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社会福祉法人 鉄道身障者福祉協会
第44回リハビリテーション懸賞作品

第一位入選作品

「私も働くぞ、プロジェクト」
近藤 豊彦
(社会福祉法人 名古屋ライトハウス光和寮 寮長)

  障害者就労の「チャンス」到来

 何かの理由で障害者になってしまったら、一生、社会や他人の庇護を受けながら生きていかないといけないのか。自分の能力を活かして自分らしく尊厳をもって生きていくことはできないのか。周りの人に、ありがとう、ありがとうと言いながら生きていかないといけないのか。障害のある人は、心の中では、いつもこのように叫んでいるのではないか。
 「障害者の雇用促進」は日本国の緊急の課題である。障害者雇用率一・八%はまだまだこれから。行政の入札においても、障害者を雇用している会社を有利にしている。小さな地方自治体は、柔軟で、機動的に動く、など障害者就労の社会的な環境は整っている。今こそチャンス到来と認識している。

 一、「福祉的就労」は差別用語

 社会就労センターの施設長をお引き受けした日の最初の挨拶で、私は、二年以内に全ての人と労働契約を結ぶと宣言しました。私なりの確信があってそのように宣言しました。民間に比べて福祉の現場では、授産の仕事を進めるにあたり、民間に比べていくつかの有利性がある。たとえば、法人税等の利益にかかる税金がない。職員の人件費も利用者十名あたり一人分は、授産事業の経費で賄わなくともよい。さらに事業の内容によっては、設備費等各種財団の補助を得ることもできる。最近でこそ工場等の構築物の補助金は少なくなったが、空き工場や空き店舗の改修費の補助は期待できる。団塊の世代の戦力もNPOや福祉に目が向いている。福祉施設の職員の処遇も民間と比べ遜色なく、優秀な人材が集まっている。これらの環境をマネジメントすれば必ず十万円の工賃は払える。福祉的就労などという表現をこの世からなくしたい。

 二、「内職仕事」では十万円は払えない

 授産施設の職員の職種として、生活指導員と職業指導員がある。私はあなた達が自分で日常生活ができるように指導しますよ、私はあなた達がひとりで仕事ができるように指導しますよ、という職種である。確かにそういう指導が一時的に必要な障害者もおられる。授産施設に、障害者とともに働くという職種がなぜないのか。私見ている人、あなた働く人という固定観念があり、その結果、障害者でできる内職の延長線の仕事を毎日毎日繰り返すことになる。健常の人でも内職では十万円は難しいのに、身体の不自由な人では一ヶ月働いても一万円、二万円程度とならざるを得ない。職員の仕事の本質は、施設長が最終責任者となって、ともに働く障害者に、何が何でも十万円の賃金を払えるようにすることにあると考える。特に施設長に期待されることは、十万円を払う事業の設計と運営の最終責任者である、とまず決意することである。

 三、「ビジネスモデル」の構築が必要

 十万円の工賃を払うには、払えるビジネスモデルが必要である。
 モデルの一つは、設備投資をして自社製品を作ることである。新製品の開発の力は福祉施設にはないので、特許製品の下請工場として運営すると事業リスクが少ない。ここまでは民間企業と変らない。福祉施設でやれるためには財団等の設備の補助金が前提となる。減価償却費と税金負担、さらに一部職員の給与が支援費で賄えることを加味すれば、民間に十分対抗できるモデルが作れる。
 第二のモデルは、民間工場へ職員とともに派遣して、一つのラインを丸ごと請負うことである。民間の工場は健常者を前提に組まれており、そのラインに障害者が混じって働くことは難しい。健常者のラインより少しスピードをおさえたラインをつくり、自分たちのスピードで仕事をする。委託事業であり、企業にとっては関連人件費負担が発生しない。
 第三のモデルは、産学共同事業へのパートナーとしての参加や、障害者の教育・訓練、さらにバリアフリー化の検証等ソフト事業の展開である。総務省や経済産業省、およびその外郭団体では毎年数々の助成事業がある。みなコンペであり確定的な就労ではないが、採択された場合には大きな予算がつき、その成果で新しい事業を展開することもできる。厚生労働省以外にも我々を支援してくれる助成金事業はたくさんある。こまめに応募することによって職員の成長も期待できる。

