○特大貨物列車の話

ここでは特大貨物やその列車にまつわる話を掲載しています。
この情報は、私が今まで見聞きした内容と、「特大貨物・甲種の鉄道車両輸送取扱ハンドブック」の内容を基にまとめました。掲載の内容が実状と離れている事が有るかもしれません。訂正等々について、お気づきの点をメール戴ければ誠に幸いです。


目 次
1.特大貨物とは
2.「特大貨物」の荷物
3.輸送運賃の計算
4.特大貨物列車のスジが決まる時期
5.列車のルート
6.積み込み場所はどこ?
7.積み込みに一苦労
8.列車の運転
9.なぜ特大貨車には車掌車が付くのか?
10.荷物を下ろす場所
11.駅で降ろせなければ・・・
12.建築限界と積載限界
13.限界測定列車?
14.貨車の検査費用などなど
15.大物車の誕生
16.幻の大物車
17.これからの特大輸送
18.大きな荷物は面倒が多い
(参考1)貨車形式別の最高速度
(参考2)軌道の規格
(参考3)甲種・特大貨物の申込時期
(参考4)変圧器とは


1.特大貨物とは


 過去には濶大貨物(かつだいかもつ)とも言われ、荷物の幅もしくはは高さが輸送規定の「貨物積載限界」を越える寸法や、1個の荷物が長さ18メートルかつ重さ15トンであるか、荷物の容積が40立方メートルを超える様な物は“特大貨物”として扱われます。JRの規定には“特大品”という言葉もありますが、寸法や重量については“特大貨物”とは異なります。
 この特大貨物は定常的に有る物ではなく、荷主から輸送の申し込みがある都度行われるものですので、発送駅や着駅は一定ではありません。
そして特大貨物輸送専用として造られているのが、当ホームページで扱っている様な大物車(シキ車)です。シキ車という呼び名はJRの貨車形式記号で、大物車で、積載荷重25トン以上の車両を指すものです。

 JRの「特殊貨物取扱基準規定」とかいう文面に有る“特大貨物”についての規定ですが、正しい文面には、「規則**条の〜」とか「別表**〜」などと有りますが、ここでは省略します。その規定に登場する特大の基準としてだいたいこんな事が書かれています。
・高さ及び幅の制限をこえて積載する貨物
・2車以上にまたがり積載する貨物
・大物車に積載する貨物(フレキシブルバンコンテナ積専用貨車を除く)
・第5限界を超えて車運車に積載する貨物
 昔はいろいろな形状の荷物や貨車があって、見るに飽きなかったのだろうと思います。今では規定にその名残の文字を追うばかり。そのほか興味を引く文も多いのですが、私が見ている法令集はちょっと古いので、後は皆様が鉄道法令集をご覧になってご確認ください。

2.「特大貨物」の荷物

 私見ですが、トラックやトレーラ車の積載能力が向上した今日では、鉄道輸送は道路で運べなかった時に出てくる案という見解は拭えないのではないでしょうか。
大物車を使った輸送が優位となるケースといえば、40tを越える様な荷物であって、搬入場所が海(大型港)からだいたい50km以上離れている場合です。もっとも搬入場所が線路から遠ければ問題外ですが・・・
 ひと昔前は大物車で運ぶ荷物といえば現在の特大貨物の代名詞である電気機器をはじめ、精製塔や大型容器などもあった様です。しかし前述の通り道路輸送が整備されたことで、今では電気機器がほとんどになり、しかも水力発電の開発が頭打ちになった事から、変圧器が“特大貨物”になってしまったようです。
 この
変圧器とは“変電所”内に据え付けられる電気設備です。発電所から消費地までの長距離送電を行う場合は、高電圧送電が有利なため、発電所で作られた電気の昇圧や降圧などに使われます。1台の値段というと、だいたい低床車に載るサイズで数千万円、吊り掛け式の車で運ぶ品物は億の桁になるのではないでしょうか。

3.輸送運賃の計算

(1)特大品の割増と割引  貨物時刻表には料金割増率表が載っていますが、特大品については「臨時の約束によります」としか書いてありません。しかしこの臨時の約束のうち、荷物の形状や重量に因る割増と列車貸し切り輸送での換算重量が決められており、運賃が計算出来るようになっています。

