十三
「で、フェイトそっくりなやつが、アリシアなんだって? ……はぐっ」
「あぁアルフ、ちょっといいですか。そのアリシアって誰ですか。……じゅる」
「リニスは知らないんだっけ。えぇっと、私の……、お姉さんだった人かな。……れろ」
「そうそう。プレシアったらさ、フェイトとアリシアを被せてたんだよ、ずっと。だからあんなに冷たくてさ。……じゅるじゅる」
「それであんなに。なるほど、ようやく分かりましたよ。今度ビシッと言ってやらなきゃだめですね、プレシアには。……んふっ」
「でもさぁ、その組織ってのが気になるじゃん? アリシアだって、まさか生きていただなんて思えないし。なんなんだろね。……んちゅ」
「う〜ん。謎は深まるばかりですね。……じちゅぱっ」
「いや、あの……」
「なんですかユーノ、ちょっと今真剣な話してるんですから」
「真剣な話はいいけど、も、もうちょっと真剣な場合を選ぶべき……、あっ」
三人の会議は、ユーノを中心に行われていた。
具体的に表すと、ベッドの上で寝そべっているユーノの上で、三人がユーノの股間部に顔を寄せ、べらべらと言葉を交し合っている。
そうしながら、片手間にユーノのチンコをいじっていた。
手で適当にいじったり、舌を順番に這わせたり。
それがあまりにも自分勝手過ぎるから、ユーノは気持ちいいのか悪いのか、良く分からなかった。
どうしてこうなったのかと言えば、リニスのせいである。
リニスが持ち出した「夜性の書」に、生殖器の分泌液増量術というものがあり、それを試してみようと話が転がり、今に至るのだ。
しかし各自が好き勝手に弄ろうとも、こう休みなしで弄くられ続けると、ユーノもさすがに限界が近かった。
「あ……、く……っ」
「どうユーノ、出そう?」
「で、出るかも」
「どんぐらい出るんだろうね」
「さぁ、でも結構でなきゃ面白くないですよね。フェイトはどのぐらい出ると思います?」
「えっ。う〜ん、普段の倍。ううん、三倍ぐらいかな」
「でもそれ、微妙じゃないかい」
「もっとこうどばーっと出たら面白いですよね」
「あ、出る……、からっ!」
三人が余所見をしながらいじっていると、ユーノはついに達してしまった。
すると三人の顔目掛けて、おびただしい量の精液が飛んできた。
コップ一杯をひっくり返したように、三人の顔は白く透明な液でべとべとになった。
そうして三人はしばらく黙った。
黙った後、最初にフェイトが顔を手で軽く拭い、べっちょりと精液をユーノの股間に落とした。
「ちょっとこれ……、出すぎかな……」
「そう……、ですね……。この術は禁断の術でしたね……」
「うん。無限書庫にはそういうの、いっぱいあるから……」
「あ、でもちょっと待った、フェイト」
「なに、アルフ」
「これ、凄く美味しい!」
「え?」
「あ、ほんとですね」
「……ほんとだ。ほんのりとした甘さ。決して甘すぎず、そしてしつこすぎず。まさに匠の技のような」
アルフの言い出しで、全員がぺろっと精液を舐めた。
ユーノも少し気が引かれたが、さすがに自分のを舐めるのはためらいがあったので、手を伸ばさなかった。
精液はほんのりとした甘さを含んだソースだった。
砂糖やカラメル、練乳、バターを溶かした濃い甘さではなく、ユーノ独特の甘さ。
まるでみずみずしいフルーツを絞った、自然の甘さ。フルーティーな味わいである。
一口含んだ後、多少の食感を舌に残して、喉の奥に消える。
フェイトはこれを口にした瞬間、脳髄に電撃を走らせた。
「凄い。どうして……、こんな……」
フェイトは指を伸ばし、もう一度その匠のソースを舐めた。
翠屋で働いているフェイトは、この味を見逃せなかった。
特に最近は昇給しようと、初のオリジナルデザート製作に取り組んでいる。それも朝早く起き、開店まで一心不乱になってである。だからなおさら見逃せない。
それでも素人の作るデザートは、昇給になかなか繋がらない。
もちろん高町家に頼めば、金の工面ぐらいはしてくれるだろうが、それはフェイトの嫌なところだった。頑固なフェイトのプライドが許さないのだ。フェイトは実力を評価してもらい、それによって賃金を得る覚悟でいる。
