T.メジャー級

「ああ死にたくない。何故ならこんな音楽が聴けなくなるから」

★キングクリムゾン

「新世代への啓示」LPで所持。遍歴のプログレの章に出てくる「兄が聴いていた凄まじく恐ろしい音」とはまさにこのアルバムのことだった。当時の俺に「宮殿」や「エピタフ」の音は文字通り衝撃だった。全てはここから始まったと言ってもいい。まさにバイブルだ。結婚後俺がパイオニアのステレオを引き取ったことに伴い兄貴が所有していたこのレコードも引き取った。そういう意味では最も古くからあるレコードの部類に入る。今俺の部屋にあるレコードのうち本アルバムを含む2枚だけが棚の中ではなく部屋の壁に飾ってある。ある意味子供時代からずっと俺を見守ってきた守護神のようなアルバムなのかも知れない。

「太陽と戦慄」LPで所持。やはり兄貴から。表題曲で衝撃はさらにエスカレートする。一方で「放浪者(エグザイル)」のようなノスタルジックな原風景を鮮明にビジュアライズしてくれる美しい佳曲も。特にライヴでは映える曲だ。聞くなら「USA」収録のアズベリーパークでのテイクが手っ取り早い。トヨタ車イストのCMではなんと「イージーマネー」が。よくぞ探してきた(笑)。

「レディーズオブザロード」CDで所持。オリジナル作品がザッパ張りに大胆にアレンジされ、かつ完成度も高い。ライヴ版としては出色の出来。内容、音質共に少なくとも「USA」や「アースバウンド」よりは上だと思う。72年フランクフルトにおけるギグで北村昌士著「キングクリムゾン」にもその時の模様が書かれている。特にCIRKUS〜GROONにおけるオリジナリティー溢れるインプロヴィゼイションが特筆ものだ。やはりスタジオ録音とは全く別の曲に仕上がっているラストの「宮殿」のブルージーなアレンジにも驚かされるが曲の中途で突如プチっと音が切れてしまうのは残念。最初故障だと思ってCDを買ったお店に持っていってしまった(笑)あのプリップさんのことだから何か気に入らない音でもあったのかも知れない。

★イエス

 「究極」CDで所持。プログレ界の大御所たちの70年代後半の作品群は決して正当な評価を得ているとは言えない。さすがに本作品を悪く言うイエスファンは少ないとは思うが、どうしても71〜72年頃の作品やロンリーハートの80年代がクローズアップされがちだ。イエス自身もCLOSE TO THE EDGEではなく本作中のAWAKENが最高傑作だと言っているのだから。メディアが最高傑作と言えばすぐそれに追随する日本人的メンタリティーもあるかもしれない。昔、日米両紙のアンケートでビートルズのベスト10を出したことがあった。日本人はLET IT BE や YESTERDAYが上位に来たがアメリカではA DAY IN THE LIFEがトップだった。価値観の多様化と言われる今なら、もう少し違った結果になるのだろうか?是非余計な色眼鏡なしでどちらかと言うと地味と言われる70年代のロックを聴いてみてほしい。そして洋楽にそれほど関心のない人たちが抱いている70年代の印象イコールビージーズなどのディスコミュージックという悲しい現実から目覚めてほしい。話が大分それたが本作や「トーマト」「ドラマ」あたりの音は一般に全盛期と言われる頃と比べても全くテンションが落ちていないし、むしろプログレのスタンダードとなりつつある70年代前半の曲が食傷気味でほとんど聴く事がないのに比べ、このあたりの音の方が最近でも比較的良く聴くし飽きる事がない。

★ソフトマシーン

「SAME」決してマイナーバンドではないのだが、プログレ入門編レベルに留まっていた兄貴のコレクションに入ってなかったこのバンドは、ロック雑誌で知り合ったペンパルの女の子が丁寧な曲目リスト(写真)つきで送ってくれた一本のテープによって知ることになる。それは単なるプログレというよりアート(芸術作品)としての生々しさを内包しており当時の俺には早すぎる音だった。逆にいうと彼女自身がそれだけ凄いと言う事になるのだが。何でもデザイナー志望とかで日夜寝る間もなく課題に取り組んでいたのが印象的だった。数ある彼らの作品の中でもやはりこの1stのインパクトが一番だろう。次点には、彼らの得意分野である疾風のようなジャズ風インプロヴィゼーションが堪能できる「ソフツ」を挙げておきたい。

★ケイト・ブッシュ

「天使と小悪魔」テープで所持。これも一時兄貴がよく聴いていた。はたしてプログレなんだろうかという感じだが、この際そんなことはどうでも良い。広瀬香美の上を行く突き抜けるような声も、楽器の一部と思えば気にならない。イメージとしては「クリムゾン」のエグザイルズ系の夕暮れ時の荒野を思わせるビジュアルな想像力をかき立てられるような世界だ。名曲「嵐が丘」のイントロだけは「さんま御殿」で聞いた事ある輩もいることだろう。3rdの「魔物語」も同様に強い視覚イメージをもたらす作品(この辺になると確かにプログレ然としてくる。ただし年代はかなり後だ)でこちらは真夏の森の夜といったところだ。

