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マローン・シリーズなしにシカゴは語れない
直接のシカゴ案内にはならないが、ここでクレイグ・ライス(Craig Rice)の<マローン・ジャスタス夫妻・シリーズ>を紹介しないわけにはいかない。このシリーズのおもしろさを紹介したくて、<シカゴについて>を思いついたのだから。
森 英俊氏に、『世界ミステリ作家事典[本格派篇]』(国書刊行会)という、250名の本格派作家のプロフィール、作品リスト、代表作の解説を整理した1000ページ弱のとんでもない大著があるが、これによると作者クレイグ・ライスは、
「アガサ・クリスティの独創性、ダシール・ハメットのスピード感、ドロシー・L・セイヤーズのウィットを複合して独善的だが独特の語り口で統合させた」と評された、1940年代から50年代にかけてのアメリカを代表する女流作家。都会の光と陰をユーモアとペーソスをまじえて描いたその作品に対するわが国での評価もこのところうなぎのぼりで、幅広い層に支持されている。
(『世界ミステリ作家事典[本格派篇]』p766)
クレイグ・ライスは、シカゴに生れたが、幼年時代は筆舌に尽くし難い悲惨なものだったらしい。彼女の母は、彼女に一抹の愛情も感じておらず、結局、ライスは、ボヘミアン的な生活を送る両親に捨てられ、叔父夫妻の養女として育てられることになった。プロレス団体の広報係、新聞記者、ラジオ番組の脚本家、フリーライターなど18歳にしてシカゴでさまざまな職業について独立をはかった。少女のときに得られなかった家庭での安らぎを求めて、結婚と離婚を繰り返す。ストレスも並大抵なものではなかったようで、30歳にさしかかったときには、すでにアルコール依存症になっていた。自殺も2度くわだて、57年に49歳の若さで亡くなっている。
さて、<マローン・ジャスタス夫妻・シリーズ>は、酔いどれで小男の悪辣弁護士ジョン・J・マローン、新聞記者からプレス・エージェントとなったジェイク・ジャスタス、その美人妻で大富豪の娘、殺人的な運転の腕前を誇るヘレン・ジャスタスの<史上最強の探偵トリオ>が、禁酒法廃止後のシカゴで、さまざまな事件を解決(複雑にして混乱させる?)する物語だ。
シリーズ第1作は、『時計は3時に止まる』。
家族にも内緒でバンド・リーダーのディック・デイトンと結婚式を挙げたばかりの花嫁ホリー・イングルハート。奇妙な夢から目覚めた彼女は、屋敷のなかで鳴り響くベルの音に導かれ、伯母の死体を発見する。ホリーは殺人容疑で逮捕される。彼女の陳述によれば、広大な屋敷の中の時計はすべて午前3時に止まっていた……。これが物語の始まり。犯行のあった午前3時に何故時計がいっせいに止まったのは何故か?花婿ディックのプレス・エージェント兼マネージャーであるジェイク・ジャスタスは、旧友のジョン・マローン弁護士にホリーの弁護を依頼する。また、ジェイクは、この事件で初めて、ホリーの友人の美女ヘレン・ブランドに出会い、恋に落ちる。
第1作からライス特有の世界が始まる。容疑者逃亡幇助、証拠隠滅、謎の人物との取引など朝飯前。史上最強の探偵トリオは「犯罪」解決のために精力的に「犯罪」を犯す。ライスの仕掛けるトリックはそれほど複雑怪奇なものではないが、むしろ3人組が介入することによって、よけいに入り組んでしまう。殺人物語は、登場人物の大騒ぎによっていっそう複雑化していく。創元推理文庫版にウィリアム・ルールマンの「序」が載っているが、ルールマン曰く、「このトリオにでくわしたことがない人のために言っておくと、あなたはこれから物騒なローラーコースターに乗り込むことになる。前にであったことのある人は、おそらくとっくにシートベルトを締めていることだろう。」
「出かける前に一杯やろう」マローンがディックに目を据えたまま持ちかけ、ファイル・キャビネットの中をかきまわして、ボトルを捜し出した。一同は、この事件でのマローンの成功と、ホリーの無罪放免と、ヘレンの運転に乾杯した。
(『時計は3時に止まる』p77)
「もう一杯飲んだほうがいい」ジェイクは言った。
「それ、あなたの思いつきとしちゃ、これまでで最高よ」
(『時計は3時に止まる』p276)
ふいに彼女はジェイクの腕の中に抱き寄せられた。ヘレンのひじがライ・ウィスキーのグラスにぶつかった。
「もう一杯奢るよ」
「もう二杯じゃいけない?」
「いいよ、二杯だ」
「なら、ゆるしてあげる」
バーテンダーがやってきて、迷惑げにテーブルを拭いていった。
