森の夜

「森を焼き払おう。」
 君はそのつややかな髭を軽くくねらせながら、それがさもあたりまえのように言った。
 森を焼く?
「何も焼き払う必要はないんじゃないか?他に方法はいくらだってあると思うんだ。」
 僕は言った。君は横目で僕のほうをチラと見、軽蔑の色を浮かべた。森に眼を戻した君はどこから焼き払おうかとでも言うように、森の端から端へとよく光る眼を走らせた。月明かりに照らされた木々はその梢を自ら光らせているように自信たっぷりに輝いている。

「この森には、リスもいるし熊もいる。君だけの森じゃないんだ。」
 思いついたように僕は言った。
「みんなには謝ればいいさ、今僕はこれをしなくてはならないんだ。」
 そういうと君は、駆け出していき、森に火をつけ始めた。地面に落ちた枯れ枝がパチパチとはぜる音を立てるとしばらくのち火はあっという間に森を包んだ。僕らを包む毛をも燃やさんとばかりの熱風が渦を巻いて起こった。

「僕らがネズミを取り逃がしたなんていったら、笑いものだからね」
 君は言い、うれしそうにニャアと鳴いた。

TOPへ戻る