U.マイナー級

★ベガーズオペラ

「ウォーターズオブチェンジ」CDで所持。ミュージカル「ベガーズオペラ」は見たことはあっても。同名のバンドの存在は70sロックファンでなければ知らない人も多いと思うが、是非これを機会に聴いてみてほしい。ベガーズと言えば「パスファインダー」(馬に乗った宇宙服の男のジャケット)が最高傑作と言うのが一般的な評価だ。確かにドナサマーも歌っているマッカーサーパークは名曲だと思うし、キャッチーでいいアルバムだとは思う。しかし2ndの本作に対する評価はシンコーミュージックから出版されている書籍「UKプログレッシヴロック」(価格1890円)のお粗末な解説をはじめあまりかんばしいものではない。ただキーボード主体のプログレと言うだけでは、それ自体は何ら目新しくもなんともないし俺もそこまで思い入れはなかったろう。やはり彼らの特徴であるポップでキャッチーなメロディーがきっちり共存しているところに本作品の価値があると俺は思う。特にI’ve no ideaとSilver peacockの2曲は素晴らしいし全体を通してもこれと言った穴がない。はっきり言って俺の中ではマイナーブリティッシュロックアルバムの中で5本の指に入る名作なのだ。

「GET YOUR DOG OFF ME」レコードで所持。前出の書籍の解説では「毒にも薬にもならない単なるポップロック」との評価だが俺から見ればそれこそ毒にも薬にもならない解説だ。プログレバンドの作品として捉えてしまうからイケナイ。一般的なロックバンドの作品として聴いた場合、実はとてもバラエティーに富んだ、実に良く出来たアルバムなのだ。ところどころベガーズならではのテイストも効いている。スタイルが変わったからと言ってすぐ「らしくない」と切り捨てることは、とても損な聴き方だと思う。それこそB1のクラシカルガスのみが聴きどころなんていうつまらないことになってしまうが、俺の中ではアルバム全体の中で単なる飾りの一部くらいの位置づけでしかない。ただプログレ色がなくてもこれだけお気に入りでいられるのは、本作品が実はまだ73年というロック全盛時期の音だということもあるかもしれない。

★グレイシャス

「!」LPで所持。「ヘブン」はレコードで聴くと迫力があるゾ。個人的にはイングランドのPOINSONED YOUTHと並ぶマイナーブリティッシュロックを代表する名曲だと思う。エロい内ジャケもビックリ。まさに宝を掘り当てるような醍醐味が70Sロックにはつまっている。

★スティルライフ

 「スティルライフ」LPで所持。キーボードプログレの名作。再発版なのでクレジットがないとされていたメンバー名もちゃんと載っている。もちろんヴォーカルはピーターハミルではなかった。こういう作品をあえてLPで再発してくれる海外のレーベルに感謝。日本ではCD一辺倒なのが寂しい。

★グリフォン

 「真夜中の狂宴」LPで所持。高校くらいの時だったと思うがNHK−FMのBBCライブ特集をテープで録って彼らの存在を知った。その時の曲目が当アルバムのものだった。トーク主体になってしまった今の番組と比べると隔世の感がある。トータルな仕上がりとしては3rdだろうがバンドの看板曲はやはり当作品の表題曲か。

★メイブリッツ

「メイブリッツ」レコードで所持。臨場感たっぷりのヘヴィーな音はモロにレコード向き。ショップではプログレコーナーに属しているが音自体ハードロックに近い。とは言うもののブルースとかハードロックといったようなカテゴリーに収まりきらない強い個性を持つ。これだけの愛聴版にもかかわらず何故か2ndはあまり印象に残らなかったのだが、それこそレコードで聴けば違うのだろうか。SMOKIN THE DAY AWAYとTOMORROW MAY COMEの特徴のあるリズムが混然一体となり不思議と耳から離れない。

