2004/10/31

 グラシオサ(Graciosa)の港に停泊して2日目、桟橋を歩いているとヨッティー達が集まって話しをしていたので、何時もの様に挨拶をしながら通り過ぎようとしたら、

「ねぇ!今晩みんなでポットラック(Pot-luck)する事になったんだけど、一緒に参加しない?」

 との誘いを受けました。
 ポットラックとは各自が食事一品を持ち寄って集まり、みんなで分け合って食べる方式のパーティーの事で、米国駐在時代に何回か経験した事があるので知っていました。

 マコは丁度日本の友達から送られて来たばかりの海苔を使って海苔巻き寿司を作り、夕方6時ごろ指定された場所である防波堤の所に行くと、既に何組かの人達が集まっており、岩の上の平らな場所に各自持ち寄った料理が並べられていました。 我々日本人は彼等にとって珍しいのか、我々二人の周りには輪が出来るくらいヨッティー達が集まって来て話が弾みます。 その内に時間が来たので皆で持ち寄った料理を食べ始めましたが、海苔巻き寿司は人気があり、皆が真っ先に食べようとします。
 その上、我々二人の予想を遥かに上回る30組くらいの人が集まったので、あっと言う間に売り切れてしまいました。 一番最初に売り切れるのは美味しい料理だった証拠なので、制作者であるマコは大満足の様子でした。 一旦この種のパーティーに参加すると周りから仲間として認知されるので、次の日からはヨッティーに出会った時の挨拶の態度が以前とは全く違ってきて、気軽に話が出来る様になるため、情報交換がし易くなるメリットがあります。

 グラシオサ島には非常に綺麗な砂浜の海岸があり、海水浴をしたかったのですが、海水浴後に浴びるシャワーがありません。(桟橋の水は出ないので、ココマージュに搭載されている清水タンクの水は貴重です) トイレとシャワーの設備らしき立派な建物は海岸にあるのですが、水が出ないのでこれまでは海水浴を諦めていました。
 ところが、ある日ヨッティーに話をしたら、シャワーの水は出ると言うのです!  早速海岸にあるシャワーの建物に行き、水の出し方を教わりましたが、いや、 その方法の複雑な事! まず、建物の裏側の壁にあるボックスの蓋を開け、中にある水の元栓をオープン状態にします。 次に建物脇の壁に埋め込まれているボックスの蓋を開け、清水ポンプの電源の遮断器をオンにします。 さらに建物の中に設置されている壁の蓋を開け、シャワーへ水を供給するバルブをけます。 最後に、シャワー室の隣の小部屋に設置してある、水圧を加圧するためのポンプのバルブを開けます。 これで、一応シャワーは出る状態になったのですが、最後のトリックとして、男女用併せて全部で10箇所あるシャワーの内、実際に水が出てくれるのはたった一箇所だけなので、このシャワーの栓を選んで開けないと、実際にシャワーを使う事ができません。 しかも、これ等のバルブや電源の遮断器は、本来全て鍵が掛けられていた様な形跡がありますが、現在では鍵が壊れて(壊されて?)おり、知っている人なら誰でも操作が可能になっているのです。 
 これでは、初めての我々には全くシャワーが使えなかった訳です。 彼等は一体どうやって、シャワーを使用できるようにする方法を知り得たのか? 一体誰から教わったのか?今でも不思議でしょうがありません。早速我々は、綺麗な砂浜の海岸で、透き通る様なコバルトブルーの水の感触を楽しみながら、充分に海水浴を堪能した後、帰る時にはしっかりとシャワーで体を洗った事は当然です。

 これはほんの一例ですが、ヨッティー達は実に色々な事を良く知っています。多分彼等の中での情報交換網は、我々の想像を絶するくらいすごいものがありそうです。

 例えばもう一例あげますと、例のポットラックを実施した次の日、ポットラックで知り合ったヨッティーの一人から、今後無線機でお互いに連絡を取り合おうとの誘いを受けました。 ところが、ココマージュに装備してある無線機はアマチュア用の無線機なのですが、彼等が使用しているのはSSB無線と言って、日本では本船用無線機として装備されている種類の物で、私のものとは送信できる周波数が異なります。その事を彼に話すと、彼は私の無線機の種類を聞くので、私が「日本のアイコム社製のXXXXという型式の無線機だ。」と答えると、暫く何処かに行った後戻って来て、私が次に寄港するマリーナに友人のヨッティーがいるので、その人に聞けば、アイコム社製のアマチュア用無線機をSSB無線の周波数も送信できる様に、簡単に改造できると言うのです。
 (事実、次に寄港したマリーナに移動した翌日にその友人が訪ねてきてくれて、改造方法を書いた紙を置いて行ってくれました。多分彼から情報が入っていて、ココマージュが来るのを待っていてくれたものと思います)
 我々日本人の間でも知らない日本製の無線機の改造方法を一体どうやって入手できたのか? しかも非常に短時間の内に・・・? 私には実に不思議に思えました。

