14:15の湯殿山へ向かう鶴岡駅からの最終バスは既に発車した後でタクシーで湯殿山の参籠所に向かう。このママさん運転手の話が面白かった。途中バンジージャンプ場がある(なんでも「公認」らしい)が、運転手さんは会社の宣伝を兼ねて飛んだらしい。ハンググライダーをやっているとのことで落ちるときよりその後の跳ね返りが恐かったそうな。お子さんは山好きらしく、なぜ好きかと聞くと何となくと答えたらしい。そんなモンでしょう。
16:00ころ湯殿山参籠所に到着する。赤い大きな鳥居が目立つ。鳥海山山頂の参籠所とは大きな違いだ(そりゃそうだ)。旅館のようだがもっとずっとのんびりしている。私の住所も電話番号も聞かなくて予約できたし。部屋は10畳の和室。狭いが常時湯の出ているお風呂で汗を流した後は全くやることなし。夕食は精進料理(魚は出たな)。何と宿泊客は私を含めて2組。寂しい限りだ。
翌朝4:30に起床し5:10に出発する。朝飯は断ろうと思っていた(その分の食糧は持ってきた)がおにぎりを作ってくれると言うことで思わずお願いしてしまった。ヤケにでかいおにぎりを部屋で食べて腹ごしらえをした。玄関で靴を履いていると宿泊していた御夫婦のオジサンが出てきた。昨日月山から降りてきて泊まっていたらしい。ここから登る人は余りいないようでママさん運転手も6年目にして初めてだと言っていたっけ。
舗装道路の終点で水をがぶ飲みし山に入る(5:28)。少し下って沢を渡ると湯殿山本宮だ。ジュースが飲まれるのを待っているかのように誰も居ないところで冷やされている。
ここから沢に沿って登り始める(5:40)。砂防ダムを過ぎたところで稜線に向けて急坂を登り始める。始まったぞ。まずは水月光だ。なるほど、右には沢がある。丸石の上をえっちらおっちら登るのはきつい。
湯殿山口からのルートは水月光、金月光、鍛冶月光と3つの急登がある。月山は山岳信仰の山だ。「いかにも修験の山らしい味わいを持っている」とガイドブックにある。ちょっと弱気になるが、時間はたっぷりとある。ゆっくり登ろう。
急坂はきつい。高度はぐんぐん上がり汗が噴き出す。ゆっくり登ろうにも歩幅が石の高さで制限されてしまう。5:50、水月光が始まってからまだ10分しか歩いてないが休憩とする。ザックを降ろして汗を拭う。汗が引くまで景色を眺める。この後、道は直登から葛折りとなる。
やや、鉄梯子が見えてきた(6:09)。金月光の始まりのようだ。錆止めそのままのような朱色の梯子である。でも2〜3m程度と短く全く必要のない角度で掛かっている。四つん這いになってみたが攀じ登っているというよりは這っているといった形である。はっきり言って邪魔でしかない。梯子の脇には「○○鉄工所奉納」とかの銘がある。梯子の下には黒光りした鉄の鎖もあった。大したこと無いじゃんなんて思っていたが、最後の二つは梯子なしでは登れないだろう。私には下を振り返ってみる勇気がなかった。
でも、金月光はそれだけであった。すぐに先が明るくなり稜線に出る。少し行くと装束場である(6:23)。もう森林はなく湯殿山や姥ヶ岳が見える。休憩用の小屋とトイレもある。ここで休憩し、6:30に出発。
6:43に清身川に到着。周りにはまだ雪が残っており、表面を渡る空気は冷やされて白いガスを生んでいる。噴き出した汗の分とこれから出るであろう汗の分を川から補給する。冷たくていと旨し。今日も快晴で気分は良い。朝日連峰であろうか、雪が残る山並みが見える。
ここからは右側の沢を詰めて、左手の稜線と右手の姥ヶ岳の北にあるピークとを結ぶ鞍部を目指す形になる。道が幾筋にも分かれていてどれが正統なのか分からない。私が採った道は途中笹薮に入ってしまった。道はしっかりしているのでそのまま進んだが、朝露でズボンはびしょ濡れである。おかげで少しきれいになったようだ。山腹を巻いて稜線の北側に出ると月山が見えてきた(山頂は見えない)。
途中今日最初のハイカーとすれ違う(7:15)。金姥には7:26着。月山方面からはオバサン軍団が降りてくる。逃げるわけではないが、汗がおさまったので時間もあることだし姥ヶ岳を往復することにした。姥ヶ岳までは木道のある草原を歩くという、ご機嫌な道だ。朝日に照らされたニッコウキスゲが美しい。アザミもちらほら咲いている。
