合には、車間距離を適正に維持して追従走行する機能をもつ装置。
レーンキープアシストとは、高速道路などで走行車線の中央付近を維持しようとする場合、細かいハンドル操作をしなくてもすむように補助してくれる機能をもつ装置。テキスト ボックス: ESCとは、トラックの横滑りや横転を抑制するために駆動力・制動力を制御する装置。
ふらつき警報とは、車両のふらつき状態を検知してドライバーに注意喚起を行う装置。
ESCとは、トラックの横滑りや横転を抑制するために駆動力・制動力を制御する装置。

H 積極的に休憩施設を利用しましょう
大都市圏中心部などにおいては、大型トラックを駐車して休憩できる場所が少ないため、運行管理者は、大型車が駐車して休憩できる駐車場やトラックステーション等の位置を把握し、運転者に活用するよう指導していくことが必要です。
●トラックステーションの積極的な活用
(社)全日本トラック協会の計画に基づき、(財)貨物自動車運送事業振興センターが建設・管理・運営するトラックステーションは、全国の主要国道沿いに40箇所が設置されています。トラックステーションの設置状況を把握し、運行計画の策定時に、運転者が休憩・仮眠に利用できるよう配慮していくことが必要です。(社)全日本トラック協会では、ホームページでトラックステーションの情報を掲載し、会員の活用を促進しています。
(http://www.jta.or.jp/truckstation/station/station.html)
トラックステーション


参考グッドプラクティスの事例(事故防止対策の好事例)
事例1 「二度と事故は起こさない」決意新たに全社一丸
清水運送(株)(岡山県、従業員110人、車両数80)では、納期に間に合わせるために無理をし、運行管理がおろそかになりがちだった長距離運行について、事故をきっかけにきっぱりと撤退しました。納入先ごとに編成した班で走行経路や走行中の要注意箇所等を整理した「運行マニュアル」、聞き取り調査による「ヒヤリハットマップ」を作成し、いずれも定期的な改定を実施しています。班内では年長者やベテランなどから新任者への丁寧な指導が行われ結束も強くなっています。特に新任研修はマンツーマンの教育を最低でも3ヶ月かけて実施し、徹底した現場第一主義を貫いています。
点呼においても運行管理者が運転者の様子を見て、例えば「風邪をひいているようだ」などと判断するとその日の運行は控えさせ、社長自らがハンドルを握ることもあります。
また、社員全員参加の全体安全研修会(年1回開催)は荷主企業にも出席してもらい、交流を深めています。
事例2 PDCAサイクル実践で事故防止
(株)石原運輸(千葉県、従業員45人、車両数45台)では、全車両にデジタコを導入し、徹底的なスピード管理を行っています。また、車間距離対策として「3秒ルール」を実践しています。
これは、前車との車間距離保持のためにすべての運行段階で3秒間の余裕、待機時間を持つことで車間距離を確保するというもの。事故がないのは会社のためではなくみんなの命を守るため、と説得。この結果、事故は減少しました。業務ラインごとに月に一回開催する安全衛生会議において、ヒューマンエラーを防止する教育を実施しています。危険予知訓練→リスクアセスメント→メンタルヘルスケア→コミュニケーションという具合にテーマを設定し、ヒューマンエラーの真の原因を探っています。
事例3 デジタルタコグラフによる安全管理も自主性を重視
(有)イマカツ運送(大阪府、従業員17人、車両数18台)では、安全管理を主眼にデジタルタコグラフをいち早く導入しました。たいていのドライバーが一目瞭然な分析結果に納得し、運転技術を磨いていきましたが、一部のドライバーは無関心でした。そこで、デジタコの結果を賞与という金銭に反映させることにより、安全輸送に対する姿勢が一気に改善しました。現在ではポイント制を導入、3ヶ月ごとに無事故・無違反のドライバーを表彰し手当てを支給しています。
事例4 点呼の工夫例
(株)成和運輸商事(兵庫県、従業員98人、車両数52台)では、管理者と運転者のコミュニケーションは非常に密に行っています。点呼は基本的に運転者1人に対して管理者2人。点呼の際「1分間ミーティング」と称して、点呼以外の情報交換や世間話をすることで全員へ細かいケアを行っています。
事例5 ドライブレコーダー等を活用した事故防止
アサヒロジスティクス(株)(埼玉県、従業員915人、車両数461台)では、ドライブレコーダーを全車両(一部車両を除く)を導入しています。導入したドライブレコーダーは、ヒヤリ・ハットの直前直後の現場映像だけでなく、運転者のブレーキ操作・停止状況・ハンドル操作・右左折操作・スムーズさの運転状況を記録し解析診断することで、運転者も気付かない運転のクセ、車両の蛇行等による疲れ等を読み取ることができます。
導入の結果、ドライバーの無理な運転をしない等の運転姿勢の変化、安全への意識の向上により事故件数を大幅に削減することができました。
ドライブレコーダーの「運転診断書」や、特に危険な運転の場合に発行される「指導書」は、運行管理の指導資料として役立てています。

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