Jealous Days

(1)


話は2週間前に遡る。


(その計画の全貌は定かではないんだけど、ヨーロッパで何か悪い事が起こりそうな予感がするんだ。その背後にはきっとBGがいるはずだ。)
イワンがこう予知した事がその発端だった。
イワンの予知はほとんど外れた事がない。
この先、ヨーロッパではほぼ確実に何かが起こるだろう。
早速、ジョーたちはヨーロッパへと飛ぶ事に決めた。
だが、ヨーロッパと言ってもその大地は広い。
そこで、それぞれが手分けして、各国の様子を探る事にしていた。
ジェットとアルベルトはドイツへ、張々湖とグレートはイギリスへ、ジェロニモとピュンマはスペインへとすでに向かっていた。
そして、ジョーとフランソワーズはイワンやギルモア博士と一緒に、フランスはパリへと向かう事になったのだ。
ミッションの進み具合によっては、どのくらいの滞在になるかもわからない。
ジョーたちはフランソワーズの案内により、ホテルではなくアパルトマンの一室を借りてそこで暮らすことにしていた。
4人で暮らすには十分過ぎるくらいに広いそれは、パリの大通りから少し外れた下町に建っていた。
当面はここを拠点として、パリ市内を動き回る事になるだろう。



各国に散った面々も各々活動を開始していた。
ジョーとフランソワーズもパリ市内を中心にいろいろ探ってみてはいるのだが、BGの手がかりを何一つつかむ事が出来ずにいた。
日々の焦りが募る中、パリに来てから1週間が過ぎようとしていた。



その日も朝から情報収集にパリ市内を歩き回っていたジョーが、アパルトマンに戻ってきたのはもう夕刻近かった。
今日は行動を別にしていたフランソワーズも、先に戻ってきているようで、奥のリビングからギルモア博士と会話する声が漏れ聞こえていた。
「フラン、戻ってきているんだ。」
彼女の笑顔を見れば、この焦燥感や疲労感も一瞬で消え去ってしまうだろう。
ジョーは自然と笑みを浮べ奥のリビングへと向かったのだが、フランソワーズとギルモア博士、その二人の会話の内容に首をかしげる事になる。


「……もう決めたんじゃな。」
「はい。明日の朝には出て行こうと思っているんです。」
「じゃぁ。わしはもう何も言う事はないよ。元気でな。」
「ええ。博士も。」


(フランが出て行く?どういうことなんだろうー)
全くわけのわからないまま、ジョーはリビングのドアを開けて、ソファーに座っている二人に声をかけた。
「ただいま。」
「あら、お帰りなさいジョー。お疲れ様。今何か飲み物を用意するわね。」
「ああ、お帰り。その様子じゃ、今日もBGの足取りはつかめなかったようじゃの。」
「ええ博士。フラン、飲み物は後でもいいから。」
フランとギルモア博士がそれぞれ声をかけてきたが、今のジョーにはそれに答えるよりもずっと気になることがあったのだ。
「それよりもフラン、今さっき、明日出て行くって言っていたみたいなんだけど。」
「あらジョー、聞こえていたの?」
「うん、ところどころだけれどね。」
「そう。ねぇジョー、このまま闇雲にパリ市内を歩き回っていても何にも成果は上がらないと思うのよ。」
突然話題を変えたかのように思えるフランソワーズの言葉に、ジョーは混乱していた。
「フラン、そりゃあ僕もそう思うけど。今まで全くBGの動向をつかめていないしね。」
「だからねジョー、私、バイト先を決めてきちゃった。」
「えっ、フラン、何を言ってー」
慌てて問いただそうとするジョーだったが、フランソワーズの言葉に遮られてしまった。
「この下町にすっごく人気のあるカフェがあるのよ。そこで住み込みの従業員を募集していたから、明日からそこに行く事にしたの。」


ジョーにとってこれは爆弾発言だった。
「何で!?」
思わず大声を出してしまったジョーに、フランソワーズは何でもない事のように話し続けるのだった。
「人の集まる所には情報も集まるものよ。その点、あのカフェはうってつけだわ。
メリッサおばさんー彼女はカフェのオーナーなんだけど、その人柄の良さもあって、あのカフェは老若男女を問わず人気が高いの。
お忍びで政財界の人も来るほどらしいわ。だからね、あのカフェには様々な人たちが出入りしている事になるのよ。きっと役に立つ情報も集まると思うわ。」
「だからってフラン、何も君が行かなくたって。万が一、何かあったら危険じゃないか。」
フランがここから出て行くだって!?
想像すらしなかった事態に、ジョーはあせりまくっていた。
何とかして、引き止めないとー
「大丈夫よ。ジョー、心配のしすぎだわ。人目の多いカフェの中なんだもの、いくらBGでもそう迂闊に手出しは出来ないでしょうし、それにもう決めてきちゃったのよ。
今更断ったりしたら、メリッサおばさんに迷惑掛けるもの。だからね、行ってもいいでしょ。」
何かおねだりするような表情で上目遣いに自分を見つめているフランソワーズの仕草に、ジョーはあきらめの境地に達した。
(君は言い出したらきかないんだったよね、しょうがないなぁ……)
「わかったよ、フラン。君はそのカフェで情報を集めて。僕は今まで通りパリ市内を探ってみるから。」
ジョーのこの台詞にフランソワーズは瞳を輝かせてうれしそうにこう言った。
「行ってもいいの?」
「でもフラン、何か危険を感じたらすぐに僕を呼んで。どこにいても必ずすぐに駆けつけるから。」
「ええ。ありがとうジョー。」
そのまま自分に抱きついてきたフランソワーズを抱きしめようとしたジョーは、ギルモア博士がそばにいたことを思い出してしまいー
「フ、フラン、荷造りとかまだ終わってないんだろ。手伝うよ。」
慌てて、フランソワーズからその身体を離すのだった。






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