ドメインネーム移転の裁定が覆った?(MP3事件)(02/10/18・02/12/27日加筆)
◆H14. 7.15 東京地裁 平成13(ワ)12318 不正競争 民事訴訟事件

12月27日加筆
 本件については、、本当に裁定が覆ったらしい。 要するに、平成13年不正競争防止法改正において、法2条1項に12号が追加され、ドメインネーム移転の裁定に不服があるときは、裁判所に本号に該当するか否かの判断を求める、ということになった。 従って、本判決は裁定が覆った最初の事件となったということになる。
 従って、下記の記載の中で、 「この訴訟は続審ではないから(これが一つのキーポイント)、「裁定を覆した」「逆転した」わけでもなく、「移転を認めていない」わけでも、「使用を認めている」わけでもなく、」、「従って、この他に担当の弁護士が何も手を打っていなかったとしたら、上記の紛争所処理方針第4条k項には「裁定後10日以内の出訴」が裁定実施見送りの要件になっているので、このドメインネームは移転されてしまうのではないのでしょうか?」は、間違っている。 これについては、このページをご覧の方々には深くお詫び致します。 しかし、「当然ながら、日経のように、「MP3.CO.JPは登録者のモノ」なんて言っているわけではない。」等は正しいのだと今でも思っている。 なお、
(1) 本件は、知財関係の弁護士の間では「裁定はおかしいのでは?」という話がされていたらしい。 その理由は「MP3は、データフォーマットの名称として既に普通名詞化しているので、それについて識別力の発揮を認めて移転をさせるのはやりすぎ。」ということになる。 このあたりは、弁理士会の研修で、講師の弁護士が話していた。 要するに「本件ドメイン名はが発揮する識別力は、先願主義をひっくり返すほどのものではない」とされていたようである。
(2) それにもかかわらず、同じ研修で、「本件のようなことがあっても、ドメインネーム移転は、まずは仲裁センターに持ち込むべき」であるとされていた。 即ち、ドメインネームが債権的な使用権である以上、その移転は裁判所が判断できるものではないため(仲裁センターの裁定ならば、移転まで行く)」ということである。
(3) だるぺん、未だに「不正競争防止法2条1項12号」の要件と、「JPNIC紛争処理方針」の移転の要件とは異なっていると考えている。
というあたりでしょう。 本件は、「不正競争防止法2条1項12号」に対する不勉強の自戒の意味も込めて、掲載当初のオリジナルの記載を残しておきます。

--------------------------ここからオリジナル--------------------------


 この事件、世間では、「裁判所が仲裁センタの判断を覆した」という事になっているようですが、だるぺん思うに「そんなことは言っていない」ということであって、それが本サイトを立ち上げる動機にもなっていました。
 でも、古い事件なので、どこで取り上げようかな、と思っていたら、最近、アスキーがこれに言及してくれました。

http://ascii24.com/news/reading/causebooks/2002/10/22/639396-000.html

この記事の後半では、MP3事件を持ち出して、「仲裁センターが無能」とまで言ってますので、これはタイミング到来、ということで、だるぺんのみてある記第一弾掲載することとします。

まず報道の記録を追ってみます。

http://www.asahi.com/tech/asahinews/K2002071503771.html(10/27:記事が削除された模様)
http://www.mainichi.co.jp/news/selection/archive/200207/15/20020716k0000m040078001c.html
http://www.yomiuri.co.jp/04/20020715ic54.htm(10/27:記事が削除された模様)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20020715-00000082-jij-soci(10/27:記事が削除された模様)
http://itpro.nikkeibp.co.jp/free/NC/NEWS/20020716/4/

 順不同ですが、比較的に穏健なのは朝日(でも「登録は正当との判決を言い渡した」なんて言ってる)、
 過激なのは(相変わらず)日経(日経は以前にも「審査結果の相互承認」「頒布権が消尽した」の間違い報道もある。正しくは、「先行技術調査結果の相互利用」「頒布権のうち譲渡する権利はその目的を達成したものとして消尽し」、日経の記者は、この差は解らないようですね)、
 毎日も「移転を認めていない」「覆された」、読売は「裁定を覆す」「使用を認める」、一番穏健なのは、Yahoo(時事)ですね。

 ところが、この判決文を読んでみるとなんてことはない、日本の業者が「不正競争防止法(不競法)上の差止請求権不存在確認訴訟」を提起して、確認された、というだけなんですね。

 だから、判断が異なった、というのは形式的な事実だから良いとして、
(適用する法が異なるから、要件の判断が異なることは当たり前、だから形式的にしか比較することはできない。)
 この判決では単に「不正競争防止法に基づいては、ドメインの使用差し止めをすることは出来ませんよ」と裁判所は言っているに過ぎないのです。

 この訴訟は続審ではないから(これが一つのキーポイント)、「裁定を覆した」「逆転した」わけでもなく、「移転を認めていない」わけでも、「使用を認めている」わけでもなく、当然ながら、日経のように、「MP3.CO.JPは登録者のモノ」なんて言っているわけではない。

 一番順当なのは松本直樹弁護士のコメントだと思います。
http://village.infoweb.ne.jp/~fwgc5697/hank-r02.htm
(ここで「mp3」で検索してください)
 要するに、「何やってんの?」という意味をオブラートに包んでいますね(^_^)。

 さて、ドメインがらみの話は、その取得等、日常茶飯事になってきたものですから、その紛争の話も目立つようになります。
 ところが、そのような話に慣れていない人が多いものだから、とんでもない話が飛び交うことになります。