(『時計は3時に止まる』p282)
<マローン・ジャスタス夫妻・シリーズ>では、最初から3人組は、ライ・ウィスキーなしには生きられないといった登場の仕方をする。飲むと頭が冴えてくるとか、二日酔いの最悪の状態でインスピレーションがひらめくとか、酒は便利な妙薬。マローン・トリオも冴えるためと称してたえまなく飲む。
いつでも1日に1時間だけ、彼は本気で地獄を信じたくなるのだった。」
(『素晴らしき犯罪』p9)
これは、シリーズ第7作目『素晴らしき犯罪』の書き出しである。この1行は、この作品の物語全体の主題を暗示するだけでなく、<マローン・ジャスタス夫妻・シリーズ>全体のモチーフを象徴しているし、おそらく前述した悲惨な経験をもつクレイグ・ライスの人生観そのものでもあろう。トリオがむやみやたらと酒を飲むのは、彼らはそうやってアルコールの助けを借りることによって、彼らの生活が地獄の中に埋没するのを防ごうとしているのだろう。
とにかく、3人はよく飲む。ぼくは数えてしまった。『時計は3時に止まる』は、334ページの小説だが、その中で66ページに酒に関連する表現が出てくるのだ。読者も5ページに1回酒に付き合わされるのだから、読んでいるだけで二日酔いになりそうである。
酒を飲めば、トラブルも平気で起こす。
いつのまにか一行は<カジノ>を出てタクシーに乗り込んだ。どうやってそれをやってのけたのかはジェイクにさえ定かでなかった。ブラウンの店でヘレンはスロット・マシーンで685ドル稼ぎ、そのカネで店にいた客全員に酒をおごった。<ラッキー・ジョー>では黄色いドレスの女とヘレンが口汚なくののしりあい、<ブルー・ドア>にいたときはジェイクがバーテンダー相手にさいころ博打をやって75ドルまきあげられ、<ローズ・ボール>ではマローンがロック・アイランドから来たという他所者と取っ組み合いのけんかをやらかした。
……
一行はジョニー・ライデンの店へ乗り込んだ。そこではマローンがサウズ・ベンドから来た見知らぬ男ともみあい、シャツの襟をむしりとられた。<クラブ885>でディックはピアノを弾いて浮かれ騒ぎ、ホリーのことをしばらく頭から追い出すのに成功した。<リカード>ではヘレンがギターに併せて意外な美声で歌った。最後に黒人も白人も出入りする街の南のバーに向かった。
(『時計は3時に止まる』p137)
<カジノ>以下、<>内の店はすべて飲み屋である。はしごもここまでくると、あきれかえるでしょう。どうですか?
『時計は3時に止まる』は次のように終る。
彼の腕の中で青いサテンのパジャマが暖かくなってくるように感じたのは、これが2度目のことだった。ヘレンは顔をあげて彼を見つめた。
その瞬間、ふいにけたたましくドアをノックする音がした。
ふたりはしばらく顔を見あわせていた。やがてジェイクがドアを開けに行くと、そこにジョン・ジョセフ・マローンが立っていた。ネクタイはカラーからはずれて耳の下に、そして両腕には酒壜を抱えて。
「なんてこった!」ジェイクはヘレンに向かって言った。「これが結末さ!」
(『時計は3時に止まる』p334)
第2作『死体は散歩する』で、ジェイクとヘレンは1年半ぶりの再開をし、めでたく婚約をする。しかし、事件に完全に巻き込まれた2人はなかなかクラウン・ポイントでの結婚式が挙げられない…。
舞台は1930年代末のラジオ界。ラジオのスター歌手のネル・ブラウンは、昔の恋人ポール・マーチに送ったラブレターをねたにゆすられていた。手紙を取り返しに行ったネルが見つけたのはポールの死体。ネルはあわててマネージャーのジェイクにすべてを打ち明ける。ところが肝心の死体が行方不明になってしまい……。
右往左往するジェイクの前に現れる新たな死体。スキャンダルを恐れるヘレンとジェイクは、警察に届けることもできず、その死体をリンカーン・パークへ運ぶ。
この作品には、クレイグ・ライス自身がラジオ番組の脚本家兼プロデューサーをやっていた経験が活かされている。ライスは、またストリップ界の女王ジプシー・ローズ・リーの広報・宣伝の仕事もやっていたことがある。本書のヒロイン、ネル・ブラウンの生い立ちはジプシー・ローズ・リーの経歴と重なっている、というのが、訳者小鷹信光氏の見解である。
ジェイクのヘレンに対する思いは熱烈で、そのヘレンから「結婚しちゃいましょうか」と言われ、天にも舞い上がる気分になってしまう。早く結婚式を挙げたいのだが、例によってトラブルがトラブルを呼び、結婚は次作『大はずれ殺人事件』まで持ち越される。この間のジェイクのイライラが笑える。
