パッションフルーツ(和名クダモノトケイソウ
(トケイソウ科)

パッションフルーツは南米原産のつる性多年生熱帯果樹である。現在では世界中の熱帯、亜熱帯地域に広まり、オーストラリアや東南アジア、台湾などで産業的に栽培されている。日本では沖縄県以外にも、奄美諸島、小笠原諸島、最近では東北などでも栽培が行われている。福岡県でも最近大牟田などで栽培始められたようである。また今年になって熊本産が販売を始め各地の果実がデパートなどで販売されている。 以前はアメリカ産、や沖縄産だけだったが、今は福岡産、熊本産、徳之島産などがある。同じ品種でもやはり大きいのが値が高い。  沖縄で栽培されている主な品種は、紫種の奄美系、黄色種、八重山ではキングルビーと言う品種品も導入され、今なお生産者レベルでの選抜が盛んである。しかし一番多いのが奄美系であり、私の栽培種も紫種の奄美系を苗で購入した。黄色も食べてみたが、形は大きいのだが、味は奄美系に比べると大味で酸味が強いような気がした。ただ大きいので見栄えのする果実である。しかし私的には味、香りともはやはり奄美系が好きだ。

 

パッションフルーツの果実・果実断面 パッションフルーツを生果で食べる場合は、追熟すると酸味が抜けて甘みが増すので食べる当日に冷蔵庫で冷やすのが美味しく食べるコツである。食べる時期は果皮表面にしわが出始めた頃と言われるが、追熟完了は香りも目安にすれば良いと思われる。
タイミングが良いと実に強い甘味と酸味のバランスが良く、私は種ごとスプーンですくって食べる、というのが一番美味しい食べ方だと思う。種ごと食べるというのに抵抗があるかもしれないが、噛まずに飲み込むと口いっぱいにトロピカルな香りと甘酸っぱい食味が広がり最高である。
また、ジュースにも適しており、お好みの量の砂糖を加え種ごと果肉をミキサーにかけ、ガーゼで濾すと濃いめのジュースができるので、これを飲みやすい濃度まで水で薄めると良い。このとき水の変わりに牛乳で薄めると、またひと味違った美味しさが楽しめる。私はやはり果実をそのまま食べるのが好きだ。それだけに追熟果実のしわの入り具合と香りが気になる所である。 保存する日数は室内の温度が高いほど短いようで、夏場は1週間前後であるが、冬場の収穫果実は10日ぐらい掛かるようだ。しわが出ていない表皮がつるつるの時は酸味が強すぎて適さない。

パッションフルーツについて

 パッションフルーツを「情熱の果物」と考える人が多いようだが、実は「(キリスト)受難の(花の)実」というのが正解である。
「passion」という単語には「情熱」の他に「(キリスト)受難」の意味がある。
  一方、キリスト教圏外である日本では、花の形は「時計」に見立てられ「トケイソウ」となった。トケイソウには多くの種類があるが、そのうち果実がつくものが「クダモノトケイソウ」となったわけである。

パッションフルーツの花 
花の中心にある3本の時計の針なる部分がめしべで、その下にある楕円形のものがおしべで裏に花粉を持っている。このように面白い花をつけるので観賞用として栽培されることも多い。
福岡では冬の気温が低いので熱帯植物にとり、自然のまま冬を越すのが難しいと思われるが、最近の温暖化の傾向からか我が家のパッションフルーツもビニールを被せただけの状態でも越冬できたようだ。
ただ気温が0度を切る様な真冬には簡単な加温設備があると温室内で出る新芽を保護することが出来る。新芽が早いと春の生育が早くなり開花も早くなるので早い時期から果実の生育もよく収穫には都合が良い。

栽培方法について

私は苗をほとんどを鉢植えにしているが、これは当初寒くなったら玄関先にある簡易温室に入れるつもりで移動が出来る様にする為であった。その後1坪のビニールハウスを手に入れ、それに500Wの電気加温装置を付けている。
これだと真冬でも5度以下になる事はほとんど無いと思われるが、念のため最高最低温度計を購入してチェックしている。このハウスに大きい目の鉢に植えた苗を入れて育てているのだが、3本も植えていると夏場は生育が激しくあっという間にハウスいっぱいに茂ってしまうので、風が通り難くなるので適宜蔓を誘引して置くのがよさそうだ。

