☆☆ 『シンシア』の事が掲載された99年12月の新聞記事 ☆☆

★★12月 1日 毎日新聞・朝刊・阪神版★★

介助犬啓発用のワッペンのデザインを発表−−宝塚市

 「介助犬シンシアのまち」を宣言している兵庫県宝塚市は30日、介助犬啓発用ワッペンのデザインを発表した。同市が募集、全国から寄せられた572点の中から大阪市西成区の与那嶺忠儀さん(56)の作品=イラスト=が選ばれた。
 宝塚市は、「介助犬同伴可」の文字を組み込んだワッペン2000枚を作製、市内の飲食店などで張ってもらう。また、学術団体「日本介助犬アカデミー」もこのデザインを使い、全国に広める計画だ。
 審査員の一人で、車いすで介助犬シンシアと暮らす同市の木村佳友さん(39)は「触れ合いが表現され、遠くから見ても介助犬とよく分かる」と評価。与那嶺さんは「シンシアをイメージし、温かさを表現した」と話している。
 同市は、子供を対象に「シンシア絵画コンクール」(毎日新聞社共催)も実施、今月5日午後1時半から、同市栄町3の宝塚グランドホテルで開く「介助犬シンポジウム」(同)で入選作を発表する。【田畑知之】

★★12月 1日 毎日新聞・朝刊・阪神版★★

介助犬支援に13万円寄託−−宝塚交通安全市民カーニバル実行委/阪神

 「第7回宝塚交通安全市民カーニバル実行委員会」(会長、正司泰一郎・宝塚市長)は30日、介助犬への支援のためにと毎日新聞大阪社会事業団の「シンシア基金」に13万8347円を寄託した。9月に同市役所で開催した同カーニバルのバザーなど収益金の一部。
 この日、同市役所であった贈呈式に介助犬「シンシア」と暮らしている同市のコンピュータープログラマー、木村佳友さん(39)らが出席。藤原健・毎日新聞阪神支局長が前坂定義・同実行委副会長から受け取った。
 木村さんは「市が介助犬のワッペン作成に乗り出すなど、介助犬が市民の方々の間に少しずつ浸透してきた。これからも皆さんの理解と協力で一頭でも増えるようがんばります」と話した。【田畑知之】

★★12月 1日 読売新聞・大阪本紙・朝刊★★

宝塚市の介助犬啓発ワッペンのデザイン決まる 大阪・与那嶺さんの作品=阪神

 宝塚市が公募していた介助犬啓発ワッペンのデザインに、大阪市西成区千本北二、無職与那嶺忠儀さん(56)の作品が採用されることが三十日、決まった。宝塚市はこのデザインを使ったステッカーを作り、市内の飲食店に張ってもらうよう呼び掛けていく。
 ハートマークの中心に、介助犬の顔を白抜きで配置したデザイン=写真。この日開かれた選考委員会(委員長=崎田喜美枝・宝塚造形芸術大副学長)で、「シンプルでインパクトがある」「色彩が鮮やかで、温かさが表現されている」として特選に選ばれた。与那嶺さんが趣味のパソコンで制作したという。
 宝塚市は来年三月末までに、デザインの下部に「介助犬同伴可」と印刷したステッカー二千枚を作製。当面は約二百店に張ってもらうよう協力を要請していく。
 介助犬と生活している同市在住のコンピュータープログラマー木村佳友さん(39)は「心の温かさと触れ合いを感じるデザインでうれしい。店に入るにも同伴可かどうかの確認が必要だったが、ステッカーが出来れば安心して入店できる」と話していた。

★★12月 4日 毎日新聞・朝刊・阪神版★★

「介助犬シンポジウム〜“シンシアのまち”宝塚から〜」 宝塚市であす/阪神

 「介助犬シンポジウム〜“シンシアのまち”宝塚から〜」(宝塚市、毎日新聞社共催)が5日午後1時半から、宝塚市栄町3の宝塚グランドホテル6階鳳凰の間で開かれる。
 パネリストは、介助犬シンシアと暮らす車いすのコンピュータープログラマー、木村佳友さん(39)=宝塚市在住=のほか、日本介助犬アカデミーの高柳友子事務局長▽正司泰一郎・宝塚市長▽藤原健・毎日新聞阪神支局長。コーディネーターは関西学院大総合政策学部のニノミヤ・アキイエ・ヘンリー教授。
 入場無料で先着500人。車いす用のスペースや手話通訳、要約筆記もある。
 宝塚グランドホテル(0797・87・1111)はJR・阪急宝塚駅から西へ約400メートル(徒歩約7分)。阪急宝塚駅北側の広場から送迎用マイクロバスも出ている。【山本真也】

★★12月 5日 毎日新聞・朝刊・阪神版★★

きょう「12・5介助犬シンポジウム」 写真展やビデオ上映も/阪神

 「介助犬シンポジウム〜“シンシアのまち”宝塚から〜」(宝塚市、毎日新聞社共催)が5日午後1時半から宝塚市栄町3の宝塚グランドホテル6階鳳凰の間で開催される。午後4時半まで。入場無料。先着500人。【山本真也】

 パネリストは、介助犬シンシアの飼い主で、車いすのコンピュータープログラマー、木村佳友さん▽日本介助犬アカデミーの高柳友子事務局長▽正司泰一郎・宝塚市長▽藤原健・毎日新聞阪神支局長。コーディネーターは関西学院大総合政策学部のニノミヤ・アキイエ・ヘンリー教授。
 426点が寄せられた「シンシア絵画コンクール」の大半を展示。本紙連載「介助犬シンシア」に協力している写真家、小田哲明さんによる「シンシア写真展」や介助犬紹介ビデオの上映もある。車いす用スペースや手話通訳、要約筆記も準備している。

