十九

 偽コンサートが終わってから、はやてはいつまでも笑顔だった。
 世間を騒がすナンバーズの一味を捕らえたから、中央には褒められ、今までこき使うばかりだった部下からは慕われ。
 とにかくいいことづくめである。
 だがその笑顔も、自らが参加した事情聴取で綺麗になくなった。
 はやては何気なくユーノのことを訪ねた。
 どうせ大したことではないだろうという腹であった。
 刑の減軽を持ちかけても、決して身内を売らないディードだったが、身内と関係のないユーノのことであれば、簡単に白状した。
 しかし事情を詳しく話されると、はやては聞いたことを後悔した。
 当然事情聴取であるから、録音はされている。
 誰かに隠すことはできない。
 このことはすぐさま別件として話題になり、はやては他言無用と念を押された。
 ――ジュエルシードの事件を、解決させた当人達が再び起こそうとしている。
 P.T事件をはっきり覚えている人間はもういないが、危険な事件であった事実は記録に残っている。はやても過去の記録を見て、P.T事件を詳しく知っている。
 しかも最悪なことに、この件に関して、六課は指揮権を貰えなかった。
 身内なのだから、できるだけ丸く納めたい。
 けれども、六課に与えられた命令は「献身的な捜査協力」である。
 事情がなんだかわからないまま身内が捕まるのは、いくらなんでも気にくわない。
 だが中央に逆らうのは六課の立場としても良くない。
 はやての使命は、六課を良い評価にしたまま、事件を穏便に解決することだ。
 ならばこちらから積極的に協力と捜査をするしかない。
 はやてはさっそくヴォルケンリッター全員を呼んだ。
 そうして事情を洗いざらいぶちまけ、最後に家族としてではなく、六課の部隊長として命令を与えた。
 決意を持ったはやてに、誰一人異議を唱える者はいなかった。


 ジュエルハートの件がはやてに気づかれても、あれだけ警戒をしていた当人はちっともことの事態に気づいていなかった。
 いや、異変には過敏に反応しているのだが、決定的な異変がないので、どう対応すべきなのかわからないままなのだ。
「最近ヴィータ見ないんだけど、ティアナ知ってる?」
「いえ。ユーノさんのほうが詳しいですよね、ヴィータさんのことなら」
「さぁ。なんだか僕も見ないんだ。どうしたんだろ」
 仮に異変を相談しても、周りはさっぱり異変と関わらないから、なんの解決にもならい。
 確かにヴィータの行動はおかしい。
 急にメイドを買って出たと思えば、すぐにやめて別の仕事にあたった。
 もうユーノの調査はいいのだろうか。
 なにもないと判断してくれたのか、なにかあったから別のことに動いたのか。それともそもそも調査なんてなかったのか。
 疑問が解決しないまま定時になる。
 ユーノは普段通りに家へ変える仕度をはじめたが、帰り際、シャマルが手招きしているのが見えた。
「ちょっと大事な話があるんです」
 シャマルに笑顔でそう言われた。
 大事な話という単語が胸に突き刺さる。
 ユーノはなるべく平然とした顔でシャマルに付き合った。
 その途中でシグナムが混ざり、ユーノの貸部屋へ連れ込まれた。
 二対一で大事な話、となれば警戒するしかない。
 ユーノはできるだけ軽い調子で訪ねた。
「はなし……、話しって何でしょう」
「そう固くなるな、ユノユノ」
「別に僕は固くなってなんか」
「まぁまぁ。とりあえずほら、汗掻いたなら、体洗わないと」
 ただ二人は一切凄む顔をせず、淡々とユーノの服を掴み始めた。
 おまけに自分たちもじゃまする気満々なのか、ぽいぽいと服を脱いだ。
 ユーノはそこでようやく二人の目的がなんだか把握できた。
「え、そ、そういうこと? 大事な話なんじゃ」
「だってーそういうわないと、ユーノ君帰っちゃうじゃないですか」
「そりゃ……」
