美術館の建築自体は、実は脈絡のない6つの建築計画の組合せによって出来たもの。50年にも及ぶ建築期間の結果、建物内部はとても複雑です。
イギリスではV&Aと呼ばれ、ロンドンの人にとても親しまれている美術館、それがここビクトリア&アルバート美術館です。
ハロッズ、ハーベイ二コルスなど有名なお店が並ぶブロンプトン・ロードを抜けて、サウス・ケンジントンまでいくと、クロムウェル・ロードに面した堂々としたファサードが見えます。これは後にバッキンガム宮殿を造ったアストン・ウェッブの作品。16世紀初めのフランドル様式が基本です。

ヴィクトリア朝時代、アルバート公によって1852年に創設されたこの美術館は、完成したのは1909年、部屋数は145、すべての部屋を回ると、なんと10km以上の距離(!)です。とても1日ではすべてを観て回ることは不可能です。また、5世紀にわたるイギリス美術を一度に観ることの出来る唯一の場所でもあります。有名なコンスタブル、ターナーなどは「イギリスの風景画家」のコーナーにあります。

特に有名なのは衣装のコレクション。美術と工芸の館であるここは、衣装ばかりでなく、染織品、陶磁器など女性には特に人気が高いのもうなづけます。日本の陶器や漆器のコーナーもあるのですが、意外なことに海外で見ると、改めて日本の文化のその精工さ、完成度の高さを再発見します。

イギリスの子供にきかせるお話として、日本でも人気の高いピーター・ラビットの作者ビアトリクス・ポターも、そのお話を描く時の為にV&Aの衣装コレクションを訪れたそうです。ケースから衣装を出して、実際に見せてくれたことに対して、ビアトリクス・ポター自身も驚いたという記述の手紙も残されています。そして、この時の彼女のスケッチは今もここに保管されているのです。

美術館を訪れる時の私のもうひとつのお楽しみが、ミュージアム・カフェ。
近年、お洒落なカフェがイギリスの美術館にはたくさん出来たので、そこでランチやお茶するのも楽しみにしています。
この時は夏だったので、中庭にサマー・シーズンだけのカフェができていて、そこでアフタヌーン・ティーを頼みました。
スモークサーモンのサンドウィッチとレモン・ショートブレッド、スコーンとクロテッド・クリーム。このセットで£7・50。
さらにシャンパンが付くと£12・50です。夏の昼下がり、噴水を見ながら中庭で休んでいると、サウス・ケンジントンの喧騒がうその様です。
隠れたおすすめスポットです。

ここは基本的に常設展示には入場料がかかりません。ですから、きっと毎日のように通っているのでしょう、館内で模写している学生もたくさんいて、日本と比べると羨ましい限りです。イギリスと日本をくらべると、博物館や美術館、ひいてはアートやアカデミックなものがとても身近に感じられるのです。水曜日と最終の金曜日は午後10時まで。こちらで、キャンドル・ライト・ディナーというコースをいただくこともできるそうです。他にも様々な手段で来場者に向けてアプローチを行なっています。いつでも行くことができ、そこは誰にでも開かれている。V&Aの最初のディレクター、ヘンリー・コールの「ミュージアムは誰にでも開かれた教室であるべきだ」という言葉はここにも生きています。

Victoria & Albert Museum www.vam.ac.uk