Jealous Days
(2)
こうして、メリッサおばさんのカフェに、”おしゃれで小粋な看板娘のフランちゃん”が誕生したのだった。
彼女は瞬く間にカフェの人気者になっていた。
その容姿もさることながら、特筆すべきは気立ての良さと的を射た気配り、そしてその向日葵のような笑顔だった。
近所の子供たちにもよく慕われており、カフェに遊びに来てはフランソワーズのそばにまとわりついて離れなくなる子もいるくらいだった。
また、常連客のおじさんやおばさんからは、「こんな娘が欲しい」とか「孫のようでかわいい」とか言われてはかわいがられていた。
「楽しそうに働いているよね。ーうん、やっぱりかわいいな。」
フランソワーズがここで働き始めて以来、毎日のように通いつめているーもうすっかり常連さんと言っても良かったージョーも 彼女が一生懸命に働く姿を見ては微笑ましく思っていたりしたのだった。
しかし、そう余裕を持っていられたのは最初のうちだけだったのだ。
フランソワーズがカフェで働き始めて1週間もする頃になると、ジョーはだんだんと頭を抱え始めていた。
ジョーの頭痛の原因、それはフランソワーズの周囲にまとわりつき始めた男たち、だったのである。
日本でも、張々湖飯店を手伝っている時などに良く見られた光景ではあったのだ。
彼女目当ての男たちが店の周りを埋め尽くす事などは。
しかし、さすがロマンスの都パリとでも言うべきか、それとも国民性の違いなのかー皆、強引なのである。
日本では、せいぜい声を掛けてくる奴がいる程度で、ジョーが少しにらみを効かせてやれば、すごすごと引き下がるような奴ばかりだったのに、 ここパリでは勝手が違ったのだ。
思い込みと自己主張の強すぎる男たちには、ジョーの”にらみ”など風に吹かれるちり紙くらいの重さしかなく、完全に無視されていた。
フランソワーズの方でもそういう男たちにはやんわりと(ここがいけないんだ、とジョーならば思う所なのだが)お断りするものの、 そんな事気にも留めずに、強引に彼女の手を握り締める者がいると思えば、両手一杯の薔薇の花束を差し出す者、フランソワーズに捧げる歌を歌いだす者……
数え上げればきりが無いほどの”余計な虫”が彼女にまとわりついていたのだ。
フランソワーズの方でもまんざらでもない様子で、その男ども一人一人の相手をしていたりして。
まるで当初の目的を忘れてしまったかのように楽しそうなフランソワーズの様子に、ジョーのいらいらはつのるばかりだった。
出来るものならば、あの男たちとフランソワーズの間に割って入って、周りの余計な虫たちを今すぐにでも蹴散らしたい衝動にジョーは駆られていた。
そして、彼女を籠に閉じ込めて自分だけが愛でてかわいがってー当然、そんなことは出来るわけも無かったのだが。
BGの動向を探らなければならないジョーは、四六時中このカフェに詰めているわけにはいかなかった。
それに何処でBGのアンテナに引っかかってしまうとも限らないのだ。
BGの尻尾をつかむまでは、目立つような行動は避けるべきだった。
ー二律背反ー
まさに今のジョーの心境を表すのにこれ以上ふさわしい言葉は無かっただろう。