登録商標の使用を止められるか?(ジュサブロー事件)

まるで、商標法と他法の法域の交錯する部分での論点そのもの、そんな事件が起こったようです。

まずは、報道の記録から。
http://www.mainichi.co.jp/news/selection/archive/200212/21/20021221k0000m040120000c.html
http://www.nikkei.co.jp/news/shakai/20021220AT3K2004720122002.html
http://www.yomiuri.co.jp/04/20021220i412.htm
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20021220-00000680-jij-soci
http://www.kyoto-np.co.jp/news/flash/2002dec/20/CN2002122001000272B2Z10.html
http://flash24.kyodo.co.jp/?MID=GIF&PG=STORY&NGID=soci&NWID=2002122001000272

知的財産的には何が問題なのか、を簡単に解説します。
 特許等の工業所有権は、その性質は「排他権」(「まねを止める」権利)であることを基本として論理が構成されています。 つまり「使用権」(「使用を確保する」権利)としては構成されてはいません。 しかし、これには例外があって、商標権は「排他権」と「使用権」の両方の性質を持つことになっています(工業所有権法逐条解説の商標法第25条解説)。 従って商標権に係る商標(登録商標)は、たとえ他人の商標権に抵触している場合であっても使用は自由、ということになります。 それどころか、その登録商標を使わなかったときには、商標登録が取り消されることにもなりますので((商標法50条)、結局は「使用を強制されている制度」ということになるかと思います。
 それでは、これを一歩進めて、「登録商標を使用する自由」が他法の「差止」と抵触した場合にどのようなことになるのか、ということは?
 これが問題になります。
 まず、特許権・実用新案権・意匠権との関係については、出願日の前後を基準として使用の可否の判断がされます(商標法29条等)。
 次に、不正競争防止法では、昭和五年法(旧法)第六条には「工業所有権の行使の適用除外」が規定されていましたが、平成五年改正でこの条項は削除されました。 従って「登録商標の使用は、不正競争防止法の適用による差止を受け得るか?」という論点が発生するのですが、解釈としては「商標権の行使(登録商標の使用)の適用除外が平成五年改正で削除された以上、反対解釈としてこれは不正競争防止法の適用を受け得る。」ということにはなります。 しかし、これもはっきりとしたことは言えないらしいです。 弁理士会の講習会で、この質問が出たときに、講師の弁護士は「解釈」を述べるに止まったのですが、このことは、これについては教科書的な回答は未だ得られていない、ということの傍証になるかと思います。

 それでは、他の権利との抵触関係は? という疑問になると、上記の不正競争防止法lのような、解釈の足がかりとなる法改正でも無い限り、論点そのものになってしまうと思われます。

 そして、このジュサブロー事件は、まさにその事件なのです。 要するに、人形作家の辻村寿三郎氏が着物のブランドとしての「ジュサブロー」の商標権者(着物メーカ。 しかも昔、辻村氏が商標権の取得について、これを許したという経緯があるらしい。 だるぺん的にいえば「そんなおっかないこと、良く許す気になるなぁ。」という感じですが)に対して「パブリシティー権」(これは、最高裁HPの知的財産判決DBに入っているのだが、特許権・著作権等の伝統的な知的財産権の一種ではない。 むしろ人格権に近いものと考えられているようであるが、その解釈に限られるか否かはまだ確定している訳ではない筈である)、の侵害の救済を求めている事案のようです。

 さてと、そのような目で見ると、この案件、今後の進展が注目される、というあたりですね。 これは東京地裁に提訴されたらしいですが、知的財産専門部に行くのでしょうか、ここならば、審理が早いのですが。

03/01/13加筆
 最近、ピーターラビットの事件で、外国の版権管理者が、日本の絵本業者に対して(商標権者でもある)、不正競争防止法に基づく使用差止めと商標権移転を請求し、被告が「商標権者であるから使用をすることはできる」と抗弁したものの判断がされた。 結論はちょっと複雑で、要するに、
「ピーターラビットが著名商標であるから、ライセンスがされなければ、商標法4条1項7号によって被告は商標権を取得することはできなかったはずであ(註:現在ならば19号(外国商標の不正使用)だが、同号規定前に権利取得しているので、そのころの法適用を考えると7号(公序良俗違反)になる)。 だから原告が承諾を与えていない状態では、当然にこの抗弁は許されない。」とするものである。
 しかし、原告の商標権移転請求は棄却されているので(これは、契約書のワーディングミスのように思える。)、結局、この商標権に係る指定商品について、不正競争防止法に基づく差止請求権と商標権に基づくものがぶつかっていて、誰も使用をすることができない、という事態になっている。この事態は、不使用取消審判(商標法50条)を請求することができる、使用中止の後3年経過後までは継続することになるはずである。

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