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  かかげられた白旗

 ゴードンはまず指に唾をまぶして、ジャクリーンのプッシーにめり込んでいるベルトをずらし、ムサ苦しい三十女の陰毛を掻きわけた。そしてクリトリスを探り当てると包皮を剥きあげ、珊瑚のような硬い芯にリングをはめつけた。きっちりと根元に装着され、亀頭が一回り巨きくなった。
 「ううっ……」ジャクリーンは仰け反り、頬をこわばらせる。一センチにも満たないような肉の突起を締め付けられるだけで身体は内蔵まで慄えあがるような痺れに見舞われ、動けなくなってしまうのは何とも情けなくて口惜しい。口惜しいがしかし抵抗のしようがないのだ。肉体の痺れはやがて脳髄までも狂わせてくる。今夜も悶々と眠れぬ夜を過ごすことになりそうだった。
 看守たちはジャクリーンを仰向けにして、手足をベルトに拘束すると拷問部屋をでていった。これからの数時間がジャクリーンの一日で唯一やすらぎの時間であったが、どっぷりと襲ってくる疲労感と腰部のたまらない疼痛感に挟み撃ちされて、レム睡眠と朦朧とした覚醒の境界を行きつ戻りつする辛い状態でウンウン唸るしかないのであった。これもまた拷問である。彼女の顔や乳ぶさの谷間は脂汗でびっしょりとなり、身体全体がピンク色に烟っている。時折、腰が切なげにくねり、逆三角形型の茂みが天井の白熱灯にきらめいた。
 それでもどうやら神のご加護で眠りのほうへ意識が流れていき、ジャクリーンは安定した寝息をたてはじめた。
 彼女が揺り起こされたのはそれから二時間もたっていなかっただろう。まだ朝ではないのは揺り起こした張本人のフィル・パーマーもさかんにあくびを繰り返していた様子からもわかる。
 「後生だからもう少し眠らせて。あと十分。十分でいいのよ……」
 ジャクリーンは緩慢に赤ら顔を振りながらいったが聞き入れてもらえなかった。
 「俺たちが眠い眼をこすって起きてきたというのに、囚人がいびき掻いてていいわけなかろうが。あん?」
 ジャクリーンは二人に抱き起こされて車椅子に乗せられた。彼女はファランガで足の裏を痛め付けられているのでほとんど歩けない状態なのだ。
 「……どこへつれていくのよ」ジャクリーンは気怠げに尋ねたが答えはない。「ああ、どこでもいいから、クリトリスのリングを早く外して頂戴……頭がおかしくなるわ」
 「それを付けてるときのビッグリップは抱き締めたいほど色っぽいぜ。もう少しそのままにしときな」
 パーマーはにべなく彼女の要求を跳ねつけた。
 ジャクリーンを乗せた車椅子は地下からエレベーターにのり、地上へとでた。廊下を進み、刑務所の中庭へ通ずる扉が開け放たれた。そこは受刑者たちが運動をする場所であって、ジャクリーンも何度か連れてこられた経験がある。今はやはり深夜であるらしく漆黒の夜空が広がり──ああ、なんという高さなんだろう!──辺りは鼻をつままれてもわからない闇が支配している。
 ジャクリーンは車椅子からおろされ、楕円のアンツーカーのトラックに囲まれた、内側の芝生に座らされた。裸の尻に芝生がひんやりと冷たい。
 闇を切り裂くように、サーチライトが彼女を照らしつけた。片手で光を遮りながら光源をみあげる。それは監視塔の一番上につけられている投火器からのライトであった。定期的に不審者を探索するために回転するサーチライトがジャクリーンの裸身を浮かび上がらせるためだけに点灯されたのだった。
 「まぶしいわ……歌でもうたえというの」とジャクリーン。
 「フン、それも悪くないが、こんな夜更けに大声をあげれば他の受刑者に迷惑だ。もっと違う楽しみ方を考えようや」とフィル・パーマー。
 「ハイハイしながらトラック十周というのはどうです」
 ゴードンがのんきな声でいった。
 「いや」と別な声がいった。「これだけの舞台が揃っているんだからオナニー・ショーがいい──」
 その声はフィルのものでもゴードンのものでもなかった。ジャクリーンはハッとして暗闇に眼を凝らした。大男のシルエットふたつの他に、小柄な影が並んでいた。しだいに眼が慣れてくると、その小男は長髪であるのがわかった。ジャクリーンの脳裏にいやな思いがよぎった。
 「歓べ。ビッグリップ。お前に面会人だぞ」
 その声に促されるように小柄な影が近寄ってきた。サーチライトの光がさっとを男の顔にかかった。それはなかなか忘れられない顔であった。
 「あなたは──」
 「覚えていてくれて嬉しいよ。ベイビー」
 長髪と髭面をしたルイス・パーマーが特徴ある含み笑いをした。ジャクリーンがクライズヒルズに足を踏みいれた直後から欝陶しい猥褻電話を繰り返し、サラの情報と引き替えにストリップを要求した変質者である。あげく部屋から彼女の下着を盗みだし、ボウガンで脅しながらレイプしようとさえしたのだ。ジャクリーンは懲らしめに彼の腕をへし折り、撃退したのだが、彼がフィル・パーマーの実の弟だと知ったのは刑務所にぶちこまれてからの話である。
 ルイスは肩にかかった頭髪を払い除ける不気味な仕草をしながら、ジャクリーンに近づいてきた。
 「どうしてあなたがここにいるのよ。部外者が入っていい場所ではないでしょう」
 ジャクリーンは芝生のうえをお尻であとずさりしながらいった。サーチライトがその輪の中心から彼女を外さないように追ってくる。暗黒の闇夜にまばゆいばかりの乳白色の女体が鮮やかだ。
 ルイスはスタスタと歩み寄り、無造作に彼女の双乳を掴んだ。あっ、とジャクリーンは叫び、反射的に男の頬を平手打ちしていた。しかし彼は平然と吊り鐘型の見事な肉丘に手のひらをかぶせ弄んでいる。
 「お前にとっては残念なことに、俺はもう部外者ではないんだよ」とルイス。
 「……どういうことよ。うっ……」
 爪の痕が残るほど、指を食い込まされてジャクリーンは歯を噛み鳴らしながら尋ねた。
 「弟はな」フィルも傍らに来ていた。「スピルマン所長のご好意によって、今日付けでクライズヒルズ刑務所の看守に雇われたのさ。エリック・ガードナーの代わりだ」
 「……」まさにジャクリーンへの嫌がらせ以外の何ものでもない仕打ちである。ジャクリーンの肉体に異常な執着を燃やしているルイス・パーマーを看守に引立てるなど、石油タンクに火のついたマッチを投げ込むようなものではないか。それが誇張でないのはたった今、揉みくちゃにされているバストをみればはっきりしている。
 「そこでだ。新任のルイス・パーマー君を迎えるにあたって、祝福の歓迎パーティを催そうというわけだな。むろん看守仲間だけでなく、これから彼に多大なお世話になる女囚も一肌脱いでもらうことになった。本人が派手なのはいやだと主張するので、代表者一名の出席に留めるってプランに落ち着いたんだが、彼と因縁浅からぬ仲のお前に白羽の矢があたったのは当然のなりゆきだよな。せいぜい、歓迎しなければいかんぞ」
 フィルとゴードンは冷たく見下ろしながら高笑いする。
 「──最初にみたときより、一回り巨きくなったんじゃないのか」ルイスは乳ぶさを揉みつづけながらいった。「そういえばあの時もこんな真夜中だったっけ。ハニー」
 そういって鼻の頭を指で弾いてくる変態男に吐き気をもよおしながら、ジャクリーンはふんと横を向いた。