特大貨物等割増率表
※割増率が競合する場合は、その内もっとも高い率を適用する。
貨 物 の 寸 法 、 重 量 な ど の 区 分
運賃割増率
貨物の幅または高さが貨物積載限界を超えるもの。
5割
大物車に積載された貨物で、幅が車体の外方に突出し、高さが(貨車の中心部で)軌条面より3.9m、
(貨車の端部)において3.5mを超過する。またはその底部が測量上面から下方に突出するもの。
5割
1個の長さが18m、重量が15tまたは容積40m3を越えるもの。
8割
1個の重量が30tまたは容積60m3を越えるもの。
20割増
1個の重量が80tを越えるもの。
40割
1荷主の申請により、列車を貸し切って運送する物(細目が定められている)
5割
割引については私有貨車の使用によって1割5分割引など、一般車扱いと同じ率が設定されます。

(2)臨時貨物列車の場合
 一般貨物列車併結時は、実際の重量を基に計算が進められますが、臨時に貨物列車を走らせる場合には計算上の重量が定数として決められています。
   臨時貨物列車定数  400t
    〃回送列車定数  100t

(3)計算してみよう
 シキ車で輸送される特大貨物を例にとって運賃を計算してみます。なお、運賃の端数は500毎に切り上げとなっています。基本の研計算式は、
 特大貨物運賃=賃率×列車定数×(割増率−割引率)
になります。
 例)120tの変圧器を私有貨車によって100kmの区間を鉄道輸送した場合の運賃
   賃率=¥2173(平成14年現在)
   列車定数=400t
   割増率=4.0(80t超過)
   臨時貨車指定割増=0.5
   割引率=0.15
     2173×400×(1+4+0.5−0.15)=4650220
     (500円毎切り上げにつき)
   特大貨物運賃=4,650,500(円)
・・・実際の輸送では更に、車両入れ換え作業や、添乗員の費用が掛かります。

4.特大貨物列車のスジが決まる時期

 JR貨物と、特大貨物列車の各利用者である電気メーカーは定期的な会合を行っているようです。まずメーカーから要求される荷物の現地搬入予定、または出荷予定を元に、使用する貨車の決定や荷下ろし駅の決定と経由する路線の検討が始まります。
 場合によっては特大列車が運転される1年前までに、こんな打ち合わせを行うようです。なぜなら早く鉄道輸送部分の確証が取れないと、駅での荷役方法や駅からの陸送ルート。時には荷物の大きさの検討に着手出来ないからです。“鉄道の駅から荷物を運んでいる”場所が少ない今日。荷役の面から「鉄道が使えるのか」を検討しなければなりません。
 実際に貨物列車のスジが確定するのは、列車が走る3カ月〜6カ月前。鉄道情報誌“とれいん”に特大貨物の運転予定が掲載されていますが、ちょうどこの頃の情報ではないかと思います。
 ときどき「情報と違う!」という声も(私もそうですが)聞きますが、主に荷物の受け取りまたは荷下ろし場所の都合などで直前に変更する場合も有るようです。

5.列車のルート

 JRや私鉄の路線のうち営業許可を受けている線にしか貨物列車は走っていませんが、特大貨物の場合はそれに当てはまりません。当然、道路事情から鉄道輸送しか出来ない場所に限定されますが、そんな場合は機関車の手配や施設の貨物対応について調査検討する手間は増えるものの、日常走っていなくとも条件さえ整えば臨時に貨物列車を走らせる事は可能なのです。
 しかし逆に、通常貨物列車が走っていても、特大貨物列車が走れない線路も多々あります。
 貨物に限った話では有りませんが、線路によって使用できる電車や機関車の制限が有ったりします。致し方ないのですがトンネルや橋梁が同じ寸法や強度計算で作られている訳ではないので、特に寸法や重量の大きな特大貨物を走らせようとすると、その制限に引っ掛かってしまったりします。関東近郊ですと、中央線はトンネルの断面寸法から、車両第3限界を超える特大貨物列車は走行できません。そんな場所にどうしても運びたい場合は、支障の無い線路を選んで延々と遠回りするルートを選定するしか無いのです。

 大きな国では内陸輸送の手段として鉄道が発達していますが、中国でもトンネル断面寸法で貨物輸送が制限されるケースが有るそうです。日本には無い事例と思いますが、「ある路線で特大貨物列車による輸送を行おうとしたら、途中のトンネルの断面が小さくて輸送出来ないことが判った。しからば・・・そのトンネル手前の駅で荷物を下ろし、空の列車を次ぎの駅に先行させ、荷物は道路上をコロ引きして列車の待つ駅まで搬送し、その駅から再び列車に載せて運んだ」との事。その駅間距離が何キロかは分かりませんが、トレーラに頼らないところが凄いと思いました。

 

6.積み込み場所はどこ?

