甲武信ヶ岳


朝の金峰山を望む
山域 秩父山地(山梨県北巨摩郡/甲府市/東山梨郡-長野県南佐久郡境)
山名 国師ヶ岳(2591.8m),ミズシ(2396m),甲武信ヶ岳(2475m)
交通 東京(JR中央本線)→塩山(タクシー)→大弛峠
小屋 大弛小屋甲武信小屋
温泉 なし
山行日 1997年4月30日(水)晴れのち雨
コースタイム 6:15大弛小屋-7:09国師ヶ岳-9:47東梓-10:30両門ノ頭-12:40甲武信ヶ岳 [9.5km/5h50min]
地図 「金峰山」五万分の一地形図(国土地理院)
メモ 五日間の奥秩父主脈縦走の二日目の記録です.歩く人が少なく途中エスケープルートもなく,この時期では年によっては雪深いこともあり,この縦走の核心部といえるでしょう.早立ちに心がけましょう.

参照 金峰山雁坂嶺笠取山,飛竜山雲取山


▼第2岳章(国師ヶ岳から甲武信ヶ岳)

4:50に目を覚ます.頭上の窓ガラスを通して外を見上げる.曇ってはいない.5時半から朝食であるが,5:20には用意できた.荷物をザックにパックし直し6:15に小屋を出る.

予想に反して今日も快晴である.小屋のおじさんも今日は天気はもつよという.いっぽう,ラジオでは午後より雨の予報なのでゆっくりするのは拙いかもしれない.小屋の裏からすぐに国師ヶ岳の登りに入る.道は凍りついて固く締まっており,つぼあしになりにくいし,アイゼンも要らない.夢の庭園へは寄らずに国師ヶ岳に直接向かう道を選ぶ.いろいろ聞いてみたけど積雪の状況は行ってみないと分からない.途中にエスケープルートはないし,時間的な余裕を持って甲武信ヶ岳に着きたい.甲武信を越えればあとは雪も少なく楽ちんだ.

雪に埋もれた林の中をひたすら登ると思ったよりかなり早く頂上に着いた.ラッキーと思ったら,前国師だった(6:50).大きな丸みのある石に覆われており眺めが良い.快晴といえども昨日よりは若干霞んでいるようにも見える.10分ほど休んだのち緩く稜線の右手に降り,奥秩父最高峰の北奥千丈岳への分岐を右に分けて国師ヶ岳に向かう.

国師ヶ岳山頂より富士を望む 7:09に国師ヶ岳山頂に到着.こちらもなかなか眺めが良い.岩の上に立ち遠くを眺める.そのうち,ひとり登ってくる人がいる.大弛小屋にいたおじさんだ.一緒に夕食を取ったおじさんと知り合いなのか,ふたりでよく話をしていたが,富士見平小屋の人らしい(少なくとも地元の人といった感じ).大弛小屋へは富士見平小屋より瑞牆山を登ってから金峰山へ,そこから1時間半で降りてきたとのこと.すさまじく速い.そのおじさんはここより見える山についていろいろ説明をしてくれる.なんとなくおじさんを先頭に一緒に降りることになった.おじさんは甲武信を経て戸渡新道で降りるとのこと.

さてここから国師ノタルまで2kmの間,大きなピークなしに一気に降りる.さすがに雪は深く「つぼあし」になることしばしば.しかし下りのためスピードは出る.脚が潜っても膝で押さえれば立ちやすい.Uさんが少し遅れるのでおじさんとの距離のバランスを取る.8:12には国師ノタル手前のピークで我々よりも早くに小屋を出た縦走3人組に追いつく.ここで餅を焼いて朝食としている様子.我々3人もここで休む.おじさんはみんなで一緒に行く方が楽しい,と地元の人らしくない(?)お言葉.ここより縦走3人組を加えた6人のパーティーで甲武信ヶ岳を目指すこととなった(9:37,5℃).

国師ノタルには8:58に着いてしまった.広い鞍部だ.早い.順調である.落ちていた帽子を標識に掛ける.エアリアマップに書いてある倒木はかなりの本数が切断されておりそんなに歩き難くはなかった.これらはこのおじさんのお蔭らしい.ここまで相変わらず雪は深く,つぼあしにならないようなコツがあると豪語していたおじさんも結構嵌まっていたようだ.

東梓手前のピークで休憩(9:20).軽く食事.今日のゼリーはグレープ味だ.ここを出発する頃には空は雲に覆われてしまっていた.また,おじさんが先頭に立って道を覚えろと言うので私が先頭に立つ.下りに弱いUさんも他の4人がいるので大丈夫だろう.マイペースで降りるか.