 宝塚グランドホテル(0797・87・1111)はJR・阪急宝塚駅から西へ400メートル(徒歩約7分)。阪急宝塚駅北側の広場から送迎用マイクロバスもある。

★★12月 6日 毎日新聞・大阪本紙・朝刊★★

「介助犬シンポジウム」 共感の輪さらに 「市民、自治体手を携えて」

★★12月 6日 毎日新聞・東京本紙・朝刊★★

12月5日を「シンシアの日」に−−兵庫で介助犬シンポジウム

★★12月 6日 毎日新聞・中部本紙・朝刊★★

12月5日を「シンシアの日」に−−「介助犬シンポジウム」

 国に先駆けた介助犬への支援を展開している兵庫県宝塚市と介助犬キャンペーンに取り組む毎日新聞社共催の「介助犬シンポジウム〜“シンシアのまち”宝塚から〜」が5日、同市内で開かれ、約400人が参加した=写真、森顕治写す。この日にちなみ、「12月5日を『シンシアの日』として、9日の『障害者の日』と連動した『やさしい街づくり週間』にしよう」という大会アピールを宣言した。
 正司泰一郎・宝塚市長が「すべての人にやさしい街づくりを全国に向けて発信していきたい」とあいさつ。迫田太・毎日新聞社副社長大阪本社代表は「市民レベルから市、国に広がっていく形のこの介助犬運動は真の福祉運動」と述べた。
 シンポジウムは正司市長と、同市で介助犬シンシアと暮らす車いすのコンピュータープログラマー、木村佳友さん▽民間研究団体「日本介助犬アカデミー」の高柳友子事務局長▽藤原健・毎日新聞阪神支局長がパネリストを務めた。関西学院大のニノミヤ・アキイエ・ヘンリー教授(障害者福祉論)がコーディネーターをし、介助犬の現状と地方自治体やマスコミの役割などを話し合った。【山本真也】

★★12月 6日 毎日新聞・大阪本紙・朝刊★★

「介助犬シンポジウム」 共感の輪さらに 「市民、自治体手を携えて」

 「まちづくりの主役は市民」の時代に――。5日、兵庫県宝塚市で開かれた「介助犬シンポジウム」(同市、毎日新聞社共催)。「介助犬シンシアのまち」を宣言するなどしてきた宝塚から、「だれにもやさしい街」づくりのメッセージを発信。この日を「シンシアの日」とうたい、「市民、自治体が手を携えて進む」と市と参加者らが決意した。
 シンシアと暮らす木村佳友さん(39)は「介助犬へのバリア(障壁)は多いが、地域からの支援が大きな輪に広がってきた」と語った。27歳の時、バイク事故で首の骨を折り、車いす生活に。3年前にシンシアと外出を始めたが、「入店を断られ、何十分も交渉したことも」。
 孤軍奮闘の木村さんらを、同僚やボランティアが支援。毎日新聞がキャンペーンする一方で、市も独自に介助犬認定基準を設けた。
日本介助犬アカデミーの高柳友子事務局長は「トラブル防止のルールも定め、国も倣う基準」と評価した。
 正司泰一郎・宝塚市長は「木村さんとシンシアは宝塚の財産。一連の動きは、市民と行政が共同で手がけており、地方分権時代の新しい流れ。運動はずっと続ける」。毎日新聞阪神支局の藤原健支局長は「『介助犬シンシア』は地域面の小さな連載から始まったが、木村さんを普通の市民として淡々と描くことで、共感が広がった」と訴えた。
 会場では、同市と毎日新聞社共催の「シンシア絵画コンクール」の応募作品426点のうち約280点を展示。シンシアとともに作者の子どもたちに囲まれた木村さんは、「シンシアの特徴をよくつかんで描いてくれたね」と語りかけた。【田畑知之、野原靖】

木村佳友さん(左端)と介助犬シンシアの周りに集まった絵画コンクール入選の子どもたち=兵庫県宝塚市内のホテルで5日午後、森顕治写す

★★12月 6日 毎日新聞・朝刊・阪神版★★

やさしい街に 12・5介助犬シンポジウム 雑観 /阪神

◇素朴なタッチの力作がずらり
 会場の壁面やブースには「シンシア絵画コンクール」(宝塚市、毎日新聞社共催)に寄せられた426点のうち、入選作など約280点を展示。シンシアが新聞や電話の受話器を取ったり木村さんと散歩する姿など、子どもらしい素朴なタッチで描いた力作がずらり。「がんばれシンシア」などの文字もあり、その場で自分の子の作品を写真に撮る親の姿も見られた。

◇要約筆記や手話グループも一役
 要約筆記の「宝塚サマリー」(荻野幸子会長)のメンバー5人と、「宝塚市手話サークル連絡会」(土居暁子代表)の5人もシンポに参加。「聴覚、視覚障害者にやさしいシンポ」の進行に一役買った。同サマリーの川村充枝さん(71)=宝塚市山本南1=は「聴覚障害者にとっての私たちと、木村さんにとっての介助犬は同じ役割。介助犬が社会に認められるために少しでもお手伝いができれば」と話していた。

◇普及へ募金箱も
 会場には介助犬の普及・啓発のための毎日新聞大阪社会事業団「シンシア基金」の募金箱が置かれ、参加者から計4万5729円の浄財が寄せられた。

◇認知に役立てば
 同市が全国公募して選定した「介助犬ワッペン」のデザインの作者、与那嶺忠儀さん(56)=大阪市西成区=も会場に。「シンシアを中心に人の心の温かさがどんどん広がり、市や県、そして国までを動かそうとしていることがよく分かった。私のデザインが、介助犬認知の役に立てば、こんなうれしいことはない」と話していた。

