☆☆ 『シンシア』の事が掲載された2001年5月の新聞記事 ☆☆

★★ 5月11日 毎日新聞・朝刊・阪神版 ★★

「宝塚市大使」に木村佳友さんら11人 市のPRに一役−−宝塚市/阪神

 国内外で宝塚市をPRしてもらおうと同市は10日、介助犬シンシアと暮らす木村佳友さんや、文化プロデューサーの河内厚郎さんら同市ゆかりの11人を「市大使」に任命した。市が「宝塚市大使」と書かれた名刺を提供、宝塚の宣伝に一役かってもらう。任期は決めていない。定員は50人で随時増やしていく。
 木村さんと河内さん以外で任命されたのは次の皆さん。
 故手塚治虫さんの長男でビジュアリストの手塚真さんと、治虫さんの妻で市立手塚治虫記念館名誉館長の悦子さん▽シドニー五輪の水泳飛び込みに出場した寺内健さん▽同五輪の新体操に出場した村田由香里さん▽阪神タイガース元監督の吉田義男さん▽タレントで同市広報番組レポーターのやすみりえさん▽洋画家の元永定正、中辻悦子夫妻▽料理家の程一彦さん【佐々木雅彦】

★★ 5月11日 読売新聞・朝刊・阪神版 ★★

宝塚市大使に11人 吉田・前阪神監督ら市が委嘱 国内外で街PR=兵阪神

◆吉田前阪神監督、手塚眞さんら
 宝塚市は十日、街のイメージアップとPRをしてもらうために、阪神タイガースの前監督吉田義男さんや、介助犬シンシアと暮らす木村佳友さんら、市在住や宝塚にゆかりのある著名人十一人を「宝塚市大使」に委嘱した。
 ほかに委嘱されたのは、▽漫画家手塚治虫さんの妻悦子さんと、長男でビジュアリストの眞さん▽シドニー五輪新体操出場の村田由香里さん▽シドニー五輪水泳飛び込みの寺内健さん▽画家の元永定正さん、中辻悦子さん夫妻▽料理家の程一彦さん▽文化プロデューサーの河内厚郎さん▽市広報番組のリポーターやすみりえさん。
 さまざまな分野で国内外で活動している著名人に、仕事や試合などで訪れた土地で宝塚の名を広めてもらうのが狙い。市は、それぞれに「宝塚市大使」という肩書と名前を印刷した名刺を提供、PRに活用してもらう。大使の任期は定めておらず、無報酬だという。
 市は、大使を今後、五十人にまで増やす計画で「宝塚歌劇のおひざ元としてだけでなく、ほかにもいいところがあることをPRしていただければ」としている。

写真=手塚 眞さん、写真=木村佳友さん

★★ 5月13日 毎日新聞・大阪本紙・朝刊 ★★

住友生命 今夏から介助犬育成を支援 購入や訓練費 盲導犬、聴導犬も

 住友生命(本社・大阪市)が、絶対数が不足している介助犬、盲導犬、聴導犬の普及を支援する「アシスタントドッグ育成支援活動」に乗り出す。期間は今夏から5年間。犬の購入、訓練、訓練士の養成などに資金援助し、大規模な支援システムをつくりあげるのが目的。「介助犬法案」が今国会にも提出される見通しだが、需要に見合うだけの育成システムが未整備なことから、関係者の期待が高まっている。 (2面にクローズアップ)
 介助犬は現在、民間団体や個人が細々と育成しており、まだ全国で十数頭しかいない。候補犬や育成費用の不足、訓練士の人材難が普及の遅れの大きな原因の一つになっている。聴導犬をめぐる状況もほぼ同じだ。道路交通法にその名が登場して唯一、法的な裏付けを持つ盲導犬でさえ、潜在需要とされる7800頭に遠く及ばない約850頭にとどまっている。
 こうしたことから同社は、大企業としては初めてアシスタントドッグに対する幅広い普及支援に取り組むことを決めた。一貫した支援システムをつくることで、介助犬などの供給を安定させるとともに、障害者が高額な購入費を負担するような事態を避けることができる。今夏、有識者による第三者機関を設立して、資金を助成する団体や個人の選定にあたる。
 兵庫県宝塚市で介助犬シンシアと生活する車椅子のコンピュータープログラマー、木村佳友さん(40)は「法的に認知を受けても、どれだけ公的補助があるかは不透明で、大企業が支援システムをつくって資金を支援していただけるのは大変、ありがたい」と話している。 【山本真也】