 当然多いのが電気メーカーの工場。これは特大貨物列車を追われている方ならご存じの通り。
 次に臨港地区。長距離の鉄道輸送はコスト高なので、貨車を空車で送り、着駅に近い港で荷物を積もうという物です。この場合は電気メーカーから荷物は航送され、その港で貨車と合流します。しかし、海が荒れる時期などは荷役予定が狂うのを防ぐため、船を使わずに荷物を工場から延々と鉄道輸送してしまう場合もあります。
 最後に機会はあまり無いのですが、工場が有るわけでも無く、ましてや港からも遠い場所での積み込み。これは変圧器などの修理や移転の為に行われるものです。

 工場での積み込みでは、クレーンなどの荷役設備が整っているので、比較的スムースに作業が行われますが、着駅などではまさに“人海戦術”。機械や道具を持ち込んでの大がかりな作業になります。

7.積み込みに一苦労

 いわば陰の苦労をひとつ。当然ながら(?)変圧器には据えつける時の“向き”があります。
荷下ろし駅と列車の運行経路が決まると、積み込んだ荷物の向き、つまり着駅で貨車がどちら向きになるかを路線の順を追って考えます。
線路の配線上で車両の1エンドと2エンドがひっくり返ってしまう事を耳にしますが、DE10型機関車の向きが変わってしまったどころの騒ぎでは無く、時には200tを越える様な荷物が、そう簡単に現場で方向転換できるものではありません。ですから物流担当者は、路線の配線を調べて貨車の向きを確認し、希望通りの“向き”で変圧器は着駅に届く様、慎重に検討しなければなりません。

8.列車の運転

 旧型のシキ車には車体に黄色い帯塗装がなされていることと、形式表記に小さく“ロ”と書かれて識別が出来ます。これは運転速度は最高65km/hとされている表記になっています。
 とは言っても実際に運転される特大貨物列車において、荷物や軌道に過大な力がかからない様にカーブで減速したり、分岐やホーム通過などの場所による速度制限で減速したりしていますから平均速度は非常に遅く、65km/hで走る事はあまりありません。
 比較的新しいシキ車はその制限表記が無く速く走れそうですが、所詮は回送時に一般貨物列車の組成に組める様に改良したものであって、積車時の速度が必ずしも速いとは限りません。
 低速で走る理由としては重量物でバランスを崩しやすいことと、本来変圧器は静止機器なので、振動を嫌う事が挙げられます。“こわれもの”の輸送は日常茶飯事ですが、変圧器は輸送中の衝撃から守る様な養生ができませんので、走行速度を抑えて振動などを少なくしなければなりません。当然ながら機関車の連結作業も他の貨車より慎重に行われていると思います。

実際の変圧器輸送では鉄道、トラックを問わず、変圧器本体に「加速度計」が取り付けられています。これは輸送中、変圧器に有害な振動や衝撃が無かったかどうかを確認するもので、XYZの3方向の加速度を記録するセンサが付いています。日本国内の輸送ですと3G位までの加速度(Gは重力加速度)を容認しているようですが、アメリカの鉄道では5Gだと聞いた事があります。ちなみに5Gといえば最強の?ジェットコースターで味わえる加速度です・・・と書くと、「振動を嫌う機器のイメージでは無い!」になってしまいますが・・・。