★★12月 6日 毎日新聞・朝刊・阪神版★★

やさしい街に 12・5介助犬シンポジウム 熱いメッセージに感動/阪神

 シンシアと、ずっと一緒に――。宝塚市の宝塚グランドホテルで5日開催された「介助犬シンポジウム〜“シンシアのまち”宝塚から〜」(宝塚市、毎日新聞社共催)。ほぼ満席の約400人が参加した会場には、子どもたちが思い思いに描いた絵画作品が壁一面に飾られた。終始温かいムードを漂わせながら、約3時間にわたって「やさしい街」づくりを目指す熱い声が交わされた。【田畑知之、亀田早苗、大森顕浩、鵜塚健】

 会場には子ども、学生、高齢者、車いすで生活する人、ボランティア、主婦……。さまざまな立場の人が熱心に耳を傾けた。
 関西学院大2年の藤井陽子さん(20)=西宮市生瀬東町=は「介助犬を取り巻く問題がわかり、もっと勉強したくなった。地域のために運動していくことの重要性を強く感じた」と話した。
 母親と一緒に参加した宝塚市立美座小5年、林あゆみさん(11)=同市旭町=は「どんなお店でも入れるように、差別がなくなればいいと思う」。母律子さん(45)も「シンシアの話はいつも子どもと一緒に新聞で読んでいる。今日はとても勉強になりました」 車いすで来場した主婦、山腰恭子さん(41)=大阪市旭区高殿2=は「介助犬をもっと増やしてほしい。障害者の苦労を理解してくれる人は少ないと思っていましたが、このシンポで少しずつ分かってもらえる人が増えているのが実感できた」と喜んだ。
 シンポでは、パネル討論などのほか、介助犬紹介ビデオの上映も。また、超党派の国会議員で作る「介助犬を推進する議員の会」(田中真紀子会長)の事務局長、中川智子衆院議員が報告。「名ばかりの議員連盟が多いなか、81人の議員が法整備を目指して取り組んでいる。厚生省を動かすため、みなさんも世論を盛り上げてほしい」と訴えた。

 (シンポジウムの詳報は今月中旬ごろ、特集面で掲載予定です)

★★12月 6日 毎日新聞・朝刊・阪神版★★

シンシア絵画コンクール入選者/阪神

 【宝塚市長賞】上松千恵美(小林聖心女子学院小4年)【宝塚市教育長賞】河原知洋(雲雀丘学園小3年)【毎日新聞社賞】松本康太郎(宝塚幼稚園)【シンシア特別賞】磯田彩綾(山手台小2年)【佳作】岸本成葉(平井保育所)伊藤瑞穂(宝塚幼稚園)松野奈央(末広小2年)高田亜佑美(美座小3年)上島愛子(雲雀丘学園小4年)香川千尋(山手台小4年)鵜飼智子(末広小4年)小畑尚子(山手台小6年)(敬称略)
 入選作品は7日以降、順次掲載します。

◇本社編集局長が講評
 「シンシア絵画コンクール」の審査結果について、橋本光司・毎日新聞大阪本社編集局長は「426点のすべてが、市内の幼稚園児や小学生の自発的な作品で、木村さんとシンシアのふれあいを、子供の素直な目でとらえた立派なものばかり。驚きと感動を覚えた。これを契機に介助犬の法的整備が進んでいけば、と思う」と講評した。

★★12月10日 毎日新聞・朝刊・阪神版★★

「障害者の日」 阪神間で多彩な催し シンシア絵画コンクールなど/阪神

 「障害者の日」の9日、障害者の平等な社会参加やバリアフリー(障壁のない)社会を願った街頭活動やイベントが阪神間の各地で行われた。【山本真也、鵜塚健】

●宝塚市
 宝塚市小浜1、市立教育総合センターでは、市内の児童が介助犬シンシアややさしい街への思いを描いた「シンシア絵画コンクール」(宝塚市、同市教委、毎日新聞社共催)の作品展が始まった。締め切り以降に届いた絵も含め全作品427点が1階展示ホールに飾られた。
 ポストに手紙を入れたり、「介助犬OK」のレストランに入るところなど、子どもらしい想像力豊かな水彩画やクレヨン画が並び、すべて作者の学校と名前が添えられている。
 試験勉強のため、同センターの学習室を訪れた合間に絵画を鑑賞していた女子高校生(16)は「介助犬って、障害者のためにいろんなことができるんですね」と感心。市教委臨時職員の女性(26)は「見てるとほっとする。どれもシンシアの表情が豊かで、嫌々描いている子がないのがよくわかります」と話していた。
 15日まで。開館時間は午前9時〜午後9時、土曜日は午後5時までで、12日は休館。

★★12月14日 毎日新聞・朝刊・兵庫版★★

[今どき教育学99]親子福祉体験スクール 兵庫県明石市の市立和坂小学校

 「体験を重視しよう」と、兵庫県明石市の市立和坂小学校(田中勲校長、463人)では、保護者や地域の人の協力を求め「親子福祉体験スクール」を続けている。1〜3年生は先生の話、4〜6年生は手話を学んだり、車いすに乗ったり、アイマスクを付けて歩くなどしてハンディを持つ人のことを考えている。今年は介助犬シンシアと暮らすコンピュータープログラマーの木村佳友さん(39)=同県宝塚市=が講演し、聴講を希望した地域の障害者らと一緒に全児童が話を聞いた。 【辻加奈子】

