例によってクルマで林道を入って行く。この辺りはすさまじいほどに藤の花が満開で全く見事である。5km弱の石ころだらけの狭い道を行けばその終点が登山口の駐車場となっている。すでに乗用車が5台にバス(!)が1台。結構人気のある山らしい。身支度とストレッチを行ってからいざ出発(8:50)。おや、登山ポストもあるぞ。
小沢を渡り山腹を巻いていくと眼下に白糸の滝を見ることができる。階段を下りれば滝の下に出られるようだがこれは後にしよう。滝の上部の沢を渡るとやがて尾根を巻くところで女神山尾根コースの取っ付きが現れる。3つ、4つの立札があるので見損なうことは無いだろう。爺滝の標識はその向こうでこちらは県境コースとなる。
狭い尾根はなかなかきつい上りだが手を使わねばならない所は全くない。体が慣れれば大丈夫だ。木にはカルタのような川柳のようなものが書かれた板が括り付けられており、読みながら歩くのも楽しい。辺りは一面ブナの林で登るに従い幹の太い個体が増えてくるようだ。どんな理由があるのだろう。しかしセミがうるさい。カウベルの音が蝉時雨にかき消されてしまう。小さな小さな沢ではカエルの声。さらに木からは長さ1cmくらいの小さなシャクトリ虫がムニョムニョうごめきながらぶら下がっていて歩く度にぶつかるしまつ。生き物がたくさんいるのだ。
県境コースとの分岐には約1時間で到着(9:53)。下草にシダが目立つ。葛折れの道を登りきると分岐があり、右に行けばすぐに山頂だ(10:13)。南から東にかけて伐採されており山が見える。そう、山が見えるのだ。低い山が(早池峰は気づかなかった)。焼石岳連峰は木が邪魔でよく見えないし、面白くない。座る気にもならずに引き返し、先ほどの分岐を左にとる。
少し下れば視界が開け、南西から北東の方向まで180度の展望が望める。こっちはすばらしい景色だ。まずは北に高山のように木の生えないお隣の真昼岳、その向こうで雪を残すのは和賀岳か。そのまた向こうは岩手山らしい。正面の小山の向こうには水田に覆われた豊かな横手盆地が広がる。さらに左手はるか奥には斑に雪をかぶった鳥海山が見える。埃っぽくて陽射しを遮る物がないが、ここで早めの昼飯にしよう。今日はパスタ。
すぐにひと組、ふた組と到着する人が増えてくる。皆手に細いタケノコのような山菜を手にしている。こちらの地方ではこれが当たり前のようだ。
11:30に山頂を出発。結局20人以上のハイカーが登っていた様子。これも驚き(あの狭い駐車場はどうなっているのだろう……)。
下りは県境コースを採る。山頂の灌木の間から僅かに見えた沼の脇を通るが畔に出られる道は無さそう。尾根道は正面に見えるピークを巻き緩やかに下る。下り道になれば視界いっぱいに新緑が入ってくる。空気が緑色に染まってしまったのではないかとさえ思え、思わず足元の枯れ葉でそうでないことを確認してしまう。
沢まで降りると山は終わり。一見の価値ありと書き加えられた道標に従い、岩清水と命名されている小滝を見ながら「降る滝」というちょっと変わった名前の滝を目指す。道は三方を崖で遮られた滝の真下まで続いており、見上げる滝からは水が降ってくる。確かにすばらしい。
降る滝を後にして女神霊泉(飲めるように樋が設けられてあるが水が来ていない)の脇を抜けて白糸の滝へ向かう。簾状に落ちる水は確かに白糸。降る滝の水量と勘定が合わないと思ったらこれは別系の沢であった。この滝の裏手にひとつの滝が隠れていて沢を少し歩けば力強く落ちる名もなき滝が見られる。
駐車場にはクルマがたくさん。手前の道にまで溢れていた。