9.なぜ特大貨物列車には車掌車が付くのか


輸送合理化施策の一つとして、貨物列車への車掌車連結が廃止された事はもう過去の話になり、唯一最後まで残っていた紀勢線の車掌車付き貨物列車も平成12年8月を以てその姿を見ることはできなくなりました。しかしこれは“一般貨物”の話。甲種車両輸送や特大貨物列車だけは例外扱いになっています。
甲種車両輸送の話はさておき、特大貨物は鉄道車両限界を越えたり建築限界との干渉問題をクリアしたうえでの輸送ではあるものの、「列車運行中に何らかの障害が有るやもしれない」という万が一の際には迅速な対応ができるよう、荷物の監視的な役割で“添乗員”を列車に乗務させています。車掌とは業務内容が異なりはしますが、その添乗員の乗る車両こそが車掌車であり、特大列車には未だに車掌車が連結される理由です。
ただし特大貨物が限界寸法と干渉しない事が明確であれば監視が不要と判断され、低床車(Aタイプ、Dタイプ)を使った特大貨物列車には車掌車が付かない事が多いようです。
 ちなみに添乗者はJR職員の他、電機メーカーの社員が同様の理由で添乗することもあるとか。大まかですが、添乗者の運賃は同区間の普通旅客運賃の半額になるのだそうです。

余談)ここでいう車掌車とはヨ8000型です。乗務環境改善で付けられたトイレなのですが、定期運用の無い今日では日常の清掃管理ができないなどの理由で使用できないように扉は封印されているそうです。

10.荷物を下ろす場所

 昔?は貨物扱い駅が沢山あり、貨物扱いが無くても側線が残っているため、荷下ろし場所には困らなかった様です。しかし昨今の貨物扱い駅の統廃合、駅用地整理ですっかり荷下ろし場所が無くなってしまいました。また、貨物駅が減ったことは「側線があっても入れ替え作業をするディーゼル機関車の手当が付かない」などの問題が起こる原因にもなるようです。
 ですから荷物を下ろす場所はかなり限られてしまい、「昔は鉄道で変圧器を運んだ筈の内陸変電所に、今となっては鉄道で運べない!」という場合も少なく無いようです。

11.駅で下ろせなければ・・・

(1)本線荷役
 例えば駅周辺の道路が狭く、荷下ろししても駅から運び出せない場合はこの手段です。
夜間に踏切の有る道路を閉鎖して、そこで荷物を下ろします。電化区間なら架線の停電をしなければなりません。当然ながら荷役時間は最低限に限られる上に、道路や架線を傷付けないようにしなければならないので、大変緊張した作業になります。
コンテナ本線荷役の元祖(?)的な作業かもしれません。

 ちなみに、駅間で荷物を下ろす条件の場合。貨物運賃は、その先の駅までの運賃が適用されるそうです。

 【A駅:発駅】=======【B駅】===(荷)===【C駅】
                        (荷)は荷役場所

  駅間距離  A駅=>(荷)・・・50km
        A駅=>C駅・・・・52km
上の図で説明しますと、
B駅とC駅の中間で荷役する場合は、荷役場所までの距離ではなく、発駅から荷役場所の先にある駅、C駅までの距離で貨物の運賃が決まります。ですから図ではA駅からC駅の距離、52kmが運賃計算キロ数となります。

(2)他社の専用線
 もう一つ、これは駅で荷役が不可能というよりも、荷役作業を容易にするための手段でもあります。
なにも荷役設備が無いところに機材を持ち込んで作業したり、本線を止めたわずかな時間で作業をするより、安全で確実な作業が行えます。判り易い例としては、特大列車の運行予定を見て、積車の列車で発駅と着駅にそれぞれ電気メーカーが有る場合には、おおよそこのパターンであると考えられます。
具体的には小山−新芝浦などが挙げられますが、荷役を行う物流会社の采配で、発駅の荷主と関連の無い会社で荷役を行う場合も有るようです。

12.建築限界と積載限界

 ご存じの方が多いと思いますが、鉄道車両には車両の断面寸法を基準化して、車両と周囲の構築物が接触しない様にしています。
 鉄道車両の設計に必ずクリアしなければならない条件の一つで、地上構造物と鉄道車両はお互いの限界寸法を超えない様に設計しなければなりません。
貨物もまた同じように積載限界が決められていて、一番小さい(普通の車両に近い外形)第5限界から、建築限界ぎりぎりの第1限界までの5段階の等級が決められています。特大貨物の場合は荷物である変圧器を“限界寸法”に収めようと頭を痛める事が多々有るそうです。