 「うわ、こわー」「ちょっと待ってぇや」。6年の児童は目の不自由な人の介助方法を聞いた後、アイマスクを付けて廊下に出た。2人1組で、一人がアイマスクをつけ、もう一人が手を貸して校内を歩いた。西明徳君(12)は「学校なのに初めて行った場所みたいだった。階段を下りる時、どこまで階段か分からなくて怖かった」と話す。
 休憩所では、地域の大人たちがジュースとビスケットを用意。アイマスクをした友達を介助役がいすまで導き、「ジュースは3時、ビスケットは9時の方向です」などと、机を時計の文字盤にみたてて食べ物の位置を説明する。階段でも踊り場ごとに大人が児童に危険のないよう見守った。
 佐藤千尋君(12)は「介助する時は、目の見えない人は何が怖いのかよく分からなかった。でも、自分でアイマスクをつけると、距離感がなくなることがよく分かった」と話す。
 5年生は車いすでスロープや段差を体験。二人一組になって車いすのたたみ方や広げ方、スロープは車いすを後ろ向きにして下りることなどを学んだ。
 西岡陽子さん(11)は「土のところを通るとき、がたがたして怖かった」。小田法子さん(11)は「車いすを押している時に怖いと言われて、こっちも怖くなった。車いすの人に出会ったら、(介助を)やってみたいけど、できるかどうか不安」と胸の内を明かした。
 4年生は、ろうあ者と手話サークルの会員から手話を学んだ。ところが児童らは最初、手話で意思を伝えようとするろうあ者に、「しゃべれー」と口々に叫ぶなど、教室が一時騒然となった。
 サークル会員の中村純子さん(25)は「子供たちに、ろうあ者について話をすると次第に聴き入ってくれました。見て分かる障害ではないので、実感できない部分があったのかもしれませんね」と、ろうあ者介助の難しさを指摘した。

 最後は全員が体育館に集まり、介助犬シンシアについて、木村さんから話を聞いた。離れた机にある新聞やリモコンを、木村さんの指示通りに取ってくるシンシアに、子どもたちは「シンシアー」と口々に声をかけるなど夢中になった。
 質問では、「シンシアがレストランに入れてもらえないときはどうするんですか」「シンシアは電車や車に酔いますか」など、シンシアの普段の生活についての質問が集中。木村さんは「シンシアを入れてくれないレストランは、僕があきらめます」などと丁寧に答えていた。
 木村さんは「地域の人がたくさん来られて、地域と学校が一体化しているのに驚いた。小学校での講演は、児童向けに話すのですが、この学校のような所なら地域での理解も深まるでしょう」と感心していた。
 田中校長は「折にふれバリアフリーについて子どもたちに話しています。このまま総合的な学習につなげていけたら」と期待している。

■写真説明 木村さんのためにリモコンを取ってきたシンシアを見つめる児童ら=兵庫県明石市の市立和坂小で

★★12月14日 毎日新聞・朝刊・阪神版★★

介助犬啓発イベント 木村佳友さんの日常を紹介−−宝塚ファミリーランド/阪神

 宝塚ファミリーランド(宝塚市栄町1)で12日、同市在住の車いすのコンピュータープログラマー、木村佳友さん(39)と介助犬シンシアによる介助犬啓発イベントが行われた。同園では今年4月からパンフレットに「盲導犬・介助犬の入園OK」を明記している。クリスマス期間中のイベント「お願いジャンボサンタ」(27日まで)の収益金の一部を毎日新聞大阪社会事業団「シンシア基金」に寄付する。
 木村さんは家族連れら約50人を前に、シンシアに新聞やテレビのリモコンを取ってもらうなどの日ごろ受けている介助を紹介。「まだペット扱いされて同伴できない場所も多いですが、障害者の体の一部になっていることを知ってください」と訴えた。
 お願いジャンボサンタは高さ約10メートルのサンタクロースのバルーンの下に願い事を書いたプレート(1枚200円)を結び付けるイベント。【山本真也】

★★12月15日 毎日新聞・朝刊・阪神版★★

宝塚市「小学生の提案作文」 最優秀賞に中沢涼子さん 介助犬や盲導犬に理解を/阪神

 宝塚市は14日、「宝塚がこんなまちになったらいいな」という夢を同市の小学生に書いてもらった「小学生の提案作文」コンクールの結果を発表した。応募作115点の中から、最優秀賞には介助犬について訴えた小林聖心女子学院小4年、中沢涼子さんの「みんなにやさしい宝塚」が選ばれた。同市は選考の理由について「介助犬問題の核心を理解し、人のやさしさを端的に表現している」としている。

 同コンクールの優秀賞は次の通り。(敬称略)
 田尾望(雲雀丘学園小5年)▽坂本祐紀(すみれガ丘小5年)▽中村あおい(宝塚第一小4年)▽河野由記(同)▽長谷川朝飛(同)▽北野はるか(同)【田畑知之】

★★12月17日 毎日新聞・大阪本紙・朝刊★★

シンシアと木村佳友さん 介助犬検討委設置の要望書を丹羽雄哉・厚相に手渡す

 車いすのコンピュータープログラマー、木村佳友さん(39)=兵庫県宝塚市=と木村さんの介助犬シンシアが16日、厚生省で丹羽雄哉厚相と面談し、省内に介助犬の検討委員会を設置することを求める要望書を手渡した。丹羽厚相は「よく検討していきたい」と約束した=写真、小座野容斉写す。(8面に関連特集)  要望書は、超党派の国会議員81人でつくる「介助犬を推進する議員の会」(会長、田中真紀子衆院議員)と木村さんが理事を務める学術団体「日本介助犬アカデミー」(会長、高柳哲也・奈良県立医科大名誉教授)の連名で提出した。  この日、丹羽厚相になでられたシンシアは大臣室の床にゴロン。厚相の顔をなめる場面もあり、笑いが起きた。【山本真也】

