2004 5/15 PM 10:00
「春歌,誕生日おめでとう!」
「まぁ,兄君さま,ありがとうございます♥」
「これは僕からのプレゼントだよ!」
「あぁっ♥ 綺麗な小箱・・・・・・」
「あけてごらん.」
「ええ・・・・・・・・・あっ! これ,オルゴールですわ!」
「気に入ってもらえたかな?」
「えぇ・・・・・・とっても♥ だけど・・・・・・」
「なんだい? 遠慮せず言ってごらん?」
「その・・・・・・ワタクシの誕生日は・・・・・・」
「あぁ,もちろん知ってるよ.でも,春歌の喜ぶ顔を見るのが待ちきれなかったんだ.」
「まぁ! 兄君さまったら♥ ポッ♥」
春歌は僕の可愛い妹だ.数ヶ月前までドイツにいて,僕たちはお互い兄妹だっていうことも知らずに育てられてきた.初めて春歌っていう妹がいるって知ったときは,さすがに驚いたけど,最初から9人いたし正直,すぐ慣れた.春歌は向こうで厳しいおばあさまの元で「大和撫子」になるよう育てられてきて,僕なんかよりずっと和の文化に詳しかったし,
それに・・・・・・
なんだか,お互い通じ合っていたんだ.まるで,ずっと前から兄妹だったような・・・・・・
(実際そうですが)
まぁ,というわけで,僕はめでたく春歌の誕生日を祝うに至ったわけだ.
「去年まではドイツにいたから,オルゴールが初めての誕生日プレゼントだな.」
「えぇ,この曲,ホントに素敵・・・・・・・・・・・・.曲名は,何というのかしら?」
「『夜明けを待てずに』だよ.ちょっと決まりすぎたかな?」
「あぁ・・・・・・兄君さま・・・・・・ワタクシ,熱でたおれてしまいそうですわ♥♥♥」
兄妹でこんなことをしているのも,傍目から見れば恥ずかしいことなのかもしれない.だけど,この春歌の笑顔の前では,どんなことでも許される――そう,思ってしまうんだ.
「そうだ,去年までの誕生日プレゼント,リクエストしてくれる?」
「まぁ,こんな素敵なオルゴールをもらったというのに,これ以上尽くされては兄君さまに悪いですわ.」
「僕から誕生日プレゼントをもらうのは嫌?」
「いいえっ,とっても嬉しいです! でも・・・・・・」
「去年まで,僕は春歌に兄らしい事をできなかったから.」
「でも,誕生日というものは,年に一回だから嬉しいのかもしれません.」
「そうだね・・・・・・」
ふっと笑って言う.
「こんなに素敵な春歌の笑顔を見られたって言うのに,欲張りすぎたね.」
「あの,じゃあ,ひとつだけお願いできますか?」
「もちろんいいよ.何がほしい?」
めずらしいな,春歌がのってくるなんて.
「あの・・・・・・ワタクシが最近,日本の家具を集めていることは知っていらっしゃいますよね?」
これ以上?
「うん,知ってるよ.」
「それで,あとそろわないのが囲炉裏と・・・・・・」
「待って,無理.」
「いいえ,囲炉裏をもらおうとしているわけじゃないんです.欲しいけど.」
欲しいのか.
「ワタクシが欲しいのは,行灯ですわ.」
「行灯?」
「ええ・・・・・・寝床につく前に縁側で庭を眺めるのがワタクシの日課なのです.
春の夜,散りゆく夜桜に魅せられ,
夏の夜,鹿おどしの音を愉しみ,
秋の夜,川面に浮かぶ紅葉に移り行く世を思い,
冬の夜,蛍の光で本を読む.
・・・・・・という生活をしているので,最近視力が落ちているんです.」
うわー.鹿おどし作っちゃったか.
っていうか川?庭に川あるの?
もう視力云々にはつっこまない.
「だから行灯がほしいんです!」
「あー・・・・・・そーか・・・・・うん,わかった,買ってあげるよ.」
「出来れば,電球のよりロウソクのほうがいいのですわ.」
「そう?全然明るさが違うんじゃない?」
「でも,蛍よりましですわ.」
まあな.
「そうだね,和風にこだわりたいならロウソクだね.」
「いえ,ワタクシの家にはコンセントと言うものがないのです.」
「はぁ?」
「あの,兄君さま,コンセントと言うのは電気を・・・・・・」
「いや,知ってる.」
もはや何も言うまい.行灯くらい買ってやろうじゃないか.
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