 「今度は右腕をへし折られたいの。せっかく就職したんだから、身体は大事にしたほうが良くなくって。ルイス坊や」
 「生意気ぶりはちっとも変わっていないんだな。すごく嬉しいぜ」
 ルイスは乳ぶさを握っていた手を下腹へおろしていき、臍を押し込み、からかい、そしてヘアを分断している黒革のベルトに這わせていった。ジャクリーンの身体がビクンと跳ね上がった。みるみる鳥肌がたっていくのがわかる。
 「どうした。汗掻いちゃって。離婚妻にしちゃ恥じらいが敏感すぎるんじゃないか」
 ルイスの指はスリットが走っていると思われるラインをツーッと滑って、尻のほうまで潜り込み、やおらベルトを剥がしにかかった。
 「うっ」ジャクリーンは美貌を仰け反らせた。赫らんだ双乳が悲痛に喘いでいる。
 「おー、よしよし。痛かったね。お前のラピアがこんなに巨きいとは知らなかったんだ」
 ルイスはベルトを引き剥がし、すっかりかぶれて痒そうになっているその部分を撫で上げた。
 「ン……」思わず鼻が鳴ってしまう。ルイスの指の動きは、フィルやゴードンのような荒々しい武骨さはなく、嫌らしい痴漢の動きであった。
 「お前が生意気なことをいったり、反抗的な態度をとったりした場合、ここを懲らしめれば従順になると聞いてきたんだが……。どうかな」
 ルイスはジャクリーンのクリトリスを探り当て、その根元に深々と食い込んでいる去勢リングをクルリと回した。
 「ああっ、やめて!」ジャクリーンは大声をあげ、芝生の地面に上体を倒した。「そこだけは触らないで頂戴っ」
 去勢リングとはよくいったものだ。男の些細な指の運動で、ジャジャ馬の女弁護士は平伏し、涙を流して哀願のていをあらわにするのである。ルイスは面白がってリングを回しつづけ、充血し膨らんでいる肉芽の亀頭を指腹でこすった。ジャクリーンは声もでてこないほどの苦しみようで、膝をたてて開いた両脚の内腿の筋肉を痙攣させている。
 「やめてほしいのか、ハニー。どうなんだ?」
 「お、お願いだから手をどけて!」
 「それじゃ、俺の命令は何でも聞くんだな」
 「いやよっ。あなたみたいな男のいうことなんか──ああぅ……ヒッ、あーむ……」
 苦しみのたうちまわるジャクリーンだが、必死に抵抗している。
 「あんまり強情張ってると可愛いお豆ちゃんが千切れてしまうぞ」
 「ルイス。足の裏も懲らしめてやるがいい。この女、歩けないほどファランガで責められたんだ」
 兄の指摘にほほうという顔になったルイスだったが、「兄さん、俺は両手がふさがってるんだから、協力してよ」と二人に加勢を促した。
 フィルとゴードンはよしよしとばかりに、それぞれ、ジャクリーンの左右の足首を掴むと跨裂きしながら足裏を空へ向けさせた。そしてポケットからとりだした小さなブラシでくすぐるようにさすりはじめたのである。
 「うーン……」ジャクリーンは火照った顔を辛そうに振った。激しい打撃に皮が破れる寸前まで薄くなり、ぷっくりと腫れあがった足の裏なのだ。そこを柔らかいブラシとはいえ刺激されるのは痛いようなムズ痒いようなおぞましい感覚であった。ルイスも去勢リングを容赦なく操り、小便をチビリそうな苦痛を与えてくる。ジャクリーンは両手で芝生を掻き毟って卑劣な拷問に耐えようとするが、すぐに限界を思い知らされた。
 「……わ、わかったわ。いうとおりにするから、もうやめて」
 「フフフ、俺の命令を何でもきくんだね?」
 ルイスの問いかけにジャクリーンは真っ赤な顔をガクガクと頷かせた。
 「ルイス。気をつけろよ。この女、口ではあんなことをいっていても、腹の底では何を考えているか、わかったもんじゃないんだ。油断してると手ひどい目に遭うからな」
 「わかってるよ。そんなこと、俺がこのクライズヒルズで一番先に経験したんだから」
 ルイスはようやく完治した左腕をかざしてみせた。フィルは苦笑しながら、そうだったな、といった。
 「さて、それじゃ、俺の就職のお祝いにお前にはオナニーショーをリクエストするよ。三ヵ月前はすんでのところで拝むことができなかったからね。毎日、夢にまでみてきたんだからじっくり気合いを入れてやってもらわないと困る」
 ルイスはジャクリーンの頭を撫でた。
 「オナニーショー?」ジャクリーンは擦れた声で聞き返した。
 「何をすらとぼけているんだ。離婚してからずいぶんたつんだ。経験がないとはいわせないよ」
 ルイスの手がまた下腹部にのびかけたので、ジャクリーンは慌てて頷いた。
 「……ここでしろというの……」
 「そう。女の習性のすべてに熟知しなければ、一人前の看守とはいえないからねえ」
 ジャクリーンは唇を噛みながらルイスと、他の二人をみやった。三人とも薄笑いを浮かべているが、拒絶を許さない表情をしている。ジャクリーンは決断した。
 これが耐え忍ぶ最後の恥辱だ、と。
 オナニーを演じてみせ、力尽きたように白旗をかかげよう。演出効果は完璧であろう。ルイス・パーマーの投入は彼らにしても駄目押しの意味合いが色濃いプログラムなのだ。それに屈して跪けば誰も不審を抱かずに、武装解除を認めてくれるはずだ。長い闘いだったがようやくクライマックスを迎えたようである。
 ジャクリーンはもう一度頷いた。「やるわ……」
 するとルイスは彼女の股間へ手を差し込み、去勢リングを慎重に引き抜いた。取り外される瞬間、ジャクリーンは牝猫のように声をあげた。
 「シールを剥がしてもいいのね」
 両乳ぶさの先っぽから、長いほっそりとした白い指を官能的に蠢かし、シールをメリメリと剥がしていった。眼をつぶり、心持ちあごを前に突き出し、口を半開きにした悩ましい表情でその痛みに耐えた。
 まさにストリップのステージのように一筋のサーチライトに浮かび上がった半裸の女が豊かなブロンドの髪を揺らしながら巨乳に残っていたわずかな衣装を取り去っていく行為こそ、男たちをそそる光景であった。パーマー兄弟もゴードンも、あるいは監視塔のうえでライトを操り双眼鏡を食い入るように覗いているだろう、見張り番も同様に股間を硬化させている。まったりと胸乳に冠したピンク色の乳輪があらわれるとその内の誰かが生唾を呑み込む音がはっきりと聴こえた。シールに押しつぶされていた乳首は彼女が二度三度触れるやぷっくりと勃ちあがった。彼女は両肘を張るようにして、双乳を下からすくいあげた。白い腕の肩との付け根辺りに緑色の草露が付着していた。千切れた芝の葉切れも肩や背中についている。
 ジャクリーンは恐る恐る乳ぶさをもちあげ、手のひらをいっぱいに広げて包み込んだ。指の間から乳首がキュートに飛び出している。唇が卑猥に開いたかと思うとヌメヌメとした赤い舌がペロリと唇を舐めた。手にしだいに力がこもり胸は柔軟に形を変えていく。双つの房が添いつき、重ねられるように密着する。首の付け根から胸もとは快感と羞恥とで朱に染まっていた。
 「おっぱいが気に入ってるのはわかるけど、それだけじゃつまらない。まさか乳揉みだけでスパークするわけじゃないんだろう」
 ルイスはしゃがみながら股間を指差した。
