「シネマ1987」は1987年4月、宮崎市に発足した映画ファンのサークルです。...more
「僕の彼女はサイボーグ」。明らかに「ターミネーター」や「ドラえもん」の設定を借りたラブストーリー。至る所に引用的な描写があり、説明しすぎる終盤のくどさも何とかしてほしかったところですが、「猟奇的な彼女」のクァク・ジェヨン監督は破綻なくまとめていると思います。強みは描写に大衆性があることでしょう。
主人公が故郷に行くシーンはまるで昭和30年代の田舎を描いているようで、主人公の年齢とまるで合いませんが、吉行和子が良い味を出しているこのシーン自体に文句を付ける筋合いはありません。いろんな部分に陳腐さを感じるにもかかわらず、「悪くないや」と思えるのは綾瀬はるかと小出恵介の良さを引き出しているから。それも監督の手腕だと思います。
■ゼア・ウィル・ビー・ブラッド
1人の男の生涯に焦点を当てたこの映画の場合、主人公の振る舞いの基盤や規範を描かなければ、説得力が薄い。悲惨であったり、ショッキングであったりするさまざまなエピソードにいちいち納得しながらも、奥行きを感じないのはそのためだろう。デイ=ルイスの熱演と描写の強さによって騙されるけれども、アンダーソンが描いたのは1人の男の生涯のアンサンブルに終わっていて、その男の根底にある情念に迫っていかないのが見ていてもどかしい。なぜこの男はこんな振る舞いをするのかという疑問がつきまとう。画竜点睛を欠く力作だ。
■実録・連合赤軍 あさま山荘への道程
映画としてはあさま山荘の部分をもっとコンパクトにした方が良かったかもしれない。若松孝二監督が所有する別荘を破壊しながら撮ったそうだが、予算に限りがあったようで山荘内部の描写に終始する。時折、インサートされる浅間山の遠景だけではなく、当時のニュース映像を使うと、効果的だったのではないか。ここが予想以上に長いので山岳ベース事件の陰惨な衝撃がやや薄れる結果になっている。もっとも、この部分、警察視点に終始して山荘内部をまったく描かなかった「突入せよ! あさま山荘事件」へのアンチテーゼでもあるのだろう。ヤワな題材が多い日本映画に活を入れる力作であり、「これを描かずに死ねるか」という若松孝二の気迫がみなぎる3時間10分だ。
■ノーカントリー
映画で印象に残るのは、ほれぼれするような映像のスタイリッシュさと描写の力強さ、ハビエル・バルデム演じる殺し屋の不条理で強烈なキャラクターの方である。この映画の在り方はジョエル&イーサン・コーエン兄弟のデビュー作「ブラッド・シンプル」にまっすぐにつながっており、結論をどう強引に決めようが、その魅力はいささかも揺るぐことはない。物語よりも映像で語るのはコーエン兄弟映画の常だが、今回はそれが非常にうまくいった。
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