 四、障害者の就労の「新ビジネスプラン」

 具体的な新ビジネスプランとして進行中または検討中の内容について概説する。

  1 「パンの缶詰」工場
 東海地震備蓄食料「パンの缶詰」工場を、この四月にオープンした。乾パンは固くて高齢者は食べられない。干し飯は水がいる。緊急物資が配給されるまでの四十八時間の食糧としてこれからのニーズがあると判断した。パンの缶詰工場は、民間工場が一つ、北海道に福祉施設で製造しているところの二つで、いずれも倍々の成長産業である。パンの缶詰はいくつかの特許があり、大手の製パン業者はマーケットも小さく、進出はしない。名古屋市内の空き店舗を賃借し、改装費の一部を日本財団から支援をいただき開業できた。投資額は四千万円、六ヶ月の準備期間でオープンできた。障害のある人が働けるように生産設備は半自動化したため、受注に生産が追いつかない状況である。投資額を三年間で回収することと、十五人の雇用創設がこの事業の目標であるが、予定より早く実現できるとホッとしている。

  2 「光触媒加工」工場
 光触媒の加工工場開設にむけて準備している。この業界は特許でがんじがらめになっている。三十社位がしのぎを削っている。どこの光触媒の下請けになるかが難しい。特許の数や導入先で判断した。十五坪のスペースと一千万円程度の設備で工場はできる。すでに長野県で福祉施設が開業していることも心強い。当面五名程度の雇用創設であるが、光触媒製品の販売も併設すれば、さらに雇用を増やすことができると考えている。

  3 「水稲用育苗マット」工場
 これも特許製品である。特許を持つ会社と福祉施設が一箇所の二つで、今後大きく成長が見込まれる製品である。問題もある。敷地が三百坪の工場が必要で、設備費も五千万円程度必要である。補助金頼みの事業となる。
 以上三つの事業は、前述の第一のモデルの事業で、いずれも事業としてのリスクとそれなりの資金が必要である。特許を持つ会社との信頼関係だけでなく、経営者の福祉事業への深い理解がなければ実現できない。

  4 洗剤メーカーの「注入」ライン
 洗剤メーカーの注入ラインを一ラインごと作業受託の事業を進めている。何か授産でできる仕事はないかと工場を見学させていただいた。注入ラインは2系統あり、パートの職員がものすごいスピードで作業をしていた。障害のある人がこのラインに混じって仕事をすることはできないなぁと思いながらも、もう一つのラインは止まっていた。一週間のうち二日ぐらいで仕事が終わるということであった。我々でやると、四日〜五日懸かるかもしれないがラインのスピードを落とせば、やれるのではないか。実現できそうである。
 ゴムの再生工場の増設を検討している会社がある。一部のラインを障害者が働くことを前提に設計できないかと頼んでいる。福祉に大変理解のある社長で、この話も実現できそうである。
 これらの仕事は、職員とともに工場に派遣して、現地で仕事をさせてもらうというモデルである。民間会社の皆さんは、障害者の雇用には理念としては理解しているが、どのように働くのか、仕事の管理はどのようにしたらよいのか、と考えて実現していない。職員がついて仕事をしているところを見ていただければ、うちの社員でも管理できるのではないかということが分り、そのまま先方の社員として一般就労につなげることもできると考えている。

 以下は前述の第三のモデル及びその他の障害者就労の提案である。
 5 特例子会社による生ごみリサイクル
 6 行政HPのバリアフリー指導員
 7 介護高齢者用「録音図書館」
 8 リラックスサロン「気分爽快館」
 このプランも現在準備中である。本年四月に実施された障害者雇用促進法の中の「在宅就労障害者支援制度」を活用する仕組みである。盲人の主たる職業である、はり灸マッサージを開業しているひとを支援し、活性化するプランである。我が社会福祉法人が在宅就労支援団体の指定を受けて、自宅で開業しているマッサージ業の皆さんの共同治療院を運営する。個人事業主の集まりであり、我が法人との雇用契約はない。交通の便の良いところを借りて、十床程度の治療院を開き、自宅で開業しながら当番でこの治療院で仕事をしていただく。自宅とこの治療院で使えるチケットを発行して、大手企業の労働組合や健康保険組合でチケットを買っていただく。年間百万円以上協力いただいた企業には発注奨励金が支給されるという仕組みである。
 9 「福祉通販」事業
 授産施設製品の共同カタログ製作・販売とパイロット店舗の運営。

 さいごに。自立支援法は当事者にとっては厳しい項目もある。新法が目的どおりに機能する条件は、「十万円の工賃」である。

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