 ジャクリーンは濡れた瞳を彼へ向け、諦めたように首を左右に振りつつ、芝生のうえへ寝そべった。そして跨を開き、片手の人差し指と中指をもっていくのだ。まずフサフサの陰毛を掻き回し、茂みのなかのスリットを優しげに上から下へなぞりあげる。クリトリスに触れると腰が震えるように浮き上がり、いっそう媚肉が男たちの眼に飛び込んでくる。充血したクリットは懲らしめを取りのぞかれて、思う存分に発情の屹立を示しているようだった。
 「嫌がっていたわりに、感じているんじゃないか」
 「みろよ、肛門までヒクついてやがる」
 フィルとゴードンは興奮したように感想を口にしているが、ルイスだけは調教師よろしく的確な指示をしていくのだ。
 「声をもっとださなきゃ駄目だよ、ハニー」
 「腰を振って。巨きなお尻はブリブリ振ってこそ意味があるんだから」
 おぞましい変質者の囁きはジャクリーンの乱れた脳を操っている。彼女はしだいに芝居であることを忘れて行為に没頭しはじめていた。どんな女だって性欲はあるのだ。どんな状況であるにせよ、溜まっていた情欲を解放しようとするのは自然な人間の欲求だろう。まして三十歳の豊満な肉体をもつ女盛り。きっかけは心ならずとも、愛撫はたしかに愛撫として受け入れる素地は十分すぎる。ルイスの命令どおりジャクリーンは鼻息を荒らげ、浮かせた腰を左右に振りはじめた。二本の指がスッと内部に沈み込み、静かに抽送を開始する。と、みる間に熱い樹液が指の動きにつれてしたたりはじめたのである。
 「ずいぶん溜まっていたようだ。鼻が曲がりそうなくらいの濃い臭いだぜ」
 「ああ、変なこといわないで……」とジャクリーン。
 片手は依然として乳ぶさを揉みあげていたが、そこから離れて唇へともっていき、白い歯並びを覗かせたかと思うと、人差し指を咥えた。形のいい鼻孔がしきりにふくらんでいる。長い睫毛がその先端まで濡れていた。
 「いいのかよ。弁護士ともあろう者が、これほどまでにいやらしいザマをみせちまって」
 「し、知らないっ……」
 「おうおう、指の動きが速くなってら」
 「うっ……うう……」ジャクリーンは今や完全に色情に耽っていた。下半身は気怠い弛緩と熱い燃焼に包まれている。排出する蜜の量は時間とともに多くなり、アヌスはすっかり大洪水に覆われ、ムズ痒そうにすぼまっている。ブロンドのアンダーヘアは一本残らず逆立ち、指がだされるたびに襞肉までがカントから顔をだすような錯覚にとらわれるほど、爛れに爛れまくっていた。下半身だけではなく乳ぶさも硬く張って、汗まみれの乳輪が面積を広げ、乳首はそれ以上無理なくらいに勃起している。
 ジャクリーンの背中は仰け反って、足と後頭部でブリッジしているが、ヒップには土やら草露やらがついて、妙な色気をかもしているのだった。
 「ああ……」とジャクリーンは吐息を洩らした。
 「どうした。イキそうなのか?」ルイスは見逃さずに追及する。
 「う、うむむ」ジャクリーンは喉を鳴らし、唇を舐めまわした。
 「イッてもかまわんぞ。俺のために一発派手に潮を吹いてみるんだ」
 ルイスのけしかけへ呼応するようにジャクリーンの指の動き手の動きが早く、また力強くなってきた。息も荒くなり、喘ぎは悲鳴に近くなってきた。
 「よしっ、俺たちも手伝ってやろう」
 ルイスはジャクリーンの股間をしごいている手首を掴んで激しく抽送するのである。
 ジャクリーンは涎を流しながらのたうった。
 フィルはバストに手を伸ばし、双つの乳首をつまみあげると一気に引っ張りだすのだ。乳ぶさが痛そうにもちあがり、ブルンブルンと揺れる。ジャクリーンは白目を向いて大口を開けっぱなしだ。それイケ、やれイケと男たちがはやしたてる金切り声が脳にわんわんと反響し、催眠術にかけられたような状態に陥って、彼女は一気にオルガスムスに吹き上げられた。心臓がとまるほどの快美感が全身を痙攣させた。背筋に鉄棒を打ち込まれたようにピーンと身体が緊張でみなぎり、クゥーッと喉をひきつらせつつ、絶頂の数秒にいきばった。そして糸が切れたようにガクンと尻を落とした。絶頂が去った後の甘い陶酔の余韻にジャクリーンは意識と無意識の狭間で全身で浸った。時折、返してくる波のように痺れが下半身を痙攣させた。本格的な性的昂奮だったことがうかがえる。
 しかしそれすら去ってしまうと、後は消えいりたくなるような羞かしさと、深い自己嫌悪だけが身内に残るのだった。執念深く乳ぶさを淫撫しているフィル・パーマーと股間を悪戯しているルイス・パーマーにジャクリーンは抗議の視線を送るもののそれは弱々しいものであった。
 かつてオナニーでもって、これほどまで乱れた経験はなかった。性の歓びに対する偏見はもっていない開明的な女であるが、やはり自慰に我を忘れるのははしたないことだと心のどこかで思っていて、それが昂奮の度合いを下げさせていたわけだが、よりによってこんな場面で形相が変わるほど達してしまうとは……。ジャクリーンは不可抗力だと考えるように努めたし、このほうが彼らを騙すのには好都合だと思いなおしてみたが、やはり肉欲に負けてしまったショックは大きいものがある。そしてそんな彼女をからかうように下腹部から子宮を収縮させるような余韻の快美感がこみあげてくるのだった。
 「嬉しいよ」とルイスはいった。彼は優しげにアンダーヘアを撫でつけている。「俺のためにこんなになってくれるなんて。髪の毛を振り乱してさ。それにしても凄い濡れようなんだな。お前って。芝生がヌルヌルになっている」
 ジャクリーンは両手で顔を隠し、啜り泣いた。その様子をみていたゴードンが唸った。
 「フィル。お前の弟はなかなかどうして見上げた奴じゃないか。俺たちが何ヵ月かかってもビッグリップにこうさめざめと泣かせたことはなかったからな。それがほんの小一時間でお前の弟はやっちまったんだから。どうみたってエリックよりは使えるぞ」
 「フフフ、兄さんたちがここまで追い詰めていたからこそ、うまくいったんだよ。もちろんジャクリーンと俺は最初から愛称が良かったわけだけどね」
 とルイスはそこで例の喉を震わせるような含み笑いをした。
 「それじゃ、いつまでも蟻をたからせているのはもったいない女だからな。このつづきは折檻部屋に帰ってしようじゃないか」
 フィルはそういって、黄色いスマイルシールを新たに乳頭へ貼りつける。
 「嬉しいなあ」とルイス。「とうとう念願のあの部屋へいけるわけか」
 「お前、ずっと楽しみにしてたものなあ」
 「もちろんだよ。あそこで自由にできるんなら、死んだっていいくらいに思っていたからね。それもこのブロンド女と一緒だなんて。最高だぜ」
 プッシーにTバックを取り付けられたジャクリーンは抱えあげられるように車椅子に乗せられる。すべての疲労がどっと沸きだしてきたらしく、彼女はがっくりとうなだれたままだ。ゴードンが押していこうとすると、ルイスが制した。
 「新参者の俺がやるよ」
 ルイスはしかし車椅子を押そうとはせず、ジャクリーンをおぶろうといいだした。しかも何を思ったのか、彼自身、服やズボンをあっさり脱ぎ捨て全裸になるのである。
 「──」ジャクリーンは慌てて眼をそらした。が、変質者の肉体──小柄で貧相な筋肉、生っ白い皮膚はシミだらけ、お腹の皮は弛んでそこには疎らにひょろ長い毛がポヤポヤと生えている──が網膜に焼きついてしまう。とくに股間に屹立した細長いペニスにはゲロがこみあげてきそうだった。
 「カフスやベルトでその綺麗な肌を傷つけたくないからな」
