十
「ところで昨日はなにしてたんですか、帰った後」
蔑む瞳を持ったティアナは、蔑んだ口調で蔑まれて当然な女性の制服を着たユーノに問いただした。
「なにって、普通に家に居たけど」
「電話ぐらい出てくださいよ。昨日大変だったんですから。身内なんでしょう、勤務時間外だからって、ちょっとぐらい手伝ってくれても」
「だったらなにも僕じゃなくて、よそに応援を出せば」
「ダメです。たぬき様が許しませんから、そういうのは」
「……たぬきって言ってる」
「手柄をよそに渡したくないんでしょう、きっと」
広げた手を前に差し出して、ティアナは重たい溜め息を吐いた。
昨夜、六課の周辺でガジェットが数体現れた。その駆除を、六課だけで行った。
搾られた戦力では取り逃がした対象もあって、ユーノとティアナは跡地を日が昇ってから訪れた。跡地は人の少ない広い公園だから、被害はほとんどなかった。あるのは文化ホールと、生い茂った木々だけ。
一応立ち入り禁止にしているので、顔を上げて周囲を見渡して見えるのは六課でちらっと顔を見る人物ばかりだ。ここで本来遊ぶはずの家族などどこにもいない。果てしなくのどかな場所だった。
確かにはやてのやっていることは、六課の利に叶っている。六課がなによりも必要としている手柄をよそに渡すわけにはいかない。
もちろん無理はしていない。結果的に処理ができる範囲だったのだから、失敗して六課にマイナスイメージがつけられることもなかった。
しかししぼった費用で最大の利を求め続けた結果、下から不満が出始めていた。六課のためを想うのに、六課という集団からは不評なのだ。
あちらを立てれば、こちらが立たず。若いはやてにはこの副作用に気づかなかった。
もちろんこの不満が爆発する前に隊が解散してしまうのが、はやての悪運の強さを表していた。
「ヴィータは?」
「ヴィータさんはお休みです。怪我したんですよ昨日。知らないんですか」
「ぜんぜん」
「パートナーなのに?」
「なんでパートナー」
「仲いいじゃないですか」
「別に」
どうやらあまり言われたくないことだったのか、ユーノはベンチへ勝手に腰掛けて、ふてくされた顔をした。昨夜のことに関わっていないせいか、どうにも緊張感がなかった。
「お疲れですか」
「あ、グリフィスくん」
「どうぞこれを。ここは寒いでしょう」
だるそうに腰掛けるユーノに、グリフィスが優しい笑顔で近づいてきた。手には暖かい缶コーヒーが握られていた。
「た、大変だね、君も。まだ近くに危ないのがいるかもしれないっていうのに」
「いえ、僕は現場の記録と調査をするだけですから」
グリフィスは笑顔のまま、さりげなくユーノの横に座った。ユーノの顔は少々歪んでいた。そして遠くの物陰からは、鋭い殺意を持った視線でユーノを睨みつけるシャリオの姿が見えた。
「じゃあアタシは仕事に戻りますので」
「え、あ、ティアナ!」
一歩離れてその様子を見ていたティアナは、邪魔したらいけないと思い、悪意を持ってユーノを置き去りにした。
男で男を釣り上げる。
八神はやての思惑は、どうでもいいところで成功していた。
――名目上が調査や警戒と言っても、実際やっていることは休暇だった。
広場の真ん中では、暇すぎてボールを蹴っている隊員もいる。
誰も監査をしていないのだから、この結果は当然のことだった。
ティアナは集団から離れて、静かな場所を探していた。
午後になって、気温もなかなか暖かくなってきた。風もない。だからこういう日に公園でのんびりするのも骨休みにいいと思っていた。
「ひゃっ!?」
その時だった。
ティアナは氷で滑るように尻を付いて転んだ。
それがあまりにも幼稚なこけ方だったので、ティアナはまずなににこけたかよりも、誰かに見られなかったかどうかを確認した。
一応周囲には誰もいなかった。間抜けな声も聞かれていないはず。
「これは……」
ようやくして足元を見ると、そこには薄蒼いガレキが転がっていた。
