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フランソワーズが眼を覚ましたとき、そこはマンションの一室と思われる部屋のベッドの上
だった。
すぐに今の自分の状況を確認する。
手は紐で後ろ手に縛られている。
服装の乱れがないことにほっとし、そっと周囲を探る。
ベッドの端に、一緒に誘拐された女の子がやはり後ろ手に縛られて横
になっていた。
頬には幾筋もの涙の跡が残り、フランソワーズが目覚めるまでどれほど心細い想いでいたかは想像に難くない。
「大丈夫?」
フランソワーズの声に少女はコクンと頷く。 怪我はしていない。それでもこんな小
さい子
を縛り上げるなんてなんて奴らなの、とフランソワーズは憤った。
眼と耳を開放して他の部屋を探ると、すぐ隣のリビングらしき部屋で3人の若い男
が見えた。
運転手をしていたひょろながい陰湿そうな男。
格闘技をやっていると思われる筋肉男。
そして初めて見る脂ぎった小太りの男。
「……あっちに合流しようぜ」
「全く予定外だったな。邪魔が入るとは思わなかったよ。」
陰湿男と筋肉男が愚痴っている。
「でもさぁ、あの外人の女の子、聖戦士エンジェルマリンに似てない? きれいな
金髪だし。 寝ているから眼の色までわかんないけど。」
とこれは小太り男。
「青……だったぞ、確か。言われてみれば似てるな。」
筋肉男が同意すると陰湿男がすかさず言った。
「マリンちゃんは14だぞ。あの女じゃ年をとりすぎてるよ。それに生意気
だし。」
な、なんですって!年ってなによ、失礼ね。まだ肌
だってぴちぴちなんだからね!
ここから解放されたらあの男ひっぱたきたい、と心に誓いつつ、
それどころではないと我に返り更に会話を聞いていく。
「そうかなぁ、けっこう良い線いってると思うけど。 それにしても、あと一人で全員
集められたのに、とんだドジ踏んじゃったよね。 でもボクは結構あの子気に
入ったよ。 後でマリンちゃんのコスプレして遊んでみよう。」
小太り男の会話に背筋がゾクゾクした。コスプレってなによ?
フランソワーズは身の危険を感じた。早く此処を脱出しなければ。
男達の会話からおぼろげながらやはりこの事件が連続誘拐事件と関係
が有りそうだと踏んだ。
フランソワーズは必死に他の部屋を覗くが、しかし他の少女達の姿は見えない。
フランソワーズはマンションの周囲まで探索を広げてみた。
どうもここは横浜らしい。 もしかして張々湖に脳波通信が通じるかと試
したみるが無駄だった。
リビングの壁掛け時計を見ると、あれから1時間が経っていた。 健太君がジョーに知らせてくれたなら既に彼らは救出に向けて動
きだしているだろう。
ジョーたちはきっと来てくれる。それは確信。
それでもほとんど手がかりが無い事を考えれば、まだ当分一人
でがんばらないといけないだろう。
なんとか他の女の子達の居場所を調べられれば良いんだけど……。
フランソワーズがこれからの事について考えを巡らせていると、小太りの男が部屋
にやってきた。
「眼が醒めたんだ。わっ、本当にマリンちゃんに似てるね。」
嬉しそうに笑うと、クローゼットを開けて何やら白っぽいピラピラとした服を取
り出した。
「これ着てみせてよ。絶対いけると思うんだよね。」
そしてブーツやスティックを取り出してベッドの上に置いた。
こ、これを着ろっていうの?
フランソワーズはそのピラピラとした服を見つめた。
胸元はけっこう際どく開いているし、スカートは危険なくらい短い。
普段なら誰に拝み倒されようが絶対に拒否するところだ。
しかしこれを着れば少なくとも両手は自由になる。
「……着れるかしら?サイズ。」
男の顔が思いっきり綻んだ。気色悪い。 しかしここでこいつの機嫌を損ねるのは
得策ではない。
「この紐を解いてくれなきゃ着れないわ。」
フランソワーズの言葉に嬉々として紐を解き始める。
ここでぶちのめすことも考えたが他の少女の情報も得たかったし、何より女の
子と一緒に逃げるには1対3では武が悪い。
仕方なく着替え始める。 あっちを向いててよ、というと「ワクワク
しちゃうなぁ」等とのたまいながら素直に後ろを向く。
とんでもないことになっちゃったなぁとフランソワーズはおもわずため息
をついて、それでもノロノロと着替え始めた。
「すごーい!ぴったりでばっちり!」
小太り男が手を叩いて喜ぶ。デジカメを構えるとポーズを取る様に要求する。
「知らないもん、そんなの」
「知らない?エンジェルマリンちゃんを?」
男が本気で呆れ返っている。 仕方ないなぁと呟きながら部屋にあったDVDを部屋
にあった紙袋に詰めていく。
「今から車の中で見ればいいよ。向こうに行くまで1時間半くらいかかるから。」
「どこかに行くの?」さりげなさを装いながら聞いてみると、警戒感
の欠片もなく小太り男が答えた。
「伊豆にボクんちの別荘があるんだよ。あっちには親父の趣味で作ったスタジオ
があるから、そこで撮影しようよ。」
さらりと言う小太り男に、誘拐という重い罪を犯したという意識は感じられない。
一体どういうつもりで小さな女の子を攫ったりしたのだろう。
「おい。支度はすんだのか?」 ノックも無しに部屋に入って来た筋肉男と
陰湿男がフランの姿を見て一瞬動きを止めた。
「へぇ〜……」 さっきは似てないと反論していた陰湿男が頭からつま先まで舐
める様にして見ると、まんざらでもない様子でつぶやいた。
「けっこういいじゃん。」 その言葉に粘着質な響きを感じて、フランソワーズの
腕に鳥肌がたった。
ジョー、早く来て。
フランソワーズの胸にはじめて焦りの感情が湧いて来た。
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