では月ごとに生育状況を述べてみよう。温室のビニールは福岡の冬の気候ではどうしても4月中旬ぐらいまで被せる必要があるが、ただ4月の日中はハウス内の温度が40度近くなる事があり、せっかく育っている花芽を痛めてしまう
心配がある。4月下旬には最初の花が開花するぐらいに持って行きたいので、出来るだけこまめに温室内の温度調節を行い花芽の生育を促したい。花芽は日中の温度が20度ぐらいになると付くようで、更に最高温度が25度になると開花する。したがって20度から25度と言う温度条件は、4月ごろでは温室の中でしか実現できないので、出来るだけ保温したままにしたい。
ただ一度付いた花芽は15度ぐらいまで下がっても耐えられそうで落花しない。
5月ともなると水不足の問題がある。水が足らないとせっかく付いた蕾が黄色くなって落ちてしまう事がある。

写真のように折角の蕾が一時的な水不足で落ちてしまうのである。この現象は路地に植えられた苗では水不足はあまり起こらないのではと思うのだが、とにかく鉢植えは注意が必要である。その時は次の蕾を待つしかないだろう。梅雨明けは更に水遣りに注意が必要だ。
パッションフルーツは伸びだすと水をすごく要求してくる。直接地面に植えると水切れは起こり難いが鉢の場合は真夏になるとほとんど毎日水遣りが必要だ。この点路地植えが管理しやすいだろう。

水と肥料

成長期のパッションフルーツは水と肥料を要求してくる。したがって苗を植えるとき元肥を多めに与えておくことも必要であるが、特に実が大きく成りだすと追肥が必要で、私は固形の有機肥料も充分に与えている。梅雨の時期を迎えるころにはますます蔓が伸びて花もどんどん咲いて養分が必要になる。ただ梅雨明けで気温が30度を超えると花があまり咲かなくなるようだ。

受粉作業(主に5月から6月、7月に掛けて開花するが、開花には周期があるようだ)

花が咲き始めると仕事が待っている。それは人工授粉の作業である。2年目の苗が成育して花を付け出したら、鉢の中では一日4,5個の花をつけて来る。したがって苗が3本もあれば10数個の花が開花するので花探しが大変だ。ましてや本格的な商業栽培では一大作業になるだろう。

開花は決まって朝の10時前後である。かなりの速さで開花するが、開花速度を計って見たら、3分ぐらいで開花してしまった。蕾が開く瞬間に静かにしているとパッチと言う小さな音が聞こえる位である。受粉は開花した後、数時間内に受粉するが、私は指におしべから取った花粉をめしべにくっ付ける方法を取っている少々荒っぽいがこれで充分なようだ。
受粉率は晴れた日では80%以上であるが、問題は雨の日で、雨がやんだ時に受粉しても、その後に雨が降ると花粉が流れてしまい、受粉率は極端に下がってしまい、20%も行かない。
受粉した後少なくとも半日は雨に濡れない事が大事だ。また晴れた日でもおしべの先端の湿りが無くなると受粉率が下がってしまうので、午後3時ぐらいまでには受粉してやった方が間違いない。夕方では受粉率が半分以下になってしまうようだ。したがって開花から4時間ぐらいまでが良い受粉条件だ。
ただ花は夕方には萎んでしまう。受粉作業は指ではなく綿棒などでおこなっても良いが、いつでも受粉が出来る指での受粉は便利である。西表島などではパッションフルーツが山に自生しているが多く果実が自然に生っていると言う事だが、やはり受粉を助ける昆虫がいるのだろう。福岡では
秋の開花時に経験したものだがが受粉作業をしないで自然の受粉だけでは結実する受粉率は数%程度から10%程度と見ている。

水遣りの注意(7、8月が注意)

パッションフルーツはとにかく前述した様に水を要求するが、ただ問題が一つある。いわゆる水の遣り過ぎである。排水の悪い鉢の中は何時までも水で満たされ根腐れを起こす事がある。水不足すると蔓がしおれ、果実にしわが出る程にもなるが、本当の水不足の時は夕方に水を遣ると、翌朝は蔓はシャキッとなり果実もパンパンの元の状態になり一安心である。ただ以下のようなケースも起こる事がある。
右の写真のように蔓が垂れて果実がみすぼらしく萎んできたので慌てて水を与えたのだが朝になっても回復せず、それどころか障害がひどくなったようだ。
結局回復しない原因を調べて見ると、水の遣り過ぎで根が傷み、根が腐り水を吸い上げる力が落ちてしまった結果であった。回復不能な枝葉を切り落とし対処した結果、何とか一部の枝葉は回復したが、10個近くの実を付けた枝を破棄する羽目になってしまった。
実は鉢の一個しかない排水口から根が外に出て、その根が大きくなって排水口を詰めてしまい水が抜けない状態と言う様な事であった。
鉢の中の排水が充分に出来て新鮮な空気を含んだ水が根に届く必要があるが、鉢の水はけが悪いと、よどんだ水が真夏の気温で温められて結局根を痛めた結果、枝葉に水が充分に届かないと言う事になり、いわゆる根腐れである。
このトラブルは3年目や4年目の株で起こったものである。これは予想もしないトラブルであったが、路地栽培ではあまり起こらないだろう。

