ガタン・・・・ガタン・・・・・・ 電車のレールの奏でる一定の旋律に、男の意識はだんだん夢と現実のハザマに誘われていく。 ああ、きょうもめんどうくさいなぁ・・・・・ 男は、顎の下に一本だけ長く伸びた無精ヒゲを指で抜こうとしていたが、どうしても脂で滑って上手く抜けない。 ・・・・・・どうでもいいかぁ・・・・・・ 男は、ヒゲを抜くのを諦め、目の前の光景を、ただ呆と眺めていた。 ・・・・・・・おっぱい。 男は、真正面に立っている少女の胸を眺めていた。 ・・・・・・・触りたいけど・・・・触ると、多分やばいことになるよなぁ・・・・・・ やばいことになると、面倒だよなぁ・・・・・・ でも、面倒なことになったら、なんで困るんだっけ・・・・・・あれ?電車に乗って、何しにいくんだっけ・・・・・? ・・・・・・・あーーーーーー思い出せないような用事ならどうでもいいよなぁ・・・・・・・ これは夢だっけ、現実だっけ・・・・・・多分6割がた、夢だよなぁ・・・・・・ 6割がた、夢なら現実じゃないよなぁ・・・・・・・・ そもそもこれは夢なんだから、何やってもいいんじゃないのかなぁ・・・・・・ 男は、気づかぬままに、眼前の果実に、無意識に手を伸ばしていた。 ・・・・・・・・・・やわら・・・・かい。 男のすべての感覚は、手の指先に集約されていた。 ・・・・・・・いい、匂いだ。 気がつけば、いつの間にか、男の顔までもが、少女の胸の中にあった。 遥か遠くに在ったかに大きく存在したかに見えた楽園は、実はすぐ近くに在った小さなものだった。 男の頬に伝播する、少女の心臓の鼓動は、確かにそこに存在する。 どれくらいの時間が過ぎたことだろう。 それは僅か数秒のことであったのか、一瞬の出来事であったのか。 「──────────!!!!」 少女の金切り声が叫び、平手打ちが強かに男の顔に響き、男の視界は空中を回転しながら彷徨った。 ・・・・・誰でもよかったんだっ!! 男は、屈強な鉄道公安員に両肩を押さえられて、泣きながら自暴自棄に、そう叫んだ。