 ヨーロッパの沿岸を航海していた時に出会ったヨットは、約8割が季節の良い期間だけ家族や知り合いとヨットを楽しむ、いわば趣味でヨットに乗っている人達でしたが、ここカナリア諸島のマリーナで出会うヨットは、8割以上がこれから大西洋を横断しようしている人達です。
 中には既に複数回横断しているヨッティー達も多く、彼等の間では仲間意識が強いため、その中で必然的に情報網が構築されていったのだとは想像できますが、現在では信じられないくらいの情報量を持っているようです。
 我々も彼等と接触して来たお陰で、これまでどれだけ助けられたか判りません。

 彼等の情報交換手段は、昔からの口コミに寄るものに加えて、SSB無線による会話(日本のオケラネットと同様、ヨッティー間で使用する特定の周波数を設定していました)、およびSSB無線を利用したインターネットによるものが主な物の様でした。 細かなところまでは判りませんでしたが、SSB無線を利用したインターネットは昔からのパケット通信による方法では無く、どこかの非営利団体が提供する特別な仕様のモデムと、サービスを利用していました。 今度機会があったら、再度確認してみようと思っています。

 グラシオサ島に暫く滞在しようかとマコと相談し始めた矢先、現在の良い風が吹くのは明日までで、明後日から一週間は逆向きの強い風に変わるとの情報がヨッティー達から入ったので、急遽予定を変更して10月17日にランザロテ島(Lanzarote)のプエルト・カレロ(Puerto Calero)マリーナに向けてグラシオサ島を出港することにしました。
 グラシオサ島からランザロテ島までは1kmくらいしか離れていませんが、プエルト・カレロはランザロテ島の南西の端にあり、グラシオサ島とは丁度島の反対側になるので、全部で約35マイルくらいの旅程になります。 ヨッティー達に見送られながらグラシオサ島のラ・ソシエダド(La Sociedad)港の桟橋を離れ、ランザロテ島の一番北の端の岬を回りこんで、島の東海岸に沿って南下して行きました。 ランザロテ島は昔火山の噴火によって出来た島であり、まだ草木が生えていない火山性の黒い土壌で島中が覆われていて、あちこちの山は昔の噴火口の形をそのままの格好で残しています。

 山に大きな木は生えていないので当然雨水による水は期待できないため、島には蒸留して飲料水をつくる工場が3つあり、その工場で作る水で全島の水を賄っているそうです。 途中ランザロテ島の首都アレシフェ(Arrecife)の町の沖を通過すると、観光の島だけあって港の中には、巨大な豪華客船が2隻も停泊しているのが見えました。 さらにその南には空港があり、10分に1回くらいの割合でジェット機旅客機が離発着しています。ここカナリア諸島は、ヨーロッパ人にとって避暑地であり、きっとアメリカのハワイの様な感じなんだなぁとの印象を受けました。

 マリーナに到着する手前にカルメンの町があり、沖から見るとこの島の町の特徴が良く出ていたので、写真を撮って載せてみました。

 プエルト・カレロマリーナでは、丁度年一回のビッグイベントであるレガッタレースの最終日で、沖でたくさんのヨットがレースをしているのが見えていましたが、ココマージュがマリーナに到着した時にはこれが終了して皆がマリーナに帰っていたので、中はクルージングヨットの他に、レース艇のヨットでごった返しており、見物の観光客と相まって大混雑の様相を呈していました。
 到着後、混み合うマリーナの中に入って行きましたが、ヨットが多すぎて桟橋が見えず、初めてマリーナを訪れる我々には何処がマリーナの事務所で、何処がレセプション・バースなのか見当が付きません。 たまたま通りかかった岩壁に居た人に大声でマリーナの事務所の所在を聞いた所、何と既に通り過ぎた入り口にあった灯台の様な建物が事務所だと言うのです。
 しかし周りは狭くてもうUターンは出来ません。
 仕方なく丁度そこに泊まっていた大きなヨットに頼み込んで伴付けさせてもらい、そこから岸壁に上がって歩いてマリーナの事務所へ行ってきました。 今回載せてある写真は一番空いている時に撮った写真なので、混雑時のマリーナ入り口の様子とは大分違いますが、右側の8角形の灯台の様な建物がマリーナの事務所で、さらにその右側でトラックが停まっている場所のさらに右側がレセプション・バースです。

 プエルト・カレロのマリーナ(北緯28度55分、西経13度42分)はランザロテ島では一番設備の整っているマリーナで、整備するための工場やヨットを吊り上げたまま自走できるクレーン等も備わっており、場所的には高級別荘地(?)の中に作られています。 周りの火山性土壌の砂漠とは対照的に、この一角だけは椰子やフェニックス等の南洋の木が優雅に覆い茂っており、マリーナの周り建てられている建物も、他とは異なって皆窓が大きくて高級感があります。 このマリーナを見に訪れる観光客も多いのですが、周りには4つ星マークのホテルが一軒ある以外は全く宿泊施設が無いにも関わらず、マリーナの中にいくつもあるレストランは皆夜遅くまで賑わっているので、恐らく周りの別荘地の住民達がレストランで夕食を楽しんでいるのだと思われます。
 さすがにここまで来るとヨットは皆外洋仕様で大型船が多く、50フィートクラスはざらで、逆に40フィート以下のヨットはあまり見かけなくなりました。


                                                  恒二 & まこ