広原盛明編『開発主義神戸の思想と経営 都市計画とテクノクラシー』
日本経済評論社、2001年
報告者 岡林信一

はしがき

 本書は、日本型開発主義国家の地方自治体版であり、「開発主義モデル」ともいうべき
神戸市の都市計画と都市経営に関する共同研究
 対象として、@成立基盤と歴史的背景、A内容と特徴、B阪神・淡路大震災における展開と
破綻、C21世紀における変革の可能性と必然性を検証
 「兵庫県震災復興研究センター」の研究者グループ4人の執筆

第1章「神戸開発主義と都市計画」(広原)
 本書の全体フレームにかかわる開発主義神戸に関する序論
@戦前からの伝統である「大神戸構想」のもとに行政区域と行政人口の規模拡大を一貫して
追求する都市拡張主義
A戦後に成立した国庫補助金・起債の積極的活用で、市自らが公共デベロッパーとして各種
開発事業を大々的に推進する公共デベロッパー主義
B高度経済成長期以降に本格化した地価上昇による開発利益取得と第3セクター関連施設
運営により開発事業の収益化を図る都市経営主義
C都市計画・都市経営を主軸とする官僚主導行政を推進するテクノクラート主義
D市職員労働組合をはじめ各種の市政協力住民団体を幅広く包摂する神戸市共同体主義
※原口・宮崎市長が主導した神戸都市計画を分析する基本概念として「開発主義」と「テクノク
ラシー」(テクノクラート)に注目し、「神戸開発主義」の分析を通して、開発主義が生み出されて
きた歴史的背景と日本における近現代の展開過程、および都市計画との関係について考察

第2章 「開発主義とテクノクラシー」(広原)
開発主義を担う近代官僚とりわけテクノクラートの思想と行動様式に関する分析
源流として20世紀初頭の技術者運動および戦後の現代テクノクラートを取り上げ、わが国にお
ける都市計画テクノクラシーの成立要件を探り、「神戸型テクノクラート」の実体分析を行う

第3章 「神戸型都市経営の源流と経営システムの検証」(池田)
 「都市経営」についての歴史的・総括的分析
 神戸市政の際立った牧民官的体質は、戦前からの伝統的官治主義の域にとどまらず、戦後
の近代経営イデオロギーによって強化され、高度経済成長期以降はテクノクラート主導の企業
的都市経営として定着
 神戸型都市経営の思想源流を近代都市思想、植民地型都市計画に遡って検証し、戦後の
公共デベロッパー方式の展開過程と併せて歴史的に分析
 神戸市財政が震災前から危機的状況に陥っていたことを検証

第4章 「神戸都市計画における参加と協働」(塩崎)
 テクノクラート主導の神戸都市計画の中で「住民参加・市民参加」はいかに位置づけられてき
たか、神戸市政の最高理念とされる「協働」概念はいかなる背景の下に形成され、どのような
構造と機能をもつか実態的に解明
 都市計画のイニシアが計画官僚から住民・市民へ歴史的に移行しつつあることを論証

第5章「震災後の神戸市都市計画・まちづくり事業」(安藤)
 大震災における震災復興都市計画事業の役割と効果、とりわけその主柱である土地区画整
理事業、市街地再開発事業、密集市街地整備事業などに関する実態調査
 生活復旧を第一義としない現行事業の基本的制約により、またその制度的限界を被災者と
ともに運動的に打破しようとしないテクノクラート行政の限界により、生活再建・市街地再生が
著しく立ち遅れた問題点を解明