 トボケたことをいっているが、肌にじかにジャクリーンの肉体を感じようとしているらしい。
 「ああ……いやだわ……」
 ジャクリーンは身の毛もよだつほど嫌悪しているルイスの底知れぬ下劣な思つきに辟易とした表情だ。
 彼らにはそれがたまらなく面白い。さっそくルイスの提案を承認して、二人がかりで彼女の腕を取るとルイスの背へもちあげていく。
 ルイスの両手が太腿を掴んだ。それだけでジャクリーンはぞっとしてしまう。彼の身体に指一本でも触るのはためらわれるが、この場合、全身を浴びせなければならないのだ。
 「どうした、ビッグリップ。頬ずりするように、首に両腕を巻きつけないとずり落ちちまうだろうが」
 フィルは女弁護士の剥き出しの背中をピチャピチャ叩いた。ほらほら、とゴードンも手首を掴んで促した。それでも躊躇するジャクリーンをフィルが怒鳴りつけ、ムンと垂れている双臀を平手打ちする。
 「あんまり聞き分けがねえと、帰ってからファランガでケツをぶちのめすぞっ」
 これは効き目があり、ジャクリーンは屈辱で顔を真っ赤にしながら、しぶしぶ長い腕をルイスの猪首に回した。彼の不潔な長髪にふれるだけで発疹がでてきそうだった。誰かが背を押して身体をぴったりと密着させようとするものだから、双乳が彼のザラザラした背中にギュッと押しつけられる。ルイスが天にも昇る快感を覚えているのとは対称的に、ジャクリーンはファックされているような汚辱に満ちた気分に落ち込んだ。乳頭にシールが貼られているのがせめてもの救いである。
 「こりゃ、ずっしりと重い」ルイスは苦笑し、右に左にふらつきながら歩き始めた。「なにせ、バスト92,7、ヒップ97,5のビッグサイズだからな」
 「しかもビラビラまで象の耳のようにデカイときている。しっかり腰を入れてないと押しつぶされちまうぞ」
 「腋毛やアソコの毛がチクチクして擽ったいや」
 三人は卑猥な会話をかわしながら、歓声を上げてジャクリーンを運んでいった。

 拷問部屋でジャクリーン・ドーセット弁護士を心行くまで責め抜きたい、ルイス・パーマーの願いはついにかなえられなかった。次の日からジャクリーンはゆりかごへ戻されてしまったのだ。ルイスは地団駄踏んで悔しがったが、それも宮仕えの身である今となっては仕方がないと、兄のフィルに慰められるばかりである。女を拷問することが三度の飯より好きな彼らには慚愧に耐えないが、職務執行上はたしかにアドバンテージである。気の強い女弁護士をとうとう陥落させたのだから。そう、ジャクリーンはルイスが現われたその夜、屈服したのだ。ジョージ・スピルマンに白旗をかかげたのである。『スピルマン所長のいうとおりにいたします……』と誓ったのだ。それはとりもなおさず、スピルマンの女になることを意味したが、ジャクリーンはこんな生活に明け暮れるくらいなら、そっちのほうがまだマシであるとすっかり諦め切った表情であった。
 ジャクリーンの降伏はルイスが悪態をついているのを尻目に、直ぐ様、スピルマンに報告された。部下の手前、威厳を取り繕ってはいたが、スピルマンの歓喜は手に取るようにわかった。スピルマンはすみやかにジャクリーンをゆりかご房へ戻し、一週間の休息を与えるよう指示した。
 「いいか、食事も精のつくものをたっぷり食わせてやれ。房内にテレビやラジオを入れて、リラックスさせるんだ。傷ついた身体のケアも忘れるな。いいか、これだけはハッキリさせておく。この一週間はお前たち、女弁護士には指一本触れてはならないぞ。わかったな。怒鳴りつけることもいかん。精神的にも肉体的にも元の状態にして私のところへ連れてくるんだ」
 クライズヒルズ刑務所の絶対者の厳命がしっかりと言い渡されたわけだ。
 ジャクリーンはみるみるうちに回復していった。栄養価の高い食事とじゅうぶんな睡眠時間は彼女の美しさを復活させた。人間、四六時中抑圧されていると、人相も悪くなるものである。手厚い看護により、足の裏の腫れもだいぶひいた。身体中につけられた鞭の痕や殴られた痣も目立たなくなった。風呂も毎日許可されたので、匂うような白肌も輝きを取り戻した。与えられたブラシは金髪にウエーブをつけて、見事な女らしさを甦らせた。
 「すっかり太らせてから貪り食うつもりね」
 囚人であるのを忘れさせる待遇にジャクリーンは苦笑を禁じえないが、それは腹の内でのことである。表面上はまったき観念してしおらしく看守たちに従う無気力な模範囚を演じていた。やっと巡ってきた脱獄のチャンスである。しかも彼らは火に油を注いでいるとも知らずに、体力気力を養ってくれているのだ。恐いくらいに順調だったが、これを逃せばきっともう二度とこんなチャンスは訪れない。厳しい状況が変わったわけではないのである。
 しかし、ジャクリーンには自信があった。じっくり練っている周到な計画も実現可能なものだと確信している。大丈夫。自由を勝ちえる可能性はかなりの確率だといっていいだろう。
 (スピルマン。会うのが楽しみだわ。今度のゲームは私が勝利してみせる。罰ゲームはあなたがするハメになるのよ)
 ジャクリーンがゆりかごでくつろいでいると、何の用もないのにルイス・パーマーがひょっこり現われることがある。房内に入ってきて、ベッドに横になりながらヘッドホンでクラシックを聴いているジャクリーン──そんな時、彼女は決まって脱走計画を吟味し反芻しているのだが──をじっと眺めているのだ。
 「驚くじゃない。ルイス」
 ジャクリーンはギクリとして胸もとを正すように起き上がった。もう裸にスマイルシール、ベルトのTバックの姿ではなかった。トレーナーを着ている。ブラジャーもパンティも許されていた。
 やはりジャクリーンはルイスが苦手であった。暴力ならフィルやゴードンのほうがはるかに上手であるのだが、この小男にはこちらの腹の中を見透かしているような得体の知れなさがあるのだ。むろん、心のうちを読んでいるのではなく、衣服を透視して肉体を値踏みしているのだろうけれど、油断のならない相手である。
 「何か用? まだ運動の時間は早いでしょうに……」
 「ふん。一週間、来るのが遅かったよ」とルイス。「そうすればたっぷり可愛がってやれたのに」
 「なんといっていいかわからないわね。私はもうスピルマン所長の女だから。残念だけどあなたの自由にはならないのよ」ジャクリーンは頬笑んだ。
 「お前がこんな根性のない女だったとは意外だったがな」
 「……そうかしら。それはあなたがここに来たばかりだからだと思うわ。三ヵ月の間、私がここでどんな目にあってきたか。それを知ればあなただって納得いくはずよ。どんな女だって耐えられないでしょう。でももういいの。決心はついたから。刑期いっぱい拷問されてたんじゃ、身体が幾つあっても足りやしない。それより所長のいうとおりにして、面白おかしくやることに決めたのよ。意外でもなんでもないわ」
 まだ疑い深そうな目付きをしているルイスに、ジャクリーンはそれ以上、念は入れなかった。かえって疑念を呼び覚ますとも限らない。
 「そんなはすっぱなことをいう女は嫌いだが、お前はもう一度、俺好みのジャジャ馬に先祖帰りするような気がするんだ」
 「まさか、ルイス。それは自殺行為でしょう。私もそこまで英雄じゃないわよ」
 ジャクリーンはハハンと笑った。