★★12月17日 毎日新聞・東京本紙・朝刊★★

介助犬の検討委、設置要望書を提出−−シンシア、丹羽厚相と対面

 車いすのコンピュータープログラマー、木村佳友さん(39)=兵庫県宝塚市=と介助犬シンシアが16日、厚生省で丹羽雄哉厚相と面談し、省内に介助犬の検討委員会を設置するよう求める要望書を手渡した。丹羽厚相は「よく検討していきたい」と約束した。
 要望書は、超党派の国会議員81人でつくる「介助犬を推進する議員の会」(会長、田中真紀子衆院議員)と木村さんが理事を務める学術団体「日本介助犬アカデミー」(会長、高柳哲也・奈良県立医科大名誉教授)の連名で提出。木村さんの「シンシアがいなければ、僕の在宅勤務生活は成り立ちません」との説明に厚相は終始うなずいていた。【山本真也】

■写真説明 木村佳友さん(右)の介助犬シンシアの頭をなでる丹羽厚相=厚生省で16日午後3時40分、小座野容斉写す

★★12月17日 毎日新聞・大阪本紙・朝刊★★

介助犬シンポジウム 12月5日は「シンシアの日」 共生できる やさしい街に

 「介助犬シンポジウム〜“シンシアのまち”宝塚から〜」(兵庫県宝塚市、毎日新聞社共催)が今月5日、宝塚市内のホテルで開かれた。同市では、国内でまだ十数頭しかいない介助犬の1頭、シンシア(ラブラドール・レトリバー種、雌、5歳)が、車いすのコンピュータープログラマー、木村佳友さん(39)の手足となって活躍。まだペット扱いされることの多い介助犬だが、毎日新聞が昨年から長期連載「介助犬シンシア」(兵庫、大阪地域面、毎日小学生新聞)を軸にしたキャンペーンを続け、市も今春、「シンシアのまち」を宣言して啓発に乗り出すなど、公的認知に向けた大きなうねりが起きている。シンポでは介助犬使用者・研究者や自治体、マスコミの各立場から討論。「介助犬と障害者が共生できるやさしい街を」というメッセージを、約400人の参加者とともに発信した。



あいさつ

◇正司泰一郎・兵庫県宝塚市長
 宝塚市では約1年前、介助犬・盲導犬のハーネスへの補助を決め、全国で初めて介助犬を公的に認知しました。全国市長会を通じて国へ法整備への働きかけもしています。その一環として、180回を超える連載で公的認知のキャンペーンを続けている毎日新聞社とシンポジウムを共催することになりました。  障害を持つ人も持たない人も平等な社会参加ができるようにしたい。介助犬と共生している障害者を支援することでハード、ソフト両面のバリアフリーに取り組んでいきたいと考えています。すべての人にやさしい街づくりの提言を「シンシアのまち」宝塚から、全国に向けて発信したいと思っています。

◇迫田太・毎日新聞社副社長大阪本社代表
 毎日新聞では障害を持った方の力になれればと、介助犬の普及に総力を挙げて取り組んでいます。介助犬運動は、国から下りてくる福祉政策とは逆に、市民レベルから自治体へ、そして国へと広がっていく真の福祉運動です。田中真紀子衆院議員を会長に超党派の国会議員による「介助犬を推進する議員の会」も結成されました。
 社会福祉の追求が我が社の事業の大きな柱です。大阪本社は創立77年を迎えた全国唯一の点字新聞「点字毎日」を発行、難民キャンペーンや阪神大震災の遺児の支援を続けています。一頭でも多くの介助犬が障害者に行き渡るように、みなさんのお力添えをお願いします。



パネルディスカッション出席者(敬称略)

◇木村佳友(介助犬使用者・コンピュータープログラマー)
◇高柳友子(日本介助犬アカデミー事務局長・医師)
◇正司泰一郎(兵庫県宝塚市長)
◇藤原健(毎日新聞阪神支局長)

コーディネーター
◇ニノミヤ・アキイエ・ヘンリー(関西学院大教授、障害者福祉論)



 ニノミヤ シンシアと暮して生活は変わりましたか。

 木村 12年前の交通事故で首の骨を折り、下半身や腹筋、背筋が不自由になりました。昼間は1人きりで、コンピューターの仕事をしているのですが、指も動かないため、フロッピーなどを良く落とします。以前は、それで仕事が中断していたんですが、シンシアが3年前に介助犬となってからは、落とした物を拾ってくれるようになりました。車いすから落ちた時も、以前は床に転がったままだったのが、今はシンシアがコードレス電話を持ってきてくれるので、妻の職場に電話して助けが呼べるようになりました。1人で留守番をしている時の安心感が全く違います。

 ニノミヤ でも買い物とか、喫茶店に入るとかごく当たり前のことができなくなったんですね。

 木村 はい。外に出ればバリア(障害)を感じることが多くなりました。シンシアはペット扱いされて、最初はほとんどの店で同伴を断わられました。「だめです」と言われると、「もう外に出なくてもいいや」とくじけたこともありました。しかし全国でも数少ない介助犬使用者である自分は、「介助犬は社会に出ても迷惑をかけないことを知ってもらう役割がある」と思い直し、断られながら交渉を続けてきました。最近は、毎日新聞や宝塚市のおかげで少しずつ理解が広がっているのが現状です。

 ニノミヤ 介助犬とは何か、を専門の立場から教えてください。

 高柳 例えばペットに新聞を持って来ることを覚えさせても介助犬とは言えません。障害者の自立を助ける介助をする犬です。歩行や起立を支えたり、衣服の着脱を手伝ったり、エレベーターや人や物を捜し当てる犬もいます。障害の種類や程度に合わせた介助をする点が盲導犬との違いです。