 ユーノは頭を抱える暇もなく腕力で脱がされ、風呂場に放り投げられた。
 二人はなんの恥じらいもなくその白い肌を見せつけながら、出口をふさぐように入ってきた。
 ゲストルームでバスがついているとはいえ、ここは結構狭い。
 三人も入れば、否が応でも肌がぶつかった。
 もちろん、ぶつけるのが目的なのだからなんの問題もないのだが。
「はいユーノ君、体洗いましょうね」
「それなら自分一人で――」
「ユノユノは恥ずかしがり屋だな。好きなら素直にしてくださいって言えばいい」
「全然好きじゃ――」
 と否定をしかけた口が閉じた。
 シャマルが目の前で石けんを握り、自分の肌に塗っている。
 白い泡の線が、淡い暖色の照明を反射させ、てかてかと光っている。
 ぬめりを持った肉が手に押されて揺れるたび、弾けた泡がユーノにかかる。
 これがもし全身にぶつかってくればどうなるか。
 想像するだけで呼吸を忘れてしまう。
「シャマルはともかく、私がいるならユノユノもいいんだろ」
 が、その感触が先にぶつかってきたのは背中だった。
 背中にまんべんなく広がる柔らかい感触。それがつーっと下になぞると、ユーノは思わずなさけない声を出した。
 背中を舞台に、二つの肉塊が踊る。
 それを見計らってか、今度はシャマルがえいっと声をかけて寄りかかってきた。
 柔らかい圧迫が、ぐじゅぐじゅと音を立てて体を潰す。
 適当に動くと、谷間に泡が立った。
 シャマルは谷間にユーノの手を入れて、乳房で挟みながら擦ってやった。
 指の細かい間から肘までも、柔らかな肉の感触に満たされる。
 もはや体を洗うという目的からかけ離れた感覚に、ユーノは首筋を伸ばして堪えた。
 その伸びた首筋をシャマルの指が上から下になぞる。
 そうして胸のあたりまで指が落ちると、指はそこでくるくると円を描いた。
 妙な動きだから気になったユーノだったが、ふいに後ろから腕が伸びてくると、首掴まれ、体ごと後ろにひねられた。
「シャマルばかり見るのは面白くないな」
 ひねられた先には、シグナムの含み笑い顔があった。
「く、首折れ……、る、かと……」
 シグナムの両腕がユーノの首に抱きつく。
 体はさらに密着された。
 ユーノの目から見えるのは、シグナムの顔と、自分の体に押しつけられて歪んだ胸だけ。
「私だけを見ろ」
「……う、うん」
 一旦間を置くと、シグナムはごく自然に唇を合わせた。
 シグナムの口が縦に開くと、ユーノもそれに合わせて唇を動かした。
 舌が唾液とともに絡み合う。
 唾をすする音は激しく、重なる唇は這うように動く。
 抱き寄せられる力は強く、ユーノ動く隙を与えない。
 意識がこの口元にだけに奪われていく。
「ふふ……、ここ、かな……」
 その間にも、シャマルはユーノの背中や腹をすみずみまでなぞっていた。
 ただ洗う行為にも思えたが、やはりどこか不自然でもあった。
「え、な、なに?」
「ううん、なんでも」
 シャマルの手が胸から離れる。
「それよりユノユノ、まだ洗って欲しい場所あるだろう」
 シャマルを気にかけようとすると、シグナムはまた割って入ってきた。
 嫉妬だろうか、それとも……。と考える余裕はユーノになかった。
 シグナムは抱きついたまま、腰を丸く動かした。
 それに合わせて、ガチガチに固くなった肉幹が擦られる。
 決して強くない刺激に、亀頭が過敏に反り返った。
「ん、どうだ?」
「あ、あの……、それは……」
「なんだか私の腹に、ずいぶん硬い物が当たっているようだが」
「……」
「男らしくないぞ、ユノユノ。洗って欲しくないのなら構わないが」
 これでもプライドがあるのか、ユーノは口を真一文字にした。
 ただそれもパンパンに腫れた肉茎を股の間に挟まれると、もう堪えようがなかった。
「……ほ、欲し、い」
「もう一度はっきり。なにをだ」