果実の収穫

受粉で結実した果実は瞬く間に大きくなり、1週間もするとピンポン玉より大きく、15日もするとほぼ最終の大きさまで大きくなる。更に45日位で色が紫がかり、収穫日は梅雨前の受粉では65日前後、7月受粉では75日位の日数が必要である。熟成すると紫色の果実を下からちょっと持ち上げただけで落果する状態になる。
ほって置くと勝手に落ちてしまう。これが収穫のタイミングであるが、
果実の状態は成育時期の気温によって差がある。右の写真では同じ種類の果実であるが、色がこれだけ違うのだがどれも完熟である。重さは65grから75grぐらいであるが、これ以下では流通させるには市場価値が低く不向きである。
右端などはほとんど完熟とは思えない色だがなぜ触っただけで落ちるのかいまだ良く判らない。これはあくまでも推定であるが果実に含まれる
VCのような成分が充分出来るとヘタから落ちやすくなるのではないかと思っているが定かではない。(グレープフルーツではわざわざ落果を促す為VCを散布することがある。)ただ高いところから落ちた果実はショックで酸味が充分に抜けず、酸味が強いと言われてもいるが私は試したことは無い。ただ色も市場価値を左右することも考えて置く必要がある。中央の果実は追加熟成している内に左端のような本来の色に変わってくるが、右端はどちらかといえばくすんだ紫色になり問題だ。。

気温と植物関係(4月が注意)
やはり南方系の植物で気温が高いほうが元気である。樹勢が弱い若い苗は特に気温に気を配る必要がある。4月上旬に日中の気温が15度位になったので、写真左の苗を夕方から外に出したままにしていたら、翌朝にこんな状態(右)になってしまった慌ててハウスの中に入れて気温が上昇すると、半日で元に戻ったが、やはり幼苗は低温では水を吸い上げる力が無いようだ。この時の朝の気温は7度近くまで下がっていた。
大きい苗は同じように外に出していてもなんとも無かったのである。
やはりこの10度あたりが栽培の最低条件であろう。先にも述べたが花芽が付くのは20度が必要で付いた花芽も15度までは耐えられるが、それ以下ではだめである。そして咲き始めるのはやはり20度を超える様になってからであるが、しかし日中気温が常時30度を超えてくると花芽がほとんど付かなくなるし付いた花芽も落ちてしまう事が多い。
したがって7月末から8月にはいると、開花が少なくなるようだ。
そして福岡では9月末頃の気温が平均25度ぐらいになると、またどんどん咲き始める。しかしこの時期の開花では年内の収穫がハウスなしでは難しい。毎日気温が下がってくる為完熟期間が長くなるのである。私の条件では9月末に咲いた花は受粉後収穫はなんと翌年の2月初めであった。もちろん早目にハウスに入れれば温度が上がり早くなるのだが、ハウスのビニールを11月に掛けたのでは遅すぎる。ただ10月ではハウス内部が気温が上り過ぎて、福岡ではあまり早くビニールを掛ける事が出来ない。ただこまめに窓を開けて温度調整をすれば年内に2回目の収穫が可能だ。
ただ余り収穫を遅くすると翌年の樹勢が相当落ちてしまうようで、次の年に花芽の付き方が悪くなり、収穫も落ちてしまう。一般的に福岡での栽培は年に1回の収穫が良さそうで、秋の開花は無視を決め込むほうが良さそうだ

増やし方

果実の種を撒いて育てるのも結構だが、私は春の剪定と秋口に切り落とした枝を挿し木の要領で増やしている。
出来たら夏のまだ気温が高い時に挿し木すると冬の寒さにも耐えられる苗が出来るので、春の新しい芽の発芽を促すための剪定で切り落とした枝を右の写真のように切って挿し木するのも良い。
まあ2週間もすると植え替えできるほど根が出てくるが、そうすると夏場には充分育ち晩秋の気温が低い時期や、寒い冬でもしっかりした苗になっている一般にパッションフルーツの収穫寿命は沖縄などでは路地物で6,7年は収穫できると言われているが、福岡の鉢物では3,4年が限度で、路地に植えると5年は大丈夫と思われる。
やはり鉢では土中の養分が不足してくるのだろう、いくら肥料を追加しても成育が悪く花が少なくなるので、私は3年収穫したら植え替え様と考えている。そのため毎年、次年の植え替えのために苗を作っているが、いつの間にか苗が増えすぎてそこらに幾つも鉢が必要になってしまう。現在一本地面に直接植えているが、鉢植えとの比較テストをしている。その苗が今年から実がなりそうである。

