●2008年初雑感

まずK−1ヘビー級。バンナ戦以降、日本人として唯一期待していた沢屋敷がPアーツにあっさり負けてしまったのには何とも愕然としてしまった。それにしてもアーツ、ホースト、ボンヤスキー、そしてシュルトと何故K−1王者はこうもオランダ人ばかりなのだろう。

続いてジュニア。大晦日ではマサトの勇姿を久しぶりに見た。やはりこの階級での日本人が一番颯爽としていて溜飲が下がる。いい物を見せてもらった。

総合では船木と秋山の復帰戦が印象的だった。船木はやはり過去の人。同年代とは言え落ち目の桜庭にあえなくタップ負け。少し寂しかった。秋山は反則とは言え前回は実質桜庭を圧倒していたし、唯一その実力が未知数な選手だったので関心を持って見たが、負けてしまったのには驚いた。勝った三崎という選手のことは知らなかったがミドル級世界王者との事。今後少し注意して見ることにしたい。

そしてもうひとつ時代の流れを痛切に感じたのが、K−1のCM中に何気なくチャンネルを変えた時に目に入った裏番組のハッスル祭りとやらに登場していた川田や天龍だった。57歳の天龍はまだしも、どう見ても硬派にしか見えない川田あたりが、レイザーラモンやインリンに混じってこんなおゆうぎ会プロレスごっこに参加しているとは思わなかった。キンターマンは元金網デスマッチでならした金村ゆきひろだし、アジャコング、曙にあのスコットノートンまで一緒にチーチーパッパとやっている。プロレス会の老人クラブとでも言うのか、その昔ストロングスタイルの日本のプロレスシーンに対してエンターテイメント性を前面に出したアメリカンプロレスが反面教師となった時期があったが、そのアメリカン路線の究極の姿がいつの間にか日本で展開されているのだ。ただ一概に批判的な目で見ることができないのはそこには日本のプロレス界のいやおうない衰退や引退後の保障のなさという厳しい現実も垣間見る事ができ、そうした人生劇場の縮図とも映るからだ。一家言ある天龍あたりはどういう思いで出演(?)しているのだろう。曙のがぶり寄りを受ける天龍が何かプロレス界(いや相撲界も含めてかも知れない)の腐りかけた屋台骨を一人で背負う最後の戦士(あのロードウォリアーズとのタッグ時代、彼自身ジャパニーズウォリアー=戦士と呼ばれていた)に思えてきた。

●格闘技観戦遍歴

最初はプロレスからだった。見始めたのは、新日で言うとホーガンが猪木の首を刈ってアメリカに戻った直後。全日は鶴龍コンビの頃だった。今のつまらなさと比べると信じられないくらい面白かったしハマっていた。週ゴンは欠かさず楽しみに読んでいた。特に在日外人レスラーの日本人との絡みや彼らのコメントを読むのが大好きだった。当時から外国人が日本や日本人のことをどう見ているのか気になったし、お世辞でも日本の○○はタフだとか強いとかいうコメントを読むと嬉しかった。今のK−1やプライドの外人インタビューは本当に日本のプレス向けのお世辞にしか聞こえないのが痛々しいが当時のプロレス界は日本人も外人相手に互角以上の勝負をしていたと思う。

例えばスティーブウイリアムスは好きだった。K−1での哀れな末路が記憶に新しいが、来日した当時は本当に生きが良くて強かった。最初は新日だった。当時すでに落ち目だったとはいえ猪木を豪快に蹴散らし、コイツは強すぎるという鮮烈な印象を受けた。この感じを抱いたのはやはり来日した当初のロードウォリアーズくらいのものだった。新日では敵なしという状態で、やがて全日に移りそこに鶴田が立ちはだかった。これは本当に興奮した。当時鶴田も全盛期と言ってよかった。まさに油がのった同志の対決。初のシングル戦(90年)で鶴田があのウイリアムスをバックドロップで仕留めた時は鳥肌が立った。何せウイリアムスが負けるのを初めて見たのだ。ウイリアムスの「全日のレスラーは体が大きく戦いがいがある」というコメントが何より嬉しかった。ちなみに全日レスラーで他に印象に残っているのはキッドとスミスのブリティッシュブルドッグスなど。外人レスラーの入場テーマと70年代ロックも切り離せない。特にレイナードスキナードのフリーバードはテリーゴディーによって知った名曲だ。(彼はアメリカでフリーバーズというトリオを組んでいたほどだ)他にAブッチャーの吹けよ風呼べよ嵐/ピンクフロイド、Bブロディーの移民の歌/ZEP、Bベイダーのアイズオブザワールド/レインボウ、そしてロードウォリアーズのアイアンマン/ブラックサバスと枚挙にいとまがない。

鶴田×ウイリアムス三冠戦

 