★★ 5月13日 毎日新聞・東京本紙・朝刊 ★★

住友生命、介助犬の普及を援助−−5年計画、育成システムを整備

 住友生命(本社・大阪市)が、絶対数が不足している介助犬、盲導犬、聴導犬の普及を支援する「アシスタントドッグ育成支援活動」に乗り出す。期間は今夏から5年間。犬の購入、訓練、訓練士の養成などに資金援助し、支援システムをつくりあげるのが目的だ。(2面にクローズアップ)
 「介助犬法案」が今国会にも提出される見通しだが、需要に見合うだけの育成システムが未整備なことから、関係者の期待が高まっている。介助犬は現在、民間団体や個人が細々と育成しており、まだ全国で十数頭しかいない。候補犬や育成費用の不足、訓練士の人材難が普及の遅れの大きな原因になっている。
 こうしたことから同社は、大企業としては初めて幅広い普及支援に取り組むことを決めた。【山本真也】

★★ 5月13日 毎日新聞・東京本紙・朝刊 ★★

[クローズアップ2001]「介助犬法案」今国会提出へ 社会的認知を求めて

◇障害者の幅広いサポートに
 「介助犬法案」が今国会にも提出される見込みになっている。超党派の国会議員でつくる「介助犬を推進する議員の会」(会長・田中真紀子外相、108人)が法案作成を進めており、障害者の社会的アクセス保障をうたった新法制定と既存の福祉関連法の改正を組み合わせた幅広い法案になる方向が見えてきた。障害者の手足となって活躍する介助犬は国内でまだ十数頭に過ぎない。法制化をきっかけに、質のよい介助犬を育成するシステムができれば、全国で165万人といわれる肢体不自由者の社会参加に新たな可能性を広げることができそうだ。【山本真也】

◆ペットじゃない
 「お客さん、ペットの持ち込みは困ります」
 「介助犬なんですが」
 「介助犬? 盲導犬ではありませんよね。とにかくペットは困るんです」

 兵庫県宝塚市に住む車椅子のコンピュータープログラマー、木村佳友さん(40)は、介助犬のシンシアと暮らし始めた約5年前、外出先で何度も入店を断られた。
 障害者をサポートする介助動物。国内には、介助犬のほか、視覚障害者を歩行誘導する盲導犬、聴覚障害者に音源を知らせる聴導犬がいる。法的に認知されているのは盲導犬だけで、介助犬と聴導犬はペットと同じ位置付けだ。
 盲導犬は道路交通法で「目が見えない者は通行の際、政令で定める杖(つえ)または、盲導犬を連れていなければならない」と規定されている。今年4月には身体障害者福祉法と社会福祉法が改正・施行され、訓練施設が税制上有利な社会福祉法人になることができるようになり、都道府県の貸与事業も認められた。加えて、公共の場や交通機関での受け入れ、公営住宅での同居については、国から通達や省令が出ている。
 介助犬にも法的根拠を与えれば、国や自治体はさまざまな支援が可能になる。

◆多い同伴拒否
 「議員の会」は今年3月、法案作成の実務を行う14人のワーキングチームを発足させた。初会合では「介助犬を盲導犬と同じレベルにするのではなく、盲導犬の足りない部分にも配慮してより良いものをつくろう」との意見が相次いだ。
 日本財団が昨年行った調査によると、約30万人の視覚障害者のうち、盲導犬の潜在需要は約7800人に上るという。しかし、盲導犬の実働数は、日本で育成が始まって約40年がたってもまだ850頭。乗り物などでの受け入れを求めた通達には強制力がなく、同伴拒否はまだ根強い。
 聴覚障害者は約35万人といわれるが、聴導犬もまだ十数頭だ。4月、大阪市在住者の聴導犬が初めてJR西日本への同伴乗車を認められたが、社会的認知はまだ低い。
 ワーキングチームは、介助犬だけでなく盲導犬や聴導犬を含め障害者の社会的アクセス確保を保障する新法の制定を「介助犬法案」の一つの柱にしている。