次に引用するのは、全くかみ合っていないジェイクとヘレンの会話。ジェイクから、ネルの元恋人ポール・マーチの死体が消え失せたという話を聞いたヘレンが、彼女一流の好奇心を示して、死体の隠し場所を探ろうとしている場面だ。
ヘレンが溜息をつき、「ねえ、もし死体を隠さなきゃならないとしたら、あなた、どこに隠す?」
「そういう問題に直面したことはないが、考えてみるよ。ヘレン、どうしてぼくから逃げたんだい?」
「あなたを愛していたから」彼女は穏やかに答えた。「でも、死体を隠さなきゃならないとしたら、どこに?」
「クック郡の死体公示所だな。だれも捜そうなんて思いつかないだろうから。今いったこと、本当かい?」
「もちろん本当よ。でも、時間の無駄だと思うわ」
「え?ぼくを愛することが?」
「違うわよ、クック郡の死体公示所に行ってポール・マーチの死体を捜すのが、よ」
「頭にくるな。話をそらしてばっかりいると、他の女のところへ行っちまうぞ。今でもぼくを愛してる?」
「もちろん愛してるわ。絶対どこかに隠されてるはずよ。死体を消し去るなんて、できないもの」
「ヘレン、2、3分でいいからポール・マーチの死体を頭の中から追い払って、かわりにぼくを入れてくれよ。殺人なんて、1年じゅう毎日、祝祭日にも起こってるけど、これはぼくたちのあいだに2度とおこらないかもしれないんだぜ」
「ジェイク、結婚しちゃいましょうか」
彼の手からグラスが滑り落ち、カーペットに酒の染みが広がった。
「本気なのか?」
「もちろん本気よ。でも、そんなふうにお酒を無駄にするんなら、考え直すわ」ヘレンは台所から雑巾を持ってきてカーペットを拭き、ジェイクに新しく酒を注いだ。「絶対に落とさないと自信が持てるまで、グラスに触っちゃだめよ」
(『死体は散歩する』p87)
2作目も、酒の話題には事欠かない。
マローンが重苦しい溜息を吐いた。「おれに話があるときは素面でいてほしいね。そうすりゃ人生はずっと単純になる」
「ぼくは素面だ」ジェイクは腹立たしげに言い、ライ・ウィスキーを喉に流し込んだ。
(『死体は散歩する』p58)
ジェイクとマローンはかわるがわるビールをとりに部屋の隅へ立った。11時近く、ヘレンとマローンがジンのチェサーとしてビールを飲むかわりにビールのチェイサーとしてジンを飲むことの効用について議論を交わしていたとき、ドアにノックの音がした。」
(『死体は散歩する』p276)
第3作『大はずれ殺人事件』と第4作『大あたり殺人事件』は、2部作である。
『大はずれ殺人事件』は、ジェイクとヘレンがようやく結婚したところから始まる。
ジェイクとヘレンの結婚パーティーの席上、ジェイクは賭けをした。賭けの相手は、数回の結婚歴を持つ、魅力的な社交界の花形、飛行家、作家、探検家、百万長者であるモーナ・マクレーンであった。彼女はパーティーに集まった人々の前で大胆にも、「殺されても誰も嘆かず、私が個人的に殺す動機を持っているある人間を、公共の道路上で、白昼、射殺」すると宣言したのだ。賭けた物件は、シカゴでも有数のナイト・クラブ<カジノ>である。
モーナ・マクレーンが椅子から身を乗り出し、とがったあごを小さな手の上に載せ、緑色の眼をきらきらさせながらこう言ったのはそのときだったのだ。「誰かを殺したら、どんな気持ちがするでしょうか?私、近いうちに実験してみるつもりですのよ!」
(『大はずれ殺人事件』p20)
「殺されても誰も嘆かず、私が個人的に殺す動機を持っているある人間」モーナ・マクレーンがはっきりと繰り返した。「公共の道路上で、白昼、射殺。どうかポケットに手錠を入れて私を追いまわしてくださいな、ジャスタスさん、そしてお勝ちになったら<カジノ>で一財産こしらえてください。賭けは賭けですから」
(『大はずれ殺人事件』p27)
その翌日、古ぼけた黒いコートの小男が、白昼、ステートとマディスンの交差点で射殺される…。
妻ヘレンの財産に頼らずに結婚生活をスタートさせたいジェイクにとっては願ってもない賭けだったが、ヘレンとマローンを巻き込んでのてんやわんやの大騒ぎと発展する。そして、「大はずれ」だったのだ。
『大あたり殺人事件』は、『大はずれ殺人事件』で見当違いの殺人を探り当ててしまったジェイクとヘレンは、新婚旅行でバミューダへ行ってしまうところから始まる。一方、マローンは大晦日だというのに、いきつけの<天使のジョーのバー>で独りジンのグラスを重ねるだけ……。そんなときドアを開けて入ってきた一人の男は、マローンの名前を呟くと床にくずおれ息絶えてしまった。果たしてこれが社交界の花形モーナ・マクレーンが予告した殺人なのか?