 内心、ルイスの勘の良さにビクビクものだったが、ちょうどいいところにフィルが立ち寄ってくれた。
 「ルイス、何やってる」
 「何もしてないよ、兄貴」
 「お前の気持ちもわかるが、所長の意向に反することはできない相談なんだぞ。さ、あっちの114番──ジャクリーンはこの番号が最愛の妹サラのものであるのを知らない──の世話があるだろう。147番は明日の朝、大事な用が控えているんだからゆっくり休ませてやれ」
 「明日に決まったのね、フィル。スピルマン所長にお目通り願うのは」
 「そういうこった。せいぜい媚を売ってこい。明日の朝いちばんに美容師を連れてくるから用意しておけ。おっぱいも跨ぐらも綺麗に洗って待っていろ」
 フィルはルイスの肩を抱くようにして出ていこうとする。
 「兄貴、本当にいいのかい。この女を信じちゃって。俺、なんだか胸騒ぎがするんだ。こいつ、まだ観念しちゃいないんじゃないかって」
 ルイスはジャクリーンを振り返りながらいった。しかしフィルは弟の言葉を、まだジャクリーンの肉体への未練が断ち切れていないためのものと判断したらしく、相手にしなかった。
 「お前は本物の拷問をまだみていないからそう思っちゃうんだ」とジャクリーンと同じことをいった。
 「そうだ、114番に電撃ショックをお見舞いしてやろう。よーく勉強しろよ。お前が一人前になってくれないと兄貴としても立つ瀬がないからな」
 「でも、兄貴……」まだぶつぶついっているルイスをフィルは抱えるように連れ出していった。
 (あぶない、あぶない)ジャクリーンはほっと胸を撫で下ろす。ここまできて計画がおじゃんになったら、泣いても泣ききれない。あんな変質者のおかげで永久に日の目がみられなくなったとしたらと思うと、武者震いが起こるほどぞっとするジャクリーンである。
 あの男は独特の六感をもっているらしい。彼がいったように一週間早く来ていたら、ジャクリーンにとってもまずい展開になっていただろう。だが、風はジャクリーンの側に吹いていたのだ。幸運を味方につければ、百人力である。
 ジャクリーンは再びヘッドホンをかぶり、ベッドに転がって瞑想に耽った。


  脱獄の肉闘

 次の日の夕刻、ジャクリーンを迎えにきたフィル・パーマーは思わずあっと息を飲んでその場に立ち尽くした。美容師とファッション・コーディネーターに付き添われたジャクリーンはまるでどこかの国からやってきたお妃様といった美しさに満ちていたのだ。
 彫りの深い美貌にはやや厚めに化粧がほどこされていた。意外なことに、クライズヒルズ刑務所の看守にとってはジャクリーンの化粧した顔は初めてであったのだ。常に素っぴんに接していた──それだって遜色ないほど美しいわけだが──フィルの瞳は、彼女の肉感的な唇に塗られた真紅のルージュやブラウン系のアイシャドウ、そして小さなイヤリングに縁取られた美貌に吸い寄せられている。
 (これほどの美女だったとは……)
 生唾を呑み込みながら彼は視線をようやく下へ移動させた。
 鮮やかなワインカラーのワンピース・ドレスが彼女の豊満な肉体を包んでいた。細いストラップで、たっぷりウエーブのかかったブロンドヘアが垂れかかる剥き出しの白い肩から吊ったドレスは、真珠のネックレスに飾られた胸もとが眩しいほどに開き、豊かな胸の盛り上がりを覗かせるV字型の艶かしい造りであったし、ウエストが締まっているシルク地なので、女らしい身体の線がくっきり強調されているのだった。
 「どう? フィル。似合うかしら」
 ジャクリーンはドレスと同じ色のハイヒールをコツコツと鳴らしながら、モデルのように一回転した。背中が大きく開いていて、形のいい背筋と肩甲骨があらわであった。脚線美を見せ付けるようにドレスにはスリットが入っていた。見慣れているはずのそれらの身体が、今日初めて眼にするように新鮮にフィルには映った。金髪が優雅に揺れるたびにほのかな芳香がたちのぼり、さらに乳白色の胸もとからはシャネルの匂いが香ってきた。それらはムッとするほどの化粧臭と混在して男心をそそるフェロモンとなっているのだった。
 あまりにも圧倒的な美しさにフィルはかえって無表情となり、ごく職業的な対応をとった。
 「さ、行くぜ。車が待っている」彼女の手をとり、刑務所の表玄関へ向かう。
 「何か、おかしいわね」とジャクリーンはクスクス笑った。「刑務所のなかをこんな姿で歩くなんて」
 「おい、勘違いしてもらっちゃ困るぞ」
 フィルはハイヒールを履いているので自分とほぼ同じ背の高さになっているジャクリーンへ振り向いて、再び凄絶なまでのその美しさに飲み込まれそうになり慌てて前を見なおした。これではどっちが連行しているのかわからない。フィルは深呼吸して、そのグローブのような手のひらで彼女のドレスの豊かに丸みを際立たせている臀部をビシャリと打ち据えた。ジャクリーンはあっと叫んで腰を引いた。
 「お前は正真正銘の囚人であることを忘れちゃいけないぞ。獄に鉄鎖で繋がれている大罪人なんだからな」フィルの手はすべやかなシルクの手触りと、それを通して感じられる双臀の体温と柔らかさを楽しむように撫で回している。「本来なら手錠と足枷はかかせねえところだが、お前の社会復帰への記念すべき初日にあまり不粋なこともまずかろうと親心をきかせてやってるんだから」
 社会復帰への記念すべき初日、とはよくいったもんだと、ジャクリーンは内心失笑したが、それはおくびにも出さずヒップをクリクリと揺らしてフィルの機嫌を取ってやった。ルイスが一緒でないのには彼女もほっとしていた。真の意味で、今日の日を社会復帰への記念すべき初日にするためにも幸先がいいように思われた。
 外は、ジャクリーンの決起を祝福するように雲ひとつない晴天ではなく、今にも雨が落ちてきそうな灰色の雲が低くおりてきていた。オレンジ色の夕焼けが西の空をわずかに染めている。この分ではクライズヒルズの名物といっていい満天の星空は拝めそうになかった。しかしそれは悪くない兆候であった。雨が降れば少なくとも逃走経路を嗅ぎ分ける犬の鼻はその威力を半減させるだろうからである。
 早く降り出してくれないかと、空を見上げていたジャクリーンの前に黒塗りのリムジンが停まった。運転席から出てきたのはポーターであった。彼女もまた一瞬、ジャクリーンの美しさにまばたきを忘れてしまっている。
 「ずいぶん化けたわね。白豚!」ポーターはジャクリーンの背後からたち昇っているオーラを吹き飛ばすように罵声を投げつけた。「早くお乗り。スピルマンさんがお待ちかねだよ」
 後部シートの扉を開け、彼女を押し込んだ。
 「一緒にいかなくてもよろしいんですね?」
 未練がましくフィルはいったが、黒人の使用人に黙殺されてしまう。このリムジンは特別製で外からの攻撃にも強い装甲車であるが、立派な護送車にもなるのだった。ロックは運転席で閉じてしまえば開きっこないし、運転席と後部シートの間には分厚い特製プラスチックが仕切っている。いかにジャクリーンが空手の達人といえどもぶち破るのは不可能なのだった。
 リムジンは緩やかに発進して刑務所のゲートをノンストップで出ていった。
 ジョージ・スピルマン邸で、ジャクリーンはウィリーとウィローの二匹の出迎えを受けた。よく訓練されたドーベルマンは狂暴な唸り声を漏らしつつも、自制が行き届き、彼女の両サイドを固めるようにポーチへと誘導する。