◆支援の輪、徐々に広がり
 介助犬の育成は70年代にアメリカでスタート、日本では90年代から民間によって育成が始まった。車椅子のコンピュータープログラマー、木村さんは飼い犬シンシアを東京の訓練施設に預け、96年に介助犬とした。シンシアは落としたフロッピーを拾うなど、在宅勤務生活には欠かせない存在になったが、逆に同伴拒否で外出の範囲が限られるというジレンマに陥った。
 介助犬をめぐる状況が大きく動き出したのは98年。毎日新聞が木村さんペアを軸にした介助犬支援キャンペーンを開始。間もなく、医師、獣医師らがつくる「介助犬の基礎的調査研究班」に旧厚生省から助成が決まった。地元の宝塚市もハーネス(胴輪)の助成を決め、自治体として初めて介助犬を公的に認知した。
 木村さんらは99年2月、初めて介助犬同伴で国会を傍聴。議員会館で現状を訴えた。そこに出席した議員が核となり、同7月に64人で「介助犬を推進する議員の会」を結成した。
 一方、民間でもダイエーグループや阪急百貨店が介助犬の受け入れを表明。兵庫県内の飲食店、理容店など1万4000店が加盟する組合も、県が独自の介助犬認定制度を設けたのを受け、加盟店での受け入れを始めた。また宝塚市が公募して「介助犬同伴OKステッカー」を作成。毎日新聞大阪社会事業団「シンシア基金」で製作費を助成し、ステッカーは全国の店舗や施設に広がりつつある。
 昨年6月、旧厚生省も有識者による検討会を設置。今年7月をめどに介助犬の認定基準などについて報告書をまとめる。100人以上に増えた議員の会は、今国会(6月29日まで)での提出・成立を目指している。

◇“先進国”も法に不備−−求められるきめ細かさ
 介助犬の存在を法律で認めている国がある。アメリカは90年に制定した「障害を持つアメリカ人法」(ADA)で、介助犬や盲導犬を含む介助動物を「個々の障害者を手助けするために訓練された動物」として幅広く定義。公共の場所での同伴拒否を禁じた。イギリスでも95年に成立した「障害者差別禁止法」(DDA)で、タクシー乗車に同様の規定を設けている。
 しかし1000頭以上と世界で最も多くの介助犬が活躍するアメリカでは、さまざまなトラブルが起きている。ADAやDDAは、「なにをもって介助犬とするか」という基準や訓練士の資格について定めていない。そのため、訓練が不十分な犬が譲渡されたり、1頭3万〜5万ドルの高額で取引される無秩序な状態が生まれている。
 ワーキングチーム代表の中川智子衆院議員は「質のよい介助犬を増やしていくのが大前提で、アクセス法だけでは不十分」と強調する。そのため、社会福祉法や障害者基本法などを改正し、アメリカやイギリスにはない、きめ細かい制度を目指している。



◇介助犬のあゆみ◇
1970年代  介助犬育成、アメリカで開始
  92年   アメリカから介助犬を初導入。国内でも育成始まる
  96年7月 シンシアが介助犬となる
  98年4月 毎日新聞がキャンペーン開始
        「介助犬の基礎的調査研究班」に厚生科学研究費助成
    12月 兵庫県宝塚市がハーネス補助を表明
  99年2月 シンシアを同伴しての国会傍聴が認められる
     5月 宝塚市が「シンシアのまち」を宣言
     7月 介助犬を推進する議員の会が結成される
        ダイエーグループが受け入れ
2000年4月 介助犬ステッカーの掲示運動開始
     6月 厚生省(現厚生労働省)の検討会発足
     9月 兵庫県が介助犬認定制度をスタートさせる
        14,000店が加盟する「兵庫県環境衛生同業組合連絡協議会」受け入れ表明
  01年3月 議員の会ワーキングチームが法案作りを開始