摘果(6月、7月)

やはりほかの果物と同様摘果は必要である。特に商品価値をあげる為には必ず必要な作業だろう。この奄美紫の種類では普通70g前後のものが多い。他種類ではもっと大きなものもあるが、味の良い紫種ではそんなところだ。
花が咲くに任せて受粉すると、一つの枝に4個も5個も結実するが、当然これでは大きな実にならない。私の経験では枝の勢いのあるもので3個、そうでないものは2個に止めるべきだと思う。それぞれの枝を確認しながら摘果をする必要がある

樹形(4月)

管理作業をし易くする樹形は植え付けから考える必要があるが、樹形としては幾つかの形があるが、鉢の場合は支柱を中心にぐるりと取り巻くあんどん型であるが、果実の数はあまり多く望めないだろう。大きな温室があればやはりT字型の樹形に枝の誘引するのが良いだろう。また逆 L型の樹形でも良いが場所と枝ぶりで決定したらよい。私のように枝葉があちこちの自然樹型(ずぼら樹形)ではだめだ。枝が込み入って咲いた花を探すのにうろうろしたり、隣同士の株と株とが入り混じり枝の伸張具合を見るのが大変である。

剪定
(3月中旬)

剪定は収穫が終わって行うのであるが、福岡では春の結実は当然夏の収穫になり問題がないのだが、秋の開花結実には問題がある。冬の気温が低いので結局収穫は年を越して翌年の春になってしまう。よほど温室内の温度を高くして管理するのなら良いが、趣味のため省エネで管理するのではどうしても最低温度を5度ぐらいにしてしまう。
 そのため収穫が極端に長くなり3月末頃までになり、剪定の時期のタイミングを逃してしまう。おまけに温度が低いと発芽した芽の伸びが悪く結果として春の開花も遅れて結実が遅くなる。もちろん温室内の温度を高く設定できれば、もう少し早くても良いかもしれないが、結論的には福岡のように冬が寒い(冬季に2,3回は零度以下に下がる)地域では年に1回の収穫に抑えたほうが無難なような気がする。即ち秋の開花には受粉せず結実させないで春先に深めの剪定をして株をスッキリさせて置く。

剪定をせずに放置しておいても、脇芽が出て先端に開花するが、しかし、それではツルが繁茂し、開花の可能性がある新しい結果枝が古い結果枝の下に潜り込み出蕾が抑制されたり、風通しが悪くなり病害虫の発生にも繋がりかねない。
 そこで新しい結果枝を育成するために、古い結果枝つまり収穫を終えた結果枝を剪定することになる。今年の実をつけた枝には来年には実が付かないので新芽が出る部分だけ残して剪定しても問題ないと考える。

 また、前にも記述したように新芽が低温(10度以下)?に晒されると新芽が固まる前に芽が縮れてしまうことがあるので、本格的な温度管理が出来るハウスであれば良いが、簡単なハウスの中では真冬時期以前に剪定を行うと、ハウス内の気温が結構高く新芽を促すような事になり、真冬の最低気温で温度が保てず、新芽が耐えられない事になり、11月や12月の剪定は避けた方が良いと思われる。気温が少し上がり新芽がある程度伸びてから気温の状態を見ながら剪定をおこなったほうが良いと考える。
剪定の程度は新しい結果枝が30cmほど伸びた時に古い枝の付け根から30cmの長さまで切り込むと良いだろう。私は古い結果枝はほとんど切ってしまっているが、結局3月中旬になってある程度伸びた新芽を見ながら行った方が良いだろう。
今年はこれを少しサボってしまい遅くなったので、新しく咲いた花が繁茂した新旧の枝の中に埋もれて探すのに苦労するし、風通しも良くないようなので慌てて5月になって古い結果枝を剪定しているが、枝や蔓が入り組んでどれがどれか判り難く、やはり最初から枝や蔓の誘引をちゃんとしておくべきであった。・・・反省

病虫害について

最後に病虫害について述べておく。福岡で5年ほど栽培したが、特別ひどい病気や害虫に遭遇していない。この植物は結構病気にも強そうであるし、また特定の害虫も特別見当たらない様だが、たまに蛾の幼虫やカメムシが付くこともあった。しかし少ないので簡単に手で除去出来て農薬のお世話になることも無かった。

以上パッションフルーツの栽培方法を私なりにまとめてみたが、沖縄などの栽培記録はあるが、福岡での栽培文献も情報も無かったので、自分で5年間の少ない経験から述べてみたが、まだまだ面白さが出てきそうだ