 「ようこそ、ジャクリーン──」
 待ちかねたように扉を開けたジョージ・スピルマンはタキシードをきめこみ、すっかり祝宴の洋装を懲らしている。ポマードがほどこされた銀髪は今日も美しく輝いている。風格の滲み出たナイスミドルだ。
 さすがにフィル・パーマーのようなチンピラとは違い、彼女の艶やかな姿にも狼狽える風もなく、余裕を持って邸内ヘエスコートした。
 「お招きいただきまして、うれしゅうございますわ……」
 これまでの経緯をどこかへ置き忘れ、そんな言葉をのたまわるのも、なんだか不自然のような気がする。なにしろこの男は自分の食事に下剤を混入させ、便器に屈んで脂汗を絞りながら脱糞するなどという酸鼻な様を、笑みを浮かべながら一部始終観賞していた張本人なのだし、ある時はまた、鼻の穴にタバコを入れ、それを写真に撮られもした。
 (けっこう本気で気取っているんだから、笑っちゃうわ)
 ジャクリーンはかすかに微笑みながらスピルマンに腕を取られて、客間へと足を踏みいれた。
 ソファをすすめられ、腰をおろす。スピルマンはポーターにさっそくディナーの用意をするようにと命じた。
 「ようやくこういうことになれて」とスピルマンはいった。「とても光栄に思っているよ」
 ジャクリーンはそれにはこたえず、グラスにつがれたドライマティーニを一口、舐める。グラスの縁にルージュの赤がエロチックについている。
 「いろいろと誤解もあったわけだが、過去にとらわれていても仕方があるまい。君は若いんだし、私だってまだまだこれからの男だろう」
 「スピルマン所長……」ジャクリーンがそう呼ぶのを、スピルマンが制した。
 「いや、ジョージと呼んでくれたまえ」
 「では、ジョージ。私もそれほど馬鹿な女のつもりではありませんわ。一度、腹を決めれば潔く運命に身を任せる所存ですのよ」
 スピルマンはやおらジャクリーンの隣へ移動した。腰が触れ合うほど、接近する。ジャクリーンの白い肩に、彼は手を回して優しく抱いた。ジャクリーンは抵抗せずに厚いスピルマンの胸へ身体をすりよせた。
 「……素晴らしい、素晴らしい女だ。ジャクリーン」
 スピルマンは彼女のブロンドからたち昇る芳香を嗅ぐように鼻面を近付けた。
 「ああ、優しくしてほしいわ。思い切り……。優しさに本当に飢えているんだから」
 我ながら歯の浮くようなセリフだと思ったが、こんな時はそれでいい。ジャクリーンは腹の底でペロリと赤い舌を出しながら、頬ずりをしていく。
 スピルマンは彼女のあごをとり上向かせると、潤んだブルーの瞳を覗き込んだ。長い睫毛がふるえ、目元がポゥッと火照っている。しかも唇は何かをねだるように半開きだ。見下ろすと、ドレスの深い襟刳りから胸の谷間がはっきりと認められた。スピルマンはこらえきれなくなったように、ジャクリーンの唇を奪った。ジャクリーンもうっとりと眼を閉じ、ゆだねている。柔らかい身体をギュッと抱き締め、ディープキスをつづける。しだいに鼻息が乱れはじめ、二人は互いの舌を音をたてて吸いあった。ジャクリーンの口腔の、なんと甘いことよ。考えてみれば、この女弁護士とこうしてキスをかわしたのは初めてであった。変態行為を延々とつづけてきた果ての、ノーマルな愛の交渉は新鮮で刺激的なのだ。これこそ、スピルマンが追い求めている快楽であり、美学なのであった。マティーニの味がかすかに混じる唾液を舌でからめとり、代わって自分の唾液をたっぷりと呑ませていく。彼女の額から鼻筋にかけて、うっすらと汗が濡れているのを好ましくみながら、スピルマンは豊かな胸にそっと手をかぶせた。薄いドレス越しに感じるのはブラジャーの手触りとはちきれんばかりの弾力であった。力一杯揉みたくるのは後のお楽しみにして、今は情感を高めさせるだけでいい。スピルマンの手は添えられるのみで、それ以上、淫らな動きを開始しなかった。
 「ハァーッ……」長い長い情熱的なキスが終わると、ジャクリーンは痺れるような吐息を漏らした。やや羞かしげに俯き、ブロンドのほつれ毛を頬に垂れさせた横顔をみせている。唇がヌメヌメと濡れてい、化粧の下の顔は上気していた。二の腕にずれ落ちたストラップをしどけないポーズでたくしあげ、ジャクリーンは再びスピルマンを見上げた。
 「ああ、ジョージ。私はあなたのものよ。信じて」
 スピルマンは彼女の肩を抱いたまま、立ち上がり、食堂へ向かった。
 ディナーの支度はすっかり整っていた。ポーターと、ドーベルマン二匹が彼らを迎えた。火照り顔のジャクリーンが食卓につく。クリームシチューが主のメニューであった。この一週間はまともな食事をしていたので、以前のような飢餓感は起こらなかったが、それでもじゅうぶんに食欲をそそる匂いを漂わせていた。
 バロックの調べがステレオから流れてくるなか、厳かに夕食が始まった。
 「ひとつだけ、ヤボなことを聴かせてくれないか」とスピルマンはシチューをすくったスプーンを口元へ運びながらいった。
 「なんなりと」ジャクリーンはパンを千切り、ジャムを乗せながら頷く。そのイチゴジャムを見つめる彼女の眼差しはちょっと意味ありげであったが、誰も気付いてはいない。
 「私の誘いを受け入れる決心をしたきっかけは何んだったのかね。つまり、君ほどの女がそうやすやすと拷問に屈するとは思えない、と、たとえばそこにいるポーターなんかは強硬に主張しているのだがね」
 ジャクリーンは頬笑んだが、内心ピーンと緊張した。ここでうまくいいくるめて、信用させないことには話にならないのである。
 「買い被りすぎだわ。ジョージ。私もただの女よ。あれほど痛めつけられれば、宗旨がえしたくなるのは自然じゃない?」
 「それはそうなんだが、何しろ君の印象は強烈なんでね。肉体的な抑圧に屈服するというのはどうしてもその、似合わないというか」
 「直接のきっかけはルイス・パーマーよ」
 「ほう、やっぱりそうか」
 「彼には耐えられない何かを感じるの。虫酸が走るとでもいうのか、彼が送り込まれてきた瞬間、私のなかで何かが崩れたのね。彼が自分を一日中管理するのかと思うと、死んでもいいと思ったわ。死ぬくらいなら、もう一度、生まれ変わって人生を生き直してみようと……」
 ジャクリーンはスピルマンの表情を盗みみた。心配はまったく杞憂であった。スピルマンは彼女の釈明に満足し、信用している。
 「どうだ、ポーター。私のいったとおりだろう。女とはこういう生き物なのだ。女とはな」
 「スピルマンさん」とポーターは不満げにつづけた。「白人女とは、といってくださいな。黒人にそんな根性なしはいませんや」
 スピルマンは愉快そうに笑い、ジャクリーンの手を握った。ジャクリーンもにこやかな表情をしてポーターにパンの皿を差し出して、おかわりの催促をする。ポーターにそれを渡そうとしたとき、ふと、彼女の手が皿を床に落とした。
 「まあ、いけない」
 ジャクリーンは驚いて立ち上がったが、その拍子に今度はシチューの器を引っ繰り返した。シチューの飛沫がとんで、スピルマンにもかかった。
 「私ったらほんとうにそそっかしくて」
