詳細・堅いレジュメはこちら
- 事件の概要
タピオカという食べ物をご存じだろうか? ココナッツミルクに入れてるデザートがよく知られている。しかし、これが冷麺の中に入っていることは、だるぺんもこの判決を読んで初めて知った。この事件は、冷麺を即席麺として作る際にタピオカを配合すること(以下「タピオカ冷麺」と略記します。)に関するある発明について特許化が争われた事件である。
- 用途発明とは
特許を受けることができる発明の一典型として、「用途発明」というものがある。その定義は「物の一属性に基づきそのものをある特定の用途に用いることについての発明」ということになる。従って、物自体が公知であっても、その物の用途に特許が成立することがある。本願発明は、タピオカを即席冷麺の素材に配合するという、用途発明の記載形式を取っていた。
- 何が問題となる事実なのか?
問題となる特許出願には、タピオカ冷麺に関する公開前の先願が存在していた。この場合、後願の本願発明は先願に記載されている発明と同一ならば、特許を受けることができないことになる(特許法第29条の2)。そして、先願に記載されているのは、まさにタピオカ冷麺そのものであった。従って、簡単に考えると、後願は特許をとることはできないことになる。
ところが、先願明細書に記載されてる記載されている実施例に従ってタピオカ冷麺を調理してみると、タピオカが入っていない冷麺よりも味が悪かったのだ(このあたりは記載を簡単にしてある。また、この「味が悪かった」ことの立証自体も裁判では揉めていたことが判決文に記載されている)。
- 何が争われたのか?
上記の特許法第29条の2の適用については、先願の発明は「完成」していることを要するとされる。そして、ここで問題となったのは、タピオカが入っていない冷麺の改悪版であるところの、先願に記載されている「タピオカ冷麺」の発明は用途発明として完成していたのか?、という点であった。
これに対して、特許庁は「喫食可能なタピオカ冷麺が記載されているから、発明は用途発明として完成している」と主張し、出願人側は「味の悪いタピオカ冷麺の先願発明は、優れた効果を発揮しない以上は、用途発明として完成していない。」と論じた。
- 裁判所は、出願人側に理があるとした
従来技術の存在、それも十分に喫食可能であることは周知である以上、単なる製造可能性だけでは従来技術以下ということになる。従って、先願明細書の記載において、タピオカ澱粉が即席冷凍麺類用穀粉という新たな用途への使用に適することは未だ見いだされていないということになり、先願発明が、用途発明として完成しているということはできない。
- 何が興味深いのか?
企業における知的財産実務の中で、権利取得活動に関するものは、大別すると、有効な権利を取得する活動と、他社の権利取得を阻む活動との二つの側面がある。従って、知財屋は、自社・他社の明細書の記載を、その二点・即ち「重要な技術が権利化されるか?」「後願の権利化をどれぐらい排除する力を持っているか?」という点から見ている。
そのような実務上で、自らの権利取得のための審査の結果として、先願明細書に存在する効果を奏し得ない実施例の記載を基に後願を排除する拒絶理由に出会うことは、決して珍しいことではないのである。それは、だいたい同レベルの競合各社が開発競争をしている状況を考えていただければ、これは当たり前のことでもある。
ここで、本判決において、用途発明としての先願発明が後願排除効を有するためには、形式的な記載があることの他に、その用途に対して優れた効果を奏することが実質的な要件ととして課されることが示されたこととなる。これは、先願発明の認定という権利化戦術的な観点とともに、「適切な開示」という記載要件上の事項についても一石を投じたものとなっているように考えられるのである。
但し、本件は特許法第29条の2の拡大先後願(発明の同一)に関する事案であり、同法第29条2項(進歩性)の判断にまで本判決の射程が及ぶか否かについては、別の問題であることは注意しなければならない。
詳細・堅いレジュメはこちら
だるぺん行きメールはこちら
メールはネタとして公開することがあります。
-Topにもどる-