新日ではやはりベイダーか。猪木が例によって初対決で叩きのめされたあとのリベンジ戦(このあたりは猪木一流の演出か)、ベイダーの腕を凶器で傷つけたのはちょっとズルかったが最後腕固めであのベイダーからタップを奪ったのはさすがだった。全盛期の猪木を知らないのは残念だがそれでも火事場のバカ力と言われたカリスマ的な強さは当時まだまだ健在だった。その象徴が鉄拳制裁であり、あれをやっている時の猪木は本当に強く見えたものだ。アックスボンバーやラリアットなどの力技に対してはフォールを奪われることもあったが何せ自分より全然体重の重い相手なのだから仕方がない。ただサブミッションでタップを奪われたという記憶はほとんどないように思うのだが。(まあ、当時それだけの相手がいなかったということもあるだろうが)ノゲイラあたりとやったら果たしてどうなっていたろうか。ノゲイラは身長・体重、試合のスタイル、あるいはサップなどの大きな相手との戦い振りまでもが猪木を彷彿とさせる。恐らく現在の格闘家のほうがレベルは高いとは思うが、少なくとも今の日本人格闘家の持っていない何かを持っていた、という点で見てみたい対戦ではあった。話を戻すが、ベイダーがホーガンのあとの新日外人レスラーとしての一時代を築いたことは間違いない。特に全日の雄であるハンセンとのドリームマッチはハイライトだったし、(最近当時のビデオを見たらゲスト解説が田代まさしだったのには笑えた)Sノートン戦もそうだが日本人では真似できないような迫力ある肉弾戦だった。彼らはただ体が大きいというだけでなく本当に強いレスラー同志だったからこそ凄い試合になったと思う。体格にめぐまれた日本人と言えば相撲出身の北尾がいた。CBビガロとのデビュー戦での勝利は期待を持たせたが、結局大成はできなかった。週ゴンにベイダーに北尾を鍛えさせタッグを組んでウォリアーズとのドリームタッグマッチを実現させてほしいと投稿し、掲載されたことがあったっけ(笑)。ロシアからのハシミコフをリーダーとするレスリング軍団との絡みも面白かった。長州はあまり好きなレスラーではなかったがロシアンチームの面々をリキラリアットで吹っ飛ばす場面はなかなか爽快だった。長州は相撲出身レスラーに心の壁みたいなものを持っていたと思う。(天龍は別だが)俺は元々相撲ファンだったから長州のそういうところがあまり好きになれなかった。

ベイダー×ハンセンIWGP戦(両者リングアウトでベイダーがベルト防衛)

 

アメリカンプロレスの象徴だったWWFの面々が来日した時(これも90年)もワクワクした。WWFの記事は週ゴンの巻末にいつも載っていたが遠い海の向こうの話で日本人レスラーとの絡みが実現するとは思っていなかった。(当時海外は今よりちょっとだけ遠い場所だった)特にホーガンをテレビで見るのは初めてだった。一般的にはホーガンやアンドレが来日していた頃が一番のプロレスブームだった訳だから、俺はそれよりちょっとだけ乗り遅れたファンだった訳だ。だから彼らはいわば伝説のヒーローだった。他にUウォリアーの肉体美を見るのも楽しみだったりした。日本人として日本代表外人のハンセンを応援するのは自然な感情だっただけにホーガンに負けてしまったのは残念だったが。それこそ日本でハンセンのフォール負けというのはほとんど見たことがなかっただけにやはりホーガンは強いなあという感じだった。ハンセンは馬場への忠誠心や天龍との友情にも見られるとおり、もっとも日本人になじみの深い外人レスラーであると同時に普段はリングとは正反対に物静かで読書好きという一面を持っており、彼のインタビュー記事などを読むのが本当に楽しみだったことを覚えている。

 

WWF来日時は馬場・アンドレのタッグやホーガン×ハンセン戦が実現した

 

前田、高田、山崎のUWFも見たが、当時のプロレスほどの興味は感じなかった。むしろプロレスがつまらなくなってK−1しか見るものがなくなった頃に仕方なく格闘技系を見始めたという感じだったからこちらも見始めるのが遅かった。すでに佐竹は引退していたし、Aフグも亡くなっていた。最初に見たのは武蔵が日本人トーナメントの決勝で外国人のニコラスペタスに敗れ、日本代表となったペタスが決勝トーナメントの初戦でイグナショフにあごを打ち砕かれるという、日本人としては実に面白くない大会だった。その後、武蔵は何とか決勝トーナメントでも外国人と互角に戦えるようにはなったが半分は有利な判定などに助けられてのもので見ていてつまらない。むしろプライドや日本人向けと言える軽量級のK−1やHEROSのほうが面白い。ちなみに俺のペンネーム「マサト」は魔裟斗から採っている。だが本音はヘビー級で強い日本人が出てきてほしい。現状プロレス界がまるでK−1のマイナーリーグみたいに成り下がっている(曙がいい例だ)のが元プロレスファンとしては悲しい限りだ。外国人相手に本当に凄い試合をやってのけたのは藤田くらいだろう。ミルコ戦、サップ戦、ヒョードル戦、勝ったのはサップ戦だけだったがいずれも質の高い試合だった。今回久々に復帰してきたのが嬉しい。次点はこれまた敗れはしたがシウバに善戦した吉田だろう。ただ両者ともある程度の年齢なので今まで以上の活躍を期待するのは難しい。先日HEROSの試合でかなりの成長を見せた秋山など若手にも期待したい。

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