 慌ててお絞りを手にスピルマンのズボンを拭きはじめる。ちょっとした騒動に煽られたように犬たちが吠えはじめた。彼らはジャクリーンが不審な挙動を見せたことに苛立っているのだ。スピルマンは犬のもとまでいって叱りつけた。ポーターは割れた皿を片付けて厨房へ下がった。一瞬、ジャクリーンは誰からも監視されないエアポケットに入った。それを逃すまじと、ジャクリーンはジャムを指で掬いとった。そして、ドレスのスリットから股間へ差し込み、パンティにつかないようにヴァギナのなかへすりこんだ。ジャムのねっとりとした冷たさが子宮を収縮させた。この間、わずか数秒である。スピルマンが振り向いたときにはジャクリーンは指をふきニッコリと頬笑んでいた。
 中断されたディナーが再開され、ゆったりしたひとときが戻った。
 「おいしかったですわ」礼をいうジャクリーン。
 スピルマンの彼女を見つめる眼はしだいに熱い情感のこもったものになっていた。デザートの果物もそこそこに二人は客室へとって返し、再び抱擁してキスをかわしあった。
 「……お願い。その前にシャワーを浴びさせて」
 スピルマンの腕のなかでジャクリーンは媚を含んだ声でいった。
 「もちろんだ、そうしよう。私が洗ってやる」
 「フフ、駄目よ。呼んだら入ってきて。私があなたを洗うから」
 今日のスピルマンはすっかり紳士面をしているので、無理強いはしてこない。あっさり彼女の申し出を許した。
 「だけど、ウィリーとウィローは一緒に入れるんだ。もちろん君を信用してるけれど、バスルームには窓もあるし、剃刀もあるからね」
 「かまわないことよ」
 実際そうしてくれたほうが無駄な手間が省けるのだった。犬を封じこめるのが、まず彼女の最初にやらねばならい仕事なのである。ジャクリーンは犬たちと一緒にバスルームへ入った。脱衣篭にドレスを投げ、下着を落とし、全裸になると、彼女はシャワーを捻った。しかしそれを浴びようとはせず、大きく股を広げて、陰部をさらした。
 「さあ、犬ども、こっちへ来るのよ。甘くて美味しいプッシーを舐めさせてあげるわ」
 ドーベルマンを招き寄せる。
 黄金色の毛叢の狭間からイチゴジャムの見事な赤みが覗けていた。二匹の犬は香ばしい甘さを敏感な嗅覚で察知し、押し合いながらジャクリーンの下へもぐりこんできた。こういう訓練された犬は主人以外からの餌は受け付けないが、このウィリーとウィローはまた別に特殊な調教がほどこされている。つまり女を拷問するためのレイプ犬なのだ。女性器に対する執着を条件付けられているし、レイプとはどういうことか理解している。餌で懐柔できなくても、その習性を逆用してこの忠実な下僕たちを武装解除できるはずだとジャクリーンは踏んだのである。ジャムはその導入なのだ。
 案の定、彼らは尖った鼻面を彼女の股間へこすりつけはじめた。
 「そう。いいわよ。もっとお舐め。舐めているうちにジャムより美味しい蜂蜜が垂れてくるわよ」
 とうとう誘惑に負けて、一匹が斑点のついたピンク色の舌ベロをのばし、スリットからはみ出しているジャムをひと舐めした。いったん抑制の呪縛から解き放たれてしまうと後は野性の本能のままにピチャピチャとやり始めた。負けるわけにはいかないと、もう一匹も舌をのばす。ペロペロ、ヌチャヌチャ、貪欲な音があがった。
 ジャクリーンは眼を細めて唇を噛んだ。両膝に置いた手が拳をつくっている。大ぶりの双乳が切なげに揺れる。犬の唾液でアンダーヘアばかりか、横皺が刻まれた下腹まで濡れ、キュートな臍が喘いでいる。緊急事態とはいえ、獣との身の毛もよだつような行為に気が狂いそうであった。犬の無頓着な舌の蠢きに、感じてはいけない淫らな快感が生まれているのが、信じられない。ジャクリーンは二匹の犬の頭を優しく撫でる。気が狂いそうであっても他に方法はない。
 (ああ、そこをそんなにされたらおかしくなるわ)
 見事な調教であるといわねばなるまい。女の急所を心憎いほど知り尽くしている。クリトリスはいうまでもなく、鼠蹊部や肛門、そして臀部へまでも舌が自在にのびていく。犬たちがすっかりジャムを舐め終えても、いっこうに鼻面を離さないのは、また違う甘酸っぱさを含んだ汁がシミだしてきたからだった。
 「そうよ。この味を覚えるのよ。こんなに素晴らしい蜜を吐き出す人間を襲っちゃいけないのよ」
 ジャクリーンは顔を真っ赤にして淫靡な獣姦に耐え、昇せた。
 しかし彼女より先に、ドーベルマンがすっかり骨抜きになり、テリアのように無害で従順な表情になっている。ジャクリーンは頃合をみて、シャワーの蛇口を捻った。熱い湯のしぶきに彼らは驚いてとびのいた。未練を残した目付きであったが、大量のシャワーが女の匂いを消した。ジャクリーンは急いで股間を石鹸まみれにし、洗浄した。
 「まだかい、ハニー?」
 犬の次は人間である。げんなりしている余裕もなくジャクリーンはシャボンを洗い落とした。
 「いいわよ。どうぞ──」
 全裸のスピルマンが入ってきた。ドーベルマンはさっさと追い出された。ジャクリーンはこれから受け入れねばならない彼の股間の剛直に、視線をあわせないようにして、彼に飛び付いた。
 「念入りに洗っていたんだね」
 そういいながら、スピルマンは彼女を抱き締め、また唇を求める。こんどは化粧や香水の匂いではなく、素肌からたち昇る紛れもない女の匂いに軽く昂奮していた。それはむろん股間にも現れていて、ジャクリーンは太腿にこすりつけられる火棒のように灼けたこわばりに一瞬、たじろぐのだ。口付けをかわしながら彼女は乳ぶさを押しつける。スピルマンの手が腰から双臀にかかってくる。しっかりと抱き合った二人を熱いシャワーが頭から激しく打ちつけた。
 「もうたまらんよ。ジャクリーンっ」
 スピルマンがこらえきれずに叫ぶと、ジャクリーンも狂おしげに裸身を藻掻かせ、呼応した。
 「私もよ! 私もだわ!」
 彼女の手は恥じらいつつも降下していき、逞しいコックに触れた。白い指をそれに絡め、愛しげに握るのだ。
 「ウォーッ──」スピルマンはジャクリーンを横抱きにすると、バスルームを飛び出した。二人の身体から流れる雫が絨毯に落ちるのもかまわず、寝室へ突進する。ダブルベッドが中央にでんとかまえた、豪奢な部屋だが、贅を尽くした調度品などに眼をくれている余裕もなく、ジャクリーンはそのベッドへ投げ落とされた。ピンク色に火照った熟れ切った裸体が一度大きく跳ね上がり、大の字なりに横たわる。彼女はすでに覚悟ができていた。一夜だけ、たった一夜だけスピルマンに抱かれる心づもりである。こんな男に汚されても、野犬に噛まれたと割り切ればいいのだ。すでにそれだけの度胸は彼ら自身がジャクリーンに与えた苛酷な運命によってむくむくと培われていたのである。男の精をとことん吸い尽くし、反転攻勢に出るための布石とするのだ。
 何もかも曝け出したジャクリーンの身体をスピルマンは凝視し、吸いこまれるようにその上へ飛びかかった。レイプするように荒々しく、彼女の両手首を片手でまとめて掴むと、グイと頭上へもっていく。ジャクリーンは極まったような喘ぎ声をあげるばかりで、されるがまま。えぐれるように露呈した腋窩には無駄毛は一本もない。処理したのだろう。スピルマンは瞳を異様に輝かせて、そこへ顔を突っ込んだ。それこそ犬のようにベロベロと腋窩を舐めしゃぶった。片手はとうとう本性を剥き出しにして乳ぶさをわし掴んだ。まだ乳肌に残っていたシャワーの雫が飛び散った。根元から力まかせに絞りたて乳頭を突き勃たせる。硬起した乳首は殲烈に充血し、ミルクが噴きあげてきそうな様相だ。