 ニノミヤ 現状ではどんな課題があるのでしょう。

 高柳 大きく分けると二つあります。育成システムの欠如です。

もう一つは、社会の壁です。これはペットと介助犬を区別する基準がないため、訓練が不十分な自称「介助犬」が事故を起こす可能性があるということが一因となっています。そうしたなかで、宝塚が「介助犬の基準」を作って、一定の決まりをクリアした犬に社会参加の道を開くというのは画期的なことで、国も将来、その流れを追うと思っています。

 ニノミヤ 宝塚はなぜ「シンシアのまち」づくりを始めたのですか。

 正司 元々、バリアフリーの街づくりは20年近く前から取り組んでいました。そして阪神大震災を体験。全国から約1万7000人ものボランティアが駆けつけ、「やっぱりみんな助け合わないと」という認識が市民の間に高まったと思います。そんな中で木村さんとシンシアが奮闘し、それが新聞で紹介され、議会にも伝わりました。それで昨年暮れ、ハーネス(胴輪)に予算措置をすることにし、全国で初めて介助犬を認知。さらに庁内に部局横断型のプロジェクトチームを作り、法整備に向けた活動と啓発を続けることになりました。

 ニノミヤ 「シンシアのまち」には多くの市民が参加していますね。今、行政と市民との関係は世界的な転換点に立っていると思います。

 正司 まさにこの取り組みが地方分権の時代の市民と行政のあり方を象徴していると思います。従来の行政主導ではなく、市民と行政が共同で何かを作りあげていく関係です。私たちも大切なことが理解できました。介助犬支援の輪が広がり、人と人とが「温かさ」でつながっていくことです。たとえ法的整備ができてもシンシアを通じた発信は続けていきたいと考えています。

 ニノミヤ この過程で、マスコミは市民と行政をつなぐ重要な役割を果たしていると思います。

 藤原 「介助犬シンシア」は、小さな地域面連載ですが、現在184回(注)に達しています。木村さんを普通の市民ととらえ、日常生活を淡々と追った内容です。読者の方から寄せられる声の中に、「場所が離れていても、まるで隣人の生活のように感じられる」というものがありました。大きなキャンペーンに成長したのは、こうした共感がうねりとなって広がったからです。震災を体験した阪神間には、相互扶助、つまり「困ったときはお互い様」という心が育っているのです。

 ニノミヤ 私はカナダ出身ですが、カナダでは、人口2万〜3万人の小さな町にもタウン紙があります。例えば、募金の集まり具合を温度計のようなグラフにして市民に呼びかけるなど、人と人とをくっつける役割を果たしています。日本ではともすれば国、県などの単位でモノを考えがちですが、シンシアの件で毎日新聞は、市民の動きを行政に、国に伝えて働き掛ける動きをしていると思います。

 藤原 私たちマスコミは事件やイベントがあったときには大きく報じ、満足しがちですが、今回のことでは、個別・具体的なことを追求することで、結局は普遍性に通じる、ということを学びました。マスコミにはもちろん、行政の監視という役割もあります。そのことはいつも念頭に置くべきですが、市民と行政がパートナーとなって、「よりよい暮らし」を実現するために、私たちマスコミが接着剤になることができる。そんな役割も、忘れてはならないと思っています。

 ニノミヤ 日本の街づくりは、産業化や生産性中心で、市民が我慢した歴史です。それが今、変わりつつある。街をつくるのは市民なんだ、ということですね。実は私も、介助犬は国が認めなければどうしようもない、と思っていました。しかし逆にいえば、国が法律を作っても、みなさんの理解がなければ実がありませんね。宝塚は「介助犬同伴可」のワッペンを作るそうですが、宝塚から全国に普及していけば、国が後から追いかけてくることになりますね。市民はつい、「国が動かなければ」と考えがちですが、これをやめ、「自分がやるんだ」と考えようではありませんか。これは新しい行政との関係をつくる試みです。私たちはシンシアのことを通じて、21世紀のまちづくりの主役は私たち自身だ、ということを学びました。つまり、ここにいるみなさんが主役なんです。



全員アピール

 シンポジウムの最後に参加者全員で次のようなアピールをしました。

 1頭の犬が障害を持つ人を介助し、その人生を豊かにしていることを、私たちは知りました。“シンシアのまち”宝塚の多くの人のやさしさが、1頭の犬と介助を受ける人を見守っています。この街から発信された介助犬の公的認知を今後、さらに推し進め、高齢者や障害を持つ人が暮らしやすく積極的に参加できる社会環境を全国につくりあげるきっかけにしましょう。そして、そのためにも、シンポジウムが開かれたこの12月5日を「シンシアの日」として長く記憶にとどめ、12月9日の「障害者の日」と連動した「やさしい街づくり週間」として位置づけ、市民・自治体が手を携えて進んでいきましょう。

■写真説明 木村佳友(きむら・よしとも)39歳。1987年、バイク事故で車いす生活に。三菱電機嘱託社員。

■写真説明 高柳友子(たかやなぎ・ともこ)33歳。内科医。97年、医師など専門家で日本介助犬アカデミーを設立。

■写真説明 正司泰一郎(しょうじ・たいいちろう)64歳。県議を経て91年2月、宝塚市長に初当選。現在3期目。

■写真説明 藤原健(ふじわら・けん)49歳。毎日新聞大阪本社特別報道部副部長、社会部副部長を経て現職。

■写真説明 ニノミヤ・アキイエ・ヘンリー 52歳。日系カナダ人。関西学院大学総合政策学部教授。

★★12月22日 毎日新聞・朝刊・阪神版★★

[振り返る99]「あの記事から」/5 12・5介助犬シンポジウム/阪神

 今月5日に毎日新聞社と宝塚市が共催した「介助犬シンポジウム〜“シンシアのまち”宝塚から〜」。昨年から取り組んでいる介助犬キャンペーンの一環で、約400人にご参加いただいた。私は終了後に回収した参加者の意見・感想を読んで胸が熱くなった。「木村さんとシンシアの姿に元気づけられた」「バリアフリー(障壁のない)社会のために自分は何ができるかを考えさせられた」など、それぞれの思いがびっしりとつづられていたからだ。声の一部を紹介する。