■写真説明 シンシア

■写真説明 「議員の会」設立総会には、木村さん(手前)がシンシアと出席し、法制化を訴えた=99年7月、衆院第2議員会館で

★★ 5月15日 毎日新聞・朝刊・京都版 ★★

介助犬シンシア写真展の募金贈る 毎日新聞大阪社会事業団に「ディリパ京都」/京都

 大阪ガス総合ショールーム「ディリパ京都」(下京区)の小泉美奈雄館長は14日、「介助犬シンシア 写真パネル展」で集まった募金7万5185円を毎日新聞大阪社会事業団「シンシア基金」に寄贈した。
 同展は「大阪ガス“小さな灯”運動」の主催で、先月27日〜今月8日に開催。兵庫県宝塚市で活躍するシンシアの日常を写真パネルで紹介し、介助犬の普及支援を呼びかけた。
 小泉館長は上京区の毎日新聞京都支局に、善意がぎっしり詰まった募金箱を寄せた。【富永浩三】

★★ 5月15日 朝日新聞・朝刊・愛知版 ★★

介助犬が本格訓練 「あかね荘」が導入 /愛知

★★ 5月16日 毎日新聞・東京本紙・夕刊 ★★

介助犬、社会参加の機会保障 法案の骨子、明らかに−−来年4月施行目指す

 超党派の国会議員が今国会での成立を目指す「介助犬法案」の骨子が16日、明らかになった。介助犬、盲導犬、聴導犬のうち、国などの指定法人が認定した犬を「身体障害者補助犬」と位置づけ、施設への同伴など社会参加の機会を保障する。また、使用者には「犬の行動管理」、育成者に対しては「犬の質」についての責任を明確にした。来年4月からの施行を予定している。
 「介助犬を推進する議員の会」(会長・田中真紀子外相、108人)のワーキングチームが今年3月から作業を進めていた。法案は新法の「良質な身体障害者補助犬の育成及びその利用の円滑化に関する法律」と、障害者基本法、社会福祉法、身体障害者福祉法の3法の一部改正から成る。
 新法は「障害者の自立と社会参加」を目的とし、交通機関、公共施設、公営住宅で、補助犬の同伴拒否を禁止。民間の店舗や職場、マンションについては受け入れの「努力規定」を設けた。身障者補助犬を育成する機関には、良質な犬の育成責任のほか、医療従事者との連携と譲渡後のケアを義務づけた。【山本真也】

★★ 5月16日 毎日新聞・大阪本紙・夕刊 ★★

[視点]介助犬法案 「育成者責任」時代先取り

 「介助犬法案」は、障害者をサポートする犬を幅広く「身体障害者補助犬」と規定。既に道交法で認知されている盲導犬の地位向上につながるほか、欧米で活動している「てんかん予知犬」などが将来、導入されてもスムーズに対応できる。ワーキングチーム代表の中川智子・衆院議員は「同伴を社会参加の権利として位置付ける画期的な法案になった」と説明する。
 1000頭以上の介助犬がいるアメリカでは、「犬の質」についての法規制がない。訓練が不十分な犬が譲渡されたり、高額で取引されるトラブルが生まれており、育成者の責任を明確にした法案は、時代を先取りしたともいえる。
 肢体不自由者は165万人を超えるのに対し、民間に育成がゆだねられている介助犬はわずか十数頭。使用者が待ち望んでいた法制化がようやく実現する見通しになり、これからは育成システムづくりが正念場を迎える。 【山本真也】

★★ 5月16日 共同通信 ★★

介助犬育成に法案要綱  超党派で今国会提出目指し

★★ 5月17日 毎日新聞・東京本紙・朝刊 ★★

先輩の苦労、もうさせない…「介助犬法案」今国会提出へ−−使用者、思い訴え

 超党派の国会議員でつくる「介助犬を推進する議員の会」(会長・田中真紀子外相、108人)の総会が東京都内で16日開かれ、ワーキングチームがまとめた「介助犬法案」骨子が了承された。法案としてまとまり次第、今国会(来月29日まで)に提出される。また、兵庫県宝塚市で介助犬シンシアと暮らす木村佳友さん(40)や盲導犬、聴導犬の使用者が、実情や法制化への思いを訴えた。
 総会で木村さんは、シンシア同伴での入店を拒否された経験などを紹介。「障害者のことを知らなくても犬好きというだけで介助犬を育てている人がたくさんいる。法制化と合わせて、介助犬の公的基準を作ってほしい」と話した。
 聴覚障害を持つ主婦の松本江理さん(32)=東京都練馬区=は、聴導犬美音(みお)と出席。レストランでは同伴を断られるため、美音をいつも大きな旅行かばんに入れて店の前で待たせている。「法律ができれば、当たり前に利用できる」と顔をほころばせた。盲導犬ベストと暮らすしんきゅう院経営、千葉俊彦さん(53)=愛知県扶桑町=も「先輩の盲導犬の使用者がしてきた苦労をもう二度と介助犬や聴導犬の使用者に味わわせたくない」と訴えた。【山本真也、鵜塚健】

