Jealous Days

(3)

ある日、いつものようにカフェに来てコーヒーを飲んでいたジョーは、フランソワーズとメリッサの会話を偶然聞いてしまい、そして愕然とさせられる事になった。


「あんたが来てくれてほんとに大助かりだよ、フランソワーズ。気立てはいいし、働き者だし。ほんとにいい娘だよ。」
メリッサはニコニコ笑いながらフランソワーズに話しかけており、自身を褒めちぎるメリッサの言葉に頬を染めながら、フランソワーズも照れくさそうに答えていた。
「そんな……当たり前のことをしているだけなのに。」
「ほら、その控えめな所もおまえさんのいい所さ。それでねフランソワーズ、ちょっと話があるんだ。お勧めのいい話さ。」
「何ですか?メリッサおばさん。」
「いやね、うちのカフェに足繁く通ってくる連中の中にジョナサンってのがいるんだけどね。
あんまり目立つような子じゃないから、お前さんは気づいていないかもしれないんだけどね。」
「ジョナサンさん?ひょっとして、いつも窓際のテーブルでカフェオレ片手に詩集なんかを読んでいる人ですか?
以前、私のことを描いてくれた絵を頂いた事があるんです。」
「そうそう、その子だよ。うん、知っているなら話も早いさね。どうだいフランソワーズ、一度ジョナサンとデートしてみる気は無いかい?」
突然のメリッサの申し出にフランソワーズは驚き目を見張った。
「えっ、デート、ですか。」
「ああ、そうさ。あの子はいい子だよ。少し気の弱い所はあるけれども、誠実な子さ。私のお気に入りの子でね、画家の卵なんだよ。
そのジョナサンがあんたの事をまんざらでもない様子なのさ。私のお気に入り同士が仲良くしてくれる、これほどうれしい事は無いんだけれどね。」


フランソワーズがもらったという自画像。
それはジョーも見たことがある代物だった。
素人目にもフランソワーズの魅力を十分に引き出していると分かるような、彼女への想いに溢れた絵だったことを覚えている。


フランもいたくその絵がお気に入りで、部屋に飾っているんだと聞いていた。
その絵を描いた男とフランがデートするって?


ここまで黙って二人の会話に聞き耳を立てていたジョーだったが、知らずテーブルの上に握りこぶしを作っていた。
(メリッサさんてば何を言っているんだよ。フランが他の男とデート?冗談じゃない。
そんな事絶対にさせないし、絶対に許せない。もうBGのことなんかどうでもいいから、フランをつれて帰らなきゃー)
瞬時に頭に血が上ったジョーは、フランソワーズのそばに行くつもりで席を立ちかけたが、メリッサの予想外の一言に出鼻をくじかれる事となった。
「ねぇジョー、お前さんもそう思うだろ。こんなに一生懸命に働いてくれているんだ。フランソワーズもたまにはデートして楽しまないとね。」
ジョーに気軽な調子で声をかけるメリッサ。
そう、フランソワーズがカフェで働き始めてから毎日のように通いつめていたジョーは、今ではメリッサの覚えもめでたい立派な常連さんとなっていたのだった。
「え、いや、デートするのは悪い事じゃないけれど、その相手がー」
悪いんだ!
そう言葉を続けようとしたジョーのお株を奪うかのように、メリッサが言葉を重ねてきた。
「ほらフランソワーズ、やっぱりみんなこう思うのさ。だから、だまされたと思って明日の休みはデートしてみるんだね。」
メリッサにここまで言われてしまっては、フランソワーズも彼女の申し出を断りにくくなっていた。
それにジョーの態度にも少し頭にきていたのだ。
(なんなのよ、その言い方。もっときちんと言ってくれてもいいじゃない。
ジョー、あなたにとって私はその程度の存在でしかないのね。)
哀れ、口下手なジョーはフランソワーズに思いっきり誤解されてしまっていた。
「わかりました。メリッサおばさん、明日のお休みはジョナサンさんとデートする事にしますね。楽しみだわ。何を着ていこうかしら。」
半分ジョーにあてつけるかのように、大きな声で無邪気にはしゃいでみせるフランソワーズの様子に、ジョーは慌てて彼女に脳波通信を送ってしまった。
(フ、フラン、まさか本気で言っているんじゃないよね。)
(あらジョー、私、冗談なんか言ってないわよ。どっかの誰かさんは私のことなんてどうでもいいやって思っているみたいだし。ほんと、楽しみだわ。明日のデート。)
(ちょっと待ってよ、フランー)
すっかりへそを曲げてしまったフランソワーズは、この後のジョーの呼びかけを完全に無視するのだった。








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