「欲しい……、洗って……。その、硬いの……」
 普段自分からねだらないユーノにとって、かなり恥辱的だった。
「はい。良く言えました♪」
 シャマルはぶら下がった陰嚢を柔らかく揉みながら、棹を泡だらけので擦った。
 石けんで擦っては後々痛くなるかもしれないが、腰にくる快楽がユーノを支配しているので、痛みは全く感じなかった。
 シグナムも腕をおろしてシャマルの指と絡みながら棹をいじった。
 刺激が走るたび、亀頭がびくびくと震える。
 足が震えて、ついシャマルの体に寄りかかってしまう。
「気持ちいいか」
「う、うん……。あっ……」
「私の腹に出してもいいんだぞ」
「う……、んくっ……」
「ユノ汁出すときは、ちゃんと抱いてくれ」
 シグナムがまた抱きつくと、今度はユーノも強く抱いた。
 唇も再び重なる。
 止めどなく出る二人の唾液は、舌のからみつきをもっと潤滑に動かした。
 ビュク。ドク。ドク。ビュゥ。
 シグナムとユーノの腹の間に、大量の精液が放たれた。
 長い射精の間、抱擁する力は痛いほど強くなり、口づけも息が止まる。
 大量の精液はシャマルによって、まだまだ根本から絞られる。
 しばらく排水溝へぼとぼとと精液が流れると、ユーノはようやく力を弱め、抱擁をやめた。
「はぁ……、はぁ……」
「ユノユノも激しいな。ユノ汁もこんなに出して」
「あ、頭、くらくらする……」
「はい、お疲れ様。シャワーで流しちゃいましょ」
 後ろに倒れそうになるユーノ。
 べとべとになった体を流すと、ユーノはふらついた足で狭いバスから出た。
 狭いから空気もやけに薄かった。
 しかしこれで帰れると思いきや、今度はバスタオルを肩にかけただけのシャマルに抱きつかれ、ふらふらの足をいいことにベッドまで押されてしまった。
 馬乗りになるシャマルから、しずくがぽたぽたと垂れる。
「え、もう……、終わりじゃ?」
「まだ体洗っただけじゃないですか」
 いつもの通り、結局弄ばれるユーノ。
 シグナムは傍らでシャマルが飽きるのを待った。
 するとユーノの電話が鳴ったので、勝手に取ってやった。
 電話に表示された名前はティアナだった。
「も、もしもし? ユーノさん? あ、あのですね……、今日ってその、暇ですか。時間ありますか。これから……。あの、良かったらちょっと」
「なんだ遅いぞティアナ。もう始まっている」
「え、その声、シグナムさん!? 始まってるってなにが――」
「わかるだろうそのぐらい。お前も来るか」
 電話の向こうでどでかいため息が起きた。
「……今、なにしてるんです」
「シャマルがのっかっている」
「シャマルさんまで? あ、あの人、どんだけ子孫繁栄したいんですか。信じられない。っていうか、他に手ありますよね。どうしてそれなんですか」
「なんだじゃあ来ないのか」
「……い、行きます。行きますよ。行かないって言ってませんよ。仕事ですからね!」
「それならもう終わ――」
 電話は乱暴に切られた。
 文句を言うわりに、ティアナはすぐにかけつけてきた。
 子孫繁栄を手伝うだけのために。


 ――絞りに絞られ、ユーノはようやく解放された。
 海鳴はすでに昼間。
 朝帰りならぬ昼帰りだ。(もちろん時差のせいだが)
 にしても、今日は妙に長引いた。事が済めば終わると思っていたのに。
 しかし些細な違和感は、家に帰った瞬間、脇に吹っ飛んだ。
 いつもの見慣れた玄関を開け、見慣れたリビングに入る。
「な、なんだこれ……」
 だがそのリビングの壁に真っ赤に染まっていた。
 良く見ると、赤は全て血であった。
 手ににちゃりと嫌な汗が出る。
 この家になにが起こったのか。
 この血を見る限り、あまり良さそうなことではないのだろうが……。

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