■写真説明 「介助犬を推進する議員の会」総会で意見を述べる木村佳友さん。右下は介助犬シンシア=衆院第二議員会館で16日午後4時すぎ、石井諭写す

★★ 5月17日 毎日新聞・大阪本紙・朝刊 ★★

介助犬との生活、木村佳友さんら紹介 「介助犬を推進する議員の会」

 超党派の国会議員でつくる「介助犬を推進する議員の会」(会長・田中真紀子外相、108人)の総会が16日、東京都内で開かれ、ワーキングチームがまとめた「介助犬法案」骨子が了承された。法案としてまとまり次第、今国会(来月29日まで)に提出される。また、兵庫県宝塚市で介助犬シンシアと暮らす木村佳友さん(40)や盲導犬、聴導犬の使用者が、実情や法制化への思いを訴えた。
 総会で木村さんは、シンシア同伴での入店を拒否された経験などを紹介。「法制化と合わせて、介助犬の公的基準を作ってほしい」と話した。
 聴覚障害を持つ主婦の松本江理さん(32)=東京都練馬区=は、聴導犬美音(みお)と出席。レストランでは同伴を断られるため、美音を大きな旅行かばんに入れて店の前で待たせている。「法律ができれば、当たり前に利用できる」と顔をほころばせた。盲導犬ベストと暮らすしんきゅう院経営、千葉俊彦さん(53)=愛知県扶桑町=も「先輩の盲導犬の使用者がしてきた苦労をもう二度と介助犬や聴導犬の使用者に味わわせたくない」と訴えた。 【山本真也、鵜塚健】

★★ 5月18日 毎日新聞・大阪本紙・夕刊 ★★

「介助犬法案」に寄せて 報道の役割、これからも=社会部長、藤原健

 超党派の国会議員が今国会での成立を目指す「介助犬法案」の骨格が固まった。私たちはここに至るまで、1人の障害者と1頭の介助犬を見つめ続けてきた。
 いつも一緒の木村佳友さん(40)と介助犬シンシアに接した人は、やさしい表情になる。地域の人たち、木村さんが住む兵庫県宝塚市の市民。そして、地元自治体職員も国会議員も。実に多くの人が、1人と1頭のペアを中心にする「やさしさネットワーク」とも呼ぶべきつながりを築いた。そして、これが障害者と介助犬の同伴を積極的に推進することなどを盛り込んだ法律案に結びつける力となった。「介助犬に社会的認知を」と訴えた3年以上にわたる私たちのキャンペーンも、そのネットワークが奏でる旋律の伴奏者だった。
 私たちのキャンペーンに対して、「毎日新聞が市民と行政をつなぐ接着剤になった」と、障害者福祉を大学で論じる専門家から過分な評価をいただいたことがある。謙虚に受け止めながら、私たちがなぜこのキャンペーンに取り組んでいるか、経緯を説明したい。
 私が阪神支局長だった98年春、支局員の山本真也記者が「介助犬にも市民権を」の記事を社会面に書き、木村さんとシンシアが紹介された。ホテルに入るのも、電車に乗るのも、介助犬同伴では難しい。そんなことってあるか。記事は、こうした記者の憤りを筆致を抑えながら伝えていた。「バリアフリーが、掛け声だけに終わっていないか。普通の生活をしたいと思っている障害を持つ人に、街はやさしいか」。以後、この問い掛けを私たち自身へも課し、兵庫、大阪の地域面で長期連載も始めた(現在も継続中)。
 間もなく、気が付いた。このペアを支える人たちがいかに多いか。1本の記事、ゆっくりと続く連載が、こうした人たちのやさしさをつなぎ、より強くなっていけたら。キャンペーンは、書くことだけではない。私たちは、シンシアの絵画展、介助犬のことを語り合うシンポジウム開催を宝塚市に積極的に提案した。
 宝塚市も、部局横断のプロジェクトチームをつくって「シンシアのまち」を宣言。バリアフリーのシンボルとしてシンシアを位置付け、国に先駆けて介助犬への公的補助を打ち出した。市民も介助犬、盲導犬の立ち入り可能な市内の飲食店のマップをつくるなどして動き、大手スーパー・ダイエーは全グループで介助犬を受け入れ、阪急電鉄、JRへの乗車もできるようになった。
 超党派の国会議員が法案づくりに着手したとき、既にこうした「やさしさネットワーク」が張りめぐらされていた。「法律にないから」という壁を、ネットワークが破っていたのだ。
 法整備はもとより、到達点ではない。バリアフリーの前提であるべきだ。その意味で、キャンペーンはまだ続く。私たちの果たす役割は、まだ、ある。