 乳ぶさを揉みたてながら、彼の足が女弁護士の太腿を割り、膝頭がこんもりとうず隆い恥丘をグイグイと押しつける。
 「ああ──」ジャクリーンは大口をあげ、牝の歔き声を発する。二の腕に挟まれた顔ときたら、熱病に侵されたように淫らな色づきを呈していた。
 腋の下をしゃぶり尽くしたスピルマンは両手いっぱいに巨乳を掴みあげ、先っぽにかぶりついた。ジャクリーンは自由になった両手で顔をおおい、あるいは髪の毛を掻きむしった。乳肉の半ばまで吸い込み、きつく噛んでそのまま何度ももちあげる。過激な愛撫は片側だけではない。もう一方の乳首を乱暴に捻り潰し、千切れそうになるくらいつまみだすのである。瑞々しい静脈を浮かせた美麗な乳ぶさはあっという間に唾液まみれとなり、そして赤く紅潮する。
 スピルマンはやおら上体を起こし、彼女の片足を掴んでもちあげた。それを自分の肩に担ぐと剥き出しになった性器へズボッと指を突き入れた。ジャクリーンは髪を振り乱して仰け反った。いさいかまわずスピルマンの太い指は抽送を開始。さっき犬の舌でたっぷりほぐされた花唇はまったく抵抗感もなくそれを咥えこんだ。さらに蜜液でヌラついたスピルマンの中指は一気にアヌスへねじこまれる。
 「オォォーッ──」ジャクリーンの口が楕円になって苦悶をほざいている。巨きな尻がシーツからもちあがる。ズブズブと沈み込んだ中指は前に食い込んでいる親指とともに猛烈なしごきを与えた。腰が右に左によじれた。シーツを掴んだ手に力がこもり、豊満な裸体に大粒の汗が浮いている。ジャクリーンは眼も眩むような快美に脳を痺れさせた。頭髪に突っ込んだ両手を次には彼の身体を求めるように差し伸べる。しかしスピルマンはそれをあざ笑うかのように無視して、いっそう指の抽送を力強くするのである。ジャクリーンの悲鳴をきかなくとも、ヌルヌルに潤み切っているプッシーと充血までして指の太さに開帳されているアヌスの惨状がすべてを物語っていた。
 「凄い臭いだ、ジャクリーン」とスピルマンは涎を垂らしながら嗤った。「発情した牝の臭いだぞ!」
 「いわないで、早く、早くきて! 欲しいわ、あなたが欲しいわ!」
 ジャクリーンの淫らに昇せた容貌は、胸のつまるような妖艶さだった。この表情に高ぶらない男などいるはずがない。スピルマンは野獣のような咆哮を発しつつ、指を引き抜き、代わりにコックの先端をあてがった。
 「ヒィィィーッ」ジャクリーンの身体が硬直した。まだインサートされてもいないのに、すでにアクメに達したかのような様相だ。スピルマンは彼女の腰をもちあげて、とうとうズブズブと沈めはじめた。ジャクリーンは細首にきつく筋をたてながら仰け反った。浅ましい声をあげつづける女弁護士の口にさっきまで跨ぐらを貫いていた彼の指がねじこまれた。愛液や汗や肛門の味を混ぜたぬるみをジャクリーンはチュウチュウ吸った。
 スピルマンも技巧を凝らす余裕はもてなかった。荒々しく最奥へ衝きたてると、しゃにむにスラストを開始した。ジャクリーンは指を吐きだし、呻くようにヨガッた。大事な女の秘園が壊れてしまいそうな暴力的なスラストは十分の長きに及んだ。
 最初に吠えたてはじめたのはスピルマンのほう。ジャクリーンの肉の構造は想像をはるかに上回る極上の品であった。熱く蕩けた媚肉の収縮はこれまで経験したどの女の持ち物よりも素晴らしい。ジャクリーンが絶息しながら腰に力を入れると、さしものスピルマンもこらえきれなかった。覆いかぶさるように上体を倒し、唇に貪りつきながら、猛然と爆発させた。第一ラウンドは青年の猛々しさせっかちさを蘇らせたように、最後を迎えたのだ。
 しかしむろん、ジャクリーンが淡い期待を抱いていたように、それで終わりではなかった。スピルマンは彼女の体内に肉棹を入れこんだまま、回復を待つつもりのようだった。
 彼女の秘肉は緊密な襞を刻んでい、咥えた男根を中へ中へと吸引する理想的な道具であった。ざらつきも程よく、キュッキュッと収縮する筋肉も小気味よい。ゆっくりと巨きさや形を馴染ませるように、スピルマンは運動を控え、静止したまま、彼女の快楽の底に沈んでいる表情を楽しみ、乳ぶさを揉みつけている。
 「よかったかい」
 頬をつつくとジャクリーンは魂が蕩けてしまったような瞳をみせて、かすかに頷いた。
 彼は彼女の両手を掴むと、身体を引き起こした。足にのせあげるように汗ですべる腰を抱え込んだ。正面座位の姿勢で結合が深まると、ジャクリーンはスピルマンの肩にあごを置いて、全身を預けてきた。
 「みてごらん。黒と黄金のお毛毛が毛玉を作ってるよ」
 優しくいうと、スピルマンは腰を使いはじめた。正確には、動かしているのはジャクリーンの腰ばかり。膝の上で彼女の双臀がブリブリと振られている。ジャクリーンは両腕をスピルマンの首に巻き、まだ第一ラウンドの余韻を引きずっている。征服された様子がスピルマンに余裕をもたせた。
 第二ラウンドはまったく彼のペースで進んでいるといってよかった。ジャクリーンの欲情も萎むことはなく、しだいに炎を大きくしていく。焦らすようにコックを引くと、彼女は歯を噛み鳴らして自分から腰を迫り出してくる。激しく揺さ振ってやれば、まるでニンフォマニアのような呆けた顔になってわなないた。やがて顎を突き出して悶えまくりだした。汗を含み、重たくなったバサバサのブロンドがスピルマンの鼻先をかすめた。巨乳が胸板をこすりたてる。全身を使ってセックスに興じるタイプの女なのだ。
 二人は、いや正確には完全にスピルマンの術中にハマりこんだジャクリーンは、糸を引くような叫びを腹の底から絞りだしつつ、果てた。腕のなかでぐったりと重くなった女の身体を、ベッドに転がすと、胸に膝を押しつけるようにふたつ折りの体位にした。大柄なジャクリーンだが、身体は軟らかくすんなりと尻を上に向けた。スピルマンは立ち上がり、上から狙いをつける。そしてヌラヌラとブロンド弁護士の蜂蜜で光らせたペニスでもって一気に貫いた。ジャクリーンの意識はまだ夢の中であったが、肉体はビクビクと反応した。スピルマンはさらに前進し、最奥へ衝きたてた。
 「あむ」彼女は薄目を開いた。屈曲した姿勢に気付き、呻いたが、それよりなにより、視野に己れの串刺しにされた性器が飛び込んできて、狼狽の声を上げた。だが、レディのまともな感情はすぐに雲散してしまう。ザクザクと襞肉をめくれ返すような抽送が始まったからだ。眼を背けたくなるような一部始終が、ジャクリーンを異様な昂奮へと追い込んだ。剛直にこねくられる二枚の媚肉──。自分のものとは思えないほど淫らな蠢きをみせるそれは、ヘアを貼りつかせながら浅ましく充血して、淫欲を帯電している。抜き差しされるたびにヌチャヌチャというせせらぎ、肉ずれの音が聴こえ、あるいは白濁した愛液が滲みだしてき、あるいは濃厚な、子宮から漂ってきたような生臭い匂いをさせてもいる。彼女の痺れ切った脳はそんな情景に催眠術をかけられたように吸い寄せられ、眼を離すことができないのだった。


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