ここでまたしつこく、酒の話題を。
「マローン、テネシー特産の本場のコーン・リカーをやったことがあるかい?」
「一度ある。目がさめたら、埋葬されて3日目だった」
(『大はずれ殺人事件』p51)
「ダブルのライを3つ」マローンは言った。「いや、トリプルのライを2つと言ったんだ。とにかく、急いでくれ」
ウェイトレスはバーのほうへすっとんで行った。
ジェークが怒ったように言った。「きみは食い物が欲しいと言ったんじゃなかったのか?」
「そうだよ」マローンはうなずいた。「アルコールは食い物さ。人間がアルコールだけでどのくらい生きていられるか知っているかい?」
「知らない。そいつをたしかめようとするたびに、誰かが途中でぼくをしらふに戻しちまうんだ。…」
(『大あたり殺人事件』p98)
ジェークはかぶりを振った。「ジェラルドなんていう仮名をわざわざつけるやつはいないよ」
彼女は大きなため息をついた。「マローン、何か案を出してよ」
「ビールをもう1本、という案を出すよ」マローンはバーテンダーに合図した。「いや」バーテンダーがやって来ると、彼は言った。「ビールはもうたくさんだ。ジンを3つ持ってきてくれ」
「1人に3杯ずつよ」と、ヘレン。
(『大あたり殺人事件』p222)
こんな調子で、シリーズは第11作の『マローン御難』まで続く。各作品の紹介・解説が目的ではないので、第5作『暴徒裁判』以降の作品のあらすじについては省略し、登場人物のプロフィールに焦点を当ててみよう。3人ともとても愛すべき人物である。特にヘレンは、ぼくが今まで読んだミステリーの中に出てきたヒロインとしては最高だ。
まずは、ジョン・ジョセフ・マローンから。
ジョン・ジョセフ・マローンはとても弁護士には見えない。土建屋か、酒場のおやじか、野球チームのマネージャー。そんな風貌だった。ひと目見ただけでは印象に残らない。小柄でずんぐりしているが、太ってはいない。黒っぽい髪は薄くなりかけ、汗っかきの赤ら顔は、しゃべるとさらに赤くなり、いっそう汗をかく。だらしのない身なりで、スーツのプレスを見れば、それを着たまま眠っていることもおおよそ見当がつく。それもおそらくタクシーの床で。ネクタイとカラーが親友になったことは一度としてなく、ただの知り合いになることもまれにしかない。ベストのボタンがかかっていたためしはめったになく、片方の靴ひもがほどけていることなどしょっちゅうなのだ。
(『時計は3時に止まる』p66)
とても弁護士には見えない風貌。迷信深く、感傷的なところもあるアイルランド人。『大あたり殺人事件』の訳者小泉喜美子氏が、「あとがき」で、映画俳優だと誰が適役かと頭をひねっているがなかなか思いつかず、日本だったら、田中小実昌、殿山泰司、阿佐田哲也の3人を足して3で割ればよいのだがと言っている。なかなかの想像力、お見事です。
「標準の男の子がアルファベットをおぼえる少なくとも1、2年前に警官から逃げる方法をおぼえるような界隈」である貧しいサウス・サイドで生れた。3人の中では、マローンはその論理的な頭脳が持ち味で、腕っぷしのほうはもっぱらジェイクの役割だが、マローンだっていざとなれば喧嘩のひとつやふたつはできる。サウス・サイドで護身術を学んだのはヴィクと同じだ。
夜間の法律学校に通っていた最後の数ケ月は、学資稼ぎにタクシーの運転手をしなければならなかった。独身でこの10年以上、ダウンタウンの<ループ・ホテル>に住んでいる。
しかし、弁護士としての実力は超一流である。次に引用するのは、ジェイクがディック・デイトンにマローンを紹介する言葉。
「弁護士をつけてやろう。彼女が孤児院で大量殺人を行い、警官が17人目撃していたとしても、無罪放免にできる弁護士をね」
(『時計は3時に止まる』p52)
もうすこし一流弁護士としての評価を。
こいつは自分ひとりの手には負えそうもない、と結論を下したジェイクの頭に、ひとつの名前が浮かびあがった。ジョン・ジョセフ・マローン。
その名前を思い浮かべただけで、問題が単純なものに、もう解決されたも同然のように感じられた。ジョン・ジョセフ・マローンは不精者の小男だが、腕のいい弁護士で、どんな依頼人でもごたごたから救い出してみせる、と豪語している。ネル・ブラウンをこの事件から救うことなど朝飯前に違いない。
(『死体は散歩する』p51)
「おれが言ったのはそういう意味じゃないんだ。きみをこんな目に会わせずにすませてくれたかもしれない弁護士が一人だけいる、という意味で言ったんだ。その男は何一つ、誰一人、こわいものはないんだ。りんごに巣食っている虫みたいにいやなやつだと言う人間もいるけれど、いざとなったら絶対に買収なんかされない男なんだ。きみの裁判では陪審員も買収されていたが、それでもその男ならなんとか切り抜けて見せてくれたかもしれないんだ。おれですら思ったね――」