両門ノ頭より南東方面 東梓は狭いピークだ.若者ふたりが休んでいた.こちらも汗を拭く(9:49).まだ休むには早い.両門ノ頭に向かう.国師ノタルからは目立って雪が減ってきていた.西側の日陰の部分にはまだかなりな積雪が見られたがそれ以外の所では土が顔を覗かせている.良かった.これなら問題なく甲武信ヶ岳に着けるだろう.

稜線の縦走特有の直登が辛い.10:30に両門ノ頭にたどり着く.20mくらいのテラス状に東側が切り立っており眺めが良い.しかしながら今にも降り出しそうな空模様である.早昼にしようかと思ったが,Uさんと相談して簡単な食事にして先を急ぐことにした.カロリーメイトとチーズ,レーズン入りビスケットで済ます.ピークはあと3つ.このあとはそんなにアップダウンはないとのおじさんの話でありホッとする.例の縦走3人組はやって来ない.再び3人で歩き始める.

富士見は林の中(11:12).ただし木の幹は細く,以前は富士山が見えたのではないかと想像される.ここより右に折れ急坂を下る.全然楽じゃない.

11時頃よりぽつりぽつりときていた雨であるがミズシに着く頃には本格的に降り出してしまった.富士見と同様にミズシの登りも急坂の直登であった.いやぁ,疲れた.ザックにカバーを付けて雨具を身につける.ここから甲武信ヶ岳の山頂の道標が見える.また急降下する.いいかげんうんざりだ.

12:15に千曲川源流に向かう分岐に到着.ここからはすぐだというおじさんの言うことを信じて登るもなかなか着かない.ひょっとしたらミズシから見えたガレ場を通らずに山頂に着くのかなと思ったら雨に濡れたガレ場に出た.見上げると1本突き出た山頂の標識が見える.途中で止まりたくなるのを堪えてとにかく一歩一歩足を前に出す.

甲武信ヶ岳山頂より 12:40に雨の甲武信ヶ岳山頂に到達.山の襞に沿って雲が上っていくのを眼下に見下ろす.やっと着いたね.改めてここまでのルートを眺める.国師ヶ岳から撓むように稜線が延びている.あそこが国師ノタルだ.あそこが東梓かな.ここまで一緒に来た富士見平小屋のおじさんは先に行くという.慌ててお礼を言ってここで別れる.

甲武信小屋には13:05に着いた.外が明るいせいか小屋の中は殊の外暗い.挨拶すると,奥のストーブの前で寝そべっているおじさんが返事をする.小屋の主人の山中さんだ.受付は2時からだというので小屋の中で遅い昼食とする.今日はキムチピラフ.うん,悪くない.リゾットだと思えばなかなかのもの.

富士見小屋のおじさんと一緒に来たと山中さんに話したら,富士見平小屋の小屋番さんはもう年寄りだよと言われた.確かにそうだ.うーん,それじゃ誰だろう.確かなんとか新道を作ったとか言ってたよな.Uさんに聞く.そう,徳ちゃん新道だ.なにーっ!と突然山中さんが飛び起きる,彼はこっちに来ていたのか(あれ,お友達なの)? どっちに降りていった? こちら側です,西沢に降りるらしいですよ.山中さんは外に飛び出していった.

彼の名はここでは伏せておこう.山中さんと一緒に徳ちゃん新道(戸渡尾根からヌク沢に降りる道が増水により通れなくなった場合に使われる道)を作った人らしい.小屋番でも何でもないらしい.以前,小屋に勝手に入り込んで酒や米を持って行ってしまった者がいたらしく,奥秩父界隈ではその特徴的な風貌より彼が犯人であることが分かっている.いわゆる「お尋ね者」なのだ.それじゃ小屋には来れないわけだよなぁ.しかし全くの驚きである.そのあと山中さんに服装やザックなど,いろいろ尋ねられる.確かに彼は足は速いらしい.

ただし,彼は確かに「お尋ね者」かもしれないがスーパーだった.我々が息を切らし汗だらけになって登った国師・甲武信ヶ岳間をワークシャツ,フリース,それにマウンテンジャケットを着たまま息を切らさずに歩き通し,休み時間はタバコを吹かしていただけで水分や食事を全く採らなかったっけ.さすがだ.

笠平避難小屋まで行くと行っていた例の縦走3人組がやって来た.彼らはここの小屋で宿泊することにしたらしい.さて,我々の寝場所は奥のコーナーがあてがわれた.閑散としていた小屋も夕方になると徐々に登山客が増えてきた.雲取山から縦走してきた人が多い.国師までの積雪状態を教えてあげる.逆に大弛小屋で聞いていた北天ノタル付近の丸太橋の崩壊(?)について教えてもらう.たいしたことないらしい.80リッターものザックで我々と逆方向にひとり縦走する若者のザックの脇にさした鯉のぼりがいい.楽しく夜を過ごした.


BasshoZakki | 19970430 Mt. Kobushigatake, ©KageYama.ページトップに戻る