Jealous Days
Prologue
パリの下町には評判のカフェがある。
気さくな人柄で常連さんからの絶大な人気を誇るメリッサおばさんの営むカフェだ。
もちろん、彼女の人柄だけではなく、置いてあるメニューのほっと一息つけるような素朴さや、そしてその味の良さが評判に評判を呼んでいるカフェだった。
そのカフェで最近見かけるようになった女の子がいる。
カフェエプロンをきりりと締めて、お客の注文にきびきびと対応するその様は、彼女の容姿と共にこのカフェのもうひとつの名物となりはじめていた。
「このサンドイッチをミヒャエルさんの所に持って行っとくれ。」
メリッサがその女の子にサンドイッチの乗ったプレートを渡すと、彼女は鈴を転がしたような声でこう答えるのだ。
「はい。ミヒャエルさんの所ですね。」
ミヒャエルさんム彼はこのカフェの常連さんだったが、彼女は常連さんに限らず、一度でもお客としてこのカフェに来た事のある人の事をよく憶えていたりするのだ。
カフェの入り口をくぐった途端、にっこり笑ったかわいい女の子が自分の名前を呼んで席まで案内してくれるのだから、自宅でくつろいでいる様な雰囲気を味わえる。
カフェと一緒に彼女の人気もうなぎ上りになっていった。
サンドイッチの乗ったプレートを持った彼女は、混雑しているカフェの中をきびきびと歩いていく。
彼女の動きにあわせてなびく髪はつややかな亜麻色。
「ねぇちゃん、次はこっちの注文を頼むわ。」
「はい。今行きますから、待っててくださいね。」
お客からかけられる声に答えて笑いかけるその瞳の色はすみれ色。
そう、彼女の名前はフランソワーズと言った。