第6章「神戸市財政の検証」(池田)
 震災前後の神戸市財政の比較分析および政令指定都市間の比較分析による神戸型都市
経営の解明


第1章 神戸型開発主義と都市計画

はじめに―開発主義の終焉
「開発主義」 一世紀有余にわたって国民統合の主柱を担ってきた支配的イデオロギー
地域経済・社会の発展=農業・農村社会から工業・都市社会への以降のためには、地域開発
が不可欠だという開発イデオロギー
国民の期待と幻想を組織する「開発3点セット」
@「開発メニュー」としての開発計画
A「開発ツール」としての公共土木事業
B「開発マシーン」としての計画官僚・テクノクラート組織
開発主義の歴史的終焉
・福祉国家への本格的な展開もないまま、開発事業による環境破壊、巨額の公共事業による
財政破綻、政官財の構造的利権スキャンダルにより、国民の強い疑問と批判
・開発計画反対や公共事業見直しを掲げた住民・市民運動
 70年代の公害反対運動にも比すべき展開
・大型開発プロジェクトが90年代初頭のバブル経済崩壊とともに軒並み破綻
⇒戦後の地域開発・都市成長を支えてきた右肩上がりの経済の基礎要件が90年代に入って
瓦解し、開発主義の歴史的前提がその根底から揺さぶられるようになった時代的・構造的変

■ひとり異彩を放っているのが「神戸型開発主義」
 なぜかくも神戸市政は圧倒的な市民世論に反してまで開発主義に固執するのか?

一 開発主義神戸の思想と現実
■神戸型開発主義の本質は震災復興計画で赤裸々らに
@「復旧よりも復興」スローガン(開発目標の重点を市民生活の再建より都市発展に設定)
A神戸空港の建設是非を問う住民投票条例制定を求める30万余人の直接請求署名を、ただ
一度だけの市議会全会一致決議を理由に強行採決で葬り去る。
(都市開発のために市民の政治的自由の制限と否定)
B震災後わずか2カ月で都市計画決定を住民の反対を押し切り強行
 (公共デベロッパー神戸市の住民まちづくりへの全面介入と強要)
C市職労が市民の政治的自由と権利を否定する笹山市政を「公正・民主の革新市政」とみな
し、空港建設など開発行政を是認
 (開発イデオロギーの行政機構への浸透と開発主義への包摂)
■「神戸市一家」「神戸市共同体」というコーポラティズム体制、「行政城下町」

二 神戸型開発主義の歴史的ルーツ
@兵庫港開設にともなう「外国人居留地」の建設
 「西欧」「近代」「ハイカラ」志向、開発主義の「歴史文化ルーツ」
A「開発成長エンジン」としての国際貿易港・神戸港の存在
 「港湾経営競争」に対応する港拡張⇒物理的制約⇒「山、海へ行く」開発システム
B「産業核」だった「港湾関連産業」(戦争をバネに)

三 神戸都市計画の展開と特徴
@事業主義・施設主義
都市計画を「資本主義のもとで自然成長的に進行する都市発展を目的意識的・計画的に秩序
づけようとする公的社会的営為」および「上記の目的を達するための地域空間のあり方に関す
る合意形成システム」といった本質的理解に立脚せず、道路などの都市インフラ設備の整備
=物的年計画事業を都市計画と限局的に考える
A国家高権論
都市計画を地方自治・住民自治に基づく自治体の固有事務とみない機関委任事務体制
B都市拡張主義
 都市計画を「都市・農村計画」として自然環境との調和を保ちながら都市発展を制御しようと
しない

