太平洋側の北上高地と言えどもさすがにこの辺の道路にはまだ雪が残る.早坂峠は風がありどんよりと曇っている.峠を越えるクルマが多いためかドライブインが開いており人が多いことに少々驚く.さすがに早坂高原で遊ぼうなんていう人間はいないだろうと思ったが,ここはスノーモビルのゲレンデ(?)でもあるようだ.数台のモビルが並んでいた.
今日も初めからスノーシューである.時折雲が切れ陽が射し眩しい園地は雪がなければ芝生にでもなっているのだろうか.この緩やかな傾斜を登り詰めれば左手に3mくらいはあるかと思われる雪の壁が現れる.雪の量はかなりのものだ.殆ど平坦な稜線に出ると少々風が強くなる.雪に埋もれていた道路が末崎頭へ続く稜線の東斜面を巻くように現れているのが遠くに見える.作業小屋からこの道路と別れて稜線に沿って登る.針葉樹の林の中の山道のようなスペースを辿ればちょっとしたピークに出る(11:12).ここで一息つく.先ほどから雪が降っており,空は雲に覆われていて暗い.ここから緩やかに下れば目の前に広大な雪原が見渡せる.距離にして700〜800mくらいか,雪面からは牧柵が覗いているところを見ると牧場なのだろう.その柵に沿って背の低い風で変形した針葉樹が一直線に生えている.まずはこれを辿って向こうに見える電波塔まで行こう.
しかし,ここは風の通り道のようで非常に風が強い.雪は止んでいるが雪煙がすさまじく,まるでドライアイスの上を歩いているような感じだ.気温は0℃前後で身体は寒くないが頭が割れそうなくらい冷たい.ジャケットのフードを持ってくるのを忘れたのが痛い.フリースの帽子くらいじゃ役に立たない.たまらず大木の木陰で一休み.頭が暖まり,風が治まるのを待つ.
ここから引き返そうかと弱気になるも空は少し明るくなったし,風下側を歩けば何とかなると思い,電波塔を目指して腰を上げる.殆ど平坦な稜線ではあるが果たして風下側の斜面では風は幾分弱く感じ,なんとか電波塔に到着.建物の陰で雨具のフードとズボンを出して防風対策を取る.これで大丈夫(12:15).
ここから目指す上明神山はどこになるのか.北上「高地」と呼ばれるだけあってこの辺はピークがはっきりしない山が多い.緩くピークを登り詰め再び牧柵に沿って進み,次のピークに向かって――とにかく高い所へ向かって――林の中を歩けばやがて赤いポールと標識が見え,ここが上明神山であることが分かる(12:35).標識の設置主は「藪山登山家集団」とあり,無雪期は藪山らしい.たしかにこの時期でも小枝が結構邪魔であった.登山道があるのかは判然としない.
タイミング良く空は晴れてきた.林の中はさすがに風は穏やかであり,大木に囲まれたここでアンパンと紅茶とナッツによる昼食とする.誰もいないし,誰も来ない山頂だ.こういう山も悪くない.
さて,まだ時間はある.隣の末崎頭へ行ってみよう.スノーハイクに道は要らない.コンパスと地図で確認していざ出発(13:05).すばらしく大きな木と歩くのに邪魔な低木が混在する.低木とはいうものの幹に打ち付けられた境界見出標は足元に見えているところから積雪量はゆうに1mは越えているのだろう.尾根を外さずに西に向かえば右手にスノーモビルの跡.左手前方の末崎頭から茶臼台へ続く稜線には雪庇が発達しており風の強さが想像できる.
大木は童話に出てきそうな(?)くねったものでしばし立ち止まって眺めてしまう.鞍部から末崎頭の稜線に向かう斜面の林も非常に美しい.辺りには動物の足跡さえない,やや急な斜面を登りきって稜線に出ればこれまた素敵な林だ.
途中で会ったスノーモビルのおじさんに再び会う.ここまで歩いてきたことに驚いている様子.何でと聞かれても山登りが好きなんですとしか答えようがないぞ.
末崎頭に到着(14:07).標識は見つからないがここがピークだ.遠く,沢の向こう側には突風の中を歩いた牧場の稜線が見える.結構遠くまで来たものだ.天候はやっと安定したようで風は相変わらずだが空は完全な青空になっている.
スノーモビル隊は三巣子岳の方に向かって行った.こちらはここで終わり.写真を撮って引き返す.