★★ 5月18日 毎日新聞・大阪本紙・夕刊 ★★

ともに生きたい 「介助犬法案」提出へ/上 「体の一部」に厚い壁

 日本ではまだまだ“犬はペット”。「犬は体の一部」という障害者の痛切な思いはなかなか分かってもらえない。
 肢体不自由者の手足となって働く「介助犬」。全世界で現在、数千頭が活躍するというのに、日本ではまだ十数頭にすぎない。進行性筋ジストロフィーで電動車椅子生活を送る野口利男さん(51)=東京都日野市=が、94年から一緒に暮らしているグレーデルはそのうちの1頭だ。
 病状が進み、会社を辞めて家に引きこもっていた野口さんを、前向きにしてくれたのがグレーデルだった。「もしいなかったら、僕は施設に入って独りで寂しく生活していた」
 しかし、自宅から一歩外に出ると“壁”だらけ。温泉場の遊戯施設では「お客さんに迷惑がかかる」。スーパーや病院では「前例がない」と、拒まれた。障害者の移送サービスを行う非営利組織(NPO)を設立し、理事長を務める野口さんは「いつも付きっ切りでいてくれるグレーデルは家族の一員なのに……」と何度も悔しい思いをした。
 聴覚障害者を音源まで導いて助ける「聴導犬」。「私にとっての耳」という大阪市の主婦、岸本淑子さん(62)は、聴導犬「みかん」が家に来てから、風呂や洗濯機の水を流しっ放しにすることもなくなった。しかし、外に出ればやはり“壁”は厚い。「どこにでも一緒に行きたい。せめて盲導犬と同じ扱いにしてほしい」と岸本さんは訴える。
 一方、約40年前から育成され、唯一、法的に認められている「盲導犬」。国からは、ホテルや旅館、飲食店で同伴できるように通達が出ている。
 だが、盲導犬と暮らす愛知県扶桑町の針灸(しんきゅう)院経営、千葉俊彦さん(53)は「単なる通達では全く役に立たない」と言い切る。入店を拒否された飲食店で「国の通達がある」と話すと、「うちのポリシーです」という信じられない答えが返ってきた。「盲導犬でもこれが実態。介助犬や聴導犬を含め、法律で同伴を保障してほしい」と唇をかみしめた。
◇   ◇
 今国会の成立を目指して、「介助犬法案」が近く提出される。「介助犬とともに当たり前に生きたい」という障害者の願いを実現させるための課題を探った。