四 開発主義の思想と展開
■村上泰亮の定義
・「開発主義とは、私有財産制と市場主義(すなわち資本主義)を基本枠組みとするが、産業化
の達成(すなわち一人当たり生産の持続的成長)を目標とし、それに役立つかぎり、市場に対し
て長期的視点から政府が介入することも容認するような経済システム」「議会制民主主義に対
して何らかの制約(王制・一党独裁制・軍部独裁制など)が加えられていることが多い」
「システムとしての開発主義」=開発主義体制の確立のためには、「産業政策」の存在が不
可欠であり、裁量的な行政介入を実行する「近代的官僚制」が担う。
・「もしも官僚制が開発主義の生み出す種々の利害集団と一体化して巨大な利益集団となり、
議会の政治勢力(政党)がそのような官僚の組織利害を抑える力を失えば、開発主義は潜在
的な成長能力の実現という元来の特徴を発揮しえずに空洞化するか、あるいは遂にはその既
成利害からの疎外者の反乱をひき起こして議会政治を機能不全に陥れるだろう」
■「20世紀システム」の中の重要なサブシステム(末広昭)
※これらの開発主義の概念規定は、発展途上国における戦後の開発主義の展開を念頭にお
いており、先進国日本にとってはもはや「歴史的経験」「過去」に属するものとの含意が
■渡辺治
・開発主義は戦後日本における現代国家形態そのものにほかならず、日本型企業社会と結合
した「現代型開発主義」として戦後高度成長期に成立した
・その特徴は、@国家の計画的な市場への介入を確保するための議会制の制約に基づく開
発独裁的な政治システム、A成長型の産業政策、B近代官僚制の3点
・戦前の近代天皇制国家により形成された「近代開発主義」から「企業主義的統合+利益政
治」という形態の「現代開発主義」に変身
※ヨーロッパ諸国が戦後、開発主義国家体制から福祉国家体制に移行したにもかかわらず、
日本では本格的な大衆社会を迎えた戦後においても、なお開発主義国家体制が「現代開発主
義」として再編・継続したことを指摘
「介入国家」
 開発主義国家は専ら経済的生産力の成長のために介入(「経済成長が目的」「福祉は結果」)
福祉国家は経済的生産力の成果の配分へ重点的に介入(「福祉が目的」「経済成長は手段」)
「日本型大衆社会」の形成と「企業社会的統合」(後藤道夫)
・大衆社会への移行は、一方で社会過程や政治過程への大衆参加の拡大であり、社会の民
主化であると同時に、他方では参加した大衆のイデオロギーや要求・運動を体制の枠内にとと
めておくための新たな社会的・政治的統合のあり方を必要とする。
⇒名望家社会では大衆支配が国家と法による「直接支配」であったのに対し、大衆社会では支
配層の社会的ヘゲモニー・指導に対する大衆の「自発的同意」の調達を中心にした「間接支
配」に変化するのはこのため
⇒支配層の支配・ヘゲモニーに大衆が同意を与えるような、あるいはそれを積極的に受
容することを意味する「統合」が、新しい支配の仕組みとして形成される
⇒欧米(米も入る?)の福祉国家型大衆社会が、巨大な産別労組、社民政党ないし社会
的自由主義政党を通しての「福祉国家」形成という枠組みで国民統合しているのに対し
て、日本の大衆統合は、個々の企業への労働者の社会的包摂を機軸とする「企業主義
型大衆社会」。そこでは労働者一人ひとりが「パイを大きくして分け前を多くする」という成
長主義イデオロギーのもとに、企業間と労働者間の資本主義的競争の論理を積極的に
受容することで、企業を業績=福祉共同体とみなして生活向上を図ろうという企業主義
的統合が、企業内はもとより社会全体にわたって広範に成立し浸透

おわりに
 神戸型開発主義は、中央政府の言いなりになり、草の根保守層の利権政治に振り回される
といった低次元の開発主義ではなかったが、自らのイニシアチブで中央政府の動向を先取りし
て開発プロジェクトに取り組む、高度に発達した開発主義
■際立った開発主義思想と行動様式
@行政の最大目標を都市間競争に勝利するため、自治体の権力基盤を第一義的に追求
A行政の基本を開発行政に置き、住民生活の擁護や住民福祉の実現はその「結果」と考える
B行政の主体を都市官僚・テクノクラートに置き、住民は操作・統合の対象と考える
C行政手法として都市計画・開発計画を重視し、計画を通して市職員や住民を包摂