<連載「介助犬シンシア」を熱心に読んでいただいている方が多かった>  「今日はシンシアが載っているかな?と朝刊を見るのが楽しみになりました。(シンポに参加して)シンシアの自然な態度と木村さんのシンシアに対するやさしいまなざしは信頼関係が深く築かれているんだろうと思いました」(大阪府寝屋川市在住)
 「最初は単に犬が好きということで読み始めた記事ですが、読んでいくに従って、ご苦労が少しずつわかり、応援したい気持ちでいっぱいです」

<遠く広島から駆けつけた学生もいた>
 「地図も持たずに新幹線に乗ったのですが、市民の方や車掌さん、タクシーの運転手さんなどさまざまな人にお世話になり、何とかたどり着くことができました。みなさん温かい人ばかりで、このような市民のみなさんが“シンシアのまち”に取り組む原動力になっているのだなと感じました」

<会場には車いすの方も何人かいた>
 「いつか介助犬が市営住宅でも一緒に暮らせる日が来ることを望み頑張りたいと思っています」

<そして18歳の高校生も>
 「介助犬などの福祉関係に興味を持っているので、シンポに来れてものすごくよかったです」

<シンポをきっかけに高齢者や障害者が暮らしやすい街づくりのために何をすればいいかを考えた人がいた>
 「人が何かしたいと思った時、その時は1人の力でも、その気持ちを持ち続けて頑張っていれば、今回のシンポジウムのように、ここに来て同じように考えている人がいるんだなと考えたり、ノーマライゼーションの世の中になるために自分がやるべき事が見えてきました」
 「一自治体の動きや市民の意見が反映され立法となることはすごく意義のある事だと思いますが、現状として課題は山ほどあるでしょう。私たちにできることは何でしょう」(伊丹市の男性)
 「私たちは何をすれば力になれるのか?と考える時があります。でも今日は、今まで通り、介助犬の話を広め、車いすの人たちの手助けをしていけばいいんだな、と思いました」

<そして、木村佳友さん(39)とシンシアを実際に見て、元気づけられたという声も多かった>
 「木村さんとシンシアの姿は力強く、心強いものがあり、生きるエネルギーを頂いているようです。このような会場に来れる自分が少しうれしく心が温まって帰れます」
 「前例がないことに挑戦することの難しい日本の行政のやり方に問題があるなか、苦労は多いことと思いますが、シンシアの活躍の姿を見つめる他の人々の愛の心が一つ一つ増えることで、ギスギスした心もなごやかになるのでは」

<その他にも多数の感想が>
 「介助犬も車いすの方ももっともっと街中にありふれた姿として見られる社会になればいいと思います」
 「バリアフリーと唱えられても、ソフト面ではなかなか協力してもらえないのが現状。誰も好きで病気、障害になったのではない。健常人と同じように生活ができるのが当然という社会になれたらとつくづく思う」

  ◇  ◇  シンポでは、参加者が私の想像をはるかに超えた受け止め方をしているのを実感した。こうしたみなさんの声を糧に、2000年もキャンペーンを続けていきたい。【山本真也】

 ◆記事「介助犬シンポシウム開催」(12月6日付)……木村さん、高柳友子・日本介助犬アカデミー事務局長、正司泰一郎・宝塚市長、藤原健・毎日新聞阪神支局長がパネル討論。介助犬の現状や自治体、マスコミの役割を話し合った。この日にちなんで12月5日を「シンシアの日」とする大会アピールを宣言した。

★★12月24日 毎日新聞・朝刊・阪神版★★

[支局長からの手紙]藤原健・阪神支局長 子どもたちのやさしさを未来に /阪神

  今月5日に宝塚市内で開かれた「介助犬シンポジウム〜“シンシアのまち”宝塚から〜」(宝塚市、毎日新聞社共催)以後、子どもたちから支局にこんな便りが続いています。「シンシアのことを調べています。資料がありましたら送って下さい」「障害を持つ人たちと共生できるため、まちのバリアフリーについて勉強を始めました」
 そうなんです。子どもたちは、具体的な問題さえ提起すれば、一生懸命考える。生まれ持っているやさしさを、身の回りで発揮できるようになる。その確認ができただけでも、シンポジウムを開いた意義はありました。

◆    ◆    ◆

 今年は、子どもたちと接する機会が多い年でした。
 日本新聞協会が推進している「新聞を教育に(NIE)」の試みに協力し、中学校と小学校で授業をしたこともありました。与えられたテーマは、難民であり、アジアやアフリカの子どもたちの現状でした。これまで取材で体験した具体的な事例、日本との比較に話を絞りました。
 <カンボジア難民キャンプでのこと。高熱の3歳男児を抱えた母親が病院に駆け込んできた。母親は医師を見つけると、「先生がくれた薬をこの子に与えたのに、ちっとも効かないじゃないの」と食ってかかった。薬を確認する医師。薬は下痢止めの薬。「お母さん、これじゃあ、効くはずがない」。翌日、男児は亡くなり、さめざめと泣く母親。「私が殺したようなもの。国中で戦争ばっかりしていて、私は学校も行ってないから、薬の区別もつかなかった」
 同じ難民キャンプの学校で。掘っ建て小屋の学校は、目を輝かした子どもたちであふれていた。「学校に来るのが楽しい。学校にいる間は、水運びをしなくていいし、文字や計算を覚えるのは楽しい」>