左の略図はその限界を示す“貨物積載限界図”の中心から左半分を模写した物です。(下手クソですみません)限界線は、建築と第1、第5だけ書きました。四角いマス目は1つで200mm×200mmを表します。図左下の灰色部分はホームのイメージです。

 鉄道の架線柱や標識などは、建築限界より外側(図では白い部分)になるように設置しています。これに対して、車両も限界範囲に収める必要があります。図で説明すると、青い部分の第5限界に収まっていればまず問題は発生しません。ところが変圧器が大容量になるほどその断面積を増し、緑色の第1限界に達する事も有りますし、更に超えて図中の黄色い部分に達する事も珍しくありません。
しかし注意しなければならないのは、“貨物積載限界図”は一般にカーブ時の車両偏倚を表現していません。カーブの量によっては、建築物との干渉が出る恐れもあります。車両や変圧器の長さを基に偏倚を計算して「トンネルに当たらないか」「駅通過は何番線にするか」などを調査、検討を進めているようです。

 まだ蒸気機関車が現役であった頃の話では、この調査がいい加減(?)で、「変圧器が線路標識をなぎ倒した!」とか、「ホームを削った!」などといった、トラブルも有ったそうです。
最近は統一が進んでいるのでしょうが、ホームの高さには“電車用”、“客車用”、“客貨共用”などの種類が有るので、うっかり低いホームの寸法で接触の検討してしまったり、曲線ホームでの偏倚量を間違えて、走ったら「ガリガリ!」というてん末。 今日でも未だに要注意なのはホームだそうです。電車用の高いホームが有るのは下の表の駅です。

高さ1100mmのホームが有る区間または停車場
 線 名
区間または停車場
  線 名
区間または停車場
東海道本線彦根−神戸・荒尾−美濃赤坂・静岡・浜松 赤 穂 線相生−天和
南 部 線尻手−立川 福 塩 線福山−下川辺
鶴 見 線浅野−武蔵白石・浅野−新芝浦 宇 部 線小郡−宇部
横 浜 線大口−八王子 小野田線宇部港−小野田・雀田−長門本山
横須賀線北鎌倉−衣笠 関西本線笠置
根 岸 線桜木町−磯子 片 町 線長尾−片町
御殿場線岩波−富士岡 東北本線秋葉原−御徒町
飯 田 線石切 赤 羽 線板橋−十条・赤羽
湖 西 線山科−永原 常 磐 線北千住・亀有・荒川沖
大阪環状線福島−西九条 仙 石 線仙台−石巻
桜 島 線安治川口−桜島 信越本線長岡−新潟
富山港線東岩瀬(下り本線) 総武本線両国−千葉
中央本線四ッ谷−八王子 武蔵野線北府中−新松戸
青 梅 線立川−奥多摩 高 崎 線北鴻巣
大 糸 線南大町
山陽本線神戸−上郡
高さ1280mmのホームが有る区間
 線 名
区間または停車場
阪 和 線天王寺−東和歌山           

限界について荷物の方ばかり書きましたが、建築物なども特大輸送ならではの準備がありました。但し現在は規格がしっかりして過去の事例になりますが、「ホームとの干渉を避けるため、軌道の道床を嵩上げする」「線路標識を撤去する」「対向列車の時間変更」などがあった様です。

13.限界測定列車?

 その昔、今からは想像付かない程の線区で貨物列車が走っていた頃。紙面上の検討ではおぼつかないということも有って、鉄道工作物との接触有無を確認する為の試験列車が運転されたことも有るようです。
 私が目で見た訳ではないので詳細は不明ですが、特にBタイプのシキ車では、積車時に線路の曲線部では荷物が内側に出張ります。それを模擬試験する為に荷物と同等の寸法でフレームを作って貨車に積み、実際に走行する線区を走らせたとの事。新幹線車両の輸送限界確認で使用されたコヤ90という車両と同じ様な意味あいです。
 今日では、管理が向上して測定する必要も無くなった様でコヤ90も廃車。もう過去の話で、特大の試験列車の姿を見ることは無いと思います。