(『幸運な死体』p30)
「小柄な男なんだよ。背が低くずんぐりしていて、髪は黒く、赤ら顔だ。いつもくしゃくしゃの恰好をしている。呑んべえで、女の尻ばかり追いかけまわして、ばくち好きと来ている。しかし、じつにきれる弁護士なんだ」
(『幸運な死体』p30)
では、マローンは法廷ではどのように立ち振る舞うのだろうか。
彼の法廷での態度は華々しく、世に聞こえている。だが、声のせいではない。かつて新聞で(ジェイク・ジャスタスによっても)書かれたように、マローンの声は風に揺れる錆びついた古い門扉のような声なのだ。身振りは単純で、しかも2とおりしかない。芝居がかって指を突きつけるか、芝居がかって拳を打ち鳴らすか。あと1つは、しわくちゃの汚れたハンカチで赤ら顔を、5分おきに、あるいは劇的効果をねらった間合いをとるときに、ぬぐう仕草だ。
(『時計は3時に止まる』p66)
次は、マローンの弁護士としての倫理感。正義の味方ぶらないところが、マローンのマローンたるゆえん。
マローンは、自分が弁護して無罪放免にしてやったほんのわずかな犯罪者をのぞいて、ほとんどすべての人間を軽蔑し、同情心のかけらも持ちあわせていなかった。それでも、休みなく働き、かなりの金をためこんだ。疑う余地のない犯罪者である依頼人を社会に解き放つことによって。犯罪者が好きなのではない。社会の方がもっと気にくわないというだけのことだ。証人たちの言葉は、彼が知恵をつけた証言以外はどれも偽証だと決めこんでいる。友だちには、いずれは裏切られるものと思っているし、いざ裏切られたところで、驚きも傷つきもしなかった。しかもそんなことは、友だちを心から好く妨げにはならないのだ。
(『時計は3時に止まる』p67)
「それでは」彼は冷たく言った。「実際問題として法律を破ることを容認することになります」
「お忘れになっては困る」マローンはしゃあしゃあと応じた。「ぼくは法律を破った人を法廷で弁護して生計を立てているのであります」
(『大はずれ殺人事件』p159)
マローンは立ち上がり、両手をポケットに突っ込んで部屋のなかをしばらく歩きまわった。
「ぼくは法律の番人ではない」彼は重々しく言った。「ぼくの職業は常にぼくを被告席の側に置いた。ぼくは正義の主張のために働いたことは一度もない」彼はまじめにつけ加えた。「どちらかと言えば、不正義を主張するために努力してきた」
(『大はずれ殺人事件』p213)
マローンの強さはその豊富な人脈にある。酒場で友達になることが多いが、ギャングとだって付き合いがある。
「あら、それじゃあなたはどこで人と会うの、マローン?知りたいもんだわ、ずいぶん大勢の人と会うんでしょう?」
「わたしがどんなふうに人と会うか、本当に知りたいかね」
「それとどんなふうにお友だちになるかもね」
「バーで50ドル札をくずしてみればわかるさ……」
(『時計は3時に止まる』p195)
「ぼくはいろいろな人間とつき合いがあるんだ」マローンは一人言のように呟いた。「きみがびっくりするような人間ともつき合いがある。ときには自分でもびっくりしたりする。たとえば、アイク・マロイともつき合いがあったんだ。本当言うと、彼の妹の結婚式ではぼくが花婿の付き添いをつとめたんだよ。アイクは正直ないいやつで、命令にはよく従い、殺せと言われない人間は決して殺さなかった。……」
(『幸運な死体』p55)
必要に応じてアリバイ作りもやってしまう。マローンが秘書のマギーに尋ねる。
「彼がついたのが1時半だったとどうしてわかる?」
「そのときちょうど、カテドラルの8000番に電話をかけて正しい時刻に時計を合わせようとしていまして、サンダース氏が入っていらしたときは受話器を聞いている最中だったんです。正確に言えば1時32分でした」
「上出来だよ、きみ」マローンは言った。
(『大はずれ殺人事件』p226)
サンダース氏のアリバイがないので急遽でっちあげる場面。マローンのオフィスにいたということにしてやるため、マギーが警察から聞かれたときの予行演習をやっているのだ。マギーは心得たものである。
マローンがマギーに与えている重要な仕事の1つは、30分ごとにカテドラルの8000番に電話をかけることだ。勤務時間は1日9時間。勤務日数は1週に6日。ちょっとしたアリバイの可能性が週に108つできるようになっている。これで、本当にマギーが1時半にカテドラルの8000番に電話をかけたか、警察が確かめても大丈夫。