 ドメインネームってどんな性格のもの、先に取得していてもなぜ取り消されるの? ということについては、これがはっきりと書いてある判決はsonybank事件でしょう。
 この判決が言っていることは、下記のことです。
(1) ドメインネームは、所有権の対象ではない(この事件では、提訴初期には、このことが原告はわかっていなかった)。
(2) ドメインネームは、JPNICに対しての、ドメインネームを使用する債権的権利である
(3) 一定の事由があれば、JPNICがこの使用権を取り消すことについて、原告は同意しているし、
また、その手続についても同意している(最初の契約にこの条項が入っている)。
(4) 裁定の手続を裁判所で判断したが、問題はない。
 ここでわかることは、上記の(1)〜(3)は、事案に関わらず、どの案件でも共通する判断であり、sonybank事件特有の事情は、(4)にすぎない、ということです。

MP3事件について、アスキーの記事がおかしいところは、
(1) ドメインネーム移転の話と、不競法に基づく使用差し止めの話をごっちゃにしている。
 ドメインネーム移転と不競法適用では、過去の判決例に基づく法令等の適用の条件は当然に異なるはずであり、(どうも、これが、法律と縁のない一般人には違和感があるらしいのですが、一番大げさに言えば、
「負けて金を取られる」ということにしても、私人の間の紛争解決を目的とする民法に則って、権利侵害は不法行為だから、金返せ、ということと、基本的人権等を制限してでも秩序の維持を図ることを目的とする刑法に則って、特許権侵害は犯罪だから、罰金を科す、というのでは、法令適用の要件が違ってきて(特にみなし規定等)当然でしょう。例えば著作権の侵害にが争われたファービー事件も、これは刑事事件という舞台であるので、仙台高裁の判決は通常の民事事件から見ると、非常に権利者側不利に見える狭い厳しい認定(要するに、著作権は大量生産品を保護しない、という認定)になっていますが、これはこの例として良い筈です。
 上述のように、その解釈・要件を備えているか否か(具備不備)については、一致しないことは、当然であるのに、それがわかっていない書き方になっている、というあたりでしょう。

 このほかにも、goo事件の報道も含めて考えるてみると下記の点に問題がある様に思えます。
(2)  先願主義を重視しすぎている。
 たぶん、どこかで、「先願主義が知的財産法では基礎的な概念となる。」と聞きつけたのでしょうね。
 これは、形式的には正しいのですが、しかし、誤解しやすいのは、同じ知的所有権と言っても特許・実用新案・意匠については、先願主義という「同じものなら誰に権利をあげるか?」というルールと、実体的登録要件(権利を与えられる内容か?)のルールが、「早い者勝ち」ということで、ある意味で一致しているのですが(これが、「創作保護の法目的」につながります。)
商標については、法目的が「競業秩序の保護」ということになるので、「公益的に問題があったら取り消してもいい」という法体系になっていますし(商標の公益性の判断は、かなり厳しいのですが、しかし、「品質の誤認又は役務の質の誤認」(商標法第4条1項16号)について、後発的に無効にすることができる(同法46条1項5号))、当然ながら、特許等では重要な登録要件としての「新規性」等は、実は求められていないんですね(商標法第3条・4条)。 だから、先願主義と言っても、商標の場合は単に「一商標一権利の交通整理」の意味でしかないし、また、たとえ過誤登録があったとしても、使用をすることはできるという法体系になっています(工業所有権法逐条解説・商標法第25条解説)。
 即ち、知的財産権と言っても、先願主義的価値観は、競業秩序保護法(即ち公益的観点が問題となるもの)については弱くなる、とラフに言っても良いのではないかと思います。 そして、ドメインネーム移転裁定の要件は、他人の登録商標等との混同を考慮していることから、明らかに「競業秩序保護法」的な判断基準になっていると考えられます。 だから、
「先願主義が全てにおいて適用されるとは限らない、と決めつけた」
「先願主義が全くおろそかになっている」
と言っても、「それがどうしたの?先願主義が全てではないよ。」と返されるのが落ちではないでしょうか。
(2) 大企業優先であるとの被害者意識が強すぎる。
  「後から大企業が類似のドメインを取得して有名にした場合に、ドメインが取り上げられる」と記事では言っていますが、そんなことはない、地裁判決を見ればわかるように、要するに、「大企業ドメインの著名性」というのは、一要件にすぎないのです。
 ドメイン移転については、その要件が三要件存在するというのは、紛争処理方針を見ても明かです。
(3) 提訴により移転が停止しているケースが3件ある。
 これも、紛争処理方針に書いてありますね(第4条k項)
それにしても裁定で4月→地裁14月→高裁6月
なんてのは、裁判所でいきなりやり始めることを考えると、同じぐらいか、早いほうではないのかなぁ、だるぺんのような特許屋の感覚で行くとそんなもんです。
 また、これをお互いに了承しているのですから、(また、記事にあるようにNTT側も「失敗した」と思っているのなら)移転を求めた側が文句を言う筋合いはないのでは。 だいたい、移転を求める側は、後出しの著名商標の側なのだから、その手続等は、移転を求められた側(どちらかというと著名ではない側になるはず)に有利になっても仕方がないでしょう。

 こんなところでしょうか。
 余談ながら、MP3事件は、不競法に基づく使用差し止め請求権の不存在確認訴訟なので、当然ながら、「裁定においてパネルは適切に判断を行ったか否か」については、なんら判断をしていないのです。
 従って、この他に担当の弁護士が何も手を打っていなかったとしたら、上記の紛争所処理方針第4条k項には「裁定後10日以内の出訴」が裁定実施見送りの要件になっているので、このドメインネームは移転されてしまうのではないのでしょうか?
 このあたり、だるぺんも良くわからないあたりなのですが。02/10/28現在では、「MP3.CO.JP」は使用可能なようですが、しかし、7月17日から更新が止まっているようにも見えます。
 どうなんでしょうね・・・・

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