14.貨車の検査費用などなど

 シキ車も当然、普通の貨車と同じように交番検査や全般検査を受けます。しかし貨車ならでは、検査の費用は飛び抜けています。Bタイプのシキ車ですと、交番検査は100万円〜200万円。全般検査で時には1000万円を越える事もあるとか。
コキ車やタキ車の様に使用頻度が高ければ良いのですが、シキ車は年に数回使用されれば「使用頻度が高い」と言うことになります。貨車の所有者にとっては、ちょっとフトコロには厳しい数字ではないでしょうか。
 ちなみに貨車を造った場合の費用ですが、シキ800などは1両で1億円を越える値段だとか。(もし新形式だとすると、設計や試験費用でもっと費用が掛かるそうです。)
貨車とはいうものの、電車をしのぐ値段とはちょっとびっくりです。シキ車の車齢は古い物では30年を越しています。「そろそろ更新・・・」とはいえ、ちょっと(?)高いですね。

15.シキ車(大物車)の誕生から現在まで

(1)誕生の経緯
 輸送の世界でも異色の存在であるシキ車は、JRの正式名称では「大物車」と言います。「シキ車」はあくまで1つの呼称であることを今更ながら書き加えますが、この車両が誕生した時代にさかのぼってみます。
 もともと“大物”は現在でいう長物車などで運ばれていたようです。しかし対象物である荷物が大型化する事に比例して重量も重くなり、これに対応する必要性から誕生したのが大物車です。それは今から80年余り前、大正時代のこと。現在では「シキ」という形式(車種標記である「シ」と荷重の記号「キ」から成る)は当時「オシウ」という形式を名乗っていました。これは鉄道院(国鉄の前身)で決められたものです。その頃の車両といえば長物車同様の平型の荷台で、重量物用に車体強度を高めた車両を指していました。
 輸送といえば鉄道であった時代。多種多様な荷物に加え、機械、機器に合わせて貨車も更に大型化が進みます。出来るだけ大きな荷物を鉄道建築限界に収めようと、荷台は低床になり、現在
Aタイプと呼ばれる弓梁の車体が生まれました。開発された車両形式は最も多かったのですが、Aタイプで運ぶ荷物が道路輸送でも可能になった今日、鉄道貨車としての現存は数少なくなりました。道路上では“トレーラ”としてこれに似た形を良く目にすることが有るかと思います。
 昭和初期、この弓梁車体の次に開発されたのが、荷物を“ぶら下げて”運ぶCタイプです。落とし込み式とも言うこの形式は、幅方向で制約を受けながらも、高さ方向については建築限界枠一杯までの自由度が有ります。

 そして昭和30年頃、日本の線路上に荷物をも車両構造の一部とする奇抜かつ画期的な構造の車両が導入されます。現在大物車の代名詞的形式であるBタイプがその車両です。この車両の手本となったのは1930年代のドイツで、最初から大型変圧器を輸送する目的で設計、開発されたシュナーベル式貨車でした。大型変圧器を造っている電機メーカーが自社製品を運ぶ為に日本へ技術を持ち帰ったと言われています。日本では“吊り掛け式”などと言われるこの形式によって長さ方向、高さ方向共に鉄道建築限界一杯までの“大物”が運べる様になりました。

 今日ではもちろん一般的ではありませんが、前述のAタイプの他にBタイプやCタイプに至っても類似の道路運送車両が開発され使用されています。鉄道よりむしろ路上でこれらの“車体”を目にする機会の方が多いのかもしれません。

(2)事故の経験を踏まえて
 時々旅客列車でも車両故障が起きたりします。もちろん貨車も同じ事。しかし大物車が故障、さらには事故につながれば大変な事になります。
 詳細は判らないのですが(封印されているのか!?)、シキ280が落成して間もなく、車両自体の揺れから車体がバラバラになってしまったという事故が有ったそうです。空車状態で発生したので、人身事故には成らなかったらしいのですが・・・。
B梁を持つ貨車は、重量を分散させる為に何層かの梁が積み重なった構造になっており、その上部に大きな吊り掛け梁を載せています。それは荷物を積めばバランスが良いのですが、空車では梁がふらついてしまう(揺動する)のです。空車時にふらふらしていた梁が何かの拍子に大きく傾き、その結果、台車を残して梁がひっくり返ってしまったのでしょう。
 この事故の写真を一度見たことが有りますが(鉄道雑誌だったと記憶しています)、外れた梁が見事にばらけておりました。そのため当時の大物車全てについて揺動の確認が行われ、その結果規定を越える揺動が発生する車両には改善策は採られました。それで死重と呼ばれるいわば余計な荷物を積む車両が出来上がりました。
当然ながら以降の車両は、死重に頼らずに揺動を抑える構造設計が採用されました。