桃子はそんなフェイトを、職人としての自覚の芽生えだとして、近くで厳しく見守っている。この壁を乗り越えれば、きっと素晴らしい職人になれるだろうと。
そんなフェイトに、その壁を乗り越える偶然が現れたのである。
フェイトはまた指を伸ばし、精液をすくい取った。この味は、フェイトが求めていた奇跡の味なのだ。
「あーっ、もうフェイトばっか。ずるいじゃん。アタシも食べるし!」
「ア、アルフっ! 今出たばっかだから、そんな舐めない……、でっ!」
「ふ〜む。主成分のたんぱく質はともかく、果糖分やビタミン類も多く混ざっているってことでしょうか。ただそうなると、精子の密度は極端に減りますから、避妊効果も強いでしょうね。やっぱりこれはあまり使わないほうが……」
「えー、いーじゃん。別に子供できるわけじゃないのな……」
「アルフッ! おあずけっ!」
フェイトはいつになく真剣な声で、アルフを静止した。
それがあまりにも強く、激しい叱りつけだったので、アルフはびくりと身を強張らせた。
「な、なにフェイト……」
「これ、飲んじゃダメ! 今持ってくるからっ!」
「持ってくるって……?」
「それとアルフ。体おっきくなっていいから、ユーノのちんちんいじってて!」
「あ、あぁ、別にいいけど……」
フェイトは血相を変え、どこかへ走った。
フェイトの許可が下りたアルフは、幼児体系から大人に体の大きさを変えた。ユーノと並ぶぐらいに体を大きくしたアルフは、少し得意げな顔をし、腕を組んでわざと胸を誇張させた。特別に大きな乳房が、ぷるんと震える。
「むふふ。今日はアタシが攻めちゃうよ」
「あの、僕もう終わったし……、凄く出しちゃったし……」
「なーに言ってんのさ。一回や二回で治まるチンコじゃないくせに」
「それはフェイトとアルフが……、いつも、二人……、でぅ!」
「ユーノは好きなんだろん、これー」
アルフは寄せた乳房で、ユーノの肉棒を包んだ。
全てがすっぽり埋まるほど柔らかい感触とともに、普段より濃く、そしてねっとりとした精液が絡みつき、谷間の摩擦を強める。
ねちゃ。ねちゃ。ねちゃぬちゃ。
アルフが乳房を両手で挟み、波立たせると、淫猥な音が立った。
谷間からは細かい泡がじくじくと溢れ、赤く逆立った亀頭が苦しそうに顔を出す。そこをアルフが指先でこちょこちょといじると、ユーノは喉の奥から快感に支配された呻き声を漏らした。
「ほらリニス、指でユーノのしごいて」
「指でですか?」
「輪っか作って、チンコしごく感じで」
「なるほど、こうですか」
「あ……っ! だ、あ……っ!」
「そうそう。ユーノ腰浮いちゃってる浮いちゃってる」
リニスが谷間に手を突っ込んで、ガチガチに張り詰めるユーノの肉棒をしごいた。
柔らかさと粘り気だけでなく、きつい指が根元から絞り上げてくる。
ユーノは思わず肘を立て、お尻の筋肉を締めた。
「あ、ちょ、それ、だめ……っ!」
「ユーノが弱音上げてる。珍しーい」
「は……、んっ!」
「また出ちゃう? 出るなら出しちゃっても……」
「待って、アルフ!」
アルフが亀頭に唇を合わせ、全部飲み干してしまおうと思った時、フェイトが戻って来て、アルフのおでこを平手で押し上げた。
フェイトの手には、綺麗に洗われたマヨネーズの容器があった。
「フ、フェイト……?」
「飲んじゃだめ、アルフ!」
「あ、うん……、分かったけどさ……、それは?」
「これで搾り取るから!」
「え、フェイト!?」
ユーノは身を起こして、フェイトを見上げた。
フェイトの目は血走り、異常なほど燃え上がっていた。
フェイトは容器の口を尿道の出口に合わせ、二人に続けろと指示をした。
なんだか分からないなりに、アルフは胸をぎゅっと寄せ、リニスは指でしごき直した。
びゅる。びゅる。どくどくっ。
容器の中に、白く透明な液が充満していく。
「あ、フェ、フェイト……っ! なにして……!」
「よしっ」
「よしって……」
「じゃあアルフ、リニス。次いくよ」
「え、次って、もうさすがに出な……っ! あぅ……!」
フェイトの号令で、ユーノの集団レイプが始まった。
もうユーノに逆らう権利はない。
そうしてユーノはこの夜、容器が十分になるほど搾り取られたのだった。
――一夜明け、夏の日が出始める時刻になる。