しかし見覚えのあるガレキだ。
ティアナは呼吸を止めて尻を上げた。
注意して地面を見渡すと、破片は公園の端の林に続いていた。
あるのは米粒程度の破片だが、このぐらいの大きさなら簡単に発見できる。
そうしてずんずんと奥へ進んで行くと、ティアナはあるものを発見した。
「ガジェット……。残骸……?」
そこにはゾウリの裏のようにくしゃくしゃとなったガジェットが転がっていた。
外装は所々剥げ落ち、中身のコードがだらんと伸びた広がっている。
本来ならガジェット破壊後、残骸は回収されるものなのだが、林の中に落下して魔力反応も消えたこれはきっと見つからなかったのだろう。昼間でも日を遮る場所なのだから、夜中ともなればなおさらだ。
しかしこれはいい手見上げができた。
持って帰れば、仕事をしていた証になる。
コンコン。
数枚の葉がかぶさるガジェットの残骸を、ティアナは興味本位で触ってみた。
当然ながら反応はない。
いつも良く見るが、こいつらは一体なにでできていて、どういう目的で作られているのだろう。
普段から抱える疑問を掘り起こすティアナ。
しかしそんなティアナに、突如激しい痺れが全身を襲った。
「あ……っ! う、嘘……!」
気がつくと、ガジェットから伸びたコードが足にからみついていた。
痺れはそこから伝わってきたもので、なんの防御もしていなかったティアナは前のめりにばたんと倒れた。
完璧に油断していた。
「は……っ、は……っ」
肺が引き攣り、まともな呼吸ができない。
声も上げられない。
両腕が脱力し、逃げる足もない。
その間にも絡み付いてくる細い手は数を増し、ティアナを逃がさないようからみついてくる。
「あ、あ……っ!」
上半身を締め付ける手が、乳肉を激しく引っ張り、服に食い込んでくる。
荒い刺激がのけぞるように腰を浮かした。
体を這う手はティアナの首を絞め、咥内へと忍び込んだ。手の先端は今では行かず、かすかに気道がある範囲で喉を前後する。まるでなにかを調べているようだった。
「んむっ。うううっ!」
強い嗚咽に襲われながらも、ティアナは次の危険に身を震わせた。
手が太ももを這い、白いショーツを撫でる。いいや、撫でるという優しいものは最初だけで、ソコに触れた瞬間、手は白い布を破って膣内に入ってきた。
「んっ! んんっ!」
突くというよりも、掻くように動く手。
そこからはピリピリとした刺激が放たれ、それが腰を激しく痙攣させた。
突き込まれた異物が痛かったのは最初の一瞬だけで、今はもう痛みと快楽を飛び越して、意識を曖昧にさせていく。
冷えて硬くなっていた膣からは溢れ出るほどの滴りがあった。
次第に手の動きは早くなり、ぐちゅぐちゅと男女の繋がりのような音が立つ。
這い上がる手は腰を撫で、脇腹を締めてはくすぎり、乳房をいびつに変えるほど強く締め上げてくる。
「んっ! んんっ! んふっ!」
定期的にくる電流のような刺激。
ティアナの太ももはそれによってびくびくと動き、ついに全身を駆け抜ける絶頂を与えた。今までに味わったことのないような快楽の極みだった。
すると喉に詰まっていた手が抜け、手足の締め付けもほんの少し緩んだ。
視界がかすれるティアナだったが、これを好機と見て、慌てて体を起こし、ガジェットの細い手のからみつきから身を放した。
「はぁ、はぁ……っ!」
しかし起こそうとする体は命令を聞かず、すぐに腰が砕けて、ティアナは土の上に転がりこんでしまった。
股の奥が熱い。
かゆみににた苦しさが、全身を襲う。
ティアナは最低な気持ちを否定しながら、だらしない股間を手で押さえつけた。
なぜガジェットがこんなことを。
しかしこんなこと、誰に話せばいいというのか。
ティアナはわからなかった。
もちろん誰にもわからない。これがナンバーズの改造オナマシーンだったことなど。
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