【1890年代以降のコルセット】



1890年代末に、胴から腰にかけて細く洗練された姿が好まれるようになると、胸を張り 腹部を整えるためにさまざまなコルセットが現れました。 なかでもコルセット作りで有名なフランスのガッシュ・サロート婦人[Madame Gaches Sarraoute] は1900年に衛生的に優れたコルセットを創案し注目を浴びました。 その特徴は、前面の貼り骨を腹部に沿って曲線せず平らにする事でした。 胸から腹部までをまっすぐにするのです。

それからまもなく、前面中央の下端部に靴下つりのガーターをつけるようになったので、 これを着用すると腹部を適度に押さえて姿勢を直すことになりました。 コルセットの上端は、乳を圧迫しない程度に低かったので衛生状態変良かったのです。

なお、靴下つりのガーターは19世紀の80年代末頃現れていましたが、 19世紀末まではコルセットを長いペティコートの上に着ていたので、ガーターを コルセットの下に取り付けることは不都合でした。 そこで、ガーターをウエスト・バンドに縫いつけたものをコルセットとは別に用いていたようです。 19世紀の始め頃からガーターをコルセットの下端に取り付けることが一般化しました。 ガーターはゴム布をサテン地で覆って仕立てたもので、その先に 金メッキのクリップ形式の留め具がつきました。 このガーターをコルセットの前中央の下端部、あるいは時により脇にも縫いつけたのです。



20世紀初期にはコルセットをコンビネゾン(数種の下着が組み合わさったもの)や ドロワーズ(スカートの中に着用する半ズボン)の下に直接着用する習慣になっていました。 その他に装飾用の長いペティコートを用いました。 ガッシュ・サロート婦人創案のコルセットは流行を追う女性の間で大変人気がありました。 ところがまもなく、細いウエストはますます細さを強いられるようになり、前面は強い バスクで平らに圧迫されて腹が両脇へ張り出し、乳の部分はコルセットの上端から浮き出す という誇張的なシルエット絵の発展し、いわゆる『Sカーブ』と言われる シルエットが現れるのです。

婦人達は胸から腰にかけてS字になるように整えました。この種のコルセットはいずれも 布を縦に全体で20枚、あるいはそれ以上に及ぶものでした。 1904〜5年にかけて流行の絶頂に達しましたが、それ以来次第にシルエット を直線に形作ろうとする傾向が見えてきます。 コルセットは腰の部分の長さが増し始め、布のはぎ目もなるべく少なくして、 直線的に裁て堅い貼り骨を減らして、伸縮性に富む布を腰の部分に挿入し、動きの自由を 考慮するようになりました。

コルセットの長さは年々増して、ウエストから下へ40p以上もの長さに達し、 これで腰を締めたのだから座る事も困難であったとも伝えられています。 ときに、ホブル・スカート(第一次世界大戦前ポワレが発表した膝から下へ 向けてとても細く裁断しドレープをよせたスカート)の全盛時代だったので、 細く滑らかに貼り骨を出来るだけ減らして、細いシルエットを吟味したのでした。



【コルセットの消滅】



コルセットが下に伸びるにつれて、上は短くなる一方でした。こうして、 腰の部分だけをつつむコルセットが誕生したのです。腰だけの コルセットは現代生活にふさわしい型として普及されました。 特に、ゴム布を併用したものは着心地も良く、活動するにも便利なため、 あらゆる女性に愛用されました。

一方、胸まで届く旧式のコルセットは、古い時代の婦人によってしばらくの間 愛好されました。なお、コルセットの胸の部分が著しく縮小し、胸が開放されると ともに、おさえとしてブラジャー(フランス語でブラジェール[brassiere]) は必携のものとなりました。

コルセットの使用は、第一次世界大戦が激化したわずかの期間廃れましたが、 戦争の終結後再び重要な一部となりました。戦争を機会に女性が男性と同じように 社会に進出し、経済的にも独立するのが珍しくなくなると、服装の上にも 女らしさの特徴を故意に避けようとする傾向が現れました。 胸のふくらみを嫌い、腰を小さく縮め、スカートの丈を膝の辺りかまたはそれ以上に 短くして男装を真似たボーイッシュ・スタイルが現れました。そして、胸から腰にかけて 直線的に整えるコルセットが愛好されたのです。

また、1850年ごろ大西洋両岸で、衣服改革運動の団体が紐できつく締める事は 女性の体に悪影響を及ぼすと提唱したことがきっかけで、 大いに論争の的となりましたが前にもあるようにS字カーブの流行により、 コルセットの消滅はありませんでした。

1900年初期には、服飾デザイナーのポワレ(20世紀初頭の大クチュリエ)が 女性をコルセットから開放するように主張し、コルセット衰退のきっかけを 作ったとも言われています。

コルセットは次第に短くなっていった為ブラジャーが考案されました。初期のブラジャーは シュミューズの上に着用していましたが、やがて不要になりブラジャーとコルセットの間に シュミューズを着る必要がなくなりました。 この頃、コルセットは靴下つりとして使われていたのですが、まもなく多くの女性がコルセットを ガーターに置き換え、ブラジャーと同じように直接肌に着用しました。 また、コルセットから開放されたシュミューズはスカートと重なって ペティコートのようになりました。ペティコートはかつてのクリノリーヌ程ではないにしろ、 スカートを広げる役目もしていました。

このように、ウエストを細く、細く締める必要がなくなったこと、ファッションスタイルの 流れの変化などにも伴ってコルセットの姿は消えていきました。 なお、男性のコルセットは細胴スタイルのロマンティック時代を最後として廃れていきました。