ユーノはぐったりとしながら、ぐぅすか眠る大きいアルフとリニスに潰されていた。
しかしフェイトは一人起きて、台所で忙しく動いていた。
ひょんなことから出会った、類い稀なる味。
これを自分で再現できないだろうか。
しかしどうやっても、この味を再現できない。
フェイトは自分の経験の無さ、未熟さを呪った。
オレンジの果汁のようで、それよりは酸味も無く、すっきりとした糖度。
この絶妙な甘さの再現が、フェイトの腕では不可能だった。
どうにもならない現実に、フェイトは頭を掻き毟った。
でもひたすら舐めたので、味はだいたい覚えた。
フェイトはただこの味を再現するだけでなく、商品開発もしなければならない。
成功のまで秘訣は、限りない実験と糧になる失敗である。
とりあえずフェイトは搾り取ったそれを手当たり次第に混ぜてみた。
かつてリンディがパイを焼いていたオーブンで、今フェイトは精液交じりのパンを焼いている。リンディの面影を、自分に重ねながら。
そうして一番感触が良かったのが、クロワッサンだった。
バターの中に染み込んだ、濃厚な搾りたてミルク。口溶けを起こすと、柔らかな甘みと栗の香りを鼻腔に広げてくれる。
美味い。
フェイトは単純にそう思えた。
そうして出来上がった試作品をお盆に乗せ、ついでに横に煎れ立てのコーヒーを並べると、フェイトはプレシアのいる部屋に向かった。
「母さん」
プレシアは小さな机に向かい、ユーノからもらった小型のパソコンをいじっていた。
机はゴミ捨て場で拾った、子供用の小さな机である。赤い囲いのデザインに、可愛らしいハローキティーの絵柄が描かれている。そんな机の周囲には、リニスが勝手に持ってきた無限書庫の本が乱雑に散らかしてあった。
プレシアの生活は、最近やけに乱れていた。起きと寝るを規則正しくせず、眠気と集中力の兼ね合いがつく場所でふらふらとどまっているのである。
そんなプレシアの姿を、フェイトは昔の母親の姿に重ねて見ていた。
なにかをしている。
けれども、それがなにかは言ってくれない。
自分はただ、母親を見守るだけ。
過去の繰り返しはいけないと思うが、それでもフェイトは一緒にいれるというだけで嬉しく、つい他のことを言及するつもりにはなれないでいた。
「母さん、朝ごはんどうかな」
「……」
「ちょっとぐらい食べないと、体に良くないよ」
「……ぱくっ」
フェイトがお盆を置くと、プレシアはなにも言わず出されたクロワッサンにかぶりついた。味なんて、あまり気にしている様子ではなかった。
「どうかな」
「……」
「私が作ってみたんだけど、そのパン」
「……」
「母さんには……、美味しくなかったかな……。わ、私ね、パティシエール目指してるんだ。魔法はあんまり得意じゃないし、こっちなら結構なんとか行けそうな気も……」
フェイトがどれだけ話題を振っても、プレシアはその小さい手を動かすことをやめず、じぃっとパソコン画面ばかりを眺めていた。
フェイトは少し残念だったが、始めから諦めている部分もあったので、プレシアの無視についてはあまり気にならなかった。
けれどもその時、プレシアが小さく口を動かした。
「あなた、別に魔法の才能がないわけじゃないわよ」
「……え?」
「それなりの技術はあるわ。ただ、逃げるから実らないだけで」
「逃げて……、る……」
「始めから諦めないでいれば、魔法も良くなるわ。このパンみたいに」
「母さん……っ!」
フェイトは目の奥にじんわりとした熱を感じ、次の瞬間、ぼろぼろと涙を流した。
初めて母親に褒められた。
その事実がフェイトの心を充実させ、涙を止め処なく流したのである。
母の愛を感じられた瞬間だった。
「ありがとう母さん。私、パティシエールになるのも頑張るけど、魔法も逃げずに頑張るから……」
「そう」
「でも良かった。あのね、このパン食べてもらったの、母さんが一番なんだよ?」
「そう」
「昨日の夜から頑張ってたんだ」
「昨日の夜? 夜は確かあなた……」
「で、生地にね、混ぜたんだ。すっごくいい味してて。だからそんな風味がするんだよ」
「混ぜたって……、なにを?」
「ユーノの精液」
「死ねぇええええーーー!」(バキィッ!)
「げふぅ!」
母の愛を感じられなくなった瞬間だった。