☆☆ 『シンシア』の事が掲載された2002年7月の新聞記事 ☆☆

★★ 7月4日 毎日新聞・大阪本紙・朝刊 ★★

「壁」を破った 補助犬法成立/上 手作り議員立法「霞が関」 難敵だった警察庁

 「霞が関(中央省庁)が関与せず、議員がゼロから作った法律は、私の経験では初めて」。5月22日に成立した「身体障害者補助犬法」を奥克彦・衆院法制局参事(35)はこう振り返る。通常国会では毎年、20件前後の議員立法が成立する。議員は選挙区へ帰れば「オレがつくった」などと宣伝するが、原案はほとんど官僚が書いている。だからこそ、補助犬法は嵐にもまれた。
 昨年10月4日、「介助犬を推進する議員の会」は議員会館で原案の省庁ヒアリングを行った。スーパーを所管する経済産業省、交通機関の国土交通省と入れ替わり訪れ、同会事務局長の中川智子議員(社民)に問題点を指摘。“難敵”は、3人で来た警察庁だった。
 「盲導犬の規定は既に道路交通法にあります。補助犬法で二重規定すると混乱の元です」。中川議員は、「要はうちの権限に手を出すな」ということだなと感じた。「道路の法律でスーパーの立ち入りはできないでしょう!」と奥参事は興奮して言った。
 中川議員はその夏、全日本盲導犬使用者の会会長の清水和行さん(41)に聞いた言葉を思い出した。「盲導犬が市民権を得ているなんてとんでもない。ホテルやタクシーだって、まだ断られる」
 協議は流れ、疲れ切った中川議員に「『霞が関』が族議員を1人動かせば、議員立法なんて簡単につぶされるよ。あせってはだめだ」と先輩議員が忠告した。「やっぱり最初は、野党が中心のところがあったからね。霞が関もそういう目で見るし……」。後に法律づくりに奔走することになる元厚生官僚の熊代昭彦・副内閣相(自民)は話した。
 結局、盲導犬の定義は当分の間、道交法に従うことにした。大きな目的を大事にしたからだ。
     ◇
 盲導犬、介助犬、聴導犬の同伴を拒否させない――。バリアフリー新時代を切り開いた身障者補助犬法は、法律づくりの過程そのものが、慣例や権益という「壁」を乗り越える闘いの連続だった。関係者の証言で振り返る。

■写真説明 身障者補助犬法の成立を見届けるため国会に向かう身障者らと補助犬 =5月22日午前、松田嘉徳写す

★★ 7月5日 毎日新聞・大阪本紙・朝刊 ★★

「壁」を破った 補助犬法成立/中 「身内」からの反発

 身体障害者補助犬法の成立を目指した「介助犬を推進する議員の会」に昨年6月、ある介助犬育成団体から根も葉もない内容の書面が届いた。
 「介助犬シンシアが地元・兵庫県宝塚市で不祥事を起こしている。この法案は危険過ぎる」
 骨子案が示されて最も反発したのが、意外なことに補助犬育成団体の一部だった。補助犬の質が社会の信用を受けることが最も大切との考えから、案は「補助犬の認定は厚生労働大臣が指定した公益法人、社会福祉法人が行う」とした。そのくだりが、自分たちの活動を規制すると受け取ったからだ。反対する育成団体の意向をくんだ議員が「拙速すぎる。育成の芽を摘んでしまう」と反対論をぶち上げた。
 シンシアの飼い主の木村佳友さん(42)は「『身内』につぶされる」と危機感を募らせた。その上、米の同時多発テロで臨時国会は関連法一色となった。
 介助犬使用者は全国で二十数人いるが、育成団体が違うと交流はなかった。木村さんは「(育成団体の声でなく)使用者の声を国会に」と全国の介助犬使用者にメールで呼びかけ、13人が「日本介助犬使用者の会」を結成する。心強かったのは、“先輩”の「全日本盲導犬使用者の会」(約350人)が共闘を申し出てくれたことだった。
 テロ対策支援法の成立から一夜明けた10月30日、国会前に広島、兵庫、長野などの介助犬と盲導犬の使用者7人が集まった。この日から12月まで、毎週のように厚労族や与党の実力者への陳情活動が展開される。
 昨年11月8日の議員の会幹事会。民間施設の補助犬受け入れをスーパーや病院など個別に政令で義務化する条文を「煩雑だ」と削除するように求める厚労省に、陳情で実際に使用者と介助犬を目の当たりにしていた同省OBの熊代昭彦衆院議員(自民)は「日本は先進国だろ、義務化すべきだ」と説得した。
 陳情活動に参加した盲導犬使用者の竹前栄治・東京経済大教授(71)は経緯を振り返りながら、成立の意義をこう語る。「日本にはADA(障害を持つアメリカ人法)のような障害者権利法がない。同伴の義務規定を盛り込んだ補助犬法でそれに、一歩近づいた」