(3)大物車も高速化?
 昭和30年代に現在の大物車の形がそろったことになりますが、その後に鉄道事情の変化などで車両の改造などを行っています。
改造の1つには速度の向上が挙げられます。現在の様に貨物列車が110km/hで走ろうとは夢にも思わなかった時代ではありますが、それでも大物車に設定される走行速度は遅い部類で、当時でも厄介な車両であった様です。
鉄道の世界で速度向上とくれば、まず制動装置、平たく言うとブレーキの能力が問われます。ブレーキの全交換こそしませんでしたが、ブレーキ梃子を長くして同じ原動力でブレーキ力を高める改造を行いました。これによって10km/h程の速度向上を達成している様です。旧型の大物車に製作所銘板以外に改造銘板があれば、改造を受けた車両と思われます。

16.幻のシキ車

 テレビの特番みたいなタイトルですが、やはりこの世界にも“幻”的なモノはあったようです。
鉄道輸送がまだ盛んだった昭和30年代、シキ600、シキ700と積載能力の最大記録となる形式が誕生しました。これは各電気メーカーが大型変圧器の輸送に対応するためであると共に、ライバル会社との競争であった様にも考えられます。
 昭和38年。280t積みのシキ700が誕生してからまもなく、更に積載能力を増強した車両の計画があった様です。積載能力は300t。車軸の配置は4−4−4−4・4−4−4−4の計32軸。自重は約115t、空車時の全長が約42.5m。
 参考までに現在運用されている240t積みシキ610は、軸配置3−3−3−3・3−3−3−3の24軸、自重約111t、空車時全長が約38.5mですから、もしこの幻のシキ車が製造されていれば、間違いなくとんでもない(?)車両になるはずでした。
 しかし、なぜ製造されなかったか・・・。やはり大きすぎるのだと思います。
特大とはいえ当然に、鉄道輸送上の品物外形は“建築限界”に収めなければなりません。おのずと品物の断面積が決まってしまいますが、比較的自由な長さ方向にも構造上やたらと長くはできません。
結局「300t積めます!」と胸張っても、所詮は能力をフルに発揮できるケースは滅多にないと判断され、計画だけになってしまった様です。

17.これからの特大輸送

(1)輸送形態の変化
 電機機器の内陸輸送においてはその大きさ、重量から道路輸送が出来ないと判断し、しからば鉄道となる筈なのです。しかし1個あたり40t程度の部品に分解してしまうと、俄然に道路輸送が有利になります。
 最近「現地組立式・・・」と称するのか、部品状態で電機機器を運び、据え付け場所で組み立てるという手法が広まっている様です。この方法ではよほど途中の道路事情が悪く無い限り、鉄道輸送の及びでは無くなってしまいます。
 また、変電所の大型化が進んでいる事もこの輸送方法に移行して行く要因とも思われます。
電力需要に合わせて、送電線容量のアップや高圧送電によって、用いられる変圧器は次第に大型化する傾向にあります。従来通りの運び方では重量的にも問題になりますので、必然的に「分解」して運ぶ選択肢を選ばざるを得ないという結果ないでしょうか。
そんなことから、(当たり前ですが・・・)電機メーカーは趣味で特大は走らせないでしょうから、いよいよ特大輸送の機会は少なくなっていまうのが実状でしょう。

(2)車両統合か、新造か
 推論の域を出ませんが、かつて合理化策として各社がそれぞれ所有するシキ車を共有化し、効率良く使用しようという試みがあったと思われます。現時点で私有の変圧器輸送用シキ車は約10両。電機メーカー5社と運輸最大手の日本通運の計6社です。しかしながら、かつて最大のシキ700を所有し電機メーカー大手でもある日立製作所は、現在ではシキ車を所有していません。
 鉄道輸送の機会は少なからず有るにもかかわらず、なぜ所有をやめたのか・・・。ここからは全く私の推論ですので事実と異なるかもしれません。
 現在、シキ車の基地的存在である小山には高岳製作所が、日立多賀には日立製作所があります。この2駅間の距離は100km程で鉄道輸送上では短距離の部類。また貨車の所有は物流会社ならば中立的なので、どちらの会社も同じシキ車を使うことができます。
10項にも書いた通り車両検査費用が高額ですから、年に数回しか使わない車両をそれぞれが持つよりも、いっそ借りてしまった方が得であるという判断があったとは言う事は過ぎた考えなのでしょうか。
 この推論が成り立つとすれば、これからは車両新造よりも現有車両の共有による有効活用が検討されるのではないかと思います。