第2章 開発主義とテクノクラシー

一 テクノクラシーの源流
■二つの大きな山
@19世紀後半からの飛躍的な科学技術、医学、社会衛生などの発展および第一次世界大戦
を背景にした「技術者運動の時代」
A第二次世界大戦後の巨大企業に支えられた「産業国家の時代」
「小ブルジョア的改良主義の一種」(角谷登志雄)
 資本家でも労働者でもない「中間層」であり「小ブルジョア」である(と観念する)技術者層が、急
激な産業化・都市化という激しい社会変化に直面し、自らの生き残りを賭けて主張した改良主
義運動が、「専門家による政治経済支配」=テクノクラシー・イデオロギー
■アメリカのテクノクラシー運動
20世紀初頭の「革新主義時代」に、中間層の独立性を維持し、資本主義下のレッセ・フェール
の終焉と社会的コントロールを要求し、専門性の領域の拡大を求め、科学的意思決定によっ
て政治腐敗を刷新し、テクノロジーによって階級対立のない社会とアメリカンドリームを実現し
ようとするエンジニアの運動が芽生えた。
「社会工学的発想」「テイラー主義」 ヨーロッパに波及
■イギリスのフェビアン協会
 「都市社会主義」「ガスと水道の社会主義」を掲げて大都市政治に介入、ホワイトカラー専門
層を総動員して「ナショナルミニマム」「国民的効率」を掲げた
■ドイツのテクノクラート運動
・技術的=機能的合理性・効率性の観念を核心とする「技術的思考」を全国民的にわたって貫
徹しようとするテクノクラート主義
「国民共同体的イデオロギー」
 結果として支配層の経営や生産上の「合理化運動」に利用されただけであり、社会=労働者
階級の共感を失って技術者運動が挫折すると、生産的資本の擁護、非生産的資本としての金
融資本・商業資本の排除、階級闘争の否定を掲げたナチスの論理と親和性をもち、ナチズム
に吸収・統合されていく

三 都市計画とテクノクラシー
■戦前日本のテクノクラート運動
・1920年にイギリス労働党の産業民主主義体制を目指し、職業組合の結成を企図する「日本
工人倶楽部」が内務省の土木技術官僚を中心に結成される
・当初の指導者は工業教育各学歴者の融合、技術者と労働者の融合をめざし、「社会民主党」
結成(25年)の設立準備にかかわり、有力支援団体になるなど、欧米の技術者運動の政治水
準を凌駕する革新的な運動方針を打ち出す
・治安維持法による弾圧
・中国との15年戦争に突入する中で、軍部とのつながりを深めるようになり、大陸進出指向の
「国家革新運動」の波に飲み込まれ、民族主義的・国家主義的イデオロギーの立場にたつに
至り、「日本技術協会」と改称、全分野の技術者を戦争動員させる団体へと変貌
⇒少数派の都市計画テクノクラートは各省庁の個別事業の総括すら成功しなかったが、格好
の舞台を地方自治体の都市計画行政の中に見出した

四 神戸市におけるテクノクラシーの成立と展開
「神戸型テクノクラート」の性格と特徴
@客観的には権力基盤の弱い地方自治体官僚でありながら、A主観的には国家テクノクラー
トに近いエリート意識構造と牧民官的な行動様式で、B行政知識と専門的能力によって中央
政府や県など上位機関には対抗あるいは妥協し、C地域社会と民主政治に対してはときには
権威主義的にときには操作主義的に同意を調達して、D市民・住民を統合しようとする、E(技
術)行政官僚
■テクノクラート意識の背景:原口・宮崎テクノクラート市長による異例の長期安定政権
 神戸市テクノクラシーはこれまで(少数派に対する場合は除いて)必ずしも露骨な反議会・反
民主主義的な形態をとる必要はなく、むしろ議会・労働組合・消費団体・女性団体など各種団
体の主流派の同意と協力を取り付けた「コーポラティズム行政」へと洗練された
■宮崎市政は革新市政だったか?(高寄昇三の著作から読み取り)
・住民生活の擁護を基本とする革新自治体行政ではなく、民間企業経営にも比すべき機能的
(専制的)開発行政
・「革新という政治理念に心酔し、その実現のために政治生命を賭するという革新化ではなか
った」「政治基盤の磐石でなかった当時の宮崎市長にとって、空港に固執し政権の座から転落
するか、空港を断念して政権を死守するかという厳しい選択を迫られた」上での「転向」
■「開かれた市政」?
 開発主義を底辺から支える「草の根保守層」の政治動員が「市民参加」という名の下で行わ
れる住民包括方式
■組織間競争をあおる「原局主義」と中央官僚の天下り排す「純血主義」
 企業経営的開発行政にともない現場の判断を重視する組織・人事方針と外郭団体の
管理職ポストの増加が両者あいまって職員間の競争と忠誠を引き出し、職員労働組合
も巻き込んで開発主義を一層激化させるシステム
⇒民間企業における企業主義的統合の「市役所版」
■革新政党まで含めた「オール与党体制」
全政党の自発的意思によって形成された「開発主義の最高形態」

