詩集
益友
芥川三平
ポチ
裏山に穴を掘った
掘り終わると
しばらく秋日に晒した
お前を埋めても
寒くないようにとの配慮からだ
名もない茶褐色の
雄の中型の雑犬
お前の名前はポチ
我が家に拾われて
長かった十年
人間の寿命に換算すると
五十五、六歳だという
十年
本当に元気で
俊足で宙を飛んだ
鼻頭はいつも黒光に
ぴかぴか輝いていた
それが急に食を絶って
これはと思った
馳せると
おるか位の気持ちだが
さてとなるとこれは慌てた
つまりは一週間の急病で
二回点滴注射もしたが
先生の初見は
心臓を中心に
全身にガタが来ていて
もはや見込みないという
いつの間にか
私は唸る他なかった
どうしようもなかった
水にも拒絶反応を示し
手の打ちようがなかった
息を引きとる前夜には
私の膝に倒れこみ
背中撫すると
かすかによろこびの
反応を示したかに見えたが
目はすっかり見えんようだった
掘り終えた穴の横には
硬くなったポチの亡骸が
一片の塵芥のように
ダンボール箱の中では動かない
土が乾いた穴の外は明るいのに
家内の泣き出しそうな顔がある
私は故意に無表情を粧って
土はゆっくり静かに
思いをこめてかけた
泣くなよ、泣くなよ
こんもり盛り上がった土に
私はそういうより他なかった
急に傾いた日差しに
ポチの死がぎゅうっと迫った。