■写真説明 野口さんに新聞を渡すグレーデル。介助犬は「体の一部」になっている =大森顕浩写す

★★ 5月19日 毎日新聞・大阪本紙・夕刊 ★★

ともに生きたい 「介助犬法案」提出へ/中 弱すぎる育成体制

 介助犬には既に科学のメスが入っている。
 96年にアメリカの研究者が「介助犬がいればヘルパー派遣が減る。1頭で8年間に6万ドル(約740万円)の介護費用の削減効果がある」と発表した。旧厚生省の助成を受けて3年にわたって使用者の実態調査に取り組んできた介助犬の基礎的調査研究班(班長=高柳哲也・奈良県立医科大名誉教授)は今春、「介助犬は応用性、移動性に優れた『生きた自助具』」と結論づけた。
 「私にとって犬がベストの自助具。ロボットなど他に器具があったとしても、便利さでは比較にならない」。アメリカの介助犬使用者、スーザン・ダンカンさん(44)は昨年暮れに開かれた旧厚生省の「介助犬に関する検討会」で証言した。
 介助犬の役割は、単に手足の代わりになるだけではない。人によって異なる障害の内容や程度に合わせて、その役割は実に幅広い。多発性硬化症で歩行が困難なスーザンさんには、介助犬が寄り添い、立ち上がる動作や歩行を支えてくれる。
 一方で、介助犬を「かわいい」「賢い」といった面だけでとらえたり、ペットを使った心のケアと混同する人がまだまだ多い。だからスーザンさんは繰り返して強調する。「これは障害者の社会参加の問題だ」
 科学的な検証が進む一方で、介助犬の育成体制は弱すぎる。民間団体や個人が寄付金などをもとに細々と育てているにすぎない。公的な基準がないため、質にばらつきがある。研究班の調査で、介助犬やその候補犬から股(こ)関節や目の疾患が多数見つかった。犬の“仕事レベル”が低下し、再訓練を望む使用者もいた。しかし、不満は言いにくい。「文句を言えば犬を取り上げられるかもしれない」という不安があるからだ。
 研究班の高柳友子医師は「『自助具』だからこそ、質を確保すべきだ」と主張する。来春の施行を目指す「介助犬法案」では、医療と連携して、介助犬を訓練することを育成者に義務付けた。優れた自助具になるかどうか。それは、育成体制をいかに充実するかにかかっている。

■写真説明 兵庫県宝塚市で開かれた介助犬シンポジウムに出席したスーザン・ダンカンさん(左)=佐藤賢二郎写す

★★ 5月21日 毎日新聞・大阪本紙・夕刊 ★★

ともに生きたい 「介助犬法案」提出へ/下 一日も早く「認知」を

 「地方自治体が国の法令を破ることはできない。やれることには限界がある」。先月26日、議員立法を進める「介助犬を推進する議員の会」(会長・田中真紀子外相)のヒアリングに出席した京都市の職員が訴えた。
 京都市は昨年2月から市立施設での介助犬同伴を認めた。市営地下鉄もOK。ところが、市バスが例外になった。公営バスには、動物の持ち込みを禁じた旧運輸省の「旅客自動車運送事業等運輸規則」があるためだ。
 「介助犬を連れて、いつでも、どこでも出掛けたい」。障害者の切実な訴えは、身近な生活の舞台である自治体に「待ったなし」の対応を迫った。車椅子の障害者、木村佳友さん(40)とその介助犬シンシアが暮らす兵庫県宝塚市は「シンシアのまち」を宣言。兵庫県、京都府、宮津市、城陽市、岐阜県……。遅々とした国の動きを待てずに試行錯誤を始めている。しかし施策を進めれば進めるほど、介助犬がペットと法的な区別がないための矛盾が広がる。
 育成団体への対応にも頭を悩ませている。厚生労働省によると「介助犬育成団体」は全国で15あり、3年前の約2倍に急増している。しかし団体ごとに認定基準やトレーニング方法はバラバラ。ペットに物を拾うことを仕込んで「介助犬」と名付けても、それで通ってしまう。
 団体から資金援助を求められても、自治体は税金を使っていいのかどうか容易には判断できないという。西日本のある自治体担当者は「運転免許証のように全国共通の規格があればいいのだが……」と戸惑いを隠せない。

 「介助犬法案」では、育成団体が社会福祉法人になる道を開くが、事業内容や施設などの要件は厳しい。また、介助犬の認定は国などの指定法人が行い、勝手に「介助犬」は名乗れない。「活動を規制する」と法案に反発する団体もある。
 自治体から国へ。「一日でも早く法的認知を得て胸を張って外出したい」。木村さんの思いを託した法案が、まもなく提出される。
  ◇  ◇
 連載は山本真也、内田達也、大森顕浩が担当しました。