■写真説明 補助犬法の早期成立の陳情活動をした木村佳友さんは野中広務氏にも面会した=衆院第2議員会館で昨年11月22日、山本真也写す

★★ 7月6日 毎日新聞・大阪本紙・朝刊 ★★

「壁」を破った 補助犬法成立/下 対決超え、全党一致

 99年7月に設立された超党派の「介助犬を推進する議員の会」の初代会長は、田中真紀子前外相だった。結成を呼びかけた中川智子衆院議員(社民)が、「与党で著名な人」と頼み込み、引き受けてもらった。ところが昨秋、自民党に根回しを始めると「内容じゃない。『マキコ』が絡むものには協力しない」との声が相次ぐ。自民党が「ウン」と言わなければ法案は通らない。
 同11月上旬、終了直後の衆院外務委員会の大臣席に、中川議員がメモを持って駆け寄った。秘書官に指輪を買いに行かせたのではと指摘された“指輪問題”の渦中にあった田中外相(当時)に確実に会えるのはその場しかない。
 「政府の側(大臣)では議員立法の法案提出者にはなっていただけません。別の方に会長をお願いしたい」とのメモ書きを一べつし、彼女は「いいわよ」と答えた。中川議員は冷や汗が流れた。
 後継会長として“厚労族のドン”橋本龍太郎元首相の担ぎ出しに、橋本派の大島慶久・副経済産業相(自民)が動いた。「(自民党や厚生労働省内に)法律なんて出来っこないという空気があった。だからこそ、私たちは本気を示したかった」と振り返る。
 「お忙しいのは分かっています。補助犬は福祉政策の一環なんです」と訴える大島議員。日本介助犬使用者の会会長の医師、今崎牧生さん(39)も介助犬ワカを伴って陳情し、橋本氏は「肢体不自由だったおやじが生きていれば、こんな犬を欲しがったと思う」と承諾した。
 最後の難関は、11月下旬の自民党総務会だった。事実上、全会一致が原則。その朝、「獣医師会の意を受けた議員が修正要求する」という情報が飛び込んだ。
 中川議員は自民党の大物議員に電話で「助けてください!」と叫んでいた。指摘されていた議員は総務会で、「いろいろ『お願い』を受けた。あえて反対しない」と発言。薄氷を踏む思いの末の承認だった。
 有事法制などをめぐり、与野党が激しくぶつかる「対決国会」。しかし、「身体障害者補助犬法」は全党一致で成立した。「補助犬は、体の一部なんだ」という障害者の思いが、さまざまな対決を超えて生み出した法律。今年10月から施行される。(この企画は山本真也、野原靖が担当しました)

■写真説明 補助犬法の成立を祝って会見する「議員の会」の中心メンバー。中川智子議員(左端)は事務局長として最初から奔走した=衆院第1議員会館で5月22日、野原靖写す

★★ 7月20日 神戸新聞・朝刊・三木版 ★★

介助犬通して福祉を考える/来月、講演会【三木版】

 住みよい町づくりについて学ぼうと、市社会福祉協議会と在宅介護支援センターひまわりが八月二十四日、緑が丘町公民館で「みんなの福祉講座」を開く。
 講師に宝塚市内に住むコンピュータープログラマー木村佳友さんと介助犬「シンシア」を招き、十月一日から施行される身体障害者補助犬法や、福祉のあり方について考える。
 無料。午前十時―正午。問い合わせは同協議会TEL86・0800

★★ 7月21日 毎日新聞・大阪本紙・朝刊 ★★

東京で初の補助犬使用者交流会 24人・22頭が出席、協力誓う

 障害者の社会参加を大きく前進させる身体障害者補助犬法が5月に成立したのを受け、補助犬(介助犬、盲導犬、聴導犬)使用者が20日、東京都港区で初めての交流会を開いた。兵庫県宝塚市の車椅子の障害者、木村佳友さん(42)と介助犬シンシアなど使用者24人と補助犬22頭が一堂に会し、10月の同法施行を前に、法の理解や補助犬の受け入れに協力することを誓いあった。
 これまでは補助犬の種類や育成団体が異なると使用者同士の交流はなかった。法成立に向けた活動で協力したことをきっかけに、補助犬をキーワードに視覚、聴覚、肢体不自由の障害者のつながりが深まった。
 同法は公共施設に補助犬受け入れを義務付けているものの、拒否した場合の罰則がないため、全日本盲導犬使用者の会会長の清水和行さん(41)=広島市=は「(同伴拒否に)1人で闘ってはだめ。情報交換し、ともに闘うことが大切」と強調した。
 聴導犬美音(みお)と生活する松本江理さん(33)=東京都=は「恩恵を受ける障害者が一人でも増えてほしい」と話した。 【佐々木雅彦】

■写真説明 木村佳友さん(右)と介助犬シンシアも参加した交流会=根岸基弘写す

★★ 7月24日 毎日新聞・朝刊・阪神版 ★★

幼稚園児が描いた介助犬シンシアの絵を展示 尼崎市で来月10日まで /阪神

 幼稚園児が描いた介助犬シンシアの絵を展示した「子供達のシンシア展」が23日、尼崎市東園田町2の喫茶店「風の谷」で始まった。本紙「お話だ〜いすき」のコーナーに掲載されている難波愛の園幼稚園(同市西難波町)の作品を集めた。来月10日まで。
 同店は精神障害者が働く店舗型作業所でもある。精神障害に対する偏見を自然に解消できればと99年12月にオープン。ごく普通の喫茶店として地域に定着しているが、「さらに幅広く交流したい」と初めて外部の作品展を企画した。
 朝刊に連載された童話「グッドガール!シンシア」を元に園児が描いた15点。働いているシンシアや友達と遊ぶシンシアの様子が生き生きと描かれている。所長の山田照美さん(37)は「見ていてホッとします。これをきっかけに店でいろんな作品展を開きたい」と話している。
 営業は午前10時〜午後5時、日、月は定休。問い合わせは同店(06・6491・2992)。 【山本真也】



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