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「ちょっと待てよ、おっさん。」
ジェットが慌てて言った。
「あいつに聞きもしないで勝手に決めんじゃねーよ。
フランの気持ちはどうなるんだよ。」
「君におっさん呼ばわりされる覚えはないね。」
ラウルはきっぱりと切捨てた。
「それにフランソワーズだってパリに帰りたいに決まってるじゃないか。
フランが不幸になることがわかっていて、此処に置いておくわけにはいかないよ。」
ジェットの眉がキリっと上がった。
「なんで不幸になるってわかんだよ。」
ラウルにつっかかっていくジェットをジェロニモが押さえた。
しかしラウルも負けていない。
ジェットの顔を正面から見据えながら叫んだ。
「わかるさ。パリに帰れば闘わなくて済むんだ。あんなふうに……」
赤い戦闘服を纏ったフランソワーズの姿が浮かんだ。
熱をおびた爆風に髪を煽らせながら、ひるむことなく両手で銃を構えていた。
敵に向かって銃口を向けるその瞳は以前の穏やかな蒼ではなく、まるで凍りつくような冷たい蒼だった。
「あんなふうに銃を構えて、あんな目をして……。争いが嫌いなあの子が……」
ラウルが言葉をつまらせて俯いた。
しばらくそうやって黙り込んだ後、ラウルはまた言葉を続けた。
「フランソワーズは優しい子だった。
花が好きでバレエが好きで、子供が好きで………。
いつもいつも笑っていて、まるで天使の様な子だったのに……」
顔を上げて目の前にいたジョーを見つめた。
「あんな優しい子が何故闘わなくちゃ行けない?
君達がなんと言おうとフランソワーズは連れて帰る。
サイボーグだろうと関係ない。これからはジャンや俺があの子を支えていく。 一生フランを守ってみせる。」
なぜあんなやさしいこがたたかわなくちゃいけない?
誰一人としてその問いに答えを出せない。
それは常々此処に居る誰もが思っていたことだった。
戦場のフランソワーズはいつも痛々しく、できることなら彼女を平和な世界に居させてやりたいとは思っていた。
だが戦場に行けば彼女が悲しい思いをすることがわかっていても、やはり彼女の能力は必要だったし、フランも仲間の力になることを望んでいた。 何よりもフランの笑顔は彼らの心の支えだった。
どんなつらい闘いの最中でも、フランソワーズの存在に彼らはいつも救われていた。
ラウルの言っている事は正しい。ジョーはじっと自分の手を見つめながら自らの心に向かい合った。
フランソワーズには闘いは似合わないし、彼女を待っている人がいるのだから故郷に帰るべきなのだ。
だが手放すのがつらい。
それが自分のエゴだとわかっていても、考えただけで半身をもぎとられるような痛みを感じた。
彼女と離れたくない。だがきっと遠く無い未来にまた闘いはやってくるだろう。
彼女は仲間の為にまた戦場に立つことになる。
ジョーは顔を上げてラウルを見た。
一生.フランを守るとラウルは言った。
ラウルがフランソワーズの事を、親友の妹としてではなく一人の女性として見ている事を、ジョーは感じた。
きっとずっと彼女を好きだったのだろう。ラウルは本当に彼女に穏やかな日々を与えてくれるに違いない。
僕には与えてあげれない、彼女が望む未来を……。
心がギリギリと悲鳴をあげていた。
そんな痛みに目をつむり、ジョーはラウルを見つめて言った。
「フランをお兄さんの元へ連れていってあげてください。」
血を吐く様な思いがした。
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今宵は満月。
雲一つないその夜空は明るく輝き、窓から差し込む月の光が彼女の顔を更に白く見せた。
愛してるよ……
ジョーはいつまでもフランソワーズのベッドの片隅に座り、万感の思いを込めて彼女の顔を見つめた。
まるでその顔を心に刻み付けるかのように。
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