悪辣弁護士とも言えるが、女性に対しては騎士道精神の持ち主、袖の下をとらないという意味で正直者、また時には感傷的になる愛すべき人物なのだ。
そして、ジョン・J・マローンは女を処刑するなどということはまことにもって無礼、不道徳、考えられざるところであるとする根強い騎士道精神の持ち主なのだ。
(『幸運な死体』p36)
「正直は最善の策さ。少なくとも、昔から正直は高く評価されてるらしいよ。それに、依頼人に対する義務というものもあるからね。袖の下なんかでそれを忘れたくはないね」
(『幸運な死体』p102)
次は、ジェイク・ジャスタス。
ジェイクは、マローンと同じくアイルランド人。長身で赤毛でそばかすだらけのナイスガイである。前述の小泉喜美子氏は、迷わずにジェイムズ・スチュアートかケーリイ・グラントに出演を頼みたいと言っているから、だいたいのイメージはつかめるだろう。
第1作『時計は3時に止まる』では、ダンス・バンド<ディック・デイトン&ヒズ・ボーイズ>のリーダーであるディック・デイトンのプレス・エージェント兼マネージャーとして登場するが、前職は新聞記者である。
彼はジェーク・ジャスタスという元新聞記者で、自称するところによれば、現存する世界第二の偉大なプレス・エージェントである(ナンバー・ワンは誰なのか、彼は決して言わない)。
(『大はずれ殺人事件』p13)
赤毛のジェーク・ジャスタスは、ジェーク自身の認めるところによれば現存する世界最高のPRマンであり、また、<エグザミナー>紙をくびになるまでは世界最高の新聞記者でもあったのである。
(『大あたり殺人事件』p6)
ジェイクも、他の2人に負けないくらい酒は好きだ。
「ジェイクは酔ってるときのほうが頭が冴えるんだ」マローンは長年の経験から言った。
「あんたもそうあってほしいもんだ」ジェイクは乱暴な口をきいた。
(『時計は3時に止まる』p76)
ジェイクがどれだけヘレンを愛しているか。
ああ、おれは世界一幸福な男なんだと彼は考えた。社長になったり、百万長者になったり、映画スターになったり英雄になったりする男はいくらでもいる。だが、彼はヘレンと結婚したのである。
(『幸運な死体』p16)
ジェイクの秘密兵器は、その強振の右手だ。
「そうしょっちゅうかっとなるわけじゃない」ジェイクはいった。いまにもまたかっとなりそうだと警告するように、その目が光っている。
「そうね」ヘレンは認めた。「でも、決まって最悪のときにかっとなるわ」
「それも」マローンがつけ加える。「最悪の相手に向かって。きみが殴りたくなる相手ときたら、必ず――」
ジェイクはふっと息を吸った。「やれやれ、ぼくはなにも――」
ヘレンの目が夢見るようにぼうっとなった。「ハイム・メンデルを覚えてる?」うっとりした声。「それから、ジョン・セント・ジョン。それにレナード・マーチモント。ブレーク郡副保安官のジョー・なんとか。ウィスコンシン州ジャクソン郡のハリー・フート副保安官のことは?」
「冗談じゃない!」ジェイクはわめいた。「どれもちゃんと理由があったんだし、今度だってそうだ。きみたちがぼくだったら、やっぱり同じことをしてたさ」
「そりゃあ、そうだ」マローンは何日か前の夜に<天使のジョーのシティ・ホール・バー>で、アイルランドの民族主義者ロバート・エメットに関する率直な意見のことで、ジョーの代理のバーテンダーに一発お見舞いしたことを思い出し、おだやかにうなずいた。
(『こびと殺人事件』p203)
これは、『こびと殺人事件』で、ジェイクが財閥の後継者ペン・レディックを殴り倒した後の3人の会話だ。ハイム・メンデルは『時計は3時に止まる』でジェイクが殴り倒した地方検事。ジョン・セント・ジョンは『死体は散歩する』でジェイクに殴り倒されたエージェントのラジオ部門責任者。レナード・マーチモントは『大はずれ殺人事件』で殴り倒されたイギリス人青年。ジョー・なんとかは『大あたり殺人事件』で殴り倒されたブレーク郡副保安官。ハリー・フリートは『暴徒裁判』で殴り倒された副保安官だ。各作品で、必ずジェイクの右手で殴り倒される人物が出てくるのである。
最後に、ヘレン・ジャスタス。
アッシュ・ブロンドに繊細な美貌、細い長い脚を持ち、億万長者の跡とり娘で才気煥発、スピード運転が得意で、殺人事件の解決が得意で、警察とばくちをやって負けたことがない。おまけに、マローン、ジェイクにも負けないくらい酒好きときている。気が強く、とっぴな行動ばかりやっているように見えるが、根はやさしくてかわいい理知的な女性。どうして、一見抜けていて失敗を繰り返し、一文なしに近いジェイクと結婚する気になったのか不思議だが、ほんとうはヘレンはジェイクに頼っていて、ジェイクはちゃんとヘレンのハートをつかんでいるのだ。
