例のドクター中松の商標権の事件である。
判決文
http://courtdomino2.courts.go.jp/chizai.nsf/4809e19625b8dc4849256795007ec128/a577953296c19ebd49256dc20005251a?OpenDocument
パテントサロンにはこの報道記事に対するたくさんのリンクがあるのだが、どの記事も、上記判決文を確認して、制度を理解して書かれた記事とはとても思えない。
この登録取消の制度を一応説明しておくと、商標権者が一定期間、「登録商標」を「指定商品」に「商標として使用(識別力を奏する状態で使用する」こと等を条件に、第三者が商標権消滅を請求できる審判制度が存在する(商標法第50条)。 そして本件は、当該商標がこれに該当するとしてJOCが審判請求を行った事件である。 そして、請求が特許庁では認容されて取消審決が出されたが、これを不服として、ドクター中松側が審決取消訴訟を提訴された、ということになる。
さて、これらのことだけから、判決文を読まずに考えてみても、これは単に特許庁でされた取消審決が審決取消訴訟で取消されただけのこと(この(正しい)書き方は言葉が重複して異様な感があるが)。 要するに、審決取消訴訟で為される勝訴判決は、普通の控訴審で言うところの「差戻判決」であるから、審判段階での審理不備が判決で指摘され、審決が取り消され、差し戻されただけである。 そんなわけで、それだけ考えても、判決で「権利が有効」と言っているわけがないだろうことがわかる。
その上、判決を読むと(判決の「裁判所の判断」のところだけを読んで頂ければ十分。 この手のものとしては例外的に短いから苦労ではないと思う。 そしてこの程度のものも確認しない新聞記者の取材姿勢にも、ちょっと問題があるのでは。)、本判決では、要するに、会報の「指定商品該当性」のみについて、それを否定した審決を取り消しただけであって、そこでは「登録商標を使用している」とは認定していない。 従ってこれから先にある特許庁の審判で、「商標該当性」「使用該当性」が問題になることは明白である。
これに加えれば判決文の最後のあたりに「審決の結論は,仮に最終的には正しいと認められるべきものであるとしても,審決が説示した理由からは,導き出すことができない」としてある事からも、問題が未だ残っているだろうと裁判所が考えていることもこれまた明白である。
報道内容は、どれもこれもお粗末であり、詳論するつもりはないので、ざっと把握可能であった問題点だけを以下指摘することとする。
毎日新聞
http://www.mainichi.co.jp/news/flash/shakai/20031017k0000m040096000c.html
「中松氏の商標権が有効」になるわけじゃないし、新たな訴訟もまだ必要なし。
朝日新聞
http://www.asahi.com/national/update/1016/032.html
「山下和明裁判長は、同氏の商標を有効と判断」したんじゃないし、
「同氏が主宰する会の会報に「がんばれ日本」の文字が使用されていたとし」と言うことは認定したけれど、
会報の指定商品該当性について「審決の判断は論理だってはいない」としただけ。
産経新聞
http://www.sankei.co.jp/news/031016/1016sha051.htm
そもそも「「がんばれ日本」はドクター中松さんの商標登録」という給付判決がされるわけがないし、
記事の「「がんばれ日本」という文字を含む商標権
」という記載と矛盾している。 「含む商標」は一般的には「登録商標」ではない。
読売新聞
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20031016i505.htm
「「がんばれ日本」はドクター・中松の登録商標」と判決は言っていないし、
「特許庁に「がんばれ日本(にっぽん)」の商標登録をしていた」のではないし(登録商標はこれではない)、
「東京高裁は16日、中松さんの商標登録を有効と認める判決」ではないし、
「山下和明裁判長は「この商標は、(津田中略)、使用実態があり有効」と指摘」していない。
時事通信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20031016-00000119-jij-soci
「「がんばれ日本」は中松氏の商標=印刷分野」とは言っていないし、(^^;
「中松義郎氏が登録した「がんばれ日本」の商標」ではないし(登録商標はこれではない)、
「中松氏の印刷物の分野での商標登録を有効とした。」のではないし、
「受理されなかった。」わけがない(たぶん、拒絶査定でしょう)。
本事件、和解がなければあと二転三転が有ると判断するのが筋が良さそうなのだが、そのときには、また「制度がわかりづらい・摩訶不思議」と言い出すのだろうか。 このようになったとしたら、なにやらマッチポンプにも思えるのだが。
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