まだブックオフなど存在せず、神田古本街に足繁く通っていた学生の頃、その中の一角にある洋書専門店で見つけた本の美しい絵に惹き込まれ衝動買いしたのがラファエル前派との出会いである。中でもミレイとウォータハウスには魅せられた。写真のような鮮明さと白人女性の高貴な美しさ、あるいはこれまた写実性溢れる情緒たっぷりな風景など全てがつまっていた。一方でラファエル前派の代名詞とも言われるロゼッティの絵にはそういった要素が感じられず何かエロティシズムも意図的で生々しい感じがして興味が持てなかった。プログレ系のアルバムデザインにも用いられる事の多いこれらの絵だが、いずれも発祥がイギリスであり神話やシェークスピアなどの古典文学といった共通の主題が取り扱われる事が多いだけにそれもうなずける。
ラファエル前派関連の本
●ミレイ
ミレーとよく間違われるようだ。入水自殺をはかるハムレットのヒロインを描いた「オフィーリア」が有名だが、ここでは俺の大好きな2作品を紹介したい。いずれも美しい夕暮れ時の景色が印象的だが俺の所持する本の解説ではその風景について「haunting(忘れられない)beauty」と表現している。Dream of the pastを見ていると幻想的なイントロで始まるクリムゾンの「放浪者(エグザイルズ)」のメロディーがオーヴァーラップしてくる。Autumn leave(落ち葉)のほうはやはりクリムゾンのプログレ版「夕焼け小焼け」と言える「トリオ」の美しくも悲しげなヴァイオリンの旋律が良く似合う。

Dream of the past
Autumn leave
●ウォーターハウス
ストーリー性の強いウォーターハウスの絵だが最初この絵を見た時、自分の髪をくくりつけて恋人に追いすがる美しい失恋物語だと思っていた。キーツの詩を描いたこの作品、実際は女が妖艶な魅力で騎士を陥れようとしている図だとの事。前者であればケイトブッシュの「魔物語」の中の「少年の口づけ」のメロディーがこの絵にはぴったりだったのだが。いずれにせよ「魔物語」の持つ雰囲気ではある。ところで彼の描く女性の顔というのは一目でそれとわかるほど共通している。どうしても自分好みの顔になってしまうというのはPlumpyDollsを描いていて俺も感じたことなので良く解るが、幸い彼の描く女性は俺も好きな顔なのでその分多作なのが嬉しい。

The Beautiful Woman Without Mercy(原題はフランス語)
●その他
19世紀当時の社会の底辺で働く労働者を描いたもの。石を割りつづけるキツイ仕事に疲れ一人ひっそりと死んでいく。ラファエル前派にはこんな絵もあるのだ。そもそも彼らの本分はラファエロ以降の理想主義的画風を廃し、物事をありのままに表現するということなのだ。

The Stonebreaker/Henry Wallis