パチスロ機に関するアルゼVSサミーの、日本での過去最高額である約70億円のの損害賠償が認められた特許権侵害事件がある。 しかし、この特許について、特許庁で「特許は無効」との特許無効審判での決定(審決)が出た。 それについての記事である。 記事では「ねじれ」と書いている。 要するに判断が食い違っている、ということであろう。
この記事、だるぺんに言わせれば「何が問題なの?」という感じである。 要するに、わかっていないんだなぁ・・・・
ここで、ちょっと特許を知っている人ならば、「特許庁では特許の有効性を判断し、裁判所では特許発明の実施を判断するのだから、判断する対象が違うのでねじれではない」と言うであろう。 パテントサロン03年1月7日コメントもそうなっている。でも、だるぺんの考える理由はこれではない。 そもそも、この理由は、事実認識が間違っていると思う。
本事件では、東京地裁は「特許処分に明白な無効理由が存在するか?」について、これを判断している。 即ち、「発明が特許になるか特許にならないか・即ち特許の有効性」を判断をしている。 これは判決文中、「裁判所の判断」における、「3 争点3(本件特許権に無効事由があり,本訴請求は権利濫用に当たるか)について」を読めばおわかりいただけると思う。
昔は、パテントサロンで書かれるよう、裁判所では「発明の実施」を判断して、特許の有効性を判断しなかった。 しかし、いわゆるキルビー最高裁判決(平成12年4月11日付)で、「明白な無効理由」が存在するか否かを判断することができるようになったという経緯がある。
従って、現在の判決については、「特許の有効性」について、「その疑義を被告が申し立て、証明すれば」(これが弁論主義。なお、特許権者は特許は有効であると判断しているので、「有効性」に対する疑義を申し立てることは、まずあり得ないであろう) 判断をすることになる。 全ての判決が「有効性を判断していない」と考えるのは、現在では誤りなのである。
それでは、だるぺん、どのような理由を考えているか?
この事件の経過は
侵害訴訟→権利濫用認められず侵害
その後、
特許無効審判で特許庁の職権審理
(特許庁が、当事者が申し立てない理由も審理すること。 ここが裁判所の審理とと大きく違う。 弁論主義に従って遂行される裁判所の審理では、当事者が申し立てないことは判断をしない)
の結果として、特許庁が調査して新証拠が出てきた(これが重要)。
という流れに、外見上はなっている。
#松本直樹弁護士がサミーのプレスリリースをPDFで取ってあるので、そのリンクを記載する。
http://village.infoweb.ne.jp/~fwgc5697/sum-re2.pdf
# ついでに、1月7日に出されたサミーのプレスリリース
http://village.infoweb.ne.jp/~fwgc5697/sam03_01_07irj.pdf
だるぺんの考える理由は、
侵害訴訟の場では、(先ほども述べた)弁論主義によって進行するので、後に特許庁から出てきた新証拠については、サミーからの主張はないのが当然。 従って、裁判所は、主張がない証拠については当然に判断をしない。
だから、先に出た裁判所の判断と、新証拠に基づく後の特許庁の判断は、職権審理が挟まっていたら食い違うことがあって当然、ということになる(この事件についての世間での報道では、「証拠が異なっている」ことについては、配慮されていないように感じる)。
このあたり、訴訟慣れしている弁理士なら簡単に判断をすることが出来るのだが、訴訟に慣れていない弁理士(弁論主義がわかっていない)、特許手続に慣れていない弁護士(職権審理がわかっていない)ならば、間違えてしまう可能性は存すると考える次第である。
今回の事件について、正しいところは、
「外見上は「地裁判決と、特許庁の判断が食い違う」現象が生じているとはいえるが、しかし、地裁判決と特許庁の判断は、異なる証拠に基づいているものであり、「同じ証拠に対して判断が食い違う」現象にはならない。」
というあたりではないかと考える。
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