そのとき、若い女が、まさに豆台風並みの速さで部屋に入ってきた。背が高くほっそりしているのは同じだが、たおやかで人に訴えかけるような感じのホリーに対し、この若い女はまるで氷と鋼でできているように見えた。髪は白といってもいいほど色の薄いブロンドで、後ろへきれいにとかしつけている。整った、淡い象牙色の顔。目は青く、きらきら輝いている。オーバーシューズに青いサテンのパジャマ、その上に毛皮のコート、なんともくだけた服装をしていた。
………
みんながいっせいに彼女を見つめた。
「いったいあなたは」アンディ・エイハーンがいら立ってたずねた。「どなたですか」
彼女は、誰も自分に見覚えがないことにあきれた様子だった。
「あたしはヘレン・ブランドよ、おデブちゃん。この名前に聞き覚えがなければ、言うだけムダだけど」
(『時計は3時に止まる』p56)
青いサテンのパジャマで颯爽と登場。強烈な印象を与えるヘレンのデビューだ。ジェイクはこの青いサテンのパジャマが忘れられなくなるのだが、ぼくを含め読者のほうも忘れられない。
「<カジノ>へ行ってディックのバンドが聴きたいわ」ヘレンが言い出した。
「その青いパジャマでかい?」ジェイクは腹を立てた。「冗談じゃないぜ。ほかに服は持ってないのかい」
……
「服ならほかにいくらでも持ってるけど、このパジャマが一番魅力的なの。でも、そんなに気に入らないんならいつだって脱いでやるわ」
(『時計は3時に止まる』p129)
ただのお嬢さんタイプの美人ではないが、ちょっとヘレンの美人ぶりを紹介しよう。
ふたりがバーに行ってみると、くい入るようにバーテンダーの手もとを見つめているヘレンが目に入った。光沢のある漆黒のぴったりしたドレスをすらりとした体にまとい、肩には毛皮のショールを無造作にかけている。繊細な横顔がつばの広いフェルト帽の黒に映えて、ひときわ優雅に白く浮かびあがっていた。
(『時計は3時に止まる』p191)
マローンはソーダクラッカーをちびちびとかじり、水をちびちびとすすっていたが、やがてライのグラスを持っているヘレンに目をやった。ヘレンがまとっている薄緑のシルクジャージーのディナードレスは、晴れた日のミシガン湖をほうふつとさせる。完璧なまでにととのった顔は色あくまで白く、美しくてなめらかで、トウモロコシの絹毛色の髪はサテンのようだ。
((『こびと殺人事件』p361)
一瞬、彼は世の中の憂いさなど忘れて、テーブルの向こうにいるヘレンを眺めた。なめらかに輝くアッシュ・ブロンドの髪。繊細な、美しい顔。その下から柔らかな光が射しているとでもいうような白い肌。ライト・グリーンのシフォンのドレスは彼女の肩のあたりで砕ける波のようだった。そして、テーブルの下には、あの長いほっそりとしたきれいな脚があるのだ。
(『幸運な死体』p17)
銀で縁取りをした淡いグレイのイブニング用ケープを肩から床まで曵いている。それより淡いグレイのシフォンのイヴニング・ドレスが煙草の煙のようにふわりと彼女の身体にまつわっている。こまかい模造宝石がいっぱい散らしてあるドレスだ。蜂蜜色の髪はなめらかに輝き、繊細な貴族的な顔は化粧の下で真っ白だった。細い咽喉のすぐ下に大きな銀のチョーカーをつけている。
(『素晴らしき犯罪』p104)
ちょっとしつこかったが、どうだ。まいったか。
でも、この美しさはヘレンの魅力のほんの一部なのだ。ヘレンのヘレンたるゆえんは、
「ホリーを留置場へ連れていくの?」
フレック署長は咳払いをし、すまなそうに、「そのですね、ミス・ブランド……」
「このどあほう!」
(『時計は3時に止まる』p57)
と、警察など物ともしない気の強さだ。
ニューヨークで警察からどうして丸秘情報を得ようかと悩むマローンに対するヘレンの言葉。
「おまわりはどこだって同じよ」ヘレンは自信をこめて言った。
(『素晴らしき犯罪』p174)
やはりヘレンは正しかった。おまわりはどこでも同じなのだ。
(『素晴らしき犯罪』p179)
ヘレンにとってみれば、シカゴのおまわりもニューヨークのおまわりも同じ。どちらも御しやすいということだ。
最初に本能的な行動をしたあと、マローンはじっと立ちつくして、奇怪なロープでぶらさげられているジェイ・オットーの死体を、ではなく、ジェイクとヘレンを、観察した。ヘレンのもっともすばらしい点のひとつは、どんなに刺激的なことに出くわしても、決して悲鳴をあげないというのをあてにできることだ、とマローンは思った。
(『こびと殺人事件』p22)
