クレメンティに対する評価は、たとえば《ソナチネ・アルバム》に収められている、《作品36》の6曲のようにピアノの学習用として愛奏されたり、クレメンティ自身によるピアノ教本《グラドゥス・アド・パルナッスム》のように今日でもピアノ教育において重要な役割を持ち続けているが、一方でコンサートなどで演奏される機会となると極めて稀にしか耳にすることが出来ないのも事実である。
その中ではこの作品24−2《ピアノ・ソナタ 変ロ長調》は演奏される機会が比較的多いものである。 1780年夏、クレメンティは欧州演奏旅行に出発し、翌年12月24日にウィーンにおいて、皇帝ヨーゼフ2世の前で御前演奏をする機会を得た。 この時、ヨーゼフ2世は同席していたロシアの公爵夫妻のために、クレメンティとモーツァルトに対し競演をさせた話は有名である。 公爵夫妻は、先ずそれぞれに自作の即興演奏を、その後にパイジェッロの自筆譜(大変読みにくい楽譜)での初見演奏を求めた。 このときの様子をクレメンティの弟子であったベルがーは、モーツァルトは「これまでに聴いたことがないほどの、活気と優雅さに溢れていた。」と評した。 一方、モーツァルトはクレメンティの演奏を「右手に関する限りは上手に演奏したが、演奏そのものは機械的である。」と批判し、この後もクレメンティに対しては「クレメンティは多くのイタリア人と同様に山師だ。」酷評をした。 いずれにしてこの競演でクレメンティが演奏したのが、《トッカータ(作品11)》とこの《ピアノ・ソナタ 変ロ長調 作品24−2》であるといわれている。
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