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「わたしの事を想いながら指を握ってください。」
真剣な顔をしたフランソワーズが左手を差し出した。
うららかな昼下がりに何故かピリピリとした緊張感が漂っている。
「何かのおまじない?」
「いいから早く!」
?マークを浮かべながらジョーは目の前の白い手を見つめた。
細くてきれいな指。
しばし悩んでから、そっと指を握った。
何が起こるかじっと待っていたが、フランソワーズがうんとも寸とも言わないので、ジョーは目線だけちらっと上げて、フランソワーズを盗み見た。
フランソワーズは固まっていた。
じっとジョーが握っている指を見つめていた。
「……フラン?」
不安になったジョーが恐る恐る声をかけると、俯き加減だったフランソワーズがパッと顔を上げた。
「良く分かったわ。」
「えっ?」
「ジョーの気持ちはよく分かったわ。」
ジョーの握った指を急いで抜き去ると、踵をかえしてニ階へと駆け上がって行く。
ドアの閉まる音がしたので、自室に引き上げたのだろう。
残されたジョーはただ呆然として立ち尽くすのみ。
「……何だったんだろう?」
僕の気持ちが分かったって何のことだ?
ジョーはソファーに腰掛けて先程の展開を振返ってみたが、なぜあんなに悲しそうに恨めしそうに見つめられなきゃいけないのかちっとも分からない。
う〜〜〜ん。
ジョーはしばし考え込んだ。
その日の夕方、ギルモア邸の11人目の住人と言っていい程しょっちゅう出没する健太が、いつものようにやって来た。
冷蔵庫から牛乳を取り出してコップに注ぎながら、リビングで思い悩むジョーを見つけて声をかけた。
「何暗くなってるんだよ、ジョー。」
「う〜ん、それがさぁ……」
と、事の経過を説明すると、健太がニヤリと笑った。
「ーーーで、どの指を掴んだんだよ。」
「どこって、薬指だけど?」
「あ〜、成る程……」
牛乳をぐいっと飲み干して健太は説明を始めた。
今女の子の間ではやっている、好きな人の気持ちを確かめる裏技。
左手の甲を上にして気になる相手に指を一本選んでもらう。
相手が選んだ指でその人が自分をどう思っているかが分かるのだという。 確率は90%。
『小指は嫌い』『親指は尊敬』『人さし指が好き』『中指は普通』
「それで薬指は?」
恐る恐る尋ねたジョーに、健太は苦笑しながら言った。
「友達」
ああ、それでショックを受けてたわけだ。
おもわず天を見上げた。
女の子ってなんでこんな事を真剣に信じるんだろう。
こんなこと言ってはなんだけど、僕達は科学の粋を集めた最新鋭の身体なんだけど……。
一体どこでそんなこと聞いてきたかねぇ。
「あっ、オレ。」
健太が手を挙げる。クラスの女の子が次から次へと指を握れとうるさかったのだという。
その話をフランソワーズにもしたらしい。
「そんなに何人も?」
「20人くらいかな?」
人気あるんだねぇと言うと、目標が高いからねー、これでも10年後に向けて日々努力してるんだよ、と切り替えされた。 健太の言う目標とは言わずもがな、だ。
「でも確率高いんだってよ、あれ。結構本当にジョーの本音だったりして……そんな訳な いか。」
ジョーにじろっと睨まれて、慌てて健太は言い直す。
ふーっと一息つくと、ジョーはポツリと言った。
「指輪をさ、」
髪にクチャクチャっと指を入れてかきあげた。
「指輪をプレゼントしたいな、って思っていたところだったから、ついつい薬指を握っ ちゃったんだよ。」
もう一度ため息をつくとジョーはニ階へと向かった。
その背中にフォローに行くの?と問いかけた健太に、ジョーはにやりと口元をあげた。
「当然。手強いライバルがいるからね。うかうかしてられないよ。」
そのままフランソワーズの部屋へ向かうジョーを見て、健太はソファに深く身を沈めた。
「ちぇー、一歩前進させちゃったかも」
クッションを抱えて呟いた。
その後の後日談。
誤解も解けて前にも増してLOVELOVEになったジョーとフランソワーズ。
だけど、油断はできない。
今日もフランソワーズが真剣な面持ちでジョーに尋ねていた。
「二人で道を歩いています。道が3本に分かれていました。さあ,ジョーはわたしとどの 道を選んで進みますか?」
BGの基地に飛び込むときよりも高まる緊張感。
こんなに切羽詰まった事が今まであっただろうか?
助けを求めて辺りを見渡すが、健太はリビングのソファで素知らぬ顔で本を読んでいる。
さぁ、右か左かそれとも真中か。
すみません、勘弁して下さい。
ジョーの苦悩はまだまだ続く。
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