気の強さは、その運転にも表れている。
どんな交通状況のなかであれ、パトロール・カーより早く走れるドライヴァーはただ一人しかジェークは知らない。ヘレンである。
(『素晴らしき犯罪』p65)
「一杯やる?」
ジェイクは思わず喉をつまらせ、必死に考えをまとめた。「やるとも」
彼女は笑い声をあげた。「脇ポケットに手を入れて。ちがうったら――こっち側よ。ループまでは長くて寒いドライヴになりそうだと思ったの」
ジェイクは満足げな笑みを送った。「なんだかきみがフローレンス・ナイチンゲールのように思えてきたよ」
彼女はまた声をあげて笑った。「でも、グラスはないわよ」
「いいとも。これ以上なにをか望まんやさ。グラスまで揃っていたら出来すぎだ」
ジェイクはヘレンにボトルをまわし、感嘆のまなざしで彼女を見つめた。ボトルを傾けてぐっとあおりながら、大型車をほんの少しもぐらつかせることなく、つるつるの道路を走らせている。
(『時計は3時に止まる』p60)
ボトルはもちろんライ・ウィスキーのボトルである。
そして、その好奇心の強さだ。
「いいのよ」慰めるようにヘレンが言った。「結婚は明日だってできるんだもの。それに、殺人犯捜しもおもしろいじゃない」
(『死体は散歩する』p93)
早く結婚式を挙げたくてたまらないジェイクにとっては迷惑な話だ。
突然ヘレンの気がふれたのだ。なんの前触れもなく、彼女は洗濯物のシュートの小さな扉を開け、まっさかさまに飛びこんでしまった。
かすかな悲鳴と、ものすごい勢いで落ちていく妙な音がし、やがて静まりかえった。
(『時計は3時に止まる』p102)
ヘレンの演技だ。こういう突拍子のないことを平気でやる。思いついたことは、何はともかく試してみるこの好奇心。お嬢さんではできない。いや、お嬢さんだからできるのかしら。
しかし、ライ・ウィスキーを胃袋に収め、ヘレンの熱狂ぶりとブッチのやる気に魅せられてしまうと、それはすばらしい名案、とびきりの妙案に思えた。ヘレンはこうしたたくらみにかけては大天才だった。3人そろって留置場か死体安置所送りになるかもしれない。
(『時計は3時に止まる』p114)
好奇心は人脈の厚さにも繋がる。もともと金持で上流階級には広い人脈をもつが、ヘレンの場合にはそれに止まらない。
「お金は楽しむためのものよ。ただね、あなたはプレス・エージェントを続けなきゃだめ。もし辞めたりしたら、あなたとさよならするわ。プレス・エージェントのあなたが好きなの。あなたを通じていろんな人と知り合いになれるから」
(『死体は散歩する』p90)
ヘレンの本音だろうが、ジェイクにしてみれば、自分に魅力を感じてくれているのか、自分が付き合っている連中に魅力を感じているのか不安になるような言葉だ。
好奇心も若さとバイタリティーがあるから満たされるのだろう。
ヘレンはあくびをして伸びをした。「睡眠不足を取り返すぐらい、いつだってできる。でも、昼ひなかから寝るというのは<大いなる愚行>だわ」
(『こびと殺人事件』p262)
ヘレンもマローンやジェイクに負けず劣らず酒好きである。
禁酒法以前は女性が酒場で酒を飲むということはなかったらしいのだが、ヘレンに至っては自分でカクテルも発明してしまう。
「ベネディクティン酒を1、メタクサ・ブランディを2、それにオレンジ・ビターを少々」ヘレンがウェイターに注文している。彼女はディックににこやかな笑みを向けた。
「あなたのための特別注文よ」
「なにを?」
「あたしが考え出したカクテル。<シカゴの炎>っていうの」
(『時計は3時に止まる』p136)
もう一つ。ヘレンの発明カクテルを。ただし、中身はわからない。
彼女(ヘレン)の手ずからカクテルをつくり、「あたしの発明なの」と一同に告げた。「<燃える心>っていうのよ」
ジェイクはひと口味わっただけで、耳が2インチ後ろへずれたような気がした。
(『時計は3時に止まる』p118)
「ちょっとどいて、ミスター・ジャスタス!」ヘレンはあくびをして伸びをすると、熱心にかたづけ作業に乗り出した。「あたしって生まれつききれい好きな女なの」
「生まれつききれい好きな酔っぱらいだろ」
(『時計は3時に止まる』p144)
一言で、ヘレンとは何者か?
ヘレン――ブロンドで美人で金持で魅惑的で、交通局にとっては恐怖の的、そしてレーク・ブラフとゲイリーのあいだのありとあらゆるバーのバーテンダーにとってはよろこびの的。
(『大あたり殺人事件』p6)
(当初作成日:9/25/1999)
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