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第4回

少女は,小屋の中で蚕に桑の葉を与えていた。蚕は神聖な生物であった。そしてなにより富を与えてくれる。大和の絹はきめの細かさ,色の美しさでも唐の絹にまさるとも劣らない。蚕は繭に入って新生する。生命力の象徴である。蚕の世話をして,繭から糸をとって布を織るのは,天皇家の女性の大事な役目である。しかしこの少女は,役目ゆえではなく,この健気な生物の世話をするのが好きであった。

紀皇女である。

「最近の姫の中には,家の中にばかりこもって,あなたたちのことを気持ち悪いと言う方もいらっしゃるとか,ひどいわね。」

蚕に話しかける。家にこもって難しい勉強をするよりこの子達と一緒にいる方がどれほど楽しいだろう。

小屋の入り口から声が聞こえた。

「姫様,文がまいりました」

「だれから?」

去年あたりから,いろいろな殿上人が文を送ってくれる。でも,まだ彼女を心動かさない。どうせまたつまらない歌だろうと思った。

采女は紀皇女に耳打ちした。

「弓削皇子様からでございます」

桑を蚕にやっていた手が止まった。

弓削皇子…あの方が送ってくる文だけはほかの方と違った熱さのようなものを感じる。

「みせて」

紀皇女は,小屋を出た。





(2002/8/31)

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