★グレイヴィー・トレイン

「1st」レコードで所持。アルバムジャケットは時として作品そのものの評価を高めてくれる時がある。最初買ったのはポリドールの複製版でシングルジャケットだった。音的にジェスロ・タルの亜流なのか、ブルースバンドなのか、今ひとつ中途半端でハッキリしないイメージだった。ただ2作目以降の音はありきたりの3流キーボードプログレでしかなく、その中では本作のほうがブリティッシュ然としてまだマシという程度だった。そのうちガイド本で本作のダブルジャケットの裏面があることを知った。表面は昼下がりのさびれた鉄道の駅のホームでのんびりと汽車を待つ小人の図だ。だが裏面ではもはや陽が沈まんとする夕暮時でシルエットと化した小人が一向に来ない汽車の方向を心配げに見つめている。実際にヴァティーゴのマークのついた待望のダブルジャケット版を入手したとき、原寸大の裏面の物寂しげな情景に彼らの汽車の音を思わせるやや独特なリズムセクションが見事にオーヴァーラップした。その瞬間彼らの音は、メイブリッツやパトゥーのようにひとつの個性となったのだった。辞書によれば、そのバンド名は「不労所得」というイミらしい。こってりとした焼肉ソース(Gravy)のような味わいをもたらしてくれる人生が、汽車のように止まることなく進んでいく、という事なのだろうか。俺の語彙のひとつに加わりそうだ。

★フラッシュ

 「イン・ザ・カン」レコードで所持。CDは未発売?なんと言ってもこのジャケだろう。70年代だからこそこんなのが存在し得たと言っていい。やはりあの時代は素晴らしかった。音的にもイエスの亜流だの変な先入観抜きに聴けばそこそこ楽しめる。だが少なくとも「イエス3rd」に匹敵するくらいの満足度はある。(注:ようやくCDも発売されたようだ 08.5)

★ストローヴス

もうひとつイエスファミリー。こんなのあったんだ〜という感じのベスト。CD2枚組なだけに曲もたっぷり入っておりオリジナルを1枚ずつ収集していくのは骨なだけに何とも有難いし、なんせ飽きない。いつ聴いても本当に敬虔な気持ちにさせられる名曲「Benedictus」をはじめブリティッシュワールドにどっぷりつかれる。

★パトゥ

「Roll’em Smoke’em Put Another Line Out」テープで所持。ジャズロックとハードロックという不思議な組み合わせが彼ら独特のオリジナリティーを作り上げている。例えばTYAにしてもあくまでハードロックではなくブルースロックとの組み合わせであり、そちらの方が一般的だ。そしてその組み合わせの妙が作り出す何とも言えない味。例えば、そのパワフルで強烈なリズムの間に一瞬垣間見える哀愁。それは普通は聞こえることのないジャズピアノの音だ。そしてソウルフルなヴォーカル。これらの要素が渾然一体となり結果として心にしみるパトゥーワールドが出来上がる。何か一幕ものの寸劇を見終わったあとの物悲しい余韻のようなものが味わえる。マイナーブリティッシュシーンの中ではメイブリッツと並んで異彩を放つ存在。

★グリーンスレイド

「1st」テープで所持。教会音楽風(この手の音には個人的に思い入れが強い)の荘厳なキーボード群と歯切れの良いリズムセクションが共存。相反する二つの要素が互いの魅力を引き出している好例だ。俺がプログレに求める理想型がそこにはある。例えば「Drowning Man(溺れる者)」におけるミサ曲を思わせる厳かな前半部と、中盤以降のうねるようなリズムが渾然一体と展開していく流れは見事としか言いようがない。そしてこのバンドもまた彼らだけの世界を確実に持っている稀有な存在だ。名実共にマイナー英プログレシーンにおける筆頭格であり、4大バンドに匹敵する実力を兼ね備えている。

★クォーターマス

「SAME」テープで所持。初期ディープパープルのエキスをELP風に開花させた名曲が「Black Sheep of the Family」だ。マイナープログレシーンではこのようなヴァリエーションが幾重にも楽しめて本当に迷宮の森の中にいるようだ。ELPをハードにしたような彼らの音は、ある意味ELP以上に好きなタイプの音だ。本作1作のみ(?)なのが惜しまれるバンド。

★フィールズ

「SAME」テープで所持。これも又イイバンドだ(笑)レアバードの叙情性にグレーンスレイドのリズムセクションが加わって出来上がったのがこのバンド。グリーンスレイドほどの完成度はないものの、レアバード仕込みの心にしみるメロディーが強力なリズムセクションによってさらに映えており、特に「僕の友達」「ノットソーグッド」の2曲は素晴らしい。

★ジョーンズィー

「キーピングアップ」テープで所持。クリムゾンの「リザード」の持つ牧歌的な中に物悲しい叙情性を散りばめた音が特徴。ある意味亜流の域は出ていないのだが「老兵は死んでいく」など、珠玉の曲が並んでおり、改めてこのシーンの面白さ、奥の深さを実感させられる。

★イングランド

「ガーデンシェッド」テープで所持。「ポイズンドユース」は、4大バンドを含む、全プログレ作品の中でも5本の指に入る屈指の名曲。それこそ「宮殿」や「危機」と肩を並べるほどのドラマティックな曲だ。音的にはイエス風でテクニックも申し分ない。バンド自体のオリジナリティーがもっとあれば、マイナーシーンに甘んじることはなかったろう。

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