 判った範囲で梁式のBタイプに絞って梁の寸法を列記してみました。
形 式寸 法所有会社名

単位は全て(mm)です。
車両全長ヒンジ距離ヒンジピッチピン穴直径
280(B1)2690018002000201AEパワー
 〃 (B2)2697615752200150AEパワー
611    3291018002000200日本通運
670(B1)2048022002200130上  組
800(B2)2668015502200171日本通運
801(B1)2680018002000201日本通運
 〃 (B2)2668015502200171日本通運
810(B2)2668015502200-2450171東芝物流
 各所有者毎に梁の寸法が違うのが判っていただけますでしょうか。
他にもヒンジ部分の形状などの条件があり、そう易々と他社の車両を使用出来ることにはなりません。共有には車両改造、もしくは各社において車両の高齢化を見越した「新造」という話が出てくる可能性も有るのではないでしょうか。・・・推論というより希望ですが(^^;

(3)機器メーカーの統合
 各重電部門を1つにまとめて競争力を付けようという主旨で、いままでのライバル会社が手を結びました。2001年7月に日立製作所、富士電機、明電舎の3社による(株)日本AEパワーシステムズと、2002年4月に設立の東芝、三菱電機によるティーエムティーアンドディーです。(残念ながらティーエムティーアンドディーは数年で解散し、元通り“東芝”、“三菱”に戻ってしまいました。)生産拠点の統合を目的としていますから、つまり貨車輸送の発送がどこか一カ所に偏って行くとも想像されます。貨車もその佇まいに合わせ、両数は減る方向にあると言えるでしょう。

18.大きな荷物は面倒が多い

 大荷物はその通り発送地から最終到着場所の門をくぐるまで、物がモノだけにいろいろと制約が付きまといます。
ちょっと昔(官公庁再編前)の情報源ですので参考にもなりませんが、“特大”な物を輸送する上ではいろいろな行政、組織などに届けを出さなければなりません。
それは法的に決まっているものや、円滑に輸送を行う上での通知的なものまで様々です。
提出先で分けてみます。表中の折衝開始時期は、実際に輸送請負者が関係各所に申請や折衝を始める目安的なものです。
申請などの提出先内  容折衝開始の時期補足事項
道路管理者特殊車両通行許可1年〜2年前道路改修が必要な場合は5年位前から申請準備が必要
  〃  工事の申請3ヶ月前交通標識、ガードレールを撤去する場合
地下埋設物管理者上部通行の同意半年前位例)水道管・・・水道局
河川管理者河川敷の使用など1年前位仮設橋を設置する場合は2年前から準備が必要
県警察本部道交法の制限外輸送の許可半年〜1年前 
出発地の警察署   〃  半年〜1年前 
所轄消防署消防活動上支障となる行為の届け1ヶ月前 
JR特大輸送調査願ほか半年〜1年前側線やポイントの変更が生ずる場合は3〜4年前に事前折衝が必要
国鉄精算事業団精算事業用地の借用半年〜1年前 
側線第3使用者側線使用の同意半年位前 
地権者私有地などの借用同意半年〜1年位前 
漁業協同組合仮設橋設置などの同意半年前橋脚の改修工事でも必要
バス・タクシー会社運行同意3ヶ月前 
市町村・自治会運行同意3ヶ月〜半年前 
【参考】
JR貨物特大貨物輸送申込半年〜1年前貨物の(発)着駅が貨物取扱駅では無い場合は2年前
 思いもしない様な項目が有りましたか?。最近は法令の改正や合理的な運用が進み、それぞれ申請自体は簡素化される傾向に有るのかと思いますが、“普通”ではないモノですので、輸送途上に「万一・・・」ということがないよう、輸送請負者はこれらを解決するために力を注いでいます。

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