おわりに
■神戸空港建設に関する住民投票条例案の否決 
・神戸型テクノクラシーへの取り返しのつかない痛手
=自らの存立基盤である「科学技術的合理性」の否定
・地震学者の指摘した断層の危険性、海洋学者が懸念する広範な海洋汚染、航空専門家が
指摘する航空路の安全性、事業可能性の決め手となる経営採算上の根拠
⇒そこには「株式会社」とまで称されたかつての敏腕の都市経営官僚の姿はない。「私的
利害関係」にしか関心を示さないはずの市民が神戸市の「全体利益」を真剣に考え、市
民の「全体利益」の擁護者たるテクノクラートが特定業界の「部分利益」を追求するという
皮肉な逆転現象
⇒「近代社会と民主主義への対抗勢力」であることを露にすることで、確実に「終焉の道」へ


第4章 神戸型都市経営の源流と経営システムの検証

■震災以前からの池田氏の指摘
・神戸市の開発行政は環境破壊だけでなく、収益面からみても長期的総合的にはプラス
よりマイナスの方が多く、採算性重視の開発が市民主体の理念を空洞化させ、行政主
導と官僚主義さらに財界主導へと傾斜する危険性を内在
・インナーシティにおける狭小過密な住宅が災害に対する脆弱性を有する

二 都市計画の源流
■神戸市の都市計画3つの流れ
@コルビュジェのテクノクラートや官僚による機能主義・技術主義に基づく大都市化構想
A満州や朝鮮などの植民地都市計画に直接携わった原口忠次郎らにより展開された「山を削
り海を埋め立てる」公共デベロッパー方式
B後藤新平などによる満州の土地計画に源をもち、関東大震災後の復興計画や、戦後の神
戸市の戦災復興計画へと連なる流れ
■神戸の地域特性と産業構造の性格
@都市拡張のために山と海に挟まれた狭域市街地という障害の打開
A産業構造が重厚長大型に偏し、民間部門の活力が乏しく、それだけ公共部門の役割が大
きくなった

四 神戸型都市経営の評価をめぐって
 神戸市は他都市と異なり開発利益を捻出し、福祉施策を推進し、まちづくりなどで市民参加
をすすめてきた(宮本憲一)か?
■開発利益は大阪府よりも少なかった
・ポーアイの販売先の過半は市関係で占められ、かつ96・5万u(35%)が売れ残っている
・時価方式は企業誘致競争に不利なので、独自な脱税措置による企業誘致政策
 登録免許税を脱税し、固定資産税を軽減し、支払条件を緩和するという便宜
・公債費比率が上昇し、福祉・衛生・医療・教育などを抑制
「最小の経費で最大の市民福祉」
・市民福祉の都市財政に占める割合は5大都市中最低(70、80、90年)
「まちづくり協議会」方式
・市の計画する基幹道路や大型プロジェクトを認め、それらを前提としたうえで狭域的な市民
参加は認めるが、市の骨格を決める道路計画やプロジェクトに反対する市民参加をも認める
ものではない
・「自治会、婦人会等の既存の団体の役職者を住民代表とみなして、その方たちに既定の計
画を説明し、とくに反対がなければ住民の合意がえられたものとする」方式にすぎない
■70年代の宮崎市政とは
・市民が憲法を暮らしに生かす統治力量を発達させる過程であると同時に、都市官僚テ
クノクラートが市民運動とそのエネルギーを吸収統合化し政策化する過程
・都市官僚テクノクラートは、70年代後半から80年代にかけて、地域経済危機をバネに
地域活性化政策を展開することで、市民の自治的な運動とのヘゲモニー争いで優位な
地位を占めていく