7:40に姥ヶ岳に着いた頃には朝日連峰にせき止められた雲が流れ落ちる様などが見えたのであるが、自分の記念写真を撮っている間に辺りはガスってしまった。山頂にはセリ科の白い花(シラネニンジン?)が多く咲いている。少し下ったところには池塘もある。10分ほど楽しんでからもと来た道を引き返す。
戻るさいに気付いたが道の脇にはミヤマウスユキソウらしき花が咲いていた。だがもう花は茶色くなってきていた。さらに月山に向かう登りにはヨツバシオガマのような花が。黄色の花はウサギギクか。やはりこの時期は花が多い。
ガスが切れ青空が戻ってきた。森林限界を越えた山道は開放感があり気持ちが良い。紫灯森を卷き牛首辺りで休憩する(8:21)。押しつぶされて形状が不確定な5枚分のビスケット粉を食べる。今歩いてきた姥ヶ岳やその先のリフト駅が雪渓の向こうに見える。遠くには先ほど隠れてしまった朝日連峰が再び姿を現している。
鍛冶月光が始まる。ここはきつかった。膝を曲げて身体を持ち上げる度に乳酸が染み出してくる(ホントかいな)。体中の糖分を燃焼させようとするも吸気が伴わない。はぁはぁ。燃焼効率悪いなぁとか変なことを考えつつ。たびたび休憩する。
9:02、やっと鍛冶小屋にたどり着く。小屋には「鍛冶屋敷」とある。土間で休ませてもらう。疲れたけど、脚には来ていない。トイレを借りるが、ちょっと…であった。ホラー映画のよう…。トイレの脇にはピンクと黄色のお花畑が広がる。「花摘み」とはよく言ったものだ。
ここで長居は無用である。9:10に出発する。あっと言う間に広い山頂に着く。頂上小屋を通り過ぎ、月山神社の脇でひと休みする。地図で方向の確認をし、写真をパチリ。今回の山行はやたら写真を撮っている。またガスがひどくなり、空は明るいが青空とは言えない状態だ。もっと眺めの良い場所、三角点にでも行ってみようと立ち上がる。
三角点近くの稜線の岩の上で再び休憩。ここは眺めが良い。家族連れがやって来た。オバサンが私の荷物を見て縦走ですかと聞く。いえ、昨日鳥海から降りてきたんです、寝袋が入っているんですと答えるが、納得してくれないみたい。その家族も鳥海から来たらしい(なぜか1日ずれている)。そうだよな。普通こんなに荷物は持たないよなと自ら納得する。食糧は6食分も持ってきているが1食しか食べてないし、寝袋は不要であった(トホホ)。
仏生池小屋あたりで昼飯にしようと9:55にここを出発。大峰あたりまでは一面お花畑である。ハクサンシャジン(?)が見事だ。仏生池小屋方面(八合目レストハウスからだろう)からは軽装のハイカーがどんどんやってくる。ちょっとそこまで散歩という服装の人もいる。八合目からもっと近いと思っている人が少なくないようだ。
もっくら坂、行者返しという、やや急な坂を大きな石の上を渡り歩いてテンポ良く下る。仏生池小屋がガスの中に見えてきた。小屋裏にはそれなりの場所があったが、表はもっといい場所があるのではと小屋を過ぎるもいい場所なし。仕方なくやや広めの道端で店開きを始める(10:34)。すると雨が降り出してきた。なんとまぁ…。雨の中で食事は嫌なので小屋に戻る。雨具を着ていると小屋の前にオコジョが現れた。思ったより小さいや。食事はとらずに歩き出す。軽装の観光客はこの雨の中、傘も差さずに歩いている。
雨具はさすがに暑い。小止みになったので雨具はしまう(11:05)。弥陀ヶ原の隣に見える雪渓ではスキーをやっている。弥陀ヶ原が見えてきたところでまた大雨になるが今度は傘で済ます。予定より一本早いバスに乗れそうだ。弥陀ヶ原はもっと花が咲いているのかと思ったら笹ばかりだ。ぐるっと回らずに直進する。11:40御田原参籠所を過ぎ、木道を歩いて11:50に月山高原レストハウス(八合目レストハウス)に着く。バスの乗客は私だけだった。
鶴岡駅前でざるそばを食べて昼飯とする(質素!)。臨時特急、新幹線と乗り継ぎ18:30には東京に着いた。さっきまでの山旅が夢のようである。