■写真説明 木村さんとシンシアが暮らす兵庫県宝塚市は、「介助犬同伴可ステッカー」を店や施設に掲示している =小関勉写す

★★ 5月21日 毎日新聞・朝刊・阪神版 ★★

[記者が行く]介助犬の早期法制化を 東京で「推進する議員の会」が総会 /阪神

◇木村佳友さんと介助犬シンシアら、社会の壁の厚さ訴える
 介助犬の法制化作業が大詰めを迎える中、16日に東京都内で「介助犬を推進する議員の会」(会長・田中真紀子外相、108人)の総会が開かれた。介助犬シンシアと暮らすコンピュータープログラマー、木村佳友さん(40)=宝塚市=や聴導犬、盲導犬の使用者が出席。議員を前に、これまで味わった社会の壁の厚さを訴え、早期の法制化に期待をにじませた。 【鵜塚健】

●…介助犬…●
 木村さんは、シンシアと暮らした約5年間を振り返り、交通機関や店舗などで繰り返し同伴を拒否された苦い経験を報告。宝塚市や県などの協力で、徐々に理解が進み、「県内には介助犬オーケーのステッカーを張った店が1万店にまで増えた」と紹介した。一方で、「隣の大阪府に出ると同伴を断られる」として公的基準の必要性を改めて訴えた。介助犬の育成面にも触れ「(法制化により)質のよい介助犬が障害者に行き渡ってほしい」と話した。

●…聴導犬…●
 高熱が原因の進行性難聴で20歳すぎから耳がほとんど聴こえなくなったという主婦の松本江理さん(32)=東京都練馬区=は約3年前から聴導犬美音(みお)と生活。電話の音や病院のロビーで名前を呼ばれた時に、前脚でかいて教えてくれる。「美音は仕事も遊びもデートも一緒。耳の代わりをしてくれるだけでなく、安心感やゆとりを与えてくれる」と存在感の大きさを強調した。

●…盲導犬…●
 盲導犬ベストを連れたしんきゅう院経営の千葉俊彦さん(53)=愛知県扶桑町=は「(道路交通法で認められている)盲導犬でも毎日のように理由もなく店やホテルで同伴を断られている」と現状を説明。「通達が出ていても何の役にも立たない。本当の現実を知ってほしい」と訴え、法制化により現状が変わっていくことを強く願った。

★★ 5月26日 毎日新聞・朝刊・阪神版 ★★

「シンシア基金」に9万円を寄付−−小林聖心女学院小 /阪神

 今月23日に介助犬シンシアの飼い主の木村佳友さん(40)の講演を聞いて、実際にシンシアの仕事を見学した、小林聖心女子学院小学校(宝塚市)の児童が25日、毎日新聞社会事業団の「シンシア基金」に計9万円を寄付した。同小の奉仕部の児童が、シンシアの来校を機に、毎週金曜の「おにぎり弁当募金」で「介助犬の普及と育成に役立ててもらおう」と呼び掛けていた。

★★ 5月31日 毎日新聞・朝刊・阪神版 ★★

 介助犬を推進する議員の会「障害者のためによい法律を」 育成へ資金難を訴え /阪神

 「介助犬法案」の議員立法を進めている「介助犬を推進する議員の会」(会長・田中真紀子外相)ワーキングチームのヒアリングが30日、東京都内で開かれ、「介助犬協会」「日本盲導犬協会」「聴導犬普及協会」(いずれも東京都)の代表者が出席した。
 介助犬、聴導犬の両協会は資金難を訴えた。宝塚市で活躍するシンシアなど3頭が実働している介助犬協会は「1頭で約200万円の育成費がかかるが、寄付やグッズ販売が主な収入源で、来年春以降の資金めどが全く立っていない」とした。また、育成団体が乱立気味な点について能條正義・介助犬協会代表は「認定基準やトレーニング方法がバラバラ。訓練が不十分な犬が問題を起こして、介助犬全体のイメージを悪くすることを一番心配している」と懸念を示した。
 一方、日本盲導犬協会は年間約4億円の予算規模があり、トレーナーやボランティアの養成など幅広く活動している。朴善子・同協会神奈川訓練センター施設長は「中途半端な組織では運営が立ち行かない。介助犬、聴導犬についても育成団体のハードルを高くすべき」と主張した。また法律での同伴保障については「通達だけでは不十分。もう一歩踏み込んだものが必要」と話した。
 議員の会は、意見を参考に来月初旬にも最終案をまとめる。ワーキングチーム代表の中川智子衆院議員は「各団体の利害を乗り越えて、障害者にとってよい法律をつくりたい」と話している。【山本真也】



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