第6章 神戸市財政の検証

はじめに
神戸市財政の破綻の要因と再建の方向
 震災が高齢者、低所得者など社会的弱者と地場の中小零細業者や自営業者が密集するイ
ンナーシティを直撃したため、復興政策はこれらの人々の生活、住宅保障、営業を重視すべき
であった。しかし、震災によって都市間競争に遅れをとった神戸市は、港湾や産業の競争力を
強化すべく、これまで以上に産業基盤や大型開発を優先したため、住民の生活と地域経済が
再建できず財政ストレスが高まっている。
 市民の生活と市財政、神戸経済の再建のためには、被災者の願いである「個人補償」の実
現と行財政上の責任を実行させる。根本的には、中央集権型行財政システムを自治分権型に
転換する。地方自治体が自主財源と財政自主権を確立するとともに、市民自治が保障される
地方行財政システムの確立が必要。雇用の保障などで大企業がその社会的責任を果たさね
ばならない。
 
三 大震災における国と被災自治体の復興政策
■国の復興政策
・産業基盤を中心とする公共施設の復旧優先 インフラ関連50%以上:生活基盤30%程度
・自治体に実施責任と負担押し付け
※政府間行財政システムの本質は、国家官僚制と人権・民主主義運動との対立における政治
的経済的分析を欠いては明らかにされない。震災復旧・復興政策の特徴は、単に官僚的集権
的行財政システムの問題としてだけで把握されてはならず、住民の人権・民主主義運動との対
立・拮抗のなかで位置づけなければならない。自治体が国と住民との対抗関係の中で、国の
下部機構として官僚的な役割を果たすのか、それとも住民の代表機関としての役割を果たす
のかに決定的に依存する。

■神戸市の震災復興政策
「私有財産制度のもとで、個人財産は個人の責任のもとに維持することが原則」(貝原知事)
「個人補償は政治体制を変えること」(笹山市長)
神戸市の復興シナリオは、港と道路などのインフラを復旧・復興させ、神戸を牽引する大企業
を立ち上げ、その波及効果によって中小零細企業や個人営業、そして被災者の生活が「再
建」されるというもの。大手ゼネコンや一部大企業は「焼け太り」と言われる巨額の利益を得た
が、圧倒的多数の地元の中小零細企業や小売店、市場、被災者の再建は進まなかった。被
災者は平均2000万円の住宅ローンを抱える。
・郊外で操業せざるを得なかったケミカル工場は不利な立場
 「長田区でなければ熟練技術者を確保できない」「長田区であれば不足する部品を調達でき
る」など地域集積が競争力の源泉だったから

■島原市と鳥取県の復興政策の共通点
@被災者の生活再建には「個人補償」が必要であり、そのための施策に全力をあげた
A浪費的な大型公共事業に依存せず、地元の中小零細企業を重視した政策を展開
B市長、知事が「現場主義」をつらぬき、被災者の目線に立って施策を推進
・鳥取県の住宅再建支援策(個人住宅再建に300万円)は、00年に県営の中部ダムの公共事
業を中止し、そこで捻出した財源などをもとに展開しえた
 科学的調査に基づく正確な情報を住民に公開し無駄な公共事業をカット

おわりに
神戸型都市経営=バブル経済(経済成長と地価上昇)待望論
 社会の成熟化にともなう経済成長の鈍化、人口構造の少子高齢化、福祉における公
正で効率的な施策の必要性、地球環境問題にみられる環境制約などから、バブル経済
は期待できないし望むべきでない。




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