 いずれも、かつて私が目にしたことです。「勉強することの意味って、こんなことなんですよ。学校が退屈で窮屈なんて、少なくとも難民キャンプの子どもたちから聞いたことがない」。授業でこう説明すると、手応えがありました。教室にピンと張り詰めた雰囲気さえ、漂いました。

 ユニセフ(国連児童基金)のデータも紹介しました。
 <日本の子どもは、ひと組の夫婦から1・5人以下しか生まれない。そして、男女とも平均80歳前後まで生きる。少なく生まれて、長生きする。こうした国は地球上で、極めて少ない。
 アフリカのシエラレオネでは、新生児の平均余命が37年(ユニセフの1999年版「世界子ども白書」。今月13日発表の2000年版では38年)。5歳未満の乳幼児の死亡率は日本が1000人当たり6人(99年版「白書」。2000年版では4人)なのに対し、このシエラレオネは316人(2000年版も同数)。この圧倒的な死亡率が、平均寿命や平均余命を大きく下げている。子どもの命を奪うのは、戦争や飢餓などが引き起こす貧困が原因で医療を十分に受けられないから>

◆    ◆    ◆

 多分、教室の子どもたちにはショックだったのでしょう。後日、送られてきた「学級通信」にはこの授業の印象が特集されており、海の向こうの同じ子どもたちの境遇に同情する声や、自らの豊かさを改めて見直す意見が散見できました。
 不登校、いじめ、学級崩壊…。学校現場が荒れています。先生方の奮闘は、涙ぐましいほどです。このままだと、日本の子どもたちはどうなるんだろう。でも、私が感じたのは、しっかりした情報さえあれば、子どもからやさしさを引き出すことができる。そう信じることが、広い意味での教育ではないか。
 来るべき新世紀に、日本の子どもたちが世界の子どもたちとやさしさをキーワードに、しっかりと手を結ぶことができるよう大人たちが頑張らなければ。こんなことを考えながら、年を越します。ちょっと早いですが

★★12月29日 毎日新聞・朝刊・阪神版★★

[振り返る99]あの記事から/9 公共施設のバリアは? /阪神

 宝塚市は今月5日にあった「介助犬シンポジウム」で「高齢者や障害を持つ人が暮らしやすく積極的に参加できる社会環境を全国につくりあげるきっかけにしよう」というアピールを採択した。介助犬を突破口に、「宝塚をすべての人に優しいまちに」という理念だ。しかし、この素晴らしい理念のもとで、まだまだ宝塚市自身が見詰め直さなければならない具体的な課題は残されている。
 阪急宝塚駅から宝塚大劇場に至る歩道「花のみち」。阪神大震災で大きな被害を受けながらも、歌劇観劇に訪れる人でいつもにぎわっている。今、この地区に阪神大震災復興再開発ビル建設の槌(つち)音が響いている。鉄筋13階建てのビル2棟を建てる計画だ。
 ここに、観劇帰りの人たちに再開発ビルに立ち寄ってもらおうと歩道「花のみち」を結ぶ空中デッキ「花舞台」が建設する計画がある。花のみちの上の2階部分に鉄筋で約190平方メートルの広場を設け、車道で隔てられた北側の再開発ビルの2階ともつなぎ、再開発ビル〜花のみちを回遊できる空間にする、というものだ。
 「花舞台」に立てば大劇場や武庫川も望める。歌劇帰りの人がふと立ち寄り、そして再開発ビル内の商店街にも足を運んでくれるかもしれない。構想はいい。
 しかし、花のみちからは階段でしか上がれないことになっている。身体障害者や足腰が弱い人が花舞台に行きたい時は、車道で隔てられた再開発ビルに渡り、ビル内のエレベーターに乗らなければならない。花のみちから約50メートルう回しなけらばならない。健常者にとっては50メートルは大した距離ではないが、車いすの人にとってはどうだろうか……。
 同市12月議会でこの問題を取り上げた車いすの障害者、井上聖市議は「市の案では、初めて訪れた人がエレベーターを探してもビルの中にあるとはすぐに分からない。花のみちから花舞台に上る階段横にエレベーターを設置できないか」と訴えた。市は「管理上問題がある」と答弁し、設計見直しには及び腰。急きょ、どこにエレベーターがあるか、外部から分かるような掲示板を設置するとしている。
 井上市議は「10月に完成した震災復興再開発ビル『ピピアめふ』でも、エレベーターの表示板が分かりにくい場所にあった。ビル内の中庭に出ようとしても出口に高い段差があったりで、バリアフリー(障壁がない状態)には程遠い」と言う。
 花舞台構想が持ち上がった95年には、「エレベーター設置という考えはなかった」と市はいう。その後、内部で検討したものの「再開発ビルのエレベーターで十分」という声があがり、来年2月の花舞台工事着工を迎えるようになった。「バリアフリー」という概念が市に薄いまま、ずるずるきてしまったのではないか。
 3月の市長選時に、正司泰一郎市長は「公共施設は(バリアフリーに向け)改善は率先すべき」と公約した。介助犬シンシアは人の心のバリア(障壁)をなくしてくれた。公共施設のバリアをなくすため、行政はもっと知恵を絞ってほしい。【田畑知之】

 記事「『そうは言いますが…』」(阪神面3月9日付から4回連載)……宝塚市長選に寄せて、「バリアフリー化に向けどう取り組む?」などを立候補者に質問。その回答について市民に感想を語ってもらった。



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