<ペンダント>

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ペンダント

 掃除当番なんてめんどくせぇ。教室の掃除はさらにめんどくせ。
 他の奴等もめんどくさそうにだらだらしとるし、俺もほうきでやる気無しに掃いとった。
 同じ掃除当番に加納がいるのがちょっと緊張する。屈むと見えそうな丈のスカートなのに、豪快にしゃがんでぞうきんを絞るんやから。そういうとこがあいつらしいんやけど、目のやり場に困る。
 なんて思っとったら掃除終了を告げるチャイム。
「じゃ、ゴミ捨ててくるわぁ」
 と、加納はゴミ箱を持って行った。
「おわりおわり〜」
 他の奴等も道具を片づけたりバケツの水を捨てに行った。さて、俺も終わりにしよっと、ほうきを片づけて帰り支度をして、他の奴等が帰って行くのに手を振って。この後図書館に行くかなぁと思っとったら、教壇のそばになんやきらっと光るもんを見つけた。
「なんやろ」
 拾ってみると、それはペンダントやった。つぶつぶのチェーンに水晶みてぇなやつがかかっとった。どう見ても女物。留め金がバカになっとるな。
 これが、誰か女子の胸にかかっていたのかもしれんと思ったら、なんやどきっとした。 誰のやろ……。

 しばらくして加納がきょろきょろしながら帰ってきた。ゴミ捨てだけにえらい時間がかかったな。にしても、……なにしとるんやろ?
「どしたんや?」
「あのさぁ、このへんになんか落ちとらんかった?」
「なんかって?」
「雫型の透明なペンダントなんやけどね、ないんやて」
 加納が心配そうな顔した。それが俺の手の中のやとわかったとたん、ペンダントがやけに熱く感じて手のひらが汗をかいた。
 加納の胸元にあったヤツなんか、これ。
「そんなもんしとったんか? センセに見つかったらえらいことやぞ」
 うちの学校結構厳しいから、そんなものをしとったら生徒指導のセンセにどやされて、親に通報されてまう。
「うん。でも今日体育なかったし、してっても大丈夫やと思ったんやけどな」
 そう言いながら床を見回すあいつを見ていたら、手のひらのペンダントが汗でべたついた。返すべきだと、思ったのに、
「見てへんな」
 って、口が嘘付いた。
「そ……か。ごめん、変なこときいて」
 加納はそう言うと教室をぐるぐる見回した。ここで拾った振りとかすれば……と思ったんやけど、
「そんじゃ、帰るわぁ」
 って、慌ててペンダントをポケットにいれて、廊下を走って逃げた。

 ……なんでや。
 なんで、拾っただけやのに取ってまったんやろ。
 ちゃう、取ったんやない。留め金がバカになっとったから、直したるんだけや。そんで、明日ちゃんと返そ。

 帰ってから姉ちゃんに留め金を直してもらった。姉ちゃんがこういうもん好きで助かった。留め金が直されて姉ちゃんに念入りに磨かれたペンダントは、拾った時よりもかなりキレイで、ちょー照れくさなった。

 次の日、加納は暇さえあれば学校中を探し回っとった。先生に言う訳にもいかんし、誰に聞いても知らないと言われたらしい。そりゃそうや。俺が持っているんやから。

 放課後、他の奴等が帰った後も、加納はまだ探していた。
「してくるんじゃなかったなぁ」
 って、ため息をつきながら。
「そんなに大事なもんなんか」
 俺が言うと、加納は小さく頷いた。なんか、むかついた。
「これか?」
 ポケットからあのペンダントを出すと、加納が「あっ」って声を上げた。
「落ちとったで拾っといた」
 あいつの手のひらに返すと、あいつは嬉しそうに、
「ありがとうね」
 って、笑った。
「これね。小学校の時修学旅行で買ったヤツ。これしてるといいことあるんやて」
「でもさ、いいことなんかなかったやろ? 落としたりしてさあ」
 と言ったら、加納はムキになって、
「そんなんちゃう。伊奈波君が拾ってくれたし、しゃべれたし……」
 って、真っ赤な顔で言った。
 え、俺!? 
 俺が拾って、俺としゃべったことが、いいことなんか? なんて考えとると、加納が例の留め金に触って、
「あれ? 直ってる」
 と、ぽかんと口開けたまま俺と留め金を見比べた。
「なんで?」

 その時、窓いっぱいの夕日が俺たちの顔を照らした。顔が焼けるみたいや。
「……お前のやつ、やったから……直しといたった」
 清水の舞台から飛び降りるってかんじで思い切って言うと、加納は驚いたみたいに目を丸うした。で、思い切りついでに、
「あのな……俺、お前のこと、好きみたいなんやけど」
 って言ったら、もっと目を丸うして、「うそやぁ」って言ったけど、その後で「うれしい」って笑った。そのくるくる変わる顔がかわいらして、なんや泣けてきた。

 これは夕日のせいにしておこう。
 あんまりキレイやから、泣けてきたんや、って。


おしまい






3SSにて書かせて頂きました。
エセ